(09-07)深森の廃村(船動力)
(09-07)深森の廃村(船動力)
秋播きの麦が、次の季節には漸く全面に播ける位に取れるようになりました。豪雪にもめげずよく育ったと思います。夏の盛りですが、この辺りはあまり雨が降りません。単に暑いだけです。ごきげんよう、辺境村村娘です。
1. 水鉄砲
前に井戸水の汲み上げ器を作ってもらったときの水鉄砲を取り出して『エンジン、エンジン、エンジン』と念仏の如くに呟いていた所、今どきの内燃機関と蒸気機関の間になんかあったような気がして、思いだそうとしているのですが、全然出てきません。蒸気機関のような仕組みの内燃機関という、変なエンジンだった気がするんですが、こういう時ってなんかイライラしませんか。
「ミーちゃん、何をしているの?それ、井戸の玩具でしょ」
「エッちゃん。うん、前にね動力が要るって言ったでしょ、あれが出来ないかなってね。帆走なんて無理だしね」
「えっ!帆走するのって難しいの?帆を張ればいいんじゃないの?」
「残念、そうじゃないんだって。風に合わせて、帆の向きを替えたり、たたんだりね。風に向かって進む事もできたりするらしいよ」
「へぇ、そんな事もできるんだ。風向を見たり、波の様子を見たりもするのかな」
「そう、結構な知識と技術が要るらしいのね。カッフェさん達ってすごいよね」
「なるほど~」
話していて、ふと思いついたのがこんなのでした。
気 気
┏┻━━━━━━┻┓
━━╋室□━━━━━━╋━━
┗┳━━━━━━┳┛
排 排
確かこんな感じだったはずなんですけどね、左の吸入口から混合気を入れて、火をつけますとね、爆発してピストンが右に行くじゃないですか。
気 気
┏┻━━━━━━┻┓
━━╋━━━━━━□室╋━━
┗┳━━━━━━┳┛
排 排
そうしたら今度は、右の吸入口の混合気に火をつけるんですよ、そうすると、左は排気行程になります。排気が終わった左側の隙間に混合気を送って、また火をつけます。それの繰り返し。圧縮行程が無い?そうです、効率はすごい悪そうですよね、ミスファイアを起こしたら、ピストンがシリンダーに激突しませんかね、これ。という事で、水鉄砲でこんなのを作ってみました。
水 水
┏┻━━━━━━┻┓
━╋水水水水水水□水╋━━━
┗━━━━━━━━┛
「エッちゃん、水を送って」
「は~い」
私は、同時にもう片方の水鉄砲の取っ手を引きます。シリンダー内の水がこちらの鉄砲に入ってきます。ピストンに繋がったコンロッド(連接軸)が動きました。なんとなくできそうな気がしませんかね。次は、混合気の代わりに何を使うかなんですけどね、蒸気しかないんですけど、さてどうしましょ。
2. 魔動蒸気機関
巧く行くでしょうかね。
給 給
┏┻━━━━━━┻┓
━━╋室□━━━━━━╋━━ コンロッド
火┳━━━━━━┳火 □はビストン
排 排
(1)吸気過程
分離魔石で得た酸素で水を吸い上げ混合します。
フウちゃん、アッちゃんが活躍してくれます。
(2)膨張過程
混合した水を風魔石で圧送して、膨張室に噴霧します。
火口に点火します。
リトちゃんが頑張りますと、高熱の炎で霧が蒸発して膨張します。
(3)排蒸気は復水器に廻して再利用します
アッちゃん頑張れ。
とりあえず、ビストン、シリンダー、コンロッドやらを真鍮で作ってみました。パッキン類は大蛇の皮。給排気のタイミングですけど、バネがありませんので、バルブ機構は無理。コンロッドの先に取り付けたクランクによる摺動弁です。エル君が居ると、真鍮位なら木のように加工できますね、便利。
3. 魔動蒸気機関搭載船
圧力はそれほど高くないと思われるのですが、本番は黒鉄製です。船尾楼の下、竜骨上のサブフレームにエンジンを載せて、コンロッドにリンクを介して魔鉄の推進軸を取り付けました。2軸推進ですよ。途中には、はずみ車兼クラッチが入っています。直結じゃねえ、波に煽られたりしたら、壊れそうですからね。舵?サーボとセルシンを作るかね、無理ですな。チェーンで繋いで…却下。ロープで…たぶん滑って空回りする。あっ!ありました。板に棒を打ち込んだだけみたいな、歯車の原型みたいな仕組み。船くらい大きければあれで行けるんじゃないですかね。あちこちでコロ軸受が大活躍。
「【とーりかーじ】ってどっちだっけ?『いっぱい』だからどっちだよ。【ぎゃーくかーじ】って違うだろ!何だっけ?【おもーかーじ】だっけか、だからどっちだよ」
独り言を言いながら舵輪を右へ左へ廻して遊んでいます。漸くここまで来ましたよ。魔導エンジンですか?プロペラはついていませんけど、しっかり動いてエージング中。お姉さんズは見学中。リア姉さんは、動作原理図とにらめっこ。エッちゃんは、舵輪を廻してから舵を見に行っています。皆楽しそうで何より。
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// あーそこの方。「動くわけねーじゃん」とか、本気にしたらだめですよ。
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4. 水ってすげえ
何がというと、一度水を鞄に抜いて、プロペラを付けたんでございます。空回りはしました。有頂天で水を入れたら、動きません。ノノノノーと必死で回ろうとしてくれていますが、ぜーんぜん回りません。クラッチ板つけておいて良かったー。
「ウッへぇー。まるで回る気配がないじゃん。水の抵抗舐めてましたー」
「ミーちゃん、本当はどうなるの?」
「水抜きして、空回りさせたときと同じように、元気にクルクル回る予定だったんだけどねぇー。回らんね」
動力源たる魔導蒸気エンジンが弱すぎるんでしょうかねぇ、船のディーゼル・エンジンって、家かよ!って言うくらい大きいじゃありませんか、伊達ではなかったのね。映画なんかで、潜水艦のエンジンが出てきますけど、小型のが沢山ならんでいて、ガシャガシャとロッカーアームが忙しなく動いているのも理由があったのね。そもそも、何馬力出ているかなんぞ、分かりませんしね。必要馬力だってさっぱりですもん。さぁて、どうしてくれましょうかねぇ。予定としては、エンジンは補機で、水上でしか使わないのですけど、そうは言ってもねえ、動かないとどうにもなりません。
プロペラを小さくしたり、ひねり度合いを緩くしたりしたら、推力がなくなりそうだしなぁ。海流に負けるようじゃ意味ないしね。それならばと、コンロッドの先がすぐに動輪状の板だったのをクランクに改め、予備機を総動員して多気筒化してみました。すると今度は、気筒間の同期を取らないと壊れるのですが、火点に着火する時期を調整する事で、なんとかしてみました。
水面下数メートルとは言え、水圧はあります。船体と推進軸の間には、支えて仕切るための管があります。ぴったりくっついていたら、軸は回りません。そうなんです、隙間があるんです。隙間があるって事は、水が吹き出してきます。止めねばなりません。模型程度ならそのへんのグリスでも塗り込んでおけば良いのですけど、昔の人は、お父さんの整髪油だったそうですが、実際の船ではそうも行きません。ベアリングと蛇の出番ですね、大蛇の皮パッキン。念のため、木の実グリス。後は空圧を掛けて押し出すしか無いかな。頑張れフウちゃん。いや、ほんと水ってすげぇ。そんでもって、厄介。
5. まだある
速度の調節は、給気量を変えるしかないんですが、リンクとロッドしかないよねえ、スチール・ワイヤーなんて無いですもんねえ。梃子とリンクとロッドで繋いで、また重量が増えちゃった。
それとね、船って荷物が少ないと水面上に浮いてしまうんですよ、バランスが崩れてコケます。それなので、船倉に重りを搭載しています。今時ですと、重りと言うか岩でしょうけどね。荷物量により喫水を調整するわけですね。ということで、本船も左右に水タンクを取り付けてみました。中身は、拡張鞄からいつでも移せます。
「右舷注水!1000[㌧]」
いや、そもそもこの船、そんなに容積ありませんが。
「傾斜止まりません」
とか、遊べます。




