(08-15)深森の廃村(例の日)
(08-15)深森の廃村(例の日)
魔導国への留学時に採集してきた、眠り草とか安眠草の一部を同じく魔導国から持ち帰った土と一緒に温室へ。最初は育っていましたが、暫くするとしおれ始めて、結局枯れてしまいました。時期が悪かったのか、あるいは土中の養分とか、放線菌とかの存在によるのか、原因はまだ判りませんが、本当に魔導国専用みたいな草ですね。アドちゃんやらエル君に聞くと『そう言うのはわからん』ですって。聞き方が悪いのかな?なんとなく王様とか、神様の制限が入っている感じがします。なんとかしたいですけど、自然が相手だと分が悪い辺境村村娘です。まだ、お寒いです。
1. 高分子吸収材はどこですか
「ミーちゃん、それ何って魔石?もうできたの」
「まあだだよ。ほら、体験していないでしょ、だから様子が解らないんだよねー」
「あ~それはそうだねえ『鬱陶しい』ってどういう風にとか、わからないよね」
「エッちゃんもわからないかー」
「ワタシだってまだで~す。わっかりませ~ん」
必要なのは、なんたらポリマーとか言われる高い水分保持性能を持つ材料です。何処にもありませんけれど。其処の方『破裏拳…』なんて言うとお歳がバレますよ。さて、吸水するとゲル状になって対象の保持をするという素材ですが、婆ちゃエモンに聞いても『ないさね』で終わり。なんとか水魔法辺りで出来ないものでしょうかね。
「全てを魔法で消し去ろうとするとね、乾燥しずぎちゃうんだよねえ、とっても困るんだよねー」
「あっ、カサカサになっちゃうんだ。炎症を起こしそうだね」
「そういう事。自動で魔法を発動するきっかけが無いのよねえ。年中だと魔力消費が多いしね、さらには返って健康が害されるって言うね、困ったもんだ」
エッちゃんが、精霊会話盤を取り出して、なにかお話をしているような。
「ミーちゃん、『閾値』って何かな?春水ちゃんが言っているんだけど」
「閾値?えーとね、あることを成すための境界となる値かな?『これより増えたら実行します』みたいな。そんな感じだったと思うんだけど…ン?」
〔アッちゃん、魔導具に刻んだ魔法の履行に閾値なんて設定出来るの?〕
〔今まで使った事はありませんけど、できますわねえ〕
〔あれま、そうなんだ〕
「閾値って設定できるみたいね。エッちゃん、春水ちゃんにお礼言っておいて。うちの子は使った事がないって」
「春水ちゃんも使った事が無いって。人が使わないと駄目なんだね、もっとお勉強しないとね」
「精霊さん達とお話できる人が増えると、いろいろ工夫案が出るねー」
「そうか、そうだよねえ。皆で考えればもっと色々できるようになりそうだね」
そこで、とりあえずの閾値をイメージとして設定した『水洗浄』と『光洗浄』を多重登録した魔石を用意して、一度乾燥させてから布地に水を霧状に軽くシュパッ。
「おぉ、本当だ。発動しないね、これは凄い」
もう一度乾燥させてから、今度はジャバー。そのまま水が消えていく。
「凄いね、綺麗サッパリと消えるね。あとは閾値を決めないとね、人体実験じゃー」
「あははは、ミーちゃん、ひっどぉーい」
「いいの、アタシは来ていないんだから、仕方がないの」
参加者は5名で、奥さんズとお姉さんズ。作動するとどうなるかを説明したら、ひとまず違和感がないか確かめてもらう事にしました。
「重さは感じませんね」
「異物感もありませんわ」
一応高評価ですね、次はピクシさんと取り付けについて相談しましょう。
2. 夜も安心
ということでやって来ました、蛍堂。
「ピクシさん、斯々然々で云々かんぬん。それでね、取り外しとかができるようにしたいんだけど、できますかね」
「『◎□◎』みたいに、取り付け用の穴を開ければ簡単に行くんじゃないかね」
「なるほど、縫い付け用の穴を開けて、別布に縫い込めばいいのか」
「そうそう、その別布に釦を付けて、取り外しができるようにしたらどうだい」
それでは早速、円形に加工した兎魔石の四隅に取付穴を開けて浄化魔石にします。長方形とか瓢箪型とかだと折れそうで怖いですからね、円形が一番でしょう。袋状にしたナプキンモドキに取り付けて、下着に装着できるようにしてもらいました。
「取り付けた感じは、問題なさそうですね。履いたらどうかは、分かりませんけど」
「はい!真っ最中がここにいまーす。私のに付けたいです」
「あっ!私もー。そろそろ来るー。まだあるかしら」
店員さん達が立候補してくれました。現役女性ばかりの職場だと便利だわー。
「えっ、じゃあお願いできますか」
「はーい、ちょっと待っていてね。付けてくるね」
さすがはプロって所ですかね、10分もしない内に取り付け加工が終わったらしくて、替えの下着に履き替えてモデルになってくれました。
「わっ、これ良い。汚れないのが一番いいわね。凄いわ!後は寝ている間かしらね」
「そうか、もしかして後ろに廻っちゃうのかな」
「そうそう、よく分かるわね。でもその場で消し去るんでしょ、大丈夫そうだよね」
「そうですね、でしたら次に来たときに教えてくださいね」
「判りました。うん、これは良いわー。始末も楽そうだし」
という事で、手持ちの兎魔石(複数を結合したもの)を2つほど加工して置いてきました。で、問題が発覚。魔石が足りなくなる。そりゃもう確実に。一番狩りやすいのが一角魔兎ですから、乱獲が始まりそう。いくらピョンピョンしている魔獣と言えどもこの世の生物。連鎖の一部なので、絶滅するとどうなるか分かりません。さて困った。
3. 生物魔石
「ミーちゃん、何を考えているのかしら」
「あ、リア姉さん。あのね、生理用品を作ろうとするでしょ、魔石を使うでしょ、魔獣が減るんですよ。狩猟に制限を付けても良いんですけどね、お金になるとなったらそんなもん誰も気にしなくなるんですよ。それで、狩り過ぎて絶滅したとしますね、魔獣と言えども居なくなったらどうなるのかと考えていたんだけどね、思いつきませーん」
「そういう事ですか。そうですよね、今まではそれほど数が出るわけではありませんでしたからね、供給が間に合っていたんでしょうね。間に合わなくなったらどうなるかと言うのは、そう言えば考えた事がありませんでしたね」
「ロウタ達みたいに、飼うことはできないのかしら」
「魔獣だからねえ、お姉さんは飼う気ある?何百何千羽という数の魔兎」
「そうね、一羽二羽ではないわけね。素材となると千とか万の単位になるのね」
「なるほど、棘草農園というわけには行きませんものね、動物ですものね」
「たぶんだけど、結構怖いよ。城壁みたいなので囲む必要もあるだろうし」
「リア様、生物魔石ってどうやってできるんでしょう」
「私は、存じてはおりませんわね。そう言えば、誰も知らないのでは無いかしら」
「魔獣を倒すと魔石が取れるって事しか知られてはいませんよね」
「それねえ。生きている間は魔石を感じ取る事ができないんだよねえ、魔力の根源の場所はわかるんだけどね、石の存在は感知できないの」
「えっ?それってどういう事でしょう、死んでしまう直前に魔石が生成されるって事かしら」
「たぶんそういう事かなあーって思っているのだけどね、極めて短時間の間に生成されるとするとね、なんとなくだけど、神様案件かなーって」
「なるほど、実際に戦ったことがあるミーちゃんだからこそですわね。神様案件ですか、人には手が出せない領域にある生命の理と言う事でしょうかしら」
「ワタシはそう思っているんだけどね」
「大量の生物魔石を用意する方法ですか…思いつきませんねぇ」
「「「「ねぇ~」」」」
4. 人造魔石(1)
とまあ、ある程度の大きさのを大量に用立てる必要があるんですけどね、鉱物魔石ではできないんですよ。どうしても生物魔石でないと効果を得られませんでした。これは、困りましたね。
「生物魔石ねえ。エッちゃん、そう言えば魔石ってさあ、どういう手順で発生するんだろうね」
「え~、わからないよ。でも、そうだねえ、体の中に空気ってあるのかな」
「空気?息を吸い込む『肺』だっけ、それとか血液中かな。あるとすれば」
「血?そんな所にも入っているんだ。でも少しでしょ?」
「まあ、そうだね。吸い込んだ空気を体中に行き渡らせるのが血だからねえ」
「なるほど~。魔石って『赤い』よね、普通。あれは?血のせいかな」
「そうだね、そうかも知れない。血かあー。血ねえ。あとは魔力の塊か」
「ミーちゃんが言っていたけど、神様がどうにかしているとすると何をしているんだろうね」
「そうだねぇー。石のように固める所かな。どうやっているかは知らんけど」
固めるって言うと、魔力の塊に圧力を加えるって事かなあ、瞬間的な高圧の印加?高温はなさそうだよね、そんな事したら、魔獣が燃え上がるだろうしね。
「血液と圧力か、大蛇の血は余っているね。ちょっと試してみるか」
保存のために酸欠状態にした大蛇の血と、魔力を適当に混合して球状にして見ました。硬さ大きさは一口大の飴くらい。次は何をするかと言うと。
〔ジュンちゃーん、ちょっとこれに高圧を加えて見て〕
〔どの位?〕
〔えーと、水刃のとき位の高圧かな?全体的に包み込むように。ついでにその周りの空気を抜いておいてって、そっちはフウちゃんの方がいいか〕
〔はいよー〕
〔わかりましたわ〕
〔〔それっ!〕〕
両手を合わせて、その間に混合魔力塊を挟んで、超高圧で包み込む事しばし。人造ダイヤモンド製造機になった気分。
〔これでどう?って何これ、石?石から魔力反応?あっ、これ魔石だっ!あんた、魔石を作っちゃったわよ。どういう人間よ〕
〔これはまた、とんでも無い人間ですわね〕
〔えー、作ってくれたのはジュンちゃん達じゃーん、アタシじゃないもん〕
〔あんただよ〕
「おっ、なんかできた」
「ミーちゃん、それ魔石じゃないの?」
「そうかな、そうだね、魔石になったね。でも麦粒みたいだね。小さくない?」
「いやいやいや、小さくても魔石には変わりないでしょ。やったね」
〔二人ともありがとうね〕
〔ちょっと、皆に話してくるね、とんでもねえ人間がいるって〕
〔何よそれ。まったねー〕
5. 人造魔石(2)
一角魔兎の魔石はだいたい小豆位です。長さ5[㍉]くらいかな。今しがたできた魔石は1[㍉]弱、めっさ小さい。それでも重さの比的には10個分くらいに収まっていました。薬用天秤で量りましたので、まあ正確でしょう。でも魔兎の魔石に届かせるには10個必要なんですよ。結構頑張ったんだよ、魔石作り。頑張ったのはジュンちゃん達ですけど。更にそれが5羽分ほどないと『女の魔導具』にはなりません。うへえ、50個かい。なんとかせねば効率が悪いです。
「人造できたのは良いけど、小さい。小さすぎる」
「ミーちゃん、沢山作ってまとめるのは?」
「幾つ要るのか見当が付きませーん」
「あの浅瀬にいた貝が居れば良いのですけどね」
「浅瀬?あっ!あれか」
「浅瀬?魔導国のでしょうか」
「そうですわ。あそこには、真珠のような石がとれる貝がおりまして、それが実は魔石なのをミーちゃんが発見したのです。生きたまま魔石を作れる貝ですわ」
「えっ、我が国にですか?存じませんでした」
「あーこれなんですけどね、発表すると乱獲されそうでねえ、魔獣登録していないんですよねぇ」
「あ、それは判ります。アッザーミ領にもそういうのはありますから」
リア姉さん達に、いつぞやの観光の際に取れた真珠モドキを見せてみました。だいたい8[㍉]位ですね、結構大玉なんですよ。真珠のような輝きはないんです、魔石だから当たり前かもしれませんが。
「よし、魔導国で育ててもらおう、何年かかるかわからんけど。帝国にも居ればいいのにね。みんなで飼えば一気に作れるのに」
とりあえず、リア姉さんにお願いして、魔導国で調査してもらう事にしました。その後は、養殖化の研究でしょうか、できると良いね。本家の御木本さんだって何年も掛かっていたはずですから、まあ気長に待ちましょう。それまでは、どうするべ。魔獣さん達には頑張って繁殖してもらおうかね。
「そうだ、ミーちゃん。領の門前を流れている川がありますでしょ?あの下流にも同じような見た目の貝がいるとか聞いたことがありましてよ」
「そうなの?淡水貝って事かな。下流と言うと南の辺境伯様かね?調査をお願いしてもらわないといけないかな」
「そうですわね、連絡してみましょう」
ふっふっふ。女のためだ、男どもよ頑張るが良い。




