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(09-13)深森の廃村(防衛力)

(09-13)深森の廃村(防衛力)


 どこぞの小娘に、お城を賠償に持って行かれた帝国は『中立』、『討伐』、『超法規的措置(なかった事にしよう)適用』等など、意見ばらばらで紛糾していたらしいのですが、討伐組が温泉谷で千人の兵(叩き起こしたら逃げた)が返り討ちにあった事を知ると、超法規組に加わり、全体的には当分の間帝国皇城の再建に専念しそうです。小娘と侮り、欲をかくからですよ、知らんがなの辺境村村娘です。こんにちは。

 

1. 王国が焦げ臭い


 懸念があるとすれば、然程の被害ではないと言えど、出兵した兵士の殆どが帰らずとなった王国ですが、大聖堂調査隊と言う名目で、大部隊を送り込んでくるかもしれないと言う事ですかね。魔導国はそもそも遠くて、大規模な調査隊を送る余裕などないし、真教国から流れてくる難民をくい止めるので精一杯。帝国は再建中で金銭的余裕が無い。ならば他国の調査隊が引き上げ後に居座れば、放棄地を手に入れられる可能性が高い。条約っすか?そんなもん破る為にあるんですよ、ヨシフちゃんとか、チョビ髭さんみたいに。私には大義など思いつきませんが、どうも天候不良続きだったらしくて、水害とか出ている模様。ご飯が無い!援助なんぞある訳がない!ならば、食い扶持ない奴らを送り込んじまえって言う所ですかね。流石に、何万という腹減りさんにあげる食料は、この村にはございません。なまら面倒くせぇ。


2. 王国が来るかな?来たら嫌だな


 仮にですね、王国が居座って、帝国が涙を飲んで、臍を噛んで、断腸してここを諦めたとしますでしょ、王国はどうするかと言うと、ここへ来ますよねえ。全部自分の物にしたいよねぇ。じゃぁどうするべって事なんですよ。

 

 武器・兵器、とりわけ銃砲の類において、初期の燃料として使われていたらしい所の黒色火薬。まぁ、地球では花火用途くらいでしか見たことがなかったのではありますけど、その材料はと言えば、木炭、硫黄、硝酸カリウムと言う事になっております。さて、木炭と硫黄は良いとして、硝酸カリウム?見たことがない!さらには見てもどれが硝石なんだかわからないっ!よくラノベなんかだとヨモギとか、尿とかあるけど、そんなもん水に流しとるわ。あ!そうだ、鑑定。あれで分からんかね?エル君に聞いてみたんですよ。


〔硝酸カリウム?どんなものか知らんから判別できんぞ?〕


 そっすか。そうですね、そういう仕様だったね。


 じゃぁどないすれば良いかというと、ここで木炭は燃料そのもので、硫黄と硝酸カリウムは化学反応すると酸素が残り、それが酸化剤として機能するらしいです。すると酸素は木炭とくっついてガスが発生すると言う仕組みだった気がします。


 ということは、木炭粉(もしくは代替品(だいたいひん))を用意した所へ、酸素を発生し、シュボッ!と点火してあげれば、爆発してくれるのではなかろうかと言う気がするのであります。ちょろちょろ燃えれば燃焼だし、シュバッと短時間で燃えるのが爆発なのだから、出来る限り短時間で木炭を燃やせば良いんじゃないですかね。


 ほんでなぜに黒色火薬かと言うと、この世界には「身体強化」なる魔法が存在する訳ですよ。矢だろうと、槍だろうと頑強なる鎧を纏ったがごとくに跳ね返せる人がいるんですよ、私もそうです。それでですね、魔法とは想像力なんですけど、履行者が経験した事のない事象は、おそらく想像できないのでは無いかと思うんです。


 今の世の中、この先仮に戦になった時に(やじり)対応程度の身体強化では防げない、想像すらしない、あるいはできない代物が必要ではないかと考えてみました。要するに『こんなこともあろうかと』とか『備えあれば憂いなし』とかですね。

 

 ここで、相手が想像できないであろう物体と言うので思いついたのが銃弾、もしくは砲弾。目視できない場所から、目にも止まらぬ速さで近づき、速度により増したお仕事力で対象物を破壊するあれでございます。


 しかも魔法と言うのは、有効距離が精々50[㍍]程度。数十[㍍]先どころか、1[㎞]先から飛んでくる6.5[㍉]とか、5.56[㍉]だの12.7[㍉]の金属塊なんぞ想像すらできないと思われます。『気がついたらお腹に穴が開いていた』とか言うレベルになるんじゃなかろうか。できれば砲弾として88[㍉]とか、128[㍉]なんてのをドバーンと送り届けて差し上げたいのですけれど、黒色火薬の代替品でそれができるのかは疑わしい。ひとまずは小さい弾で試作しましょう。


「木炭粉」よし。


「風魔石」よし。

 

 これは酸素発生用の魔石で、既に粉になっています。この世界の仕様で、一度用途を固定したならば、粉末にしても魔力さえ加えれば作動するのであります。感光板で気が付きました。一粒毎の仕事量は、粒度に依るのだけれど、量が纏まればそれなりの仕事をしてくれます。しっかりと木炭と混ぜ合わせます。


「火魔石」よし。

 

 着火用の魔石ですね。雷管の代わりに弾底に取り付けて、魔力を通せば着火するという予定。

 

「蓄魔石」よし。

 

 一連の作業の元となる原動力供給源です。魔力持ちであれば、引き金を通して雷管に流せば完了となるはずだけれど、そうでなければ、銃床にでも設置して魔導線を介して流すことになると思われます。今回の実験では鉄塊の先に取り付けました。


 とりあえず発火試験から。そもそも小銃本体はないし、薬室というか薬莢もない。金床に少し穴を開けて材料を積み重ねてから、上からつるした鉄塊を落とすことで着火。できれば爆発してくれれば目的達成となります。金床の周りに櫓を組んで、鉄塊をつるした縄を手元に持ってきて、手を離せば火が付く予定。えっ?金床が小さく見える?縄が長くないかって?気にしてはいけません。びびっている訳ではないですよ、御安全にするのは世の理と言う物ですよ。

 

「コホウノアンゼヲカクニ」合図と確認は大事であります。

「3・2・1、点火!」

「ポシュゥゥ〜ゥ」


 まぁ、最初から旨くいくわけないやね。とりあえず火はついたので大筋は宜しかろうと言うことで。蓄魔量の不足やら、火魔石の着火能力不足解消、混合比率の調整やら、それなりにがんばった結果、なんとか12.7ミリ弾相当の50[㌘]程度を押し出す威力は確保できました。


 もうひとつ。木炭火薬は、その燃焼時に煙が出ます。視界が妨げられる。なので、魔石の組み合わせだけでなんとかならんかねと試した結果、惨敗。ファンタジーオンリーでは旨くいかないと言う結果となりました。薬莢相当の容積内で、射出圧力を作り出せるだけの魔導具を、作れなかったというだけですが、残念です。それ以外には、無煙火薬?ニトロセルロース?そんなの、知らんもん。下瀬さーん、下瀬はいずこ?


3. 小銃もどき


 自己防衛用とは言え、兵器とかあまり考えたくないよねえ、やっぱ対人は考えたくないものではあります。人には任せられないよねぇ。


 さて次は本体、すなわち銃です。構造?わからんよそんなもん。あれも知らん、これも知らぬ。知らぬ知らぬは知識が足らぬ。全く持ってその通り。仕方がないじゃんよ、ミリ系オタでもない一般人だったんだぞ、いばるぞ胸張っちゃうぞ、ないけどなっ!


 銃というのは、銃身という長い筒があって、その片方に弾を込め、なんとかして薬室内(薬莢)で火薬を爆発させて、薬莢の先に込められた弾丸を放出すれば良いだけのような気がします。言うのは簡単だけれど、まず銃身にあたる丈夫な金属管が必要でしょ、魔鉄の丸棒にドリルを通せば、行けるかね。大量生産するでもないしね、エル君よろしく。ついでに溝入れておいて。


 あとは、あれですよ明治38年制定、所謂38銃。取手をガチャっと引いて、弾を込めて、取手を押し込んで、準備完了。引き金は、梃子と風魔石でポンプを動かし、着火魔石に充填した魔力で、弾底を叩いて上げれば宜しい。うーん、南部さーん、有坂さーん、引き金で撃鉄止める所を教えてえー。

 

 そんなこんなで、漸く50[㌘]位の重量物を1[㎞]先に送り届ける準備はできました。発射音を置き去りに出来ましたので、音速程度は出ているものと思われます。風魔石偉い。6.5[㍉]だと重さは10[㌘]程度なので、なんとかなるでしょ。

 

 ついでに、着火魔石の着発信管とか、蒸気圧式迫撃砲とか作っておきました。使わない事を祈りましょう。

 

「うはははは、バリスタでもなんでも来てみろやぁー」

 

 あっ!済みません、来なくていいです。平和が一番。


4. グチグチしてみよう


 とりあえず人のせいにしておきますね、『精霊真教』が悪い。全部悪い。ろくな事をしていなかったのが、悪い。よし、気が済んだ。

 

 ここ温泉湧いているし、変な人も危ない人も来ないし。魔獣風呂はあるし。あ、魔獣風呂って言えば、マヨネ酢さんが最初に入った時もやっぱり驚いていました。まあ直ぐに慣れちゃったんですけどね。一日あれば、街に出られるでしょ、ガンさん達は、2日って言っていましたけど。動きたくねえ。引っ越したくねぇ。王国来るなよお。面倒くせぇ。

 

 精霊真教ですけどね、大聖堂に隣接する資料棟に帳簿がありましたんで、見てみると、同じようなのが地下の禁書庫にあったりするんですよ。

 

 表の帳簿には

 

『腕輪・緑石(中)10 20金 セルゲイ男爵』

 

 とあるのですが、禁書庫の帳簿では、同じ日付で

 

『腕輪・魔石(中)10 20金 セルゲイ支店』

 

 となっていたりします。セルゲイというのは、帝国のとある貴族領にある街なので、たぶん蜥蜴さん家の隠れ家でもあるんでしょう。別に態々潰そうとは思いませんが、その内なにかの役に立つかも知れません。あ、そうそう禁書庫の書類、書籍なんかは全部手元へ持ってきました。天文観測結果がなぜ禁書庫にあったのかはわかりませんが、結構な精度で長年観測していて、歴の観念があったみたいですよ。一般には広めていないのにね、ずるいなぁ、こんなもん広めてもいいじゃんねえ。後は、算術やら、各種技術書ですよね、やっぱり土木・建築技術はそれなりに進んでいましてね、これらは複写しました。薬学なんかもあったりしましたので、婆ちゃんに贈呈。原本は、ちゃんと表の図書棟に移しておきました。調査団さんが活用し、一般に広めることを願います。まあ、ありえんな。

 

 要は、一応自分たちが先行して努力はしているんですよね、ちゃんと観察して、研究しているんだから。それを公開して真っ当な布教でもすればいいのに、実際はこれを元に、何も知らない一般人を(たぶら)かし、詐欺的行為でもって信者を獲得していたって事ですよ、最初に詐欺集団化したのは誰なんだろう、ひでぇ人達だねぇ。


5. 観光してみよう


 折角船があるし、空も飛べるしなので、全点検後の試運転でその辺をうろついてみました。大聖堂の調査隊も各国から派遣されたようで、何よりです。頑張ってね。

 

 それで、北の花畑に次いでお向かいの島に来てみた訳ですよ。崖と崖に崖、見事に崖ばかり。そう簡単には登れそうに有りません。

 

「これはまた、とんでもない島さね。崖が高くて登れそうもないさね」

「そうだなあ、こりゃ無理だぜ。そもそも普通の船は着けられねえわ」


 その島の森が、またすげえ。高さ20[㍍]は標準高みたいな木ばかりだと言うのに、その木位に頭をもたげる蛇が見えるんですよ。蛇、どれだけでかいのよ。

 

「あれなにかしら、大蛇?ですかしら」

「そうだねぇ、木の上にも頭を出しているから、廃村に来たのよりでかいよね」

「すごいな、あんなのも生息しているのか。普通じゃ住めそうにないねここ」

「表皮がすごいですよ、鱗が硬そうだし、魔力も纏っていますよね。討伐なんかできそうもないですよ、あれ」

 

 それでね、怪獣大戦争をやっているんですよ、大狼の軍勢が襲いかかっていましてね、その大蛇に。秋田新幹線『こまち』(約150[㍍])に3[㌧]トラックが向かっている感じ。いやはや、大スペクタクルですげえわ。見学していた限りでは引き分けていましたけど、こりゃロウタや、行きたがるんじゃない。

 

 外海に回ってみたら、外からは見えにくいんだけど、入江を見つけました。一見崖なんですけどね、『の』の字みたく海に平行に入り口があるんですよ。中は結構深そうな湾になっていて、その奥は広大な浜。それに続く陸の部分は、大草原。川も流れているし、広さ的には放棄地に近いです。幅約100[㎞]、奥行き300[㎞]位という感じですね、良い所じゃん。


「あ、ここ良くない?住めそうだよ」

「そうだな。大蛇が来なけりゃ、良い所だな」

「そうだね、良い所だね。大狼の軍勢が来なければ」

「あら、あの足。十脚ではないかしら」

「まぁ、あれが十脚と言う海獣ですか。初めてみましたけど、大きいですね」

「湾内にあんなのも居るのかよ、この島すげえな」


 うむ、良さげな土地がありましたし、有意義でございました。お姉さんの彼氏と言うか婚約者?駄々こねたので軽く鎮静剤打って引きずってきまして、どこかのAチームみたいでしょ。帰るまで起きてきません。

 

「それじゃ、観光終了。戻りまーす」


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