(09-06)深森の廃村(船進水)
(09-06)深森の廃村(船進水)
今更ながらですけど、ここ季節があるんですよ。ということはですね、地軸が傾いているって事ですね。直立なら季節は確か無いはずです。そうするとですね、今度は何万年だか、何千万年だかの周期で気候変動が起きる事になります。まあ、生きてはいませんので、どうでも良いですけど。ちょっと暑くなって来ました、辺境村村娘ですこんにちは。
1. 南部辺境伯から初めてのお使い
あちらの親子に真教から送られた隷呪の環を差し上げましたら、次男さんが跡を引き継ぐことになったそうです。それで辺境伯様のお姉さん(母親)と一緒に領都に来たそうで、辺境伯様にお願いされまして、改めて水貝調査依頼を致しました。ついでに、土地の魔力量を測れる人をお供につけてもらいました。元々は、南部から奥様についてきた人なんだそうです。そう、侍女さんね。小麦が取れにくいとかは、魔導国と似た現象で土地の魔力量によるものだろうと思われる事を伝え、魔力量を測りつつ魔導国から茶麦を取り寄せてみたらどうかと提案して見ました。聞けば綿の栽培もしているそうで、現在は魔導国寄りの地域で細々と育てている程度だそうです。綿だよ木綿だよ、せっかく技術があるのにもったいねえ、何をやっているんですかね。力を入れてみてはどうかとお願いしました。小麦なんざ辺境伯様の所で作れるんだから、どうでも良いんだよ。ギブミーはき易いパンツ!パンツ作れや、これ大事。
まあ、そのうち肥料の事が知られるでしょうから、なんとかなるでしょう。立派な水産資源を『たかが』とか言う人に教える気は毛頭ございません。
2. 進水
ドックに水を入れます。とりあえず浮かべば正解。転べばアウト。沈んじゃったら、ただのゴミ。入れる水は、冬の間に鞄へ溜め込んだ雪です。ひとまずは船台がかぶる位までいれて溶かして、あとは追加していけば良いでしょう。えっ?海水じゃないのかって?元があるとは言え、何しろ適当に作っていますからね、水で浮かなきゃ海でも大差ないですよ。水で浮くなら、たぶんですけど海なら確実。ただ、海には波がありますからね、耐えられない可能性もありますので、その辺は後で対処しましょう。
「浮いたぁ。さて、進水で浸水したら目も当てられないからね、検査、検査っと」
「すげえな、鉄板の船が浮くのかよ」
「そうだよねえ、これは驚いた」
「はっはー。まぁ実験済みだしね」
一応一回りしてみましたが、漏れは無いようでした。外から適当にハンマーで叩いてみましたが、割れが入ることもなく、強度もありそうでした。荷物を搭載して、喫水が上がったらまだ分かりませんけど。舵も動きます。効くかどうかは、走ってからですかね。船は、動かないように再度固定して置きました。
3. 駆動力
帆船ですけどね、帆で走る船なんて、見たことは無かったです。こっちで初めて見ました。ヨットすら見たことがありません。写真ではありますけどね。エンジン船なんか操縦した事ありません。無理。公園の手漕ぎボート程度ですよ、普通乗用車と同じ感じで運転できないと、どうにもなりませんがな。でね、ほら舟があるじゃないですか、あれの大きいのなんだからなんとかなるべえと高をくくっていたんですよ。ドックに水を張り船が浮いたでしょ、ちょっとだけ動かそうと思って魔力を流したら、ピクリともしない。
「あれっ?」
「ミーちゃんどうしたの?」
「うん、舟みたいに魔力を流してもね、進まないの」
「同じじゃないの」
「そのはずだったんだけどね、おかしいな」
〔よっ!〕
〔あ、ジュンちゃん。こんにちは。良いところへ来てくれた。ねぇ、この船に魔力を沿わす事ができないんだけどなぜだろうね〕
〔外板は魔鉄なんでしょ?もう魔力を纏っているからじゃないの〕
〔えっ!2重にはできないって事〕
〔うん、たぶんそうじゃないかな。アンタは、史上始めてをやる事が多いから面白いんだけどね、そのぶん初見の現象も出てくるよね。防盾とかなら出来るんじゃないの、やってみて〕
〔あ、できた。盾を張る事はできても沿わす事ができないのか。orz〕
〔なにそれ〕
〔がっくりと気を落とした所を表現してみました〕
〔あははははは、それいい。まったねぇ〕
〔うん、ありがとう〕
「がっくり」
「なあに、なにかあったの」
「うん、この船ね、舟みたいに魔力推進が使えないんじゃないかって」
「そうなの?じゃあ別に推力になるものを作らなきゃいけないって事かな」
「そうなるねえ、あっちゃぁー」
ポンポン蒸気だろうが、焼玉エンジンだろうが、機械動力は世の中に無いです。ないからには、なんとか考案せねばなりません。さっぱり浮かびません。推進機構?プロペラですかね。帆船にそんな場所があるわけ無いです。プロペラ軸を設ける場所には竜骨があります。取り付ける場所なぞどこにもありません。1[㍉]たりともありません。いやあ困りましたね、どうしましょう。
4. 泳ぐ御令嬢
「水は綺麗だねえ、外は暑いよねえ、良し!泳ぐぞ。お子様最強!」
水がちと冷たいので、火球をドバドバッ!それっぽく準備運動をして、パァっと下着になりまして、バシャバシャ。鞄には生き物が入れませんので、水は湧水以上に綺麗なままです。ロウタ達も入ってきて、一緒にキャッキャ。ついでに船底の様子を見ておきます。エッちゃんも入ってきましたが、足がつかないので、溺れる寸前。
「エッちゃん、大丈夫?泳げな…そりゃそうだ。川岸しか知らないものね」
「ミーちゃんは、なぜ泳げるの~。いつのまに覚えたの」
「蛇に食べられた時にね、帰りに川を渡る為になんとかしたのだよ」
「そういう事か。教えてぇ、エステリーナと泳ぎたい」
「はいよー」
こっちの人達ってのは、文にしろ、体にしろ、皆覚えがいいような気がするな。かくいう本人も、それなりに覚えるのが早い気がする。後は自力で、想像力逞しく観察、研究をしていけば、時代の進みは早くなるかも知れないね。逆に、それだけの基礎力を持っていて、なぜナーロッパ文明なのかが分からないですけどね。
「そうそう、これで泳げるでしょ」
「やった、沈まなくなった。進んでいるよね。エステリーナぁ、遊ぼ」
「ウォン」
ねっ?早いんですよ。それで、いつの間にかガンさん達は競争していました。さっき泳ぎ始めたばかりなのにね。パンツいっちょで、よーやるわ。
「ミーちゃん、私達も泳いでみたいんですけど。どうしたら良いかしら」
「スッポンと脱ぐ!男共が喜ぶ」
「嫌ですわよっ!」
「お風呂だと思えば、なんとか」
「「「「なりませんわ」」」」
まぁ、そうだよね。そう言えば、ピクシさんが失敗作と言っていた、上下一体の下着がいくつかあったなと思って取り出してみました。上は普通にシャツですし、下はズロース状に膝上になっています。いえね、今どきの伸びない生地だと、一体化すると一人では着られないし、脱げなくなるんですよ。だから『釦をつけてみたら?』って事があったのを思い出しました。それでもなぜ、ボツなのかと言うと、下着に釦があると、それが邪魔をして上に何も着られなくなるからですが。なぜ沢山あるかと言えば、競作してみたんだそうな。それで、一気に大量の不良品になってしまって、店が潰れるからと、泣きつかれました。何をしているんでしょう、あの店は。
「こういう、失敗作の下着しかないよ。染めてはあるけど」
「あら、良いのではないかしら?下着には見えませんわね。大きさもちょうど良い感じですわ。ちょっと着てみますわね」
腰の辺りにひらひらがついている下^h水着。
「あ、私もお願いします」
袖口とかにふりふりがついている下^h水着。
「私のも御座いますかしら」
「まだありますか?」
胸元にひらひらがついている下^h水着。
「はい、どうぞ。そっちの倉庫でよろしく」
おぉ、都合が良い事に品揃えがすごい。ジージョさんちょっと負けていますかね、どこがとは言いませんが。
「この辺りが少し緩めですかねぇ」
「牛の乳を飲みなされ」
「それで育ちますかね?」
「さぁ?しないよりはまし?」
最初は、沈んでいましたのに、皆さんあっという間に覚えてしまいましてね、おやつになる頃には、4人ともしっかり泳げるようになっていました。あれだね、ビーチチェアとか、パラソルとかの水辺の寛ぎセットとかあると絵になりそうだよね。外だと、日焼けしますけど、ここなら大丈夫だし。
「思った以上に疲れますわね」
「全身運動になるからねえ」
「なるほど、体型維持にはなりますでしょうか」
「これ以上ない位には」
「あ、それなら毎日来ても良いくらいですよね」
「まあ、明日になって起きられたらだけどねぃ」
「大丈夫ですわよ、たぶん」
5. 夏いですわ(1)
ひとしきり泳いだ後のお嬢様曰く。
「ミーちゃん、暑いですわ」
「そりゃ夏だし、何を贅沢な。お嬢様じゃあるまいしって、お嬢様だった」
「何か冷たい物でもありませんかしら」
「冷たい物?眼の前に沢山」
「「「「泳いだ後は、動きたくありません」」」」
贅沢な事を言う、お嬢様が4人。それはそれは、物憂げに。というより遊びすぎ。
「令嬢ですから良いのです」
「自分で言いますか」
「あはははは、ミーちゃん、冷たい食べ物とか、飲み物を考えてぇ」
「冷たい食べ物?氷のお菓子?」
「氷でできたお菓子ですか?私も食べてみたいです」
「んーと、えーと。あっ!」
牛乳、卵、砂糖で作れそうですね。
「あら、なんですの?焼き菓子…ではありませんわね。小麦がありません」
「面白いですね、小麦が入らないと、そうなるんですね」
混ぜます。混ぜます。混ぜるのは私ではありませんが、混ぜます。
「この位でいいかな?うん、順番を違えたらね、こうなったんだよー。それで、これを冷やします。ソレッ」
「あら、焼くのではなくて、冷やすのですか」
「凝乳氷菓。ふっふーん。どうだ!」
まあ、アイスクリームですけど。
「いただきますね。あら、これは。舌の上で消えるように溶けて、濃厚な乳の甘さと香りが広がって…美味しいですわ」
「プリンとも違うのですね。そう言えば、プリンてどこの言葉かご存知の方は、おりますか?」
「私も知りたいです。帝国から来たみたいですけど、帝国語じゃないですよね」
そりゃ、イギリスですし、イギリスはこっちにはありませんし。
「他にもありましてよ、マヨネ酢のマヨネは何語かしらとか」
「ございますね。愛称と言うか、造語ではございませんの」
「なるほど、それなら語源がないのも不思議ではありませんね」
マオンなんて港町ねぇですもん。知らんけど。
「細かい事を気にすると、年取っちゃうよぉ」
「あら、それは困ります」
そうだ、そうだ、気にするな。どちらもズルの賜物なんだから。やっと二人が上がってきました。
「お嬢様方、そろそろもど…ミー何食ってんだ?」
「なんでアタシ?」
「新しいのは、お前だろ?」
「そうですわね、また一つ増えましたわね」
「食わせろー」
「はいよー、しょうがないね」
「おっ!これは良いな。もっとねえか。持ち帰ってやりてぇ」
「あ、子供はまだ早いからね」
「そうか?そういや冷たいのは、まだ早いのか。あいつらにも食わせてやろう」
「父ちゃんも、たまにはかみさんに孝行しないとねえ」
「うるせぇ」
「では、戻りましょう」
「そうだ、ミーちゃん。これ溶けないようにできるかい?」
「氷桶に入っているから、今日明日なら溶けないよ」
「そうか、すまんな。風呂上がりに良さそうだ」
しまった、あれやらせるの忘れた!『キーン』っての。
翌日は、村中からギシギシと音が聞こえてきそうでした。流石の護衛さんズも、はしゃぎすぎと、普段使わぬ筋肉の痛みでダウン。皆残念でした。
えっ?何か期待しています?ふっふっふっふ。録画と撮影は欠かしてはいませんぜ。ポーズ付きでございますよ。お父様達に売れませんかね?




