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(09-09)深森の廃村(船航走)

(09-09)深森の廃村(船航走)


 あれだけ暑かった日々が少し和らいで来ました。精霊会話盤も予定した数が出回り、それなりに対応できるようになったみたいで、魔導国組に帰国のお知らせが来ました。なぜか、3人共帰るのを渋っていますけど、何故でしょう。お家に帰れるのにね、辺境村村娘です。こんにちは。


1. 秋のハンジョさん


 収穫祭はあっさり終わり。取れ高に魔導国三人組が感心しています。あぁ、サーワ姉さん達は、ハンジョさんが回収した後だったから、見ていないのか。魔導国での調査も進んでいるようだし、近いうちに状況も変わるんじゃないでしょうか。

 

「麦は、相変わらずですな。辺境伯様の所も徐々にではありますが、増えているようですぞ。小麦の栽培面積を減らして、甜菜栽培を増やし、砂糖の方も順調に伸びておりますし、今のところ何の問題も起きてはおりませんな」

「それは良かったです。欲が絡むと、アタシではどうしようもありませんから」

「さて、お嬢様方に帰国通知がきた訳ですが、いかが致しましょう」

「私としては、もうしばらくご厄介になりたかったのですが、通知というより命令に近いですからね、理由は分かりませんが、一度帰らねばならないでしょう」

「そうですね、私もようやく中級が作れるようになった所ですのに、帰らねばならないというのは残念です」

「でも、楽しかったですよ、学院では教わらなかった事を沢山教えていただきましたし、何故かお薬も作れるようになりましたし」

「あれ?お姉さんにも招待状が来ているんでしょ?なんで」

「さぁ、それが全く分かりませんの。あちらに到着する頃には、また魔道具見本市が開催されるので、会場へ来てくれというのも分かりませんね」

「お父さんは?」

「それが、両親共に分からないと言っておりますわね。今回の御招待は、何か可笑しい気がしますわ」

「ふーん、真教がらみかなあ?いや、そうじゃないな、なんか企んでいるかな」

「企んでいる?何をかしら」

「嫁!」

「は?お相手をご紹介して頂けるとかかしら、うーん、それでしたら、お母様も招待されると思いますわよ。違うと思いますけど」

「違うかなぁー。それじゃ、行ってみないと分からないね。ということで、アタシはエッちゃんと別の目的がありますので、丁度よいので、港町へは一緒に行きますね」


 そうなんですよ。船をね、浮かべて見ようかなって。できたら動けば万々歳。ということで、3人のお別れ会を開きまして、出発。

 

「ロウタ達は、今回お留守番ね。まだ危ないからね。婆ちゃん達を守っていてね」

「「オウ」」

「判っているのかね?最近だんだん返事が的確になって来たような気がするな」

「そうだよねぇ、不思議な子達だよね」

 

 それじゃ、行ってきます。


2. 魔導国4回目

 

「あれ?あ、そうか。ハンジョさん、交易はしないのか」

「そうですな、息子が既に交易会場に向かっておる途中ですな。あちらは買い取りをしながらですので、向こうの国境あたりで追いつくのではないですかな」

「なるほど」

「そういえば、水板精錬石の採掘が始まったとかで、あの近くにあった辺境伯様の街は賑わっているらしいですぞ」

「あ、それは良いですね。何か珍しいものが売っているといいけどな。もっと綺麗になった水板があるかなぁ。あるといいな」

「そうですな、ただ人は増えているはずですからな、気をつけませんと」

「あぁ、そうか。ミーちゃん、変な人がいないといいね」

「そうだね、面倒はゴメンだね」

「そうですわね、すんなり通りたいですよね」

 

 ふと思いました。やっべぇ、フラグ立てちまったべか。最も、なるようにしかなりませんがね。そうそう、今回の馬車はですね、箱が船で使った合板製なんですよ。んで、上が軽くなったものだから車台は梯子型の黒鉄。弓状のサスペンションやら、井戸の喞筒(ポンプ)を改良したショックアブソーバで4輪独立懸架。車軸を締めるバンドブレーキ。ベアリング付きの中空蛇タイヤだの、豪華機能満載。この世界唯一の馬車です。見かけは全然変わりませんけど。ようやく工房意識が変わってきましてね、いっせーので取り掛かる事ができるようになって、それなりに手際よく事が運ぶようになってくれました。

 

「ミーちゃん、この馬車すごいですね。殆ど揺れを感じませんよ」

「でしょ?いままで作ってきた機能をつぎ込んでもらいましたからね、唯一無二」

「家にも導入したいですね、どうかしら」

「ソバーニさんに丸投げします?」

「あの方、過労で倒れませんかな」

「するかな?魔導具じゃないから、たぶん大丈夫。特級回復薬を進呈しよう」

「はっはっは。それも相談致しましょう」

「そうですね。お願いします」

 

 エッちゃんと二人で馭者をしているんですけどね、普通に話せているでしょ?馭者席と中とは、伝声管で繋がっているんですよ。ほら、よく昔の船についている真鍮の管。あれですね。風魔石付きなので、普通の音量でも、ひそひそ話すらもできるのです。東部辺境伯様、お姉さんのお父様の事ですけど、領主専用馬車も、この馬車と同様の機能が付くよう鍛冶屋さんとか、木工屋さんとか、頑張っている最中。蒸気機関は、もうちょっと熟すまで待ってね。小型のはね、まだ耐久力が低いのよ。あと、差動歯車。どうにもなりませんです。


3. 港町到着

 

 とりあえず、迎賓館でお別れして、私とエッちゃんは、お宿へ。港湾管理局さんのおすすめですから、大丈夫な場所。それでね、管理局でお尋ねしました所、新しい船の登録はしていないそうです。ありゃなんでっていうと、魔導国では造船していない。造船国でなければ登録できないそうで、魔導国には通知が来るだけ。ほんでもって、登録がないと港湾利用ができないそうで、あれまぁ。最初は?と言うと、港外に停船して、管理局の審査を受けるんだとか、その時に必要なのが登録証。なんてこった、結構不平等っぽい気がする。

 

「ミーちゃん、どうしよう。船出せないね」

「そうだねぇ、舟で沖まで行く?」

「じゃぁ波がない日じゃないとだめだね」

「そうだね、待つかあ」

「それしかないよね」


 仕方がないですよね、凪の日になるまで待つことにしました。

 

4. 本日は天気晴朗にして風もなければ波もなし

 

 来ました、ベタ凪の日。河より波がないですよ、これは好都合。いざ出港。港の防波堤のさらに先からこっそりとですけど。とりあえず、港方向がわかり、管理局からは見えなくなる所まで出てみました。よし、船を出そう。

 

「そぉれっと!よし、浮いたぁー」

「わ~、パチパチパチ」

 

 まずは、浮かないとどうにもなりませんものね、浮いて良かった。舟をしまって、乗船しましょう。

 

「やっぱり、船台のときより船が上がっているね」

「どうして?同じ水じゃないの?」

「海水の方が、塩が混じっている分がね、少し重いんだよね」

「へぇ、そういうものなんだ。それで船の方が軽くなるの?」

「そう、その分は、少し搭載できる荷物を増やせるんだけどね、まあ貨物船じゃないしね、良いか。注水!適当」

「あ、下がった下がった。ほうほう、少し安定するね」


 なんとか浮きました。さぁ、火入れだ。とは言っても昔の蒸気機関と違って、ほぼ内燃機関並ですけど。魔導線のスイッチを入れるだけ。

 

「うん、流されるでもなく止まっているね。よしよし」

「ミーちゃん、あれなんだろう?」


 指差す先は、遥か彼方の見張り台。やべ!船が来た。えっ?船?風無いよ。その割には見えてきた帆は満帆。あら不思議…って魔法か。風の魔法で進めるのか。

 

「船だ!見つかっちゃうね」

「隠す?」

「そうだねぇ、まだ見つかるには早いよね。急げぇ」

「は~い」


5. 船団

 

 見学していると、船団が近づいてきました。あれっ?よく見るとなにかに追われている感じ?遠視を使うと、あれまあ、なんと大海蛇。あれから逃げているらしかったです。こんな近海にいるのかよ!あっ、まさか十脚とか倒したから、こっちに来たんじゃないだろうね、そうすると御免なさいな気がしなくもない。

 

「ミーちゃん、大蛇だ!」

「あれから逃げているっぽい?」

「あ、楼閣を見て。カッフェさんじゃない?あれ」

「えっ、本当だ。カッフェさん達だ」

「どうする?見捨てたら夢見が悪いかも知れないよ」

「そうだねぇ、助太刀するかあ」

 

 さて、そう言う事なら、今度は海蛇を観察する事にしましょう。海に出ている背中の部分は、遠目では測れませんが、船と比べてだいたい20[㍍]位。それが二山だから、全長50[㍍]以上って事ですな。表皮はワニかよ。すんごい硬そうな皮で、抗魔機能付きの分厚い鱗。大狼以上って事ですかね。背びれも硬そうで、よくもまぁこんな生き物が生まれたもんだ。あ、水弾吐いた。うわっ!でかい弾。おお、すごい躱したよ。魔法師さんすげえな。帆船で躱すって相当だね。

 

「さて、さて。硬そうだねぇ、外からじゃ無理そうだなぁ、どうするかな。水弾打たせて、お口にポイかな」

「この舟保つかな?」

「そうだねぇ、まぁ良いか。エッちゃん、全力で動かして。アタシが、攻撃するね」

「了解。それじゃ行くよ~」

「はいよー」

 

 海蛇に接近しながら魔力を放射。やっぱりこいつもこっちに来るね。大型の魔獣というのは、魔力が好きなのかね。魔力持ちを食べると、良い事でもあるんでしょうか。


「来た来たぁ。エッちゃん、左!船団から離そう」

「は~い」

「うひゃぁー、でっかぁい。蛇は3匹目だけど、流石海物、でかいわ」

「海の方が大きくなるの?」

「海だと浮くだけだからね、潰れない分大きく育つらしいよ」

「なるほど~。左旋回から、直進するよ~」

「はいよー。水弾来い!良し!口開けろー」

 

 開けた口先に、水弾の魔力が集まり始めた所へ、消魔弾。空間を広げて魔力を拡散させるジュンちゃんの魔法ですけどね。相手が驚いている所へ、口を閉じる前に魔力刃を大盤振る舞いして差し上げます。

 

「そぉれ、ドバッとな」

「あ、突き抜けた。内側からだとやっぱり弱いね」

「良かった。内側もあの皮みたいだったら、危なかったね」

「だよねぇ。抗魔鎧はやっかいだものね」

「ねぇ、よっと回収。あれ、入った」


 こんな感じでね、偶にそのまま入る事もあるんですよね。普通はね、寄生虫とか病原菌とかいるわけですよ。大腸でしたっけ沢山お住まいでございましょ、だからそのままでは直後には入らないのですけどね、時々こいうのがいます。基準はなんだろう、さっぱり判りません。それが判れば、もっと簡単にポポイッと入れられるかも知れないのに残念です。


「あ、船団が速度落とした。乗っけてもらえるかな」

「そうだね。接舷しま~す」

 

 両腕をパタパタさせて、近づきます。こっちに気づいたみたい。網が降ろされましたので、舟を片付けて、ヨジヨジ。

 

「カッフェさん、こんにちは」

「あんた達だったのかい。この前の海獣といい、大したもんだね。いや、お陰で助かった。また沈められる所だったよ」

「こんな近海にいるんですね、びっくりしました」

「いやね、結構遠海から逃げてきたんだけどね、追いつかれちまって、観念する所だったんだよ。本当に助かった」

「そう言えば、名前を言っていなかったような、ミールです」

「エステルです」

「そうだね、私はモラッコ共和国のマラウィって言うの。いや、助かったよ」

「船団長、この子等は?」

「ほら、バナナちゃんだよ。ってあんたは知らないのか」

「いや、話は聞いていますよ。チョコレトを持ってきてくれた子達でしょ?」

「チョコレト?」

「そうさ、あんたがくれた、カッカウ磨った奴。あれから作ったのさ」

「あ、あれですか。できたんだ」

「そうそう、あとで食べて見ておくれよ」

「ありがとうございます」

「船長のイルガだ。感謝する」

「いえ、被害はありませんでしたか」

「うむ、今回は魔法師を連れてきたからな、ギリギリでなんとかなった。最も、君達がいなかったら、何かしら出ていただろうけどな。よし、カッフェとチョコレトで一休みするか。食していってくれ。皆もご苦労だった」

「「「「おーーーー」」」」

 

 わっ、歓声がすごいな。そらまぁ、そうか。ほんじゃご相伴に預かりましょう。チョコレトかぁ、どんな味になっただろ。


6. チョコレト


「わっ、わっ。ミーちゃん、これ甘くて美味しい。カッカウから作られているなんて信じられない」

「そうだねぇ、これは良いね。なにかの乳まで入っていて、よく出来ているね。エッちゃん、そんなに食べると、元は薬だって事忘れてない?酔うぞお」

「あっはっはっは。気に入ってもらえて良かった、良かった」

 

 よくもまあ、すり潰したカッカウから、チョコレートまで漕ぎ着けたものです。

 

「こちらもどうぞ、ご賞味下さい。チョコレト・バナナでございます」


 料理長さんが持ってきてくれて、眼の前に出されたのは、チョコ・バナナ。

 

「あっ!これもすごく美味しくなってる」

「本当だ。アタシのいい加減な作り方じゃないね、本格的にお菓子になっているね」

「そうだろ?発案者に言われると、嬉しいね」

「発案者と言うほどじゃありませんけどね」

「いや、いや。最初の取っ掛かりというのは実に重要ですぞ。私はこれが好きでね」

「甘党?船乗りさんが?」

「はっはっは。似合わんかね?」

「あ、ごめんなさい。なんか、船乗りさん=お酒好きだったもので」

「そうだな、残念な事に私は飲めないんだよ。そのかわり船団長はザルだがね」

「ちょ、そこまで言う事はないだろう」

「「あはははは」」

 

7. ゴムでございます


「そうだ、お返しと言ってはなんですけど、こちらをご覧下さい」

「なんだい?その飴色の紙?紙じゃないね、見せておくれ」

 

 ビョーンと引っ張って見せてみました。

 

「ゴームです。はい、手にとって見て下さい」

「なんと!ゴームからこんなものが作れるのかい」

「はい、なんとか物にしてみました」

「船団長、これはまた、新しい代物ですな」

「そうですね、船ですと水密が必要な所とかに使えます。目的は下着のズレ防止だったんですけどね」

「なるほど、これはすごいですな」

「これ戦略物資だよ、貰っちまって良いのかい?」

「はい、どうぞ。こちらでは木を育てられませんし、運んでくる途中でだめになるかもしれないでしょ、だったら加工品を持ってきて貰うほうが良いじゃないですか」

「そうかい、ゴームの樹はね、私らの国より更に南で育てられているんだ。これを持っていったら、喜ばれるには違いないけどね、うーん、私の一存じゃ決められないけど、そのうち招待されるかもしれないね、そうなっても良いかい?」

「「はい」」

「そうかい、待っていておくれ」

「「楽しみにしていますね」」


8. 再挑戦


 見本市で商売するカッフェさんことマラウィさんと分かれて、再びベタ凪が来ました。


「天気は晴朗、波はなし。今日こそは船を走らせるぞぉ」

「巧く動くといいね」

「うん、それじゃいっきまーす」


 一度浮いてはいますし、微速とは言え動いてもいますので、壊れなければなんとかなるでしょう。

 

「おぉ、滑り出しは快調」

「すごい、すごい。波を蹴っているようだね」

「よぉし、第二形態にするよー」

「第二形態?形が変わるの?」

「うん、動力はまだないから、格好だけだけどね。いくよー、高翼式安定板展開」

「わっわっ、甲板が動いた!翼みたいなのが開いた!何これ」

「翼。これで飛ぶわけじゃないけどね」

「えっ!まさか空を飛べるようになるとか?」

「そう、そのまさかの予定」

「すっごぉーい、楽しみぃ」

「待ってて」

「うん」

 

 その後は、操舵訓練をして、切りすぎて転けそうになったりしながら船上生活。一応予定した機能はすべて動く事を確認して、舟で戻りました。そうそう、あの海蛇も魔石持ちでしてね、図体に比例して大きいの何の。お陰で陸蛇魔石と比べて倍近い大きさの魔石が手に入りました。綺麗に丸めて、所蔵しておきました。ふっふっふ、空を飛べそうな気がします。


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