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(09-03)深森の廃村(船材質)

(09-03)深森の廃村(船材質)


 春の気は全く感じません。どうなっているのだ今年の冬は。そろそろ解けろや。雪解けが待ちどうしい辺境村村娘です。こんにちは。


1. 北の山岳踏破報告会(1)


 なんてね、唯のお土産話の会ですよ。揚げ煎餅だの、クリーム乳乾酪(チーズ)がのった焼き菓子だのを食べながらのワイワイでガヤガヤの会。ただ、ガンさんが辺境伯様に事を伝え、辺境伯様は態々帝都にまで行って、こそこそ怪しい事をしているようです。地下道は、周りに知られてはいけない事っぽいので、どうしてもこそこそとしか動け無いのでしょうけど。そんなわけで、呼ばれるまでは、私は知らん。

 

「これは谷かね、岩だらけさね」

「そこはねえ、温泉山のすぐ北から続いている谷なんだけどね、魔獣がいないの」

「そうそう一頭も、一匹もいなかったよねえ、不思議な場所だったよね」

「貴女方の魔力のせいではありませんの?」

「いや、止めても何もよってこなかったよ。だから、いないの」

「その谷を出た所にあるのが、そっちの花畑ね。すっごいのよ、一面が花だらけ」

「薬草とかは、なかったのでしょうか」

「写っている限りは、無いでしょ?普通に唯の花畑だったよ。種類だけは豊富っぽかったから、真面目に探せばあるかもしれないけどね」

「でもこれが、延々と山岳地帯の麓を埋めているんですよね、壮観でしょうね」

「下で見ると、森が見えない位に幅があるし、上から見るとね、帯状にずっと西まで続いているしで、すっごいんだよ。見渡す限り全部花なんだもん。魔獣はいるけどね」

 

 そう、あそこは魔獣がウヨウヨ。特に魔馬が群れていたからね、馬には乗れないんで、近づくのはやめておいたけれども、近いうちに乗馬を覚えよう。

 

「こりゃなんだ、魔馬の群れ?こんな所があるのか。捕まえて領で使いてえな」

「ガンドウ、餌代で破産するじゃないか」

「親父たちも、麦の取れる量が増えているっていうから、大丈夫じゃねーか?」

「半魔でもあれだけ食べるんだよ、魔馬ならどれだけ食べるかわからないよ」

「そういえばさ、なんで花畑に居たんだろう?馬とか魔獣って花を食べるのかね?」

「いや、食わねえだろそんなもん。普通はな。あ…魔馬って肉食うんじゃねーか?」

「あぁ何かの花が胃薬代わりって事かな、あるいはご飯の足しとか」 

「可能性はあるだろ?まあ、調べなきゃわかんねーけどよ」

「そうか、花が餌の足しと言うか、補助する食べ物になるんだったら、食料費を減らせるかもしれないね、行ってみたいな」

「おお、研究農民。まあ、ジョルさん達なら行けるか」

「いいなあ、私も行ってみたいなあ、一面の花畑なんですよね」

「そうだよ、花だらけ。行ってみる?途中は、魔獣なんていないから大丈夫。岩場は、気力と根性で乗り切る」

「その岩場って、抜けるのにどのくらい掛かるんですか」

「普通に歩けば3日位かな。岩から岩へ飛び移ると、1日」

「あ、私は3日の方でいいです」

「気をつけたほうがいいぞ、この二人の3日は、普通は倍以上かかるからな」

「「ひっど~い、そんな人外じゃないよ~」ミーちゃんだけだよ」

「エッちゃんも酷くね?」

「半魔の馬ですら街まで1日半かかるのを、お前ら1日で行くだろうがよ。俺たちでさえ、帰るのに歩きで2日半かかったぞ」

「うっそーん」

「それが普通なの、お前らが変なの」

「エッちゃん、普通だよねえ」

「そうだよねえ」

「こいつらはぁー。身体強化がどれくらい保つんだよ」

「え、あれに制限時間なんてないよね」

「うん」

「なにーっ!すげえな、そこまで魔力量が違うのか!降参」

「「なにか知らないけど、勝ったぁ」」

「「「「異世界のお話かしら」」」」


2. 北の山岳踏破報告会(2)


「これが山道の入り口ですか」

「そうそう。其処がね花畑から山岳路へ通じる入り口ね」

「一目で道って解りますね、しっかり作り込まれています。いきなり人跡ですね」

「ね、あんな誰もいない所にね、よく作るわ。そこから続く山道がそっちね」

「切り立った崖を削ったのかしら、すごいですね。道脇の脱輪防止でしょうか?しっかり作られていますね。一体何年かかるのでしょう」

「さあ、とりあえずアタシは、歩きながら削れるからわかりません」

「サーワお嬢様、規格ってなんですかね」

「あははははは」

 

 エッちゃんが膝を叩いて笑っていやがります。

 

「エッちゃんだって同じことができるじゃん」

「え~、ミーちゃんよりは鞄の容量は少ないもん、ワタシは規格内~」

「内容量が違うだけじゃん」

「どっちもどっちだと思いますよ」

「ジージョさんも同じにしてくれよう」

「良いです。私は規格内の端っこで」

「まあ、これが登り坂ですの?」

「すごい数の折れ曲がりなんですね」

「うん。馬車も通れそうな道でしょ、傾斜が緩いからそのぶん折れ曲がりが多いのね」

 

 九十九曲がりと言うか、実はもっと多いんですよね、八百曲がりとでもしますかね。

 

「山登りと言うのは経験がありませんけれど、私では到達すら危うそうですね」

「うーん、慣らしにどのくらいかかるかね」

「慣らし?ですか」

「うん、山が高いから、上の方は空気が減るの。その分体を慣らさないと死ぬ目に遭うんだって、冒険書に書いてあった」

「空気が減る?減るんですか」

「一呼吸で吸い込む量が少なくなるから、体を慣らさないと動けなくなります」

「うぇ~、そんな事があるんですか。高さによって空気の量が違うって事ですよね」

「そうだよ、高ければ高いほど減るの」 

「うわっ、それは困るどころじゃないですね。あれっ?減って無くなったら」

「無くなる前に、減りすぎたら死ねるから大丈夫」

「大丈夫じゃないです」

「うわっ、これはまた、すごいな。山脈どころじゃないよね」

「あぁそれはね、最後の折れ曲がりから北を見た景色だね」

「うっはぁー。東から西まで全部山かよ。北の先はどこまで続くんだろうな」

「今のところは、本当に未踏地だろうねえ、行ってみたいけどね」

「だよな、こりゃすげえわ」

 

3. 北の山岳踏破報告会(3)


「ミーちゃん、これは何でしょう。霧が出たんですか?」

「ああそれはね、岩の隙間から湧水が吹き出ているの。たぶん滝なんだろうけど、地面の中から押し上げられているみたいよ。たから水しぶきだけになっちゃうのね」

「なるほど、不思議な滝があるんですね」

「あっ!ひょっとして万年雲かい?」

「たぶん、そうだと思うんだけどね、場所的に」

「あれ、随分山の高い所にかかっているよね。そうか、これが万年雲の正体か」

「そうだよ、だから景色は良いんだけどね、慣れないと息は苦しい」

 

 婆ちゃんは、対岸の大陸の写真をみているようだった。

 

「これ、ミーよ。これはなにさね。森か?島のようさね」

「ああそれは、内海の対岸にある島だね。下に居たんじゃ見えないけど、上からなら天気次第で見えるって事だね」

「まるで、森が海に浮かんでいるようさね。浜が見えないさね」

「そうなんだよね、島の縁がさ、崖っぽいよ。遠くて判別できないけど」

「え、魔導国にあるお水のような海の先っていう事でしょうか」

「リア姉さん、あの境界へ行ったことあるの?そうそう。それ」

「あの先は、こうなっているんですね。どれくらい離れているか解りますか?」

「写っている比率で言えば、予想どおりで20[㎞]くらいかな。たぶんだけど」

「そんなに離れているんですね、それでは対岸が見えないのも解ります」

 

4. 北の山岳踏破報告会(4)


「これは、真教国かな?また見事な建物だなぁ。教会なんてものじゃなくて、大聖堂と言ったほうがいいくらいだなぁ」

「すげえな、よくこんなもの建てられたな」

「他の教会とか、王城なんかとも違いますし。構造そのものが違う気がしませんか」

「そうだよねえ、やっぱり違うよなぁ。普通の家とかはさ、ほぼ同じ構造なのにさ、遠目にもわかる位に、この大聖堂は建て方が違うよね」

「あそこはなあ、何か隠してねえかな。土木建築技術とか算術とかよ、でなきゃこんなもんできるとは思えねえぞ」

「あぁ精霊真教が都合の良いように隠し事をしているって事でしょうか」

「あると言えば、ありえるよねえ。まあ、本人に聞かなければわからないけどね」

「普通は、教えてなんかくれないよねえ~、禁書棚の本みたいに」

「まあそうだね」

 

5. 金属物と水


「ミーちゃん、真鍮の板で何をしているんですか?」

「あ、リア姉さん。桶を作ろうと思うんだけどね、よっと!空気成形よりは、重石の方が楽だね。縁は叩くしかないか、頑張って丸めるか」

「桶?円形で、お風呂用かしら」

「うん、とりあえず水に浮くかの実験用かな」

「水に浮く?金属ですよ?浮くのかしら。魔導具ですか?」

「違いますよ、ただの金属板でできた桶です」

 

 お洗濯用の木製盥に水を入れて

 

「さて、浮くかなー」

 

 桶の直径が25[㌢]、深さ15[㌢]ですと、約7000[㌢^3]。7[㍑]ですよね、あっているかな。内容水の重さは7[㎏]ですね。底面積が468[㌢^2]。平米だと0.0468[㍍^2]か。こんな計算を人には見せられないですけどね。桶の側面が1125[㌢^2]ですから0.1[㍍^2]かな?比重が10位として、1[㎏]となるはずだよね、桶全体だと、およそ1.5[㎏]ということでしょうか。持った感じだと、もう少し軽い気がしますけど、計算がものすごく適当ですからね、円周率3だもん。比重はもっと小さいはずだし、まあ良いか。

 

「浮いた、浮いた」

「金属なのに、浮きましたね。どうしてでしょう」

「いや、中身無いからね。枠だけだからね、たぶんそのせいかな」

「あーそうですね。でも何か法則はありそうですね」

「うん、誰か調べてくれないですかね?もっと正確に」

「重さとか、長さの単位が、絶対的な物にならないとだめではないでしょうか。今の単位は、国ごとに違いますもの」

「そうだねえ。当分無理かな」

「そうですね、でもそれが出来ないと、前にミーちゃんが言っていた『解明する学問』が成り立たないような気がしますね」

「そうだね、まだまだ先になりそうだね。がんばれ人類」

「あはははは」

 

 今度は、小さく切った角材を浮かべてみました。

 

「木は浮きますよね。木ですものね」

「そう思います?」

「えっ!違うんですか」

「えーとですね、木ってよーく見ると小さい穴が開いているんですけど、魔力視できますか」

「あ、本当ですね。これはなんでしょう」

「たぶんね、木がご飯として、土から水を汲み上げている管だと思います」

「なるほど。あらっ?まさかここを水で満たすと沈むとかないですよね」

「やってみましょうか?それっ!」

 

 圧力を掛けて注水、反対側から水が滴り落ちた所で、盥にドボン。

 

「沈んでしまいましたね。木だから浮くって事ではないんですね」

「そういう事ですね。管が空洞だから浮くんです。沈んだ木片持ってみます?」

「重いですね。なるほど、これだと浮く気がしませんね。エイッ!」

 

 中の水が弾け飛ぶように排水されると、当然軽くなります。

 

「今度は浮きましたね。面白いですね。確かにこういう現象を解明すると、魔導具も進化するような気がしますね、気が遠くなりそうですけど」

「あははははは」

 

6. ガンさん達のお子さん

 

 二人とも元気に家の中を這い回っています。やっぱり早いよねえ、そんな気がするんですけど。兎の毛皮で、ロウタの子どもたちに作ったコロコロ縫い包みを人用にしてみました。ついでにロウタ達の縫い包み人形を作りました。中には鈴が入っています。投げるとチリンと音がする人形。奥さんズとエッちゃんが頑張りました。投げては這い這いで近づきを繰り返し、手放さなくなりまして、そりゃもう涎でベットベト。アハハハ。とうとう奥さんズも洗浄魔法が使えるようになりました。今のところ、当人たちは気にもしていないし、不思議がってもいないので、使ってもセーフです。まあ、なるべく見せないようにしているみたいですけど。

 

「ミーちゃん、ありがとう」

「作ったのは、ヒルダさん達で、アタシじゃないよ」

「私等じゃ、思いつかないわよ」

「街にはなかったの?そういや雑貨屋でも見かけなかったね」

「そうね、赤子用品なんて、売れないわよ」

「なんでって、あぁそういう世の中だもんねえ。ここなら冗談みたいな薬もあるけど、普通はないよね」

「そうなの、おババ様には感謝しか無いわ。この前は助かったのよ、熱がでてね」

「そうだねえ、乳離れまでは大変だよね。マルソーおいでえ。いい子だねえ。はい足をバタバタ動かしてみてねえ。おぉ、こりゃもうすぐ立てるかな。すごいなあ」

「あぁ、そうやって成長を見ればいいのか、そうかそうか」

「えっ、しないの?」

「しないわよ、普通の農家だと年中それなりに忙しいじゃない?籠に入れたままってのが多いかな」

「なるほど。じゃあ、こういう紐を作ってみれば」

 

 所謂、おんぶひもですけどね、座布団に紐がついたみたいなのを絵にしてみました。早速作り上げてしまいました。二人とも、器用ですね。

 

「これならいつも背負っていられるわね」

「そうよね、これは良いわ。こんなの街じゃ売っていないわよね」

「そうなの?赤子用ってなーんも無いのね」

「「そうよ、ここがすごいのよ」」

「休んでいる時、座面を前に回せば、顔を合わせられるよ。話しかけると良いです」

「「なるほど」」

「たぶんだけどね、そうすると知らない内に言葉を覚えるようになるからね」

「「学院行く必要がないわね」」

「いやいや、子供はお友達が大切だよ。今からどうするか考えておかないと。たぶんその頃は、街に戻っているような気がするけど」

「「どうして」」

「お姉さん、いつまでもここに居るわけないでしょ」

「「それもそうね。うちの人と話をしておかないとね」」

「そうだよ。その時に慌てないようにね」

「「そうね、そうする」」


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