(09-16)深森の廃村(活力源)
(09-16)深森の廃村(活力源)
ふと思い立ちまして、ドックに大海蛇を取り出して、魔力充填。抗魔鎧を最大防御にしてみました。何をするかと言うと、大海蛇を指さして『ロウタぁ、行ける?』。そうするとですね『フッ』と口角を上げまして、中空を駆け上がり、もたげた蛇の首元で横に一旋転。爪をダブルで切り立てまして、あっさりと『スパーン』。水しぶきを盛大に上げて大海蛇(巨大ウツボ)の頭はドッボーンと水中へ。当のロウタは、どうだ!と言わんばかりに
「ヲッオン」
「おおぉぉ、すっごーい」
パチパチパチと大絶賛して上げました。アタシ等より強くないですかね?ま、良いか。良い子、強い子、元気な子。辺境村村娘ですこんにちは。あれっ?ちょいとそこの狼さん。あんた今空を飛んでいなかった?
1. 空飛ぶロウタ
「ミーちゃん、今ロウタちゃんが空を駆けていた気がするんですけど」
「やっぱり、そう見えましたよね」
「うん、飛んでた~」
「ロウタぁ、あんた今どうやって飛んだのかな」
ちと宙に浮きまして、おいでおいでをしてみました。そうしたらですね、ひょひょいっと階段を昇るように近づいてきて、大口開けて驚いている私に足払いをかましてくれやがりました。
「ぶぎゃっ」
潰れたカエルのようにペシャッと腹ばいになった私の背中へちゃっかり乗って、サーフ板代わりにしないで欲しいのですけど。下の方から大笑いが聞こえて来る今日この頃。
「そういうことか!いつの間にそんな小器用な事を覚えたのかね、君は」
サーフ板さんは、ロウタを乗せたまま下に降りて、皆に説明。ロウタは、行く先々に魔力盾を作り出し、時には引き伸ばして道を作り、それを渡り歩いておりましたとさ。なんとまあ、器用な狼さんですこと。
「なるほど~、ロウタすごいねぇ」
なんで落ちないのかと思ったんですけど、遠心力とか慣性とかですかね、多分。確かめる為に同じ事をしてみました。だって空中に盾を張ったとして踏み込みに耐えられるとは思えないんですよね、魔力盾と言えば盾と言う位なので、自分の周囲へ壁のようにドドンと張るか、バックラーのようにピンポイントの受け流ししかして来なかったんだよねぇ、踏み台なんて考えたこともなかったよ。ならば検証いたしましょう。
「最初の一歩は、地につけて…うん、大丈夫だよね」
そりゃね、地についていればただの板ですから、大丈夫に決まっていますわな。
「次の一歩は、階段状に…あれっ?落ちるよね、当然だよね。さてどうするんだ」
次は踏み込みの直前で出現させてみます。踏み込みの力がかかると、その瞬間だけですけれど空気が圧縮されたように感じられて、踏み込みへの反発が来ました。
「あっ!強く踏み込むとその分の反発が来るね。うぉい、これを繰り返していたのか」
「わっ!本当だ。よく考えたね~」
うーん、反発があるのは魔素成分のせいかな、正確にはわかりませんが。では早速。
「うぉりゃぁー、それっ、ほりゃ、ほい…ふぅ、うげっ」
ジャッパーーン
「ぎゃぁー」
「ワォーン、ヲッヲッヲッ」
ロウタの奴笑っていやがる。はい、気合を入れ続けないといけませんでした。ちょっと気を抜いた途端に冬のプールへダイビング。ロウタは事もなげに伝っていましたが、結構な力技のため、万人向けな方法ではありませんでした。
2. 微細な刻印魔石
光・闇・土・白の刻印魔石が欲しいです。『□┬□』こんな感じに刻印が入った魔石を重ね合わせ、それらに魔導線の引出線をつけて気密封止したいです。さらに利用できるのが確認されたら大量に欲しいです。どうしましょ。
鉱物魔石で良いので、水晶(石英=二酸化珪素=シリコン)で行けます。半導体にする場合は、9が何個も続く高純度にしないと使えませんが、魔石は電子部品では無いので、それなりに透明度が高ければ、そのまま使えます。透明度の高い水晶は、腕くらいのが氷穴に生えていますしね。
水晶の六角柱から切り出した厚み約0.5[㍉]ほどの薄板に合わせ、刻印魔法を付与した小さなレンズを沢山張り合わせて刻印器を作ります。一粒の大きさである2✕3ミリ平方の中心に焦点が合うようにして調整し、レンズ群に向けて魔力光を照射すると薄板に刻印されます。凡そ直径8[㌢]のウェーハ代替品からは、切り取り線を含めて約200個の刻印魔石が一気に出来上がる予定です。歩留まり?わっかりませーん。
次は個々の刻印魔石にすべく、切り離さなければなりません。魔法ならば水刃ですかね?光刃(ほぼレーザー相当)は流石にだめだろうと思います。誰にも想像出来ないでしょうしね。光が物を切断する所を想像する?無理でしょ。切り離した基板をローラー付きのコンベアに載せて、ハの字型の羽板で一枚ずつ整列させてから、更に細切れにしていきますと、めでたく刻印魔石がご誕生。水刃の欠点としては、ウォーターカッターって極めて大量の魔力を必要とするって事だけですね。なので、今のところ私しか出来ません。
重複部分が2[㍉]の正方になるように光・白・土を重ねて魔導線でリードを取り付けます。土・白・闇も同様にしてゴームで作った封入剤で密封したら、魔力効果制御素子の出来上がり。半円柱型が光で、直方体型が闇になるように封入してみました。廃村異世界化計画がまた一歩。でもとりあえず、暫くは棚のお飾りにしておきましょう。理由はですね、時期尚早と言うか、活力源すなわちエネルギーの供給方法に難があるのです。
3. 液化天然魔素(試作)
「あ~ぁ、もう空になっちゃった~」
「そうだねぇ、蓄魔駆動型の卓上焜炉は、強火だとすぐ無くなっちゃうよね」
「蓄魔量が限られておりますからね、仕方がございません。もっと含有量が多い素材があれば良いのですけど」
「短すぎるのは、使い勝手が悪いですよね。僕も思いついても活力源に費用がかかって断念したものが多いですよ」
「だよねぇ、2~3日の煮炊きに必要な時間位は保ってもらいたいよねぇ」
いえね、遠路を移動する普通の人達って途中の宿がない場所では野営するしか手段がないのですけどね、その場合の食事って言うのは、石を環状に集めた簡易な竈で湯を沸かす位しかないんですよ。後は干し肉とか、乾燥させた野菜。これらを湯に入れてスープにします。他には糧麦焼を堅焼きにして、水分を飛ばして傷みにくくした物体と化したものを直に齧るか、スープに浸してお食事となります。
荷馬車を連ねる商隊ですらそんなものですからね、竈が作れればまだマシです。ちょうど良い石なんてそうそう転がっていません。結果、水か酒と干し肉と言う事になります。そうすると、徐々に気力低下が起きて疲労が蓄積し、道中が怪しくなって行き、事故が起きてみたり、野盗に狙われたりする一因となります。何日も野営をする冒険者だの討伐兵団ならなおさら、気力の低下は大問題となります。
そこで調理時間を少しでも減らす事ができれば、一日の移動量に回せますし、温かい食事にもありつけるわけですから、歓迎されると言うものなんですが、一回の食事分すら賄えない代物ではどうにもなりません。どうしたもんですかねえ、直火の件だけではなくて、機械も電気やら蒸気ではなく魔力で動かすには相応の魔力量が必要となるんですよ、精霊さんも只では働いてくれません。魔法だからと言って杖一つ振れば何トンもの機械が動くわけでは無いのです。
「うーん、空気中とか地中に魔素はあるんだよねぇ」
「そうだね、前に水杯の蝋燭でやったよね、焜炉でも使っているね」
「あれをさ、なんとか集めて纏められないかなぁー」
「あっ!液化するとかはどうですか?できるかどうかは分かりませんけど。さらに方法も判りませんけど」
「液化?ミーちゃん、液化って?」
「魔素を集めてね、お水みたいにするって事だろうけど、どうやるの?」
「僕にわかる訳ないじゃないですか、ハッハッハ。言ってみただけですよ」
そりゃぁ、そうか。私だってわからんもん。魔素ってのは水素以上に微小分子な気もするけど、常温で液体ってのはあり得るのかな?ちょっと試してみましょう。
「これでできるかな、どうだろ」
「井戸の玩具?大活躍だね」
「うん、いろいろ使えるからねー、そぉれっ!」
吹出口をこれまたお馴染みの蛇皮でふさいでピストンを押し込みます。気体温度が上がるだけで何も起きません。
「だめかな?何も起きないね」
ならばと、次はアッちゃんとフウちゃんで筒の温度を下げてもらいます。予定では密度が上がるはずなんですが、はて何度まで下げれば良いのでしょう。
「今度はどうだっと」
「ミーちゃん、雫が落ちた!」
「薄い水色のお水みたいなのが見えましたけど、すぐ消えてしまいましたね」
「もしかして、今ので出来たんじゃ無いですか?」
「そう簡単には行かないんじゃない、確認する方法はないかなぁ」
液体がですね、魔素が液化したものだとするなら、あぁ魔道具が動くかな?
「そうだね~、雫位だと万年燈かな~。灯りが灯れば判るんじゃない」
「いいねそれ、ではやってみよう」
陽光魔力発生部を外し、万年燈から魔導線を引き出して魔力変換魔石に繋ぎます。
「それっ!んで、雫を垂らすと」
ビッカーッ。
「「「「あ゛~~~~目が!目がぁ」」」」
ピシッ!パリーン。
自分でやることになるとは思わなかったよ、こういうのは悪役の仕事だろうがっ!
「吃驚したぁー。皆、目は大丈夫だった?」
「物凄かったですね、あんなに明るくなるとは思いませんでした」
「まだチカチカするぅ~」
「うわっ!砕け散っていますよ、光球魔石」
「げっ、本当だ」
なんとまぁ、光球魔石が粉々になってしまいました。
「これミーよ、何があったさね」
「おい、生きているか?何やらかした!」
「あ、婆ちゃん。ガンさんも…ひでぇ。いやね魔素が液体にならないかと思ってね、液化はできたみたいだけどさ、光球に通してみたら、激しく光ったのがさっきので、それで灯りが壊れた」
「魔素を液体に?なんとおかしな事を考えるもんさね。姫さんもいるんだからお気をつけよ」
「そうだねぇ、あんなに出力が出るとは思わなかったんだもん」
「あはははは、私は大丈夫ですよ。魔道具の製作なら慣れていますし」
「そうは言っても姫さんは姫さんさね、気をつけるさね」
「ありがとうございます。さて、ミーちゃん。量産手段と提供方法を考えましょう」
「さっきの今でリア姉さん元気だね」
「もちろんですよ。これは前代未聞の画期的な活力源になります。すべての魔道具が液化魔素で動くようになれば、素晴らしい事ですよ」
流石は魔道具姫様。あの程度では怯みませんね、頭の中が『液化魔素』で充填されてしまったようです。
4. 液化天然魔素(製造)
圧縮と冷却(膨張?)についてまずはおさらいしてもらいます。後々のヒントになるかも知れませんしね。
「魔素にしろ空気にしろ、粒々だと考えるわけね」
「ほうほう、お水と一緒だよね」
「そうそう、しかも目に見えない位だから、お水なんかよりももっとずっと薄く広がっているの」
「あ、だから喞筒で集めてお水に近づけるって事?」
「うん、それでね人もそうだけど、冷えるとどうなるか?」
「動きが鈍る。もっと寄り添うようになる?」
「そういう事。これだけで出来るとは思わなかったけどね」
「圧縮するのは大型の喞筒があれば良いのですよね。冷やすのはどうすれば良いのかしら」
「それなんだけどねえ、どうしようか」
圧縮後に高まった空気の温度を下げるには、冷却器(熱交換器)が要るんだけど、あれを作るの?鍛冶屋さんにできるかなぁ、風呂釜の何倍もの細かさがいるものなぁ、無理っぽいよね。冷媒にしてもフロン?アンモニア?そんなものねえです。
「あれは?お婆ちゃんの蒸留器。湯気が冷えるでしょ」
「水を使ってね。水の温度じゃ液体にならないんだよね」
「そっかぁ、ならお水の代わりに氷は?」
「風と水を複合させた製氷の魔道具はありますけど、多くの魔力を消費して魔力の元を作り出す事になりますね、割に合いません」
「難しいものだねぇ」
『うーん』と唸りながら喞筒で空気を圧縮して、次にそれを一気に開放。
「あれっ?!冷たい空気が出てくるね」
「わっ!本当だ。これ使えないの?」
「どこまで冷えるかだろうねぇ」
空気は結構断熱したり蓄熱したりするんですよ、正確な所は知りませんけど、その昔空気袋が沢山ついた気泡緩衝材を、寝袋代わりに作業机の下でお休みしていたような思い出が薄っすらと。やめよう、悲しくなってきた。所謂冷媒として普通に使われる材料と比べると、空気は温まりにくいし冷めにくいはずです。効率が良ければフロンなんて使っていません。ということは、他の冷媒と比べると、より強く圧縮したり膨張させたりする必要があるんじゃないですかね?所詮素人考えですけど、どうしましょう。
圧縮機として用意できるのは、今の所船で使った往復ピストン形式だけ。動かすのは水車か風車しかありませんが、とりあえずできるだけ高温高圧の空気を作ってみます。さて、熱交換器ですけど、銅製の薄板を積層した所に銅製の角管(丸管は無理)を通して、湧水に浸けて水冷。これを通して低温高圧の空気とします。低温低圧にする為の膨張弁は、出口でリトちゃんが温度を見張ってくれて、膨張弁の開閉を調整してくれます(ありがたや)。
晴れて氷温になった冷気で圧縮した空気を冷却する事が出来ました。ただよく考えたら、いや考えなくても二度手間しているような気がしますけど、ひとまず製造を優先してみましょう。
液化した魔素だけを今度は貯めなければなりません。貯蔵缶は黒鉄製、大きさはライターガスのボンベ位で、およそ直径30[㎜]高さ200[㎜]。液化燃料と違って直接引火・爆発はしませんから、まあその分は危険性は少ないかと思われます。本体受け口に調圧器を取り付けて、魔力変換魔石を接続して出来上がり。
5. 液化天然魔素(試験)
「今度は、なかなか空にならなかったね」
「強火で一日中点けっぱなしでも消えなかったね」
「これは…ここまでとは思いませんでした。すごいですね」
商業的には単一電池位でも良さそうですが、それは販売する人に決めて貰うことにして、これにて終了。後は、ハンジョさんとソバーニさんに丸投げ。スチームパンクな世界になりそうですね。




