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(08-13)深森の廃村(驚愕中)

(08-13)深森の廃村(驚愕中)


 未だに雪が降り積もる深森の廃村からお送りします。収穫された春麦がね、相変わらず大量。秋麦はね、このままだと駄目になるんじゃないですかね、魔導国よりは降雪が少ないですけどね、どうなる事やら。帝国国内向け精霊会話盤の量産の為に帰ってきました、辺境村村娘です。


1. お部屋にご案内


「魔導国アッザーミ伯爵家長女、サーワと申します。ミーちゃんが此方をと言いまして、こんな物ですけど、宜しければお納め下さい」

「ん?なんと!こりゃ新種さね。あんた新種を見つけたのかい」

「はい、ミーちゃんに護衛して貰って森で見つけてまいりました」

「そりゃ凄いね、よくやった。有り難く頂くよ」

「ほらね。婆ちゃん、こういうの大好きだから」

「そりゃ、そうさね。新種なんて、そうそう見つけられるもんじゃないさね」

「じゃ、部屋を決めよう。こっちだよ」

「それよりミーちゃん。この明るさは何ですか?」

「えっ?何を仰るジージョさん。向こうの屋敷にもあったでしょ」

「は?まさか全室にあの照明があるんですか?」

「うん、そうだね」

「えっ、えーーーっ!ここは別世界ですかしら」

「さっ、サーワお嬢様、異世界ですよ、異世界」

「いや、ただの廃村だよ。はい、こちらでーす」


 なんかね、遠くで驚いている声がするんですけど、ハンジョさん家の方かな。後で聞いてみよ。


「部屋はリア姉さんの隣でいいですよね」

「はい、そうして下さい。あのこれは」

「洗面所です。蛇口を捻れば上水が出ます。向こうにもありましたよね」

「えと、これは鏡?でしょうか」

「そうですね、まだ一面鏡ですけど。化粧台になっています」

「あの、ここはなんですか」

「用足ですけど。使い方はあっちと同じです」

「流石にお風呂は中にありませんよね」

「それは、次に案内しますね」


 お馴染みのお風呂です。


「あの、あそこに動物が見えるんですけど、あれは?」

「近所の魔獣ですね、ロウタ達は右の家にいますから、安心して下さい」

「ま…魔獣ですか」

「はい、昼間ならよく見えるんですけどね、今はもう目しか光って見えませんね」

「ミーちゃん、これがお風呂ですか、どうやって沸かすんでしょう」

「これですか?年中湧いていますので、いつでも使えますよ」

「は…年中?魔法ですか」

「いや、自然の湧き水、じゃない、湧き湯ですね」

「お湯が湧き出しているって事ですか、地面から?」

「そう、向こうの山に湧いているので、ここまで持って来ています」

「ジージョ、私やはり異世界に迷い込んでしまったようです」

「いや、だから唯の廃村ですってば。お風呂入ります?あ、ライザさん」

「今日はこちらでお願いします。ちょっとお尋ねしたい事が」

「あ、はい。エッちゃん達も来たんで、皆んなで入りましょう。結構広いんですよ」


2. やっぱ温泉はええわあ


「ミーちゃんで宜しいかしら、あのね水板、あれ売って下さいな」

「下さいません。今はまだだめです。以上終わり」

「あれはとても良いものよ、お友達に贈ってあげたいの、駄目かしら」

「終わりと言いました。しつこいですね」

「あの人もそうでしたが、何故ですか。褒めているではありませんか。とても良いものなのですよ、お友達にも広めたいではありませんか」

「ハンジョさんが説明しても解らないお馬鹿さんを、説得できる能力は私にはありません。売って欲しいというのは、貴方の物欲に加え見栄少々でしょうが、それによって此処にいる全員が迷惑を被るからですよ。これ以上煩いなら、始末します」

「許して上げて下さい。だからだめだと言っているじゃないか。連れてくるべきじゃなかったかな」

「あっはっはっは。ハンジョー、嫁さんしっかり教育しとけよー」

「全くもって申し訳ありませんな。水板の器と鏡に目がくらんでしまったようで、言っても聞いてくれんのです」

「よし、便利なものを作り過ぎたミーが悪い。ってことで次は無いのか?」

「時期的には、まだじゃない?丸いものを掴めるようになった?」

「布を丸めたのなら掴んでいるけどな」

「うそん、早くない?まだ半年だよ。子供の成長は本当に早いな」

「ミーちゃんが言うなよ。僕の所も同じ感じだね。掴めると何かあるのかい」

「あるよ。握力が上がると、直ぐに這い回るようになるから、手足の筋肉が丈夫になるでしょ、そうしたらお腹とか足の力を上げて、立つのを促進する玩具とかが、魔力保有量の向上に役立つ。知力の方は、型紙合わせができるようになるかな。知力を上げれば、魔力制御の役に立つ」

「なるほど。成長に合わせて魔力制御の仕方を覚えさせるのか。本人は気が付かないんだよな、それで知らない内に魔力量が増えるのか」

「そう、安全でしょ。魔法を目の前で使っちゃだめだよ。それやるとアタシになっちゃうからね、将来が不安になる」

「お前、自分で言うなよ」

「ミーちゃん凄いわねー、子供産んだことあるの?」

「ヒルダさんや、わたしゃまだ来ていないよ。相手もおらんよ」

「ぶぁはっはっは。お前はアホか!つうか、ミーお前なんで知っているんだよ」

「前にいた村の神父さんの本に書いてあった」

「えっ!ワタシ読んだことがないよ」

「隙を見て、こそこそ見るに決まっているじゃん。精霊真教三千年の怪しい本」

「あ~あれか~、禁書庫のか。後で教えてね」

「はいよ。あっ、来ていないで思い出した!お嬢さんズ、来た時はどうするの」

「「「「鬱陶しいですわ」」」」


 うーわ、拳握って力説していますよ。よっぽどなんですかね。こっちに来て運動量が上がっているので、前よりは軽くなっているはずなんですけどね、違うのかな。


「そうよねえ、また来るようになったもんねえ、ヨルダー」

「ねー、前よりは良いけどね」


 此方は、経産婦さん達ですから、ほのぼのしていますよね。


「『また来た』って当たり前じゃん。そうか、魔導具じゃないんだ」

「えっ、魔導具でなんとかできるんですか?」

「下級鎮痛水薬か相当の治癒魔法。光と水の魔導具で、たぶん」

「作りましょう、ぜひとも作りましょう。私重いし多いのです。切実なんです」

「あ、大変そう」


 女のおしゃべりが止まらないまま、夜はふける。


3. 『パンツを作って下さい』の前に


 女の魔導具1号を作るなら、それを装着する物体から変えないと駄目じゃんねえ。ということで、下着を披露しまして、皆さんの意見を聞くことにしました。とは言ってもお子様パンツ形状だからねえ、艶っぽいお姉さんパンツには程遠い。まずはどういう代物になる予定なのかを開示しましてですね、意見を纏めようとしたのですけどね。


「ミーちゃん、あれを来なくする事は?できないのかしら」

「子を産めなくなる。女ではなくなりますが、宜しいか」

「子を産めなくなるのは、困りますわね。所で、あれはなんなのかしら」

「ありゃっ?そこからっ?!」


 仕方がない事ですけど、知られていないらしいです。そこで、魔力写真をX線状(レントゲン)にしてお腹の中を撮影してですね、説明会。なんかだんだん後退していませんかね。ひとまず全てを『(ここには居ない、おそらく遭う事もない)神父さんの怪しい本』のせいにして、説明してみました。いや、だってまあそういう事ですよ。誰も知らない事を、なぜ私が知っているのかと問われれば、説明できませんでしょ。


「こういう事でしたのね、それではなくす事はできませんね」

「うん、だから鬱陶しいとならない程度に抑えるしかないの。たぶん」

「なるほどなあ、人間てえのは面白えな。女の腹ん中ってこうなっているのか、歳には関係ねえのか?」


 ヒルダさんのお腹と、私のお腹を指さしながら


「大きさは違うだろうけど、同じだよ。男のお股にぶら下がっているのも見る?」

「いや、今はいい。なんかここで脱がされそうでよ」

「チッ!分かったか」

「オイッ!」

「「「「キャァー」」」」


 えっ、男はだめだろうって、いやいや知らない方が駄目でしょうよ。


「その仕組からするとさ、子ができるのを止める事もできそうだよね」

「たぶんね、そっち用には『女の魔導具2号』とか『男の魔導具1号』とかが要るだろうけどね」

「作りませんの?」

「アタシにはまだ要らないから、後回しでした。悪用する男も出てくるだろうしね『これがありゃ、孕みやしねえから、襲っちまえ』って」

「あぁそうですわね。その可能性もあると言う事ですわね」

「そう言う事ですか。安心・安全の為の道具で、こちらの身が危険になる事もある訳ですね」

「なるほど。やっぱり此処は異世界ですね、学院よりすごいです」


 まあ、所謂避妊具と言われる代物ですけど、今はどうでも良いです。


「ミーちゃん、婦人下着もそうですが、この魔導具を実現すると、永遠に売れる事になりますな。しかも人属の半分向けにですぞ」

「まあ、親から子へって言う代物でなければ、そうなりますねえ」

「これは、また画期的な。私は、そうそう死ねませんな」

「あっはっはっは。長生きして下さい」

「そう致しましょう」


4. パンツを作って下さいな


 この世界はですね、噂の巡りは早いくせに、まともな情報としっかりとした技術の伝搬は異常に遅いのです『おねーさん、パンツ作ってえ』なんて言いに行こうものなら、噂だけが飛び回り、技術伝搬がないから、一人に集中してえらい事になるのですよ。婆ちゃんの講義休み(最近はサーワ姉さんが増えました)に街に出て確認すると、やっぱり全然、全く広まっていませんでした。


「店長さん、大人向け下着作りが一気に6人分程来るんですけど、さばけます?ついでに言うと全員お貴族様」

「えっ!無理無理無理」

「他に出来る人はいますか」

「ごめん、宛がない」


 仕方がないので、伯爵様の奥様であるエリアル様に助けを求めます。


「まあ!なんですのそれは。下着?それが?少し足が出すぎではございませんこと。はしたないですわよ、お脱ぎなさい」

「そうでございますね。婦人が身につける物では御座いません。おやめなさい」


 ぎゃあー。まずは、御婦人の意識から変えないと駄目でした。魔導具1号の為には▽は必須なのですよ。△じゃ留められないでしょ。まったく固定観念と言うのは、誰が広めたんでしょうね、どうにもなりませんね。いちいち説得するのが面倒なので、とりあえず逃げました。


「うひゃー、エッちゃん。こんなに頭が固いとは思っていなかったよ」

「そうだねー、ミーちゃん。履いてみれば判るのにね。試し…見本がないわよ」

「あ!そうか。大人が履ける下着があればいいのか」


 慌てて街まで逃げてきて、いかん!パンツ姿のままだった。やっと気が付きました。と言う事で、もう一度下着店長さんの所へ、そうだ名前聞いていないや。


「店長さーん、アタシはミールって言います。お名前聞いていなかった」

「私かい?ピクシだよ。っていうか、さっさと上を着なさい。どうしたの」

「これね、辺境伯様の所へお願いに行ったら、脱がされそうになったの。いまさっき下着のままだったのに気がついたんだよね、ちょっと失礼。いやー焦った」

「ちょっと、貴女方。お待ちなさいな。今の下着でしょ?もう一度見せては頂けないかしら」

「「変態?」」

「違いますわよ、大通りで婦人服を扱っている『蛍屋』のココって言いますの」

「ココさんですか、ミールって言います。えっと、替えのでいいですか」

「もちろんです」


 いまさら脱ぐわけにも行きませんので、鞄から替えのパンツを取り出して、ココさんに渡してみました。


「あら、これは裁断が変わっていますね。貴女が作ったの」

「違います。こちらの店長さんで、えっとピクシさんです」

「こんな露店通りに下着店があったなんて知りませんでした。ちょっとここの縫い目の始末を教えてくださらないかしら」

「えっと、只とは行きませんよ。これでも結構開発費用が掛かっているんです」

「御免なさい、それもそうですわね。私の店に行きませんか?中でお話くださいな」

「えーっと、この子達も一緒で良いですかね?元々はこの子達から依頼されたんで」

「あら、そうなの。ミールさんでしたかしら、考えたのは貴女なの?」

「まあ、そういう事になるんですかね。絵を書いて渡しただけですけどね」

「それなら、ご一緒して下さいな」


 と言う事で、ピクシさんのお店を畳んで3人でのこのこ付いていくと、大通りに面した所に瀟洒なお店。この手のお店は門前払いなので、入った事がなかったよ。


「「うっわー、辺境伯様の所にあるような綺麗な服ばっかり」」

「お二人は、ご領主様をご存知なの?」

「はい、親切にして頂いています」

「あ、もしかしてハンジョ支店に出入りしている女の子って貴方達?」

「あー『年端もいかない冒険者服の』ってついていたら、アタシ達かな」

「そうね、冒険者。小さな子が冒険者なんてありえないと思っていたんだけど、そう貴方達だったって事ね。さて、あの下着なんですけどね、裁断も裁縫も変わっていましたでしょ、まずは何故なのかをお願いできるかしら」

「えーと、今ですね、この下着を必要としているお嬢様が何人かいるんですが、その人達の下着を作って下さるのでしたら、お話いたしますけど。あと、ピクシさんの開発費用をお出し頂けるというか、技術契約をして頂けると嬉しいのですが」

「技術契約?」

「そうです。技術を利用して製品を作るなら、その製品売上の3割を技術料としてピクシさんにお支払い頂くと言う契約ですね」

「よくご存知ね。流石に只では出してもらえないか」

「あー、小娘ならごまかせると思いましたか?ピクシさん、こちら人が良くないです。帰りましょう」

「待って頂戴。判りました。商業組合で公証人を立てて契約しましょう」

「公証人?ピクシさん、10金ありますか」


『10金』と言った所で、ココさんの表情が少し動きました。あー、まだ何か企んでいたか。


「無いわよ。そんな大金」

「なるほど、公証人に支払いができない場合、支払った者の権利になるとか言うのを使おうとでもしましたかね」

「そこまで知っているのね。負けました。しっかりと契約致しましょう」

「では公証人さんは、必要でしたらこちらで用立て致します」

「本当にこまっしゃくれていますね」

「全く信用できないと言うのは、そういう言い回しをする所ですよ」


 それではと、ピクシさんを連れてハンジョさん宅へお邪魔します。ココさんは先に商業組合に行っているそうな。まだ何か企んでいそう。


「斯々然々でご一緒頂きたいのですけど、いいですかね」

「ふっ、これはまた面白い。良いでしょう。交渉はお任せ下さい。ついでに公証人資格も持っていますから、今回の場合ですと有効ですぞ」

「あ、助かります。その辺は素人なので」

「商売をお教えしたくなりますね」


 ハンジョさんと一緒に、4人で商業組合に向かいます。契約内容は、ピクシさんもわかるそうなので、私達は大人しく横で静かにしています。ハンジョさんは公証人として、公平に契約内容を確認する証人ですので、やっぱり見守るだけ。今の時代の公証人と言うのは、商業組合から承認されて、公正証書の作成、定款等の承認なんかを行う人なので、公務員ではありません。


「それでは、こちらに署名をお願いします」


 商業組合は、タントさんと言う人が担当者となっているようです。ココさんとピクシさんが署名して、ハンジョさんが承認すれば契約終わり。


「おお、面白そうな筆記用具ですね。魔力が滲んでいますよ」

「なんですかな、魔(【ペン】)?可怪しいですな、契約に魔(【ペン】)は禁止ですぞ」

「いや…間違えたかな。今普通の(【ペン】)がないんですよ」


 普通にインクペンを使えばいいのに、魔力ペンを使ったので、エッちゃんがちょっとココさんが持っていたペンを横取りして、適当な紙に署名してみました。なんと言う事でしょう、裏に別の文字が滲み出て来ました。


「この裏に出てきた文字は、なんですか?」

「契約の邪魔をするな、このガキ共が」

「組合長さーん、この組合では契約の際に魔(【ペン】)を使うんですか?」


 組合長さんがすっ飛んできましてね


「いや、通常の物ですが。魔(【ペン】)なぞは使いませんな。何かございましたか」

「ほら、この担当者さんがココさんに渡した(【ペン】)から魔力が滲んでいますでしょ、普通の紙に書くと裏に別の文字が出てくるんですよ、魔石を埋めた魔法契約書だと何も出ませんけど、乾燥させるとやっぱり字が出てきますね」


 今どきのインクってなかなか乾かないのが普通です。速乾?ありゃしませんがな。ドライヤーで完全に乾かすと、普通紙みたく裏に文字が出てきました。文言としてはですね、ココさんに売上金の1割5分が、関係ないタントさんに1割、ピクシさんに5分が支払われる事になっていました。なんぞこれ。


「警備!二人を確保。騎士団に連絡し蛍屋を抑えて貰え。タントが署名した魔法契約書を全部用意しておけ」


 うわぉ、いきなり組合長さんが叫びだしたので、吃驚しました。


「あ、すまんな。驚かせた。証拠を隠滅されると不味いのでな」

「いえいえ、よく通る魅惑的なお声でしたよ」

「ありがとう。ハンジョ殿も確認して貰えますかな」

「了解しました。魔力の滲みなぞよく判りましたな、弱くて私では気が付きませんでしたぞ。流石ミーちゃんですな」

「魔力だけならお手の物ですから。中身はさっぱりですが」

「はっはっは。いつでもお教えしますぞ」


 逃げようとしていた担当者は、ココさんと一緒に警備さんに取り押さえられまして、何か叫んでいますが、どうでも良いですね。


「良かったー。私じゃ騙されていたよね。騙されていた人が沢山いそうだね」

「そうですね、でもそれは騎士団と組合におまかせしましょう。組合長さん、ココさんのお店って、お針子さんが結構いますけど、あの人達どうなりますかね」

「うーん、罪状が確定すれば、店はなくなりますからな、今回の事に関係していなければ、普通は解雇でしょうか」

「そうなりますよね。ピクシさんは、あのお店の人達どう思う?技術は?」

「そうだね、全員じゃないにしても、私より腕がいい人もいるっぽいねえ、服飾造形(デザイン)の考え方も素晴らしくできのいい人がいるみたいよ。私は、下着専門でやって来たし、上着は平民用だけだろ、大して図案は持っていないんだよね」

「じゃあ、人を宙ぶらりんにするには、もったいないですよね」

「そうだけどさ、どうするのよ」

「いや、事件が終わったら蛍屋を買ってしまえば良いんじゃなかろうかと。只同然で手に入りますぜ。へっへっへ」

「ミーちゃん、また剛毅ですなァ。まあ、確かにできますな」

「ピクシさん、蛍屋をやらない?」

「ハァ?お店を経営するのかい?露天商だよ、あたしぁ」

「組合から人を貸して貰えば大丈夫じゃないかな。確かそういう制度があるよ、ありますよね」

「はい、ございますね。そうですな、組合としてもあんな大店が無くなるのは、ちと困りますからな」

「大丈夫大丈夫、露天に屋根がついただけだから」

「ミーちゃん、それ随分違うと思うよ」

「あんたも大概だねー、全部下着の為かい?」

「その通り」

「あっはっはっは、愉快なお嬢さんだ。どうですか、考えておいて下さい。先程も申し上げましたが、大店が消えるのは好ましくないのです」

「わかったよ、考えさせておくれ。うちの人と相談してみるよ」

「宜しくお願い致します。組合としては期待しておりますぞ」


 その後の顛末はといえば、蛍屋はお取り潰し。財務を担当していた人も、連れて行かれてしまったよ。それで、結構な数の騙されていた人達がいて、お店の資産やら、関係者の資産を売却して補填に充てたらしいです。お店の人達はと言えば、ピクシさんが旦那と一緒に『蛍堂』を新しく作って、お店は存続。めでたく下着が私の手に入りました。


 万事めでたし。


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