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(09-05)深森の廃村(船外装)

(09-05)深森の廃村(船外装)


 秋麦は、雪の下で健気に生きていました。解ける雪にもめげず頑張っています。とりあえずちょっとフミフミしておきました。よし頑張れ。辺境村村娘ですこんにちは。


1. 外装は魔鉄製


 黒鉄のインゴットを購入。例のドライヤーで失敗した鍛冶屋さんからですが。グヘヘヘ安かった。リトちゃんが加熱して、エル君が作った、巨大ローラーで圧延して厚さ5[㍉]の魔鉄外板を作りました。さてどうやって取り付けるかと言うと、平頭のボルト締めです。肋骨と魔鉄板の間に火蜥蜴パッキンを挟み、外側からボルトを差し入れ、ダブルナット締め。頭はリトちゃんが加熱して、溶接。中ではアッちゃんが頑張ってボルトを冷却して骨が燃えないようにしてくれています。外板の接着は、フウちゃんの真空とリトちゃんによる溶接。冷めたらナデナデすると一枚板に変身します。それにしても外板が薄っぺらいな、大丈夫かな。亜鉛の板は?とか思うでしょ、理由なんてさっぱりですが、要りません。化学(イオン化等)の事は解りませんが、とりあえず錆びないんです。不思議で仕方がないんですけどね。


 船の中を小部屋化したのはですね、計測しやすくするためでもあります。四角い部屋なら測りやすいし、加算だけで済みますし。今の所なんとか重量オーバーはしていません。このまま行けばたぶん大丈夫でしょう。まあ適当もいいところなんで、最後は出たとこ勝負になりそうですけどね。


3. 南の辺境伯(道行)


 雪が漸く解けまして、秘密の行脚が終わった辺境伯様からお誘いが来ました。

 

「南部辺境(海岸線)を守るアッツイ辺境伯から、調査結果と招待状が来たのでな、同行してくれ。どうやら魔獣と言うのを見たいんだそうだ。あそこは森がないからな、狼やら熊やらはおらんのだよ。そういう事なのでな、ルリエラと一緒に三人でこっちに来てくれたまえ」

 

 だそうです。また、物好きな。お貴族様の招待に『やだよん』とは言えませんよね。

 

「解りました」

「すまんな。ああそれとな、川蛇()はあるか?あれを食べさせろと煩くてな、向こうにも当然おるだろ?調理の仕方を教えてほしいそうだ」

「なるほど、そっちが主題ですかね」

「まあ、そうだろうな。領の収入が増える訳だからな」

「経営者ですものね」

「そういう事だ。じゃ、よろしくな」

 

 ということでして、お隣の領へと赴くことになりました。また、窮屈で豪奢なドレスを着ることになりそうです。往き(ゆき)の馬車は、あいかわらず、ガタ揺れ。


4. 南の辺境伯(関係)


「そう言えば、私達南の辺境伯様の事は何もしりませんね。調べる間がなかったし。呼び出しの言葉が『あれを食べさせろ』そのままだったら、随分近しい関係なのかなとも思いますけど」

「うむ、まあその通りだ」

「あそこはね、お母様の実家なんですの。お母様は現辺境伯の妹で、その奥様は、お父様の姉ですのよ」

「ミーちゃん、どゆこと」

「あ、なるほど。一言でいうと、姉に敵う弟はいないって事だね。それが妻の実家なら最強だね」

「あ~あの奥様は、武寄りだもんね」

「ぐっはー、エル君。言ってはならんぞ、それは」

「あ、ごめんなさい」

「良いですわ、存分にどうぞ」

「ルリエラ、お前まで」

「お三方、お疲れ様でございました。まもなく南部領でございます」


5. 南の辺境伯(到着)


 普段使われていない道が、どうなっているかが良く解りました。いえね、途中少しばかり道を均しながら来ていたんですよ。


「君たちがおると何でもできそうな気がしてしまうな。いかんな」

「アタシが言うのもなんですけどね、魔力に頼りすぎるのは良くないですね。確かに」

「あら、ミーちゃんにしては殊勝な。お父様、嵐が来ますわよ」

「まあ、何かおっしゃいましたかしら、ルリエラ様」

「いえ、何も。おほほほ」

 

 この人、棒読みになっているよ。ええ根性しとるやないかい。しばいたろか。

 

「はっはっは。ハンジョ殿が言っていた通りだな、セバス」

「はい、その通りで御座いましたな、旦那様」

「何を言ったかは、わかりますけど。お父様、原因はミーちゃんですからね」

「えっ、お前が原因だと言っておったぞ」

「ハンジョ様ぁ。戻ったら、懲らしめて差し上げませんと」

「そういう所じゃね?」

「そうだよな、ミーくん。家の娘も変わったものだ。良いことだ」

「嫁の行き先…」

「それは…どうだろうか。行かんでも良いぞ」

「不味くないですかね」

「大丈夫だ」

「お父様、ミーちゃん。私で遊ばないで下さいませ」

 

 とか言っている内に、ビシッさんより報告。

 

「南部辺境伯アッツイ邸に到着でございます」


 うむ、相変わらずビシッさんは、良いお声でございます。


6. 南の辺境伯(歓待)


「お久しぶりでございます。アッツイ殿」

「うむ、お互い辺境伯なぞ賜ったのでな、合う機会もそうそうなくなったからな、仕方があるまい。ルリちゃんも元気そうだ。それで、そっちが例の魔狼とその主かな」


 お貴族様とのご挨拶が終わりまして、お館へ。映画みたいな、使用人ずらりんは、お約束なのかね、値踏み光線が降り注いでおります。こういう所で、オタオタしたり、ビクついたりすると舐められるんでございます。何食わぬ顔で通り抜けるのが吉。

 

「お二人は、魔狼と共にこちらへどうぞ」


 ついていくと、ただの裏庭。うん?どういうこったね。と思ったら、いきなりエステリーナの首輪が切り飛ばされて、例の隷呪の首輪にすり替えられちゃいました。ちょっと待てやこら。そういうつもりだったのかい。ひょっとして、ここの人たちは、真教狂信者で、真教にもう知れ渡ったって事?だとしたら早いなあ、お見事ですな。ロウタ頑張ってね。あれだね、リア姉さん達に危害を加えたら、魔導国も敵に回しちゃうよ。

 

「お二人は、こちらで天に召されて下さいませ」

 

 やめておけばいいのに、何を考えているんだか、ここの辺境伯さんは。たかが、領兵10人程度に、暗部女5人くらいで抑えられるわけ無いでしょうにねえ。見くびられたものですね、情報が行き渡っていませんよ。まあ、当然の如く返り討ちだし、隷呪の首輪は頂戴しましたし、マジモンの屍累々。

 

「エッちゃん、大丈夫?」

「う~ん、なんとか。ミーちゃん、ありがとう。全部受け持って貰っちゃったね。もう少しならガンバル」

「なになに、エッちゃんに対人は似合わんよ。じゃ、中に入って休むか」


 生粋の10歳に、対人なぞさせられませんがな。態と返り血をつけまして、館に殴り込み敢行。

 

「南部辺境伯様、素晴らしい歓待ありがとうございました。それで、如何にいたしましょう。ご説明いただけますよね」

 

 おぉ、こちらの奥様と普通の侍女さん達は、ちゃんとご令嬢していますね、気を失いました。人殺し一族にしては、華奢すぎるだろう。

 

「なんだね君達は、それはどうした事だ。血だらけで館に入るとは不届きな。守衛!守衛はおらんか」

「えーと、領兵さん達は、お空に行っちゃいましたよ。一人も生き残って居ません。ですからご説明くださいね。真教信徒さん」

「何!そういう事か。もう知られてしまったのか?早すぎないか」

「真教信徒とは、なんの事だ!そっちこそ説明がいるのでは無いかね?」

 

 あれっ?お芝居かな。えーい面倒だ、頂戴した隷呪環を使ってしまおう。ささっと後ろを取らしてもらいましてね、カチャッ。

 

「これより貴方は、質問に逆らえません。真実を答えねば、天に召されます」

 

 ピカーっと光って、魔石が働き始めます。今更ながら、すごいなこの石。

 

「貴方は、精霊真教の信徒ですか」

「私は、信徒では無い。侍女やら領兵やらにはいたようだが、私は違う」

 

 あれ?そうなの。

 

「精霊真教から、なんらかの支援を受けていますか」

「我が領は、精霊真教より、格別なる扱いを受けておるので当然である」

 

 あぁそうですか。

 

「精霊真教から通達はありましたか、書面があれば出して下さい。内容をお話くださるだけでも良いですよ。記録しておりますので」

 

 書面で残っているとは思いませんでしたが、なぜかありました。無用心ですね、読み終わったら焼き捨てるものだろうに。ドラマだとそうだぞ。あるいは、5秒以内に自動的に消滅するとか。まあ、良かったですけど。それによれば、届けた隷呪環で魔獣を隷下に置き、その主を殺害せよとだけありました。なんだ、エステリーナを欲しがっただけか。そうすると、後一個あるかも知れないよね、探さないと。

 

「良かった、表示盤がらみの襲撃かと思ったよ。こっちだけのようだね。はいどうもご苦労さま」

 

 ミーちゃん特製の『特級鎮静剤』を差し上げました。少々鶏頭草(トリカブト)入りだけど、お空に行くことはないので、とても安全。お目覚めは、明日の朝。

 

「ミー君すまないな、まさか精霊真教に隷属するような経営をしているとは思っても見なかった」

「宗教はねえ、こうなると厄介ですからねえ、面倒な事で。という事で、大丈夫そうだから、エッちゃんはお休みしなさい」

「うん、そうする。後は宜しく」

「はい、頼まれました」

「キャァー、ミーちゃん、どうしましたのこれ」

「どうやら斯々然々らしいよ、ここの人達」

「そうでしたの?エッちゃんは?大丈夫かしら」

「えっ、アタシは?」

「ミーちゃんは、なんとかなりますでしょ」

「なんか扱いがひっどい。アタシだって、か弱い少女なんですぅー。くねくね」

「言葉にしてもだめですわよ」

「はっはっは。さぁて、どうしたものかな。ひとまず姉を起こしてもらえるかな」

「あ、解りました。ホイッ!」 

 

 奥さんに聞いた所、直接の関係者は旦那、辺境伯だけでその他はとりあえず無関係らしかったです。まあ当然その言なぞ信用はできませんが、辺境伯様のお姉さんなので、今はそのままとします。世の中の慣習はどうでも、一応疑わしきは罰せずと言う事ですね。それで、その辺境伯自身ですが、駄目じゃん。腕に隷呪紋が入っているじゃん。禁呪じゃないかよ。精霊真教が使っているって事ですよね。あれ?毒蜥蜴さん達のは?出荷元が真教なんですかね?あるいは、毒蜥蜴と取引しているとかかな。だとすると、真教ってのは怪しい団体さんだなぁ。

 

「あれ、隷呪紋が入っていますね、この人。とりあえず解除していいですかね?」

「その隷呪紋とはなんだね?」

「それはですね、古の禁呪だそうで、ほらっ、この隷呪環と同じ模様でしょ、環の模様を転写して相手を隷属させる魔法ですね」

「そうか、解除してやってくれるか。できるかね」

「はーい。トリャッ!」

「しかし、そんな魔法があったと言う事か。それが今でも使われているのだな」

 

 あ、一応撮影はしてありますよ。魔法そのものの魔力量は、大したことはなかったですね、もちろん私とか、エッちゃん基準ですが。

 

「さて、姉さん。休ませてもらえるかな。スゲエ殿が起きたら話を聞くことにしようではないか」

「解りましたわ。お風呂の用意はできておりますので、皆さんもどうぞ。お休み下さいませ。主人は、地下に拘置いたしましょう」

「お願いします」

 

 お風呂に入っている間に、魔力探知すると、ちゃんと地下牢?みたいな所に寝かせていました。お布団に入ると、あー、対人は慣れないよねえ、慣れるのも嫌だけど。ちょっと気持ち悪さが襲ってきましてね、良し!寝ろ。寝てしまえ。


7. 理由


 ここの辺境領は、実に3代前から真教の支援を受けているのだとか、そうすると、現辺境伯様が生まれた時には、とうの昔に真教が入り込んでいた訳で、どうにもならんわね。この周辺国では、7歳になると洗礼の義と言うのが行われて、精霊の子となる証を得る習わしがあるそうですよ。私的には『うさんくせぇ』で終わりなんだけど、神やら精霊やらが実在する世界で生まれ育つと、当たり前のように生活の一部となっているのでしょうね、腕に隷属紋が入っても、精霊の恩恵を受けられるとかなんとかで、なんとも思っていなかったらしいです。まあ、精霊の恩恵と言うよりは、真教の思惑だよね。

 

義兄(にい)さん、3代前に何があったか、起きたのか聞き及んでおりますか」

「然程の事は伝えられては居ないのだが…先々代の時に大旱魃が起きた事は知っておるか?」

「私も細かいことは伝えられてはおりませんが、まぁ大体の所は。隣ですからな、我が領もそれなりには酷かったらしいです」

「そうか、その時にだな、同時に放棄地になりそうなほどに病が流行ってな、それでも真教の援助のお陰で、皆餓死する事もなく、なんとか乗り切れたそうなのだ。それからだな、真教が領の運営にも口を出すようになったらしくてね、とは言え私の所に指示が来たのは、これが初めてなんだがな」

「初めてですか。初めてとは言え、今回の事は、言い訳にもなりませんな」

「何故だ!たかが平民の小娘。居なくなろうと、どうということはあるまい」

 

 お姉さんが食ってかかろうとしましたが、私と伯爵様で止めました。私?生殺与奪権を握っているのは私です。ハッハッハ。

 

「{何故ですの?悔しくはありませんの?}」

「{いやいや、隷呪環。嵌ったままだし}」

「{えっ?あら、そう言えばそうですわね。なるほど}」

 

 そうです、あの輪っか。嵌ったままなんですよ。貴族の会話なんぞ、揚げ足取り回避のために、回りくどいのが普通なんですけどね、割りと直球で話しているのがその証拠。つうかさ、気がつけよ。

 

「そう思いますか。この所上向いてきた我が領の救世主なんですがね。義兄(にい)さんの領に福音をもたらすかも知れなかった(・・・)子ですぞ」

「福音?何を言う、平民に何ができると言うのだね」

「ふん、そのような小娘に何ができると言うのですか、伯父上」

「おお、チョート君か。大きくなったね。今回の調査を発案したのは彼女なんだがね、ついでに領兵を天に送ったのも、彼女達だ。もう一つ、川蛇の調理方法を伝授したのも彼女だぞ」

「「はっ?」真教が欲した、魔狼の飼い主と言うだけではないのか」

「我が領の救世主と言いましたでしょ、以前の経済状況を知っていますよね、他領と比べるべくもなかったのですがね、同等以上まで引き上げてくれましたよ。さらには皇帝陛下から感状を賜る程の情報をもたらしてもくれました」

「調査などと、たかが水貝ではありませんか」

「その水貝が、ほぼ永遠に年間予算と同等の金額をもたらすとしてもかね?」

「えっ?永遠。そんな絵空事を。有ろうはずがないではないか。よし、小娘。発言を許す。言ってみたまえ」


 だから、早く気付きなさいよ、首だぞ?違和感無いのかね?


「バーカ。アタシは、とっても狭量な人間なんですよーだ。やなこった」

「なんと!この痴れ者が!成敗してくれるわっ!グホォァーーー」


 おお、用意が宜しい事で、テーブルの裏に短剣を隠してありました。


「やっと気が付きましたか?絞まるまで気づかないとは、鈍感な方ですね」

「貴様、父上に何をした」

 

 おぉ、こっちは、こっちでいきなり切りかかって来たわ。親子揃って何をやっているんですかね、アホですか。『スパッ、キン!』腕ごとでは可哀想なので、短剣だけを切り取っておきました。

 

「真教から届いた隷呪環を嵌めてあるだけですよ。アタシは何もしていません。さて、フェルモンド辺境伯様。ワタシ達は先に帰らせていただきますね」

「ふむ、そうだな。引き上げるとするか。無駄足だったな」

「待て、これを外していかぬか」

「嫌ですよー。そんな寛大な心は持ち合わせてはおりません。ではごきげんよう」

 

 あっそうそう。もう一つの環ですけどね、執務机にありましたので、ご長男様にもお付けして差し上げました。南部辺境伯様達は、あの後教会ではずさせようとしたらしいのですけどね、片田舎の司教程度の魔力量では、はずせるはずもなく、ご隠居さんになりましたとさ。そういう事で、あそこの領の経営は、現在ご次男様がされています。御年10歳ですけど。真教に知られちゃったかな。まぁ、良いか。


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