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(09-14)深森の廃村(隣王国)

(09-14)深森の廃村(隣王国)


 酷いことに、調査団が引き上げてしまいまして、そんなに予算が少なかったのかな、証拠物件調査なんて数年にも及ぶんじゃないのかね?誰もいなくなったので、教会区に来てみたら、大聖堂はもぬけの殻、証拠品の押収と言えば聞こえは良いけど、まるで空き巣そのものだね。内部はあちこち壊されて、図書棟は手を付けられるでもなく放置。何をしているんでしょうか。宝物殿と思われた所もすっからかん。完璧に空き巣だわ。国家代表でしょ?倫理も何も無いね。


 それで、各国内の真教者にお触れが出まして『直ちに帰国し、再建せよ。但し国家とは認めず。帰国途上の真教徒に手出しは無用』だそうです。帰らないと袋叩きになりますよって事ですね。泣けてくるねの辺境村村娘です。こんにちは。

 

1. 王国が来る


 後から知ったのですけど、この頃すでに王国は、旧旧街道の川渡りをしていたらしいです。結構な人数でしたからね、川船でなんて事をせず、なんと架橋工事をしていたみたいです。旧旧街道は渡しの船だったのですが、それ以前には橋を掛けるべく頑張っていたそうなんです。その当時の管理放棄地は、まだどちらの土地でもなく未開発区域。早いものがちだったわけですね。王国からは、上流部ですら200[㍍]の河幅。帝国側からは、河口でも100[㍍]の川幅。どちらが先に着くかなんぞ明らかで、帝国の勝ち。めでたく旧東部辺境伯のご誕生。ただ、王国側の架橋も頓挫したわけではなくて、未完成とは言え、橋脚の基礎は出来ていたようです。


 では、どうやって架橋をしたのかと言えば、橋桁に加工した木材を筏にして、それに大岩から切り出した基礎石を搭載して上流から流し、筏が川底に着いた地点で、基礎石が勢いで筏から離れ着底すると言う、素晴らしい荒業。そのまま筏で橋を組み上げると言うどこかの藤吉さんみたいな事をやってのけたそうです。それでも残念ながら一歩及ばず。帝国の土地になってしまいました。当然、そうなったら、橋は破壊するしかないのですけどね、基礎石は残ったままでした。

 

 どうやら、その基礎石を使って、架橋したらしいです。帝国に知られずに。まぁ、帝国だって、いろいろやっていたのですから、新街道周辺しか見回る事ができなかったみたいですけどね。

 

 ということで、調査団が引き上げるまで集合を続け、引き上げ切った所で、こっそりと大聖堂へ進軍を開始。同時にこっちへ兵を進めたわけですね、困った人達だこと。その廃村征伐隊が今来ています。朝っぱらからご苦労さまです。

 

「我が名は、ルマンド。ブルボニア王国第一王子である。此度不法に居住する賊の征伐を命ぜられたものである」

「あ…馬鹿が来た。こりゃ何も知らされていないね」

「まあ、そうだろうね。お姫さん達も居ると判っていれば来ないさね」

「我らの調べによれば、我が国に伝わりし農作手法において、その内容へ匠に欺瞞を施し、我が国の農作に甚大なる被害を(もたら)した由、その出処は本集落であると言う事なり。よってこれなるを許す事能わず」

 

 何を真顔で愚にもつかぬ事を言っているんでしょう?言われた事を鵜呑みにしている訳じゃないよね…しているな。

 

「あーあー、只今拡声魔法の試験中。なーにを勝手にほざいていますかね。どうせ聞く耳なんぞお持ちではないでしょうが、とりあえず。『出処がここ』ですか、真に受けたんですかね?帝国に手法が出回ったのが2年前。ここに勝手に住み着いたのが、3年前。王国が手に入れたのは4年前のはずですが。その農作手法とやらですが、板書ではりませんでしたかね。とぉーっても見えにくいのですが、板の四隅に左上から順に、『○✕□△』の記号が振られていませんでしたか?」

「な、なぜ其れをっ!小娘なんぞが知っている。さては盗み出したか。みずから白状するとは愚者を通り越しておるでは無いか、所詮下賤の者と言うものであろう」

「だから時期が違うでしょうが。盗み出すって、またどうやって。なぜ知っているかと言えば、その農法を書いたのアタシだし」

「さらに愚にもつかぬことを言い出すか、あれほどの代物をただの小娘が書けようはずもなく、言い逃れも甚だしい」

「あ、そうですか。お好きにどうぞ。ではこちらから勝手に推測させて頂きますね、農作に甚大な被害と言う事ですが、それは最後に書いた『国立の農業試験場を設立し、森の土に代わる物を作り出すこと』を実行をしなかったと見てよろしいですね。その結果、おバカな者達が、多ければ収穫も上がるだろうと土を取り尽くし、森が死に絶えたと。その為に先の大雨を森が受け止められず、川が溢れた水害により畑地が壊滅したと言う所ですかね、自業自得って言うんですよ、それ」

「え~い、黙っていれば、適当な事を!森が水害を防ぐなど戯言も甚だしい。これ以上の醜態をさらす前に、大人しく成敗されるが良い」

「醜態はそちらなのですけど。今お帰りにならないと、大変な事になりますが、宜しいのでしょうか?」

「黙れと言っておる」

「あーはいはい、もう良いです。さて、貴方方が今立って荒らしている所は麦畑なのですよ、人が丹精込めて育てているんですよ。それを踏みにじっているんですね。ということで、生きては帰しません。では先に言っておきますね、さようなら大将さん」

「麦だと!また怪しげなことを。ただの草ではないか!そもそも麦の季節ではあるまいに。交渉も何も無い!防盾隊、魔道士隊前へーっ!」

 

 おやま、魔法の到達限界を知っているんでしょうね、魔法が届かないはずの所へ整列。およそ200[㍍]って所ですかね。だからそこは秋麦の畑だってば。などと思っている内に、8人一組で何組かが詠唱を始めました。すげぇ文言も音程も全部揃っている。

 

「うーん、なんだろう?あれ。あっ!もしかして。エッちゃん、マヨネ酢さん。魔力盾!二重で」

「「はいっ!」」

 

 そこへ飛んでくる高速大火弾。とは言え、二人の障壁破壊には至らず。残念。

 

「おぉ、間に合ったぁー。森で火弾なぞ使うなよ。自分も焼けちゃうよ?」

「凄いねぇ、あそこから届くんだ」

「なぜですか、魔法なんて50[㍍]位しか飛ばないですよね」

「あれでしょ、斉唱のせいじゃないかな。一斉詠唱を同調させると、あんな事もできるんだね。呪文の詠唱ってのも馬鹿にできないね」

「「「あっ!なるほどー」」」

「あれ?リア姉さんも知らなかった?」

「そうですね、試した事もありませんでした」

「やっぱり、軍事となると秘策があるもんだねぇ。これで知られちゃったけど」

「すげぇな。あいつらよく思いつくな。普通なら、今ので前衛壊滅だよな」

「そうだねえ。ほんで、これで吶喊しかなくなったかな」


 という事で、煙も晴れましたので、反撃です。当たれっ!

 

 ズッダーン

 ブシャッ!

 

 ほら、大変な事になった。300[㍍]なら当たりますね。あって良かった飛び道具。

 

「王子ぃー、なんと!如何なる術か、化け物が。皆下がれ、撤退だ」

「あれ?撤退するの?次に偉い人が出てきて、継戦するんじゃないの?」

「いや、そんな事は無いぞ。命令する者がいなくなれば、どうにもならないからな」

「そうなの?せっかくお金使ってお出かけしてきたのに、総崩れとは勿体ない」

 

 あっちも、こっちも。どいつも、こいつも。自分達の利しか考えていない。所詮は豪族上がりの集団ということですかねえ、ちゃんと試験をしろ、基礎研究は国がしろと書いたのになあ、徴税の人から伝わらなかったわけではあるまいに、お金を出すのを惜しんだ結果ですからね、恨まないでね。王国には何もしない予定だったのですけど、城の一つも貰う事にするか。


「面倒な事をしてくれるなぁ、真面目にやれば倍程度のご飯は食べられるのに」

「そうだな、俺等の親父の所でも2年越しだけどよ、倍になったそうだぞ」

「でしょ、まああっちは最初のだから、肥料までは書いてはいないんだけどね、それくらい自分たちで研究しろっての」

「はっはっは。それで、あそこで倒れている奴はどうするよ」

「しょーがない、あれ持って行って、あっちのお城と丸ごと交換して貰うか。ちょっと行ってくるね、エッちゃん、後宜しく」

「は~い、行ってらっしゃ~い」

 

 言葉は軽く、気は重い。


2. 空からごめんよ


 船を使うまでもなく、こんなのは単身乗り込みで可!


「ごめんくださーい」

「誰か!名を名乗れ」

「ミールと言います。えーと、この人に襲われたんで返り討ちにしました。それでですね、この人に命じた方に会わせて頂きたいのですけど」

 

 ゴロンと出したのは、王子様。

 

「こ…これはルマンド王子ではないかっ!ご報告ぅー」

「なんと!出合え、賊である!」

「いやいや、賊なのはこの人ですってば。あ、録画したもの見ます?」

「武器を捨てよ、抵抗はせずこの腕輪を嵌めよ」

「はい、どうぞ」

「なんだこれは、木の棒ではないか!武器をと言ったのだ」

「それしか持っていませんけど?あー、人の持ち物を堀に捨てないで下さいよ!」


 また、しょーもない消魔の腕輪ですよ、効かないっての。鞄は?武器じゃないですか?そうですか、無用心ですね。一刻ほど待たされて、眼の前にある王城へご案内。謁見の場かな?こういうのは時間がかかりますよね、人集めでもしているんですかね。

 

「国王様、第二王子様、宰相様、お入りになられます」

「皆のもの、楽にして良いぞ。只今より聴取を執り行う」

 

 へぇー、結構な人数を集めましたね、無駄に着飾っている宮廷貴族と思われる人達が向かって右。領地貴族らしき体格の人達が左に、体格的に人豚みたいな人もいますけど。

 

「そこの小娘!国王の御前である。傅かんか」

「えっ?敬意は表しますけど、アタシ臣下ではありませんので致しかねます」

(たわ)けが!傅けと言っておるだろうが」

 

 いきなり王様の前で襲ってこないで欲しいなぁ。とりあえず腕輪で剣を防ぎましてね、足を引っ掛け転がしてみました。謁見広間のお外へ。

 

「危ないですよ。国王様の前で、いきなり剣を抜いてはまずいのではないですかね」


 飾りも少ないし、血の気も多そうなので、騎士爵あたりの人かな。困った人が居るもんだねえ。

 

「良い、控えよ。これより、第一王子ルマンド殿の殺害について取り調べを行うものである。検死の結果は、魔法による殺害と断定された。よって、この者を極刑に処す。ひっ捕らえよ」


 取り調べ?発言もなく?これだけ人を集めておいてですかね?

 

「あのー、お恐れながら申し上げますとね、襲ってきたのは王子様でしたっけ?その人なんですけど。それと、あれ魔法では有りませんよ。どこをどう調べれば、魔法と断定できるんでしょうか」

「えーい、問答無用。もとより直言など許可しておらぬわ!何をしておるか!」

「取り調べじゃないんですか?裁判とか、そういうのじゃないんですかね?」

「宰相殿、近づけませぬ。見えぬ障壁があり、我らではどうにもなりません」

「何?消魔の腕輪が壊れてでもおるのか?魔法師団、捕らえよ」


 捕らえよって言ったじゃん、なんで礫弾の魔法を詠唱しているのさ、普通は死んじゃうんだよそれ。

 

「「「「消魔!」」」」

「「「「礫弾!」」」」

「だから、あの人は『捕らえよ』って言ったのに、なぜ殺そうとするかな。危ないな。命令を違えてはだめですよ、魔法の人」

「!!!」

「良いですか?初めに襲って来たのは、その人なんですってば。魔導国のお姫様も居るってのに、そこへ8人総出の大火弾を打つよう命じたのが、その人です。家の畑を荒らして、秋播きの麦を馬で踏みにじったのもその人!だから、早くそれを命じた人に会わせて下さい」

「直言お許し願いたい。宰相殿にお尋ねいたします。今しがたの『魔導国のお姫様』というのは、どういう事か、ご存知であったのか否か、ご返答を」

「い…いや、そのような事実は確認されてはおらぬ。虚言である」

「小娘、証拠はあるのか?」

「あのー、証拠と言ってもですね、録画したものか写真しかないですし、皆さんの現状では、理解し難いと思いますけど」

「良い、出してみよ」

「持ち物を全部取り上げておいて、出してみよとか、何を言っているんですかね」

 

 全く、度し難い。バカばっか。

 

「なるほど、これか。開かんぞ、どうなっておる」

「いちいち面倒ですねぇ、個人設定がされているに決まっているではないですか」

「個人設定?どこまでも戯言を。そんなものがあるわけがなかろう。早々に捕えよ」

「それは、魔力紋式所有者認証を貴方が知らないだけですよ」

「お待ち下さい、宰相殿。まだ見聞が終わっては、おりませぬぞ」

「ええい、煩い。ひっ捕らえよ。殺してもかまわん」


 茶番か?都合の悪いことがあるんでしょうかね、やけに急かしますよね。

  

「鞄を返して下さいよ、でなければ、証拠も何もお渡しできないでしょう。それと、早く成敗と称して殺害を命じた人に会わせて下さい」

 

 やっと鞄が返ってきたよ。まったく、いい加減にしてもらいたいものですね。

 

「皆のもの!静粛にせよ」

「っ!国王」

 

 お、すげぇ。一言で静かになった。拡声魔法が掛かっているね、よく響くなここ。

 

「ミールと言ったか、その方、申し開きがあれば言ってみよ」

「ですから、さっきから申し上げておりますよ。殺害を命じた人に会わせて下さい。そもそもあの地は、帝国及び王国の取り決めにより、両者の緩衝地帯として、管理放棄になっているはずです。という事はですね、国の庇護を必要としない、希望しない者は住み着いても違法ではありません。自国の都合で条約を勝手に破棄し、進軍し、さらには無実の先住者を抹殺しようとしたのは、王国でございましょ。その身勝手な行いを命じた人に会わせてください」

「会ってどうするのだ」

「それはもう、賠償していただきますよ。お城とかで」

「ここをか?明け渡せというのか?面白い事を言う」

「そんな面倒な事しませんよ、ちゃんと持って帰ります。お城を含む周辺施設一式」

「これは愉快だ。命じた者は目の前におるよ。できるものならやってみせよ」

「えっ、賠償して頂けるのですか?それなら早く仰って下さい。それでは、危険ですからここから退避して下さい」

「ふん、何かと思えば、逃げる算段だろう。国王、殺しても構いませんな」

「あ、良いです。別に逃げる訳じゃないんで、皆さんが危険になるだけですから。良いですね、賠償していただきますよ。宜しいですね」

「構わん、余興にもなろう、やってみせよ。これを証明書として持っているが良い」

「ありがとうございます」

 

 はい、たしかに譲渡証明書を頂きました。国王名で署名が入っておりますね。

 

「では、お言葉に従います。ホイッ!」

 

 いつも通りで、周辺施設全部を範囲に入れて、収納。ワタシは良いんですよ、ちゃんと防護していますから。そうでない人は知りませんからね。

 

「「「「ギャァーーーーーー」」」」

 

 ほら、危険でしょ。ここ地下3階なのは判っていますから、退避をお願いしたのに。謁見の間にいた人達全員下に行っちゃったよ。身体強化があれば、3階分程度なら、大丈夫でしょう。執務棟とか兵器庫とか近隣施設も同時にホイッ。

 

「確かに賠償して頂きました。こちら受取証となります。それでは、ごきげんよう」

 

 看板立てて、さようなら。あー面倒臭い人達だ。 


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