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(09-15)深森の廃村(御予定)

(09-15)深森の廃村(御予定)


 あの程度で弱体化するとも思えませんが、ちょっと王国にちょっかいを出しすぎたかも知れません。なんかですね、この先治める予定なのは、大聖堂の居座り組を仕切っていた第3王子になったみたいで、御年15歳。まだ時間はあるから大丈夫でしょう。初陣だったそうですよ、よかったですねこっちに来ていたら吹き飛ばしていた所です。辺境村村娘です。こんにちは。

 

1. 王国門前の立て看板


 帰り際にですね、看板を立てて来ました。

 

 一. 条約は態々破る事なかれ。遵守するべし

 二. 自国防衛以外の戦闘力を持つべからず。持ちたる先に待つは亡国也

 三. 自国防衛に専念し、周辺国への進出、侵略を禁ず。来たら怒るよ

 四. 先の農法報告書通りに研究機関を設立し、成果は民に還元するべし

 五. 証明書に従い、王城周辺施設は頂戴しました


 討伐組と居座り組が合流し、全部が城に帰るまで一ヶ月位かな。それまでに復興していれば良いですね。ブルボニア王国の向こうは、ゼルガニア帝国って言うそうですが、調子に乗ってここぞとばかりにブルボニアへ侵攻なんかしてこないよね。


 あれだね、第3王子様はラノベになりそうだよね。


『遠征から戻ったら国王になっていました ~誰か助けて~』


 みたいな。


2. やっと静かになった


「これで、両隣は静かになりそうかな。なって欲しいなー」

「ミー、また来たらどうするよ、ここを国にでもするか?」

「そうしたら、ガンさん近衛団長ねぇ」

「俺が?やなこった。師団長なんぞ面倒でやってられねぇよ」

「ほーら、アタシだって嫌だよ。いいよ、集落で。国って面倒なんだよ?いろいろな人が集まるから」

「そうだけどよ、度々来られても面倒だろうがよ」

「よし、マヨネ酢さん。よっ!総統閣下」

「嫌です。12日間で死んじゃうじゃないですか」

「チッ!そもそもお姉さん達は、そろそろ戻るでしょ?そうしたら、ガンさん達も戻るでしょ。他の人も帰らないとまずいでしょ?お送りしますよ」

「それなら、今から作っておくさね。これミーよ、私の本を複製できるかい?」

「できるよ。あぁ、お姉さん達のお免状代わりにでもするの?」

「よく判ったさね、その通りだよ。後は、自分で精進するしかないさね」

「じゃあ、一番良い紙を買って来なくちゃね。あれだと少し時間がかかるかな」

「あら、私はまだまだですわよ。お師匠様の元で覚えたい事もありますし」

「え、お兄さんはどうするの?」

「うむ、私か。ルリエラ嬢の気が済むようにしたら良いと思うぞ」


 お兄さん(マジダス)早くも、ロウタ状態。


「ふむ、ならば旦那の下級新薬を上級にしてみるさね、それが出来れば卒業さね」

「旦那って、まだ早い気が。そうですね、解りました挑戦してみたいと思います」


 サーワ姉さん達は、どうするのかを聞いてみました。

 

「折角中級を作れる所まで来ましたから、このまま師事して上級位は作れるようになりたいですね。ジージョは?どうかしら」

「私はなぜかお薬を作れるようになりましたからね、できれば色々覚えたいです。お嬢様のお付きでもある訳ですし」

「私の事はどうでも良いですから、自分の事を考えてね」

「はい、有難うございます。大丈夫です」

 

 まあね、魔導国は一番被害が少ないとはいえ(誰だよその原因を作ったのは。誰ですかね)、たぶん国境付近はゴタゴタしているだろうしね、国内が落ち着いてからでも良いのかも知れないですけどね、本人達のやる気を削ぐわけにもいかないしな、様子見って所でしょうかね。

 

「リア姉さんは?」

「私ですか、そうですねえ、ミーちゃんの道具をもっと知りたいですし、まだまだ手つかずの物が沢山ありますし、それからでも遅くはないでしょうしね。もう暫くご厄介になりたいです」

「良いのかな、嫁とかは?」

「えっと、それは」

 

 なんか、ソバーニさんの方を見ていますけど、あれ?お二人ってそうだったの。

 

「ソバーニさんは?商会があるでしょ?」

「不肖私こと、セイユーは、マジョリア様と共に」 

「あら、本当に私でよろしいのかしら」

「もちろんで御座います。貴女様以外考えられません」

「よろしくお願いいたします」

「おぉぉ、おめでとうございまーす」

「有難き幸せでございます」

「それで?」

「ミーちゃんが、あまりにも面白いので、しばらくこちらです。今、決めました」

「それでは、私も」

「二人共軽っ!商会は?」

「暫くは、ウドンダがなんとかするでしょう」

「良いのかなぁ、大丈夫?ソバーニさん」

「なんとかなりますよ、当分魔導国内も落ち着かないでしょうし」


 それはそうなんでしょうけどね、魔導国内の事は王女様に任せるしかないか、通話器もあるし、なんとかなる…かなあ。あぁそう言えばお兄さん、第一王子様だっけね。


3. 私は何をすれば良かろうか


「ミーくん、私は当面どうすれば良いと思うか?」

「は?何を仰るマジダスさん。とりあえずここに住むなら、魔力量を上げておかないと死にますよ。それで上位の薬剤まで位は調合できるようになって、お姉さんに追いつかないといけないのではないでしょうか。その先って言うと、生活の事ですかね?アタシの希望としてはですね、平民向けに下級薬を量産して貰いたいですけどね。未だに乳幼児の死亡率が高いでしょ、なんとかして欲しいかな」


 そうなんだよねえ、未だに薬と言うのが高すぎるんですよ。ドラッグストアなんて無いんですよ。真教国があれでしょ、傷病を治す担当すら当面いなくなっちゃうんですよ、人が減りますよ。統治者さん達は何をしているんでしょうね、自分達の建前ばっかで、考えていないんじゃないですかね。


「下級?下級をどうするのだ?意味がないでは無いか。私の場合は、店を持つ事は簡単だが、売るとなると大変な事なんだぞ、下級なぞ役にはたたん。君には分からないかもしれんが」

「あぁそれならですね、行商してください」

「は?そんな事をしても国中に広がる訳がなかろう、所詮は子供だな」

「うーん、思いつかないかー」

 

 なんかね、お兄さんの後ろにいる連中がですね、ニヤニヤしながら生温ーい目でお兄さんを見ているんですけど、何でしょうかね。そうだよねえ、その場で売る事しか考えつかないよね。人の倫理感というのもまだまだだしね、仕方がない。人々の考えも変わらないとだめですかねぇ。

 

「火傷に怪我、熱冷ましとかを適当に一式を箱に入れてですね、家々に置いて貰う為に行商するんですよ。それでね、その中身を使わなければ、お金はかかりません。使った分だけ、年に一回とか廻って精算する訳ですよ。その場では売れませんから、成果は見えにくいですけどね。手元に薬があって、直ぐに使えれば、初期段階で治る可能性が高まるでしょ、重篤になる前なら下級でもなんとかなるんですよ。死なずに済む子供が増えるかも知れないでしょ。高い薬だとだめですけどね、下級薬なら置いてもらえるでしょ」

「あぁッ!置き薬」

「マヨネ酢さん、よく思いついたね、置き薬なんて」

「{あっちの家にありました。なんとなく覚えています}」

「{なるほど}」

「店売りではなく置き薬?薬を家々に予め置いて貰うわけか。店も倉庫もいらぬと言う事か。それは面白い発想だな」


 平民はね、高そうな薬を目立つように置いてあるような店には入りにくいんですよ、だからと言って期限切れみたいな安物ばかりだと、今度は不審がってやっぱり入らない。平民向けのお店って、結構大変なんですよ。


「だが平民の乳幼児が助かるとして、人が増えれば食料が要るぞ、それはどうするかね、残念ながら我が国にはそれほどの余裕はないな」


 まぁ、正直な第一王子様でございますこと。内輪の現状なんか喋っちゃだめですよ。最も誰もが知っている事ではありますが。

 

「それは、リア姉さんかな」

 

 少し前から精霊会話盤でいろいろ調べていた、魔導国3人娘さん筆頭第一王女様に振ってみました。

 

「そうですね。お兄様、先日来より我が国の実情を調査しておりました。途中経過ではありますけれど、早ければ3年以内に現在の収穫量を倍にできる可能性が高いです。理由はですね、主に小麦の生産量を増やせる事ですね。茶麦の耕作面積を少し減らすだけで、小麦の生産量が倍になります。小麦の耕作面積を増やせる事が判明して、現在開墾と調整を行っている最中ですわ」

「そうなのか?産業の進捗は暫く遠ざかっていたので知らないのだが、そうか糧についてはなんとかなるわけだな」

「その通りです。それとミーちゃんの作り出した機械類は、魔導国発となりますので、そちらからの収入も期待できますよ。それは、ソバーニさんですね」

 

 製塩と魔導具でその頭角を現し、今や魔導国でも指折りとなったソバーニさんが、リア姉さんに続く。

 

「では、僭越ながら私が。海水からの製塩もそうですが、魔力紋による個人識別、写真機、録音と録画、その再生機構と動力。どれをとっても我が国ならではの代物となっております。また魔力紋につきましては、周辺国への周知により魔法犯罪の抑止に繋がるものと期待されております。これらにより、この先我が国における生活品質の向上が期待できます」

「なんとそんな事になっていたのか。政治どころか産業も少し遠ざかるだけで随分と変わるものなんだな。だが、少し進展が早くないか?いままでとは随分違う気がするんだが」


 こちらを見ながらそう言いつつ、なんか額に縦皺が…なんですかね。進展が早まった理由はね、何処ぞの誰かさんがね、不便を理由に結果として数百年の進化を数年に縮めてしまったからなんですよ。歴史を手繰り寄せて捻じ曲げて、誰ですかね酷い事しますよね。身勝手過ぎませんかねぇ、急激すぎる変化は、格差やら軋轢やらを生み出しかねないわけで、迷惑な話ですよね。ホント、誰だよ。


「ミーくん。君は何者なのだ?我が国の経済を動かせる程の知見・知識。いつどこから誰から受けたのだ。考えつかん。教えて貰えないだろうか」

「うーーん、そんな御大層なものではないですけどねぇ。えーーと、神父さん?神父さんが持っていた精霊信教の謎の本とか、王国の学習書やら、最近では精霊信教の資料館とかもありましたかね、どこの国も機会はあったのに誰も手をつけませんでしたけど。そういう機会に恵まれたって言うだけじゃないですかね」

「うーむ、それだけでは無いような気もするが、そうか機会か…それを掴むための広い視野と言う事で良いのだろうか?」

「そうなんですかね?偶々巡り合っただけで、自分ではさほど気にしてはいませんが」


 創薬できる感性と技能を持っているからですかね、良い所を突いて来ますね。それを国政に向ければ国王様でも行けるんじゃないんですかこの人。

 

「ミーちゃんは、ある日突然と言う訳ではなくて、見て聞いて試して、一つずつ解決した結果が馬車になるとかありますもの。日々の積み重ねが大事であることも教えてくれますわよ」

「そうか、戻ったら父上と相談してみるか。今一度政治の現状を学ばねばならんな」

「あらお兄様。初めてではありませんか?薬学以外に興味を示すなんて」

「うっ、そうだな。とは言え魔法と魔道具以外に目がいかぬ妹に言われたくはないぞ」

「似たもの兄妹ですね」

「ぐっ、ハッハッハ。そうだな、いやいろいろ勉強になった感謝する」

「どういたしまして、お役に立てましたらなにより」


4. 闇ちゃんと魔石


 あれからお兄さんは、リア姉さんから魔力増強の手ほどきを受けておりまして、鍛錬の日々。魔力制御の向上に努めております。私は私で『そう言えば、闇の刻印魔石を作っていなかったなぁ』と言う事で闇の魔石を調べる事にしました。


「ソリャッ!」


 私の鞄に住みついている闇の子には名前がありません。本人が『いらない』と言うのでつけていないのですけど、とりあえず【闇ちゃん】と呼んではおりますが、普段寝ているのにちゃんと効果は現れるようです。不思議な子ですね。今日はいつも使っている水晶から切り出した板に精霊印を刻んでみました。二重丸で、内側の円が塗りつぶされている感じ。ガラスに刻むと内側がすりガラス状になります。表面ではなく少し内側に刻印されるのが、精霊印らしい感じがするんですよね、内部なのでレーザー彫刻なんかを使わない限りたぶん人には作れません。恐らくですが、この物質の内部への刻印と言う事で、長い間人には無理と言う事になっていたんだと思います。


 さて、闇の鉱物魔石なんですけど、総当たり方式しか思いつきませんので、取っ替え引っ替え重ねるわけですよ。そうしましたらですね、光は無反応でしたけど、今度も『土』が反応しました。闇から土へ魔力を流せます。今度は魔力が発生するのではなくて、流れるんです。土から闇へは魔力が流れません。一方通行と言う事です。間に白を挟むでしょ、そうすると白から流れる魔力量を変えた時に、闇から土へ流れる量が変わります。なんとなくPNP型トランジスタに似ていませんか?土がコレクタ(C)とするでしょ、闇がエミッタ(E)で、白がベース(B)と言う事です。光と土は陽光発魔能力だけだと思っていたんですけど、外部から光を当てなければ魔力の流れを制御できる事もわかりました。こちらはNPN型で、光がコレクタっぽかったです。地球のトランジスタは、PNP型とかNPN型とか言ってCとEが同じ材質で出来ているんですけど、刻印魔石は両端が異なっていないと動きませんでした。


5. 光学ガラス


 5[㍉]と10[㍉]の魔石を用意して、リア姉さんとエッちゃんそれとアッセさん(忘れていたけど『マヨネ酢』さんです)の3人に刻印してもらいました。


「どう?できそうかな」

「「「10[㍉]だけですね」」」


 うむ、以前精霊が言っていた通りですね。石が小さいと精霊印を入れられないというのも同じでした。拡大鏡を通すと5[㍉]まで行けるのも同じ。5[㍉]のは耳栓に使っているものです。厚みはたぶん0.3[㍉]位。あまり薄いと入りません。


「拡大鏡を通すと刻印対象を小さくできるのは面白いですね」

「できればもっと小さくしたいんだけどねぇ、今の拡大鏡だと水板(【ガラス】)の純度的にこれで一杯なんだー」

「ミーちゃん、純度って?」

「今のはまだ少し曇りとかあるでしょ?もっと沢山の光を通すには、ただの水板(【ガラス】)じゃなくて、ものすごく透き通って綺麗な光用水板(【光学ガラス】)が要るんだよねぇ」

「これでもすごいんですけど、これ以上って事ですか?僕は思いつきませんねぇ」

「綺麗にするって事は、余計な物を取り除くって事かな~」

「そういう事だねぇーって…そりゃそうだ。そういう事じゃんね、ありがとう」

「なんだかわからないけど、何か気がついたようでなにより」


 ハッハッハ。なんてことでしょう。この世には魔法があるではないですか。さんざん使ってきたのにね、ウィスキーだって作ったのにね、アタシぁアホだねぇ。


〔エル君、水板(【ガラス】)の主成分以外を取り除くってできるかな〕

〔溶かした水板(【ガラス】)からならできると思うぞ〕

〔坩堝の底に溜まる感じでいいかな、よしやってみよう〕


 ということで、皆を下げて坩堝に入れたガラスを加熱。僅かに残る不純物を底に追いやって、出来ましたのが光学ガラス。泡立ちもなく超透明。


「できたぁー」

「本当に無色透明ですね。光用途にはここまで透明にしないといけないのですね」

「おぉ、これはすごい」

「これが光用水板(【光学ガラス】)って事?」

「うん、たぶん出来たと思う。エッちゃんのお陰で気づけたよ」

「どういたしまして。それで、どうすればできるの?」

 

 泥水を作って沈殿させ、それでも残る不純物たる浮遊土を底に沈める様を見せてみました所、皆さん無事光学ガラス作成に成功。倍率を上げた拡大鏡で2ミリ立方の刻印魔石を作ることが出来ました。めでたい!


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