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(09-04)深森の廃村(船強化)

(09-04)深森の廃村(船強化)


 漸くですよ、少し春の気を感じるようになって来ました。雪がちょろちょろ解けはじめまして、あちこちに川が好き勝手にできています。ちと不味くねえっすかねと、心配だけはしている辺境村村娘です。こんにちは。


1. 潰れないようにするには


 背骨(竜骨)と肋骨ができたので、壊れないように梁を入れていきます。元の船と同じになるようにして、柱を左右対称になるように入れながら、階層を作っていきます。当たり前ですが、合っているかどうかなんて分かりません。元の残骸を見ながらとはいえ、神様に祈りましょう。都合の良い時だけ神頼みするのは得意です。一般家屋だと、通し柱、大黒柱とかがあります。筋交いと言う斜めに入れる構造材もあります。残骸には形跡がありません。うん、入れよう。なんとなくその方が良い気がしました。

 

 輸送機ってあるでしょ、翼にエンジンがぶら下がっていて、胴体もぶら下がっているように見えますよね、所謂高翼式って奴ですね。揚力なんて翼に発生するんだから、それにぶら下がる形式が自然だと言う事なんでしょう。さて今回の船ですけど、主柱と竜骨があったら、それにぶら下がれば良いんじゃねと考えて見ました。元の主柱をそのまま配置して、それ中心に梁をぶら下げます。見た目の配置は変わりませんけど、力学的にはどうですかね。神様よろしくということで。

 

 何だっけ?北大西洋で沈んだ船。えーと、ああタイタニックですね。あの船は、水密隔壁があったんですけど、甲板まで通っていなかったために、上の方で水が溢れて沈んでしまったらしいです。隔壁ねえ、木の板で?無駄のような気がします。いや、水の圧力ってのはすげえのですよ、唯の板なんてあっさり割れますよ多分。とりあえず、柱の間に入れておきますけど。隔壁扉って戦艦とかのビデオを見ると、すっごく分厚い扉ですよね、しかも鉄。いくら合板化したとは言え、木の扉を付けてもまず間違いなく気休めですね。

 

 それでですね、構造物の重さも計量しないと行けないわけです。水10[㎏]入の桶をいくつか作って、天秤量りも作りました。まあ、一から何から作らないとならない。しかもお先はほぼ真っ暗同然。何処かに造船の教科書が落ちていませんかね。神田街の古書屋さんとか、売っていそうですけどね、神田街…どこかにありませんか。挫けそう。


2. 素材に加える魔力量


「おかしい」


 そう、おかしいんです。何がというとですね、婆ちゃんと同じ配合で、同じ手順で薬剤を作成しているんですが、婆ちゃんは特級を作り出してくれやがります。私は中級止まりなんです。何度やっても同じ。材料を入れ替えても結果は同じ。なんでやねん。私が磨って、刻んだ材料を同量使って、同じ蒸留水で作っても変わらない。どないせえって言うの?

 

「なんでえ」

「さあてね、経験の差さね。それにしてもこれは面白いね、麻痺させて眠らせるさね。何に使うんだい」

「まだ年寄になる気はなーい。あ、これ?生き物をね、一定時間眠らせて、その間は痛みとかを感じないようにできないかなって思ったの」

「そりゃまた特殊な使い方さね、薬で治せば良いさね」

「そうじゃなくてね、先にできちゃったから要らないって言えば要らないんだけどね、生物魔石がどう言う流れで作られるのか、眠らせておいて、お腹を切り開いて観察しようと考えたの。その間に、痛がって暴れられたりしたら、意味ないじゃん」

「なるほど、面白い事を考えるもんさね」

 

 話ながら試験管に貯めた抽出液を観察していましたらね、一つだけ透明度がわずかに違うのがありました。万能水を混ぜた安眠草ですね。

 

〔アド君、これ透明度の差って何故出るのかね?分量とか同じはずなんだけどな〕

〔う~ん、ン?感じる魔力量が違っておるぞ。溶け込ませ方が違うんじゃないか〕

〔魔力の溶け込ませ方?ゆっくりとか、早くとか?後は量か、多い少ないかね〕

〔そういう事じゃな。それ以外はわからんな。それじゃあな〕

〔ありがとう〕

 

「それなら、婆ちゃん水に魔力を加えてみるか…あ、透明度が上がった。上がれば良いんじゃないのかね?婆ちゃん、これでもう一回作ってみて」

「はいよ、ありゃ?上級さね。なんでかね」

「あれっ?魔力を追加して透明度をあげると、品質階級が落ちるの?」

「そりゃまた、可笑しな事さね。加えられる魔力量に適量があるって事さね」

「あっ!あぁ、そういう事かぁ。また、面倒な」

「はっはっは。それは試して見るしか無いさね。どれ、もう一働きするさね」

 

 それで判ったのは、まだ安眠草だけなんですけどね、魔力には加えて良い適量ってのがあって、少ないとそもそも効果が出ないし、多すぎると、返って効果が落ちるというものもあるらしいということ。万能水なんか、飽和するまでなんぼでも魔力を加えられるんですが、安眠草はだめって事ですね。安眠草さんて気難しいのね。上級品質までは関係無かったのですけどね、特級以上になると、魔力量までもが厳格になってくるみたいです。分かればもう一度、やっと特級に出来ました。

 

「やったー、特級だ。長かったー」

「はっはっは。ま、がんばるさね」

「うん、ありがとう」


3. 魔力の適量


 安眠草ってのは、魔導国でしか育たないって言われているんですよ。実際こっちに持ち帰って、育ててみたんですけど、枯れちゃいましたしね。それとね、安眠草に適用できる魔力量に範囲があって、外れると薬の等級が変わってしまうのが解りました。

 

 でね、その『育たない』ってのがですね、土中にある魔力量にあるとしたら、どうなんでしょうねと言う事です。それで、畑の土、森の土、あと魔導国の土で内包魔力量を比べてみたんですよ、目視ですけどね、森の土>畑の土>>魔導国の土でした。それと、安眠草が枯れちゃった魔導国の土>元の魔導国の土でした。こっちの魔力に交われば、魔導国の土も魔力があがるって事らしいです。そう言えば、魔導国って深い森ってないね、大型魔獣も見かけなかったしね。この前の熊さんやら群狼やらは、外からやってきた特例らしいです。


〔アド君、この世界の小麦とか、この前の安眠草とか、土中の魔力量って植物の成長に関係するの?〕

〔するぞ、土中の栄養素というのがあるじゃろ、それに加えて魔力量があって、空気中にある魔力量も関係するな、植物は呼吸をするからな〕

〔あ、光合成とかあるね。魔力が多すぎると枯れるとか?〕

〔植物だからな、水も多すぎると根腐れのような事になるじゃろ〕

〔そういう事か、なるほど、難しいもんだねえ〕

〔はっはっは、何しろ生き物じゃからな。お前さんが作る肥料があるじゃろ、あれは面白いな。土中の栄養を補間しとるし、内包魔力もしっかり保持している。与えすぎるのは良くないみたいだがな〕

〔うん、毎度為になるね。ありがとう〕

〔うむ、がんばれ〕

 

4. 安眠草の栽培

 

 魔力量が関係して、魔力過多になるなら減らせば良いのですよ、どうするかと言うとですね『女の魔導具1号』です。ある程度の魔力量になったら、土中の魔力を水とか光にして散らしてしまえば良いんじゃないですかね。基準は魔導国の土になれば良いわけですから、実験しましょう。


「ミーちゃん、『女の魔導具1号』を作っているのですか、所でこの名前なんとかなりませんか、もっと一般受けする名前が良いのではないかと思うのですが」

「アタシに言っています?たぶん碌な名前になりませんよ。『血股布(チマタヌノ)』とか『経血浄布(ケイケツジョウフ)』だの『排血止帯(ハイケツシタイ)』みたいな」

「…皆で考えるのは、良いことだと思います」

「そうして下さい。作っているのはですね、土の中にある魔素、魔力の素ですけど、それが濃くなった時だけ、光に変換して薄める魔導具ですね」

「態々減らすのですか?」

「そうです、安眠草なんですけどね、魔導国の土と同じになるように減らそうかと思って。ここ森の中でしょ、どうやら、魔力過多で枯れてしまっているようなんですよね」

「えっ、植物が魔力を取り込んでいると言う事でしょうか。魔導国の土って魔力が少ないんですか」

「そういうのは、土の精霊さんか、植物の精霊さんが教えてくれますよ。聞いてみると良いです」

「そうなのですか、そういう事にも使えるのですね。それは良いことを聞きました」

 

 ということで、余剰魔力を光に変換する『魔過地養生石(マカチヨウジョウセキ)』を作りましてですね、種まきです。芽が出れば良し。それ以外はたぶん種の段階で腐ります。まだ少し寒いので、温室で撒いてみました。出ろー、芽よ出ろー。

 

「ミーちゃん、魔導国の土ってありませんか?ないと分からないって言っているんですけど」

「はい、どうぞ」

「有難うございます。えっ、本当に少ないんですね、何故かしら。理由は分からないと言っていますね、これは考えろということですよね」

「そうですね、でも解明の手助けにはなるでしょ」

「なるほど、そうですね。表示盤の活用方法も工夫しないといけないと言う訳ですね。これは大変です。小麦なんかが穫れにくいのも、魔力に関係するのでしょうか」

「たぶん、そういう事だと思いますよ。収穫できる農作物と収穫量。周囲の魔力発生源、森とかですね、それらを地図に纏めてみれば解りそうですけどね」

「なるほど。お父様に報告してお願いしてみましょう。小麦が取れるようになれば、国としても楽になるでしょうから」

「買い易くなるといいですね、今は少し高いですもんね」

「そうですよね、港町では大変でした」

 

 なんて事がありまして、魔導国三人娘さんは、頑張っていろいろ調べているようです。活用出来ているようで何より。種はですね、しっかり芽が出ました。目出度い。唯ですね、広範囲に効果を及ぼそうとすると、魔石の必要量が多すぎる。植木鉢位ですかね。

 

5. 精霊さんとお話

 

 精霊会話盤がひっそりと、真教に知られることもなく広まっているらしいです。まあほとんど只同然でばら撒いていますし、信者と思われる人には渡ってはいないようなので、順調と言えば順調。このまま真教が手を出せない位に広まってくれれば危惧は減るのですけどね。最も、逆に真教信徒狩りとかになったら、それはそれで禄でもないことになりそうですけど。精霊会話盤ですけど、今よりさらに省魔力化できれば、もっと大勢の人に渡るかなって事を考えてみました。

 

 イヤーフォンてあるじゃないですか、音声信号をボイスコイルと言う電磁石に通して、それに繋げた板を振動させて、音として取り出す仕組みなんですけど、ゴムをドーナツ型に切り抜いて、穴の所に極薄にした風印の生物魔石を貼り付けて、精霊が動かせないものかと思いましてね、とりあえず作ってみました。

 

〔フウちゃん、風の印をお願いできるかな〕

〔生物魔石が小さすぎますわね〕

〔それならば、拡大鏡を通したらどうかな?だめかな〕

〔あら、これは面白い水板ですわね。これならば、ハイッ!どうかしら〕

〔おぉ、入った入った。ありがとう〕

〔今度は何をしますの?〕

〔えっとね、この魔石を魔力で動かすようにして話ってできるかな〕

〔お話の代わりに魔石を動かす?・・・・・・・・(こうするのかしら)

〔おお、聞こえた聞こえた。ありがとう〕

〔お安い御用でしてよ。これはまた、面白い道具ですわね〕

〔何をしておるのじゃ〕

〔あ、ジュンちゃんもお願い。話しかける代わりに、魔石を動かしてみて〕

・・・・・・・・(また変な事してる)

〔できた。できた〕

 

 ということで、実験終了。インナーイヤー型の入れ物を作りましてね、ドライバーユニットを取り付けて、耳に嵌めて再度実験。

 

〔ひとまず完成したので、検証に付き合ってぇ〕

〔|・・・・・・・・・・・・《あんたには要らないじゃん》〕

〔いいじゃん。表示盤より直接的でしょ〕

〔まあ、そうだけど。いろいろ考えつくものねぇ。まさか姿が見えなくても、直接会話ができようになるとは思わなかったわ。精霊の歴史始まって以来よ〕

〔二人ともありがとうね。他の人にも使えるかな〕

〔たぶんね。皆に教えてこよっ。じゃあねぇ〕

〔ごきげんよう〕

〔ありがとう〕

 

「エッちゃん、良いところへ来た。これを耳に嵌めてみて」

「は~い、それでどうするの?|わっわっわ、何これ、何これ《エルちゃんエルちゃんエルちゃん》。えっ!・・・・・(春水ちゃん?)あははははは、これ春水ちゃんの声なの?」

「残念、通訳魔法みたいなものでね、声色は皆同じになっちゃうはずだよ」

「そうかあ~、でも精霊さん達と直接お話できるって事だよね」

「そういう事だね」

「面白~い、ミーちゃんもこんな感じなのか。あ、リア姉さんも試しますか」

「なんですか、これ」

「精霊会話耳栓だって。精霊さんには、耳栓に向かってお話して貰うの」

「えっ!精霊とお話できる耳栓ですか。・・・・・・。あはははは」

「面白いよねえ」

「よく考えつくものですね、前代未聞の魔導具ですね。耳がくすぐったいですけど」


 ということで、完成。省魔力ではありますが、器が磁器じゃないと作るのが大変かな。とりあえず試して貰って希望者を募ったところ、全員挙手。ふはははは、皆変な人と思われるが良い。


6. 精霊会話耳栓


 廃村の皆に耳栓を作りました所、突然笑い出したり、明後日の方向を見上げたり、独り言を呟いているような人とか、変な人ばっかりになりました。わはははは、人の事言えなくなったであろう。ザマァ。

 

「エッちゃん、どうしたの?頭を左に向けたり、右見たり」

「美白ちゃんが、面白がってあちこちから話かけるから、自然に振り向いちゃうの」


〔ジュンちゃんや、白の子ってみんなそうなの?〕

〔そんな事ないわよ、あの子だけよ。人に話しかけられるのが面白いんじゃないの〕

〔自覚はないのかね。白の子だけだぞ、魔法を使っていないのに現れるのは〕

〔おほほほほ、白はねえ、好奇心が旺盛ですからねえ、面白そうな事があるとすぐに近寄って行くのですわ〕

〔あ、なるほど。アッちゃん、こんにちは〕

〔それはしょうがないじゃん、魂が叫ぶのよ〕

〔精霊の魂って何よ、面白い世界だねえ〕

〔白は、変な子でしょ?〕

〔変て何よ、変て。あんただって似たようなものじゃない。水の波動なんて出ていないわよ〕

〔貴方がいるからですわよ。お目付け役ですわよ、お目付け役〕

〔いらねえわよでございますぅ〕


 この二人はぁ、漫才みたいで面白いから良いけど。


「エッちゃん、そろそろなんとかしないと街に出られないよー」

「そうか、そうだよね。・・・・・・・・・・。やっと落ち着いた~。あははは」

「ミーちゃん、精霊が居る場所は判らないのかい」

「うーん、音とは違うからなぁ、だめじゃないかな。ガンさんのを借りて、両耳に入れて試したら」

「あぁ、凡そなら分かるようになるね、そういうものなのかな」

「あ、そうなんだ。精霊の魔力波にも時間差があるのかもしれないね」

「時間差?何それ」

「右耳に届く時間と、左に届くまでの時間が違うとか、音の大きさとかが違えば、右から話掛けられているってのが、意識しなくても判るでしょ?」

「そういう事か。頭が勝手に判断しているのか。なるほど」

「おめえは、あいかわらず理屈っぽいな。良いじゃねーか、面白けりゃよ。なあ、精霊ってのは、見えるようにはできねえのか」

「できないらしいよ。酒の素とは違うのよ、無理」

「そうかぁ、俺にも見えるようになれば、面白そうなんだけどな」

「世の理と言う話だからねぇ、当分無理じゃない?」

「当分ってどういうことだよ」

「精霊がね、姿が見えないのに話ができるようになるとは思っていなかったって」

「あぁ、そんな事を言っていたな。そうかそのうちできるようになるかも知れないって事か」

「そのうち、見える子が生まれてくるようになるかもね」

「なるほど、そういうもんか」

 

 そうそう、生き物ってよく分かりませんが、進化するものらしいですからね。


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