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(08-12)魔導薬学院(帰国路)

(08-12)魔導薬学院(帰国路)


 王様とか、ソバーニさんにね、精霊会話盤の事を相談してみましたら、やっぱり結論が同じで、ひっそり広めておいて、見つかった時には既に遅しの数で勝負と成りました。いえね、魔導国も帝国も、王国だって、実は今の精霊真教には手を焼いているんですよ。宗教がですね、信心を使って民衆を取り込み、国政に入り込むなんてのは、良くあることなんですが、良くはないのです。日本でもあったじゃないですか、お寺さんが力を付けて、一国に匹敵するとか、「政治・経済・軍事」の中心になってしまい、超疎まれるっての。疎まれて焼き討ちにあったりとかね、お金が集まると、ろくな事になりません。本分を忘れ、学びを忘れ、人を導く事を忘れ、放蕩自堕落な生活に落ちていきます。それがバレると困るから、兵力・武力を増強し、国の中枢に入り込み操ろうとしてくるわけですね、困ったもんだ。それで、魔銀線と魔銅線。それと光の板をせっせと量産している辺境村村娘です。疲れたビー。


1. さて、帰りましょう


 辺境伯様に相談したら、帝国にもね、一応広められるよう準備すべきだ、というよりとっとと広めようと言う事になりまして、帰る算段をしています。道行ですが、野営の宿があるじゃんねと言う事で。それで、メンバーが二人増えました。サーワ姉さんとジージョさんなんですけど。本当はアッザーミ伯爵家当主も来たがったようですけど、当主というか貴族の移動と言うのは国内ですら面倒で、ましてや国外となりますと、そうそう出られません。そういう訳で、サーワ姉さん。ご当主は『特級薬師様にお会いできるというのに何たることか』と泣いていたそうです。実は、精霊会話盤を広めるに当たり、万が一を考えてちょっと避難しておきましょうというのが真の目的なんですけどね。


「王宮の人達とかへの挨拶も終わったし、釣書もばらまいたし、この屋敷はソバーニさんが使うんだっけ」

「そうですわね、ミーちゃんがいろいろ手を加えましたから、他の方に回すことができなくなりましたからね。仕方がございません。釣書は少々恥ずかしかったのですけど」

「そうですよね、アッザーミの王都邸だってそれなりだと思っていましたけれど、ここは別世界でしたもの」

「はい、私サーワ様に付いて来られて良かったです。こんな世界もあるんですねえ」

「世界?まあた、大げさな。唯の家ですってば」

「これを唯の家と言ってしまう、ミーちゃんが怖いですわよ」

「ここが別世界だったら、帰ったらどうなるのかな。あそこはさらに別物のような気がする」

「エッちゃん、シーッ!ですわ」

「シールちゃん、ソバーニさんが来るまで宜しくね」

「はいっ、お任せ下さい」

「それじゃあね、まったねー」


2. 港町3回目


 なんと、港町経由でないと、道が塞がれていて通れませんでした。降雪量半端ねえ。


「通れない道があるとは、思わなかったね」

「そうですな、まさか本街道があんな事になっていたとは」


 道そのものが無くなっていました。今どきの地図なんてのは頼りになりませんから、道標が所々に立てられているのですけど、無い!というか積雪のため、平地のくせにアルペンルート状態。あの立山の山道ね、あんなのを人手でやったら、開通なんていつになるか分からんやん。魔法でドッカンとするには、本街道はまずかんべえと言う事で、港町経由でこっそりと行く事になりました。海沿いはまだ少ないので、なんとか通れます。


「あれっ?カッフェさんだ。こんにちは」

「おや、バナナちゃん。久しぶり」

「こんな季節に交易ですか」

「いや、逆。海が大荒れで、帰れなくなっちまったのさ」

「ありゃ、それは大変」

「まあ商売は終わったから、金には困っちゃいないけどさ、自然にゃ勝てないよ」

「そう、勝てないんですよ。アタシ達もね、それで迂回中。そうだ、聞いておきたかった事があるんですけど、一つ良いですか」

「うん?なんだい」

「あれだけの船があるって事は、海向こうの技術って相当進んでいると思うんですけど、船の本とか出ていませんか」

「この前の廃船かい?うーん、建造技術は秘匿でねえ、悪いけど漏らす訳にはいかないんだよ」

「まあ、そうですよね。それは残念。それじゃ、また」

「またね。今度は沢山買っておくれよ」

「あっ、忘れてた。あの、これですけどね、カッカウを磨り潰したら牛乳酪(バター)みたくなったんですけど、何かに使えませんかね。調べてみて貰えませんか」

「あれを磨り潰したぁ?相当磨らなきゃこうはならないだろうに、わかった有り難く貰っとくよ」

「はい、お願いしますね」


 おしい、船関連はやっぱり秘匿でした。まあ当然だよね。ただなあ、こんな世の中だとねえ、あれに魔導砲(あるかは知らないけど)とか積まれたらたまったもんじゃ無いですよね。すなわち魔導戦列艦。怖くないですかね、万が一を考えれば、私は怖いぞ。見てはみたいけど。格好良さそうだしね、魔導戦列艦。『魔導砲発射よーい、てー』とか、当てられたくは無いかな。後は、チョコレートが出来ます様に。


3. 氷原越えて


「大きな船でしたね、私こちらに来たのは初めてで、街が雪で埋もれていたのが残念です」

「お嬢様は、あまり外へは出ないもんねえ」

「そうですね、でも良い経験になりそうです」

「本当にそうですよね、私帰ったら皆んなに自慢するんです」

「生きて帰れると思うなよー」

「ミーちゃん、脅かさないで下さいよぉ」

「あっはっはっは。さてミーちゃん、あれどうしますか」


 ハンジョさんが指差す先には、元湿地。現氷原が続いています。まあ完全に凍っていればそのままいけますけどね。とりあえず、厚みを調べたら行けそうでした。


「おお!氷原だ。すごーい、本気で異常気象ですね、こりゃ」

「そうですな、今までこんな天候になった事がありませんからな」

「大丈夫そうですよ、馬の蹄鉄も氷対応にしました。ゆっくりと進みましょう」

「では、参りますぞ」


 暫く行くと、普通に車輪の馬車が立ち往生。行けるとでも思ったかな。氷を舐めたら冷たいぞじゃなくて、死ぬぞ。


「どうしました」

「いや、ご覧の有様です。行くも引くもできなくなりました」

「まあ、そうですね。あ、バルトニアのハンジョ商会と申します」

「いや、これは失礼。マジカリアのスガーリ商会です」


 揉み手で近づいて、商売繁盛。


「馬用の蹄鉄覆いなんて如何でしょう。一式5金貨とお安くなっております。今ならまだ安全に引き返せますよ」

「そちらの馬が付けている長靴ですかね?それで動けますか」

「戻る位なら。進む事はお勧めしません」

「いや、助かりました。死ぬ所でした。氷を舐めてはいけませんな」

「毎度、お気をつけて」

「ミーちゃん、あれ1金もしないんじゃなかったかしら」

「へっへっへ、サーワ姉さん。何をおっしゃいますやら、死ぬよりはいいでしょ。5金じゃ少ないよ、10金でも行けたかな。優しいでしょアタシ」

「あっはっは。私の後継者にしたいですな」


4. お家を置きましょう


「湿原を越えましたね、日も落ちそうですし、ここまでかな」

「そうですな。それでは宿にしましょうか」

「はーい」

「ミーちゃん、私達が除雪をしても良いですか」

「良いですよ、どうぞ」

「…あらっ?巧く行きませんね。どうしてかしら」

「雪と氷ですけど、誰を呼んでいます?」

「えっ、普通に地面にありますから、土の精霊ですけれど」

「はっ?水ですよ、あれ」

「「えっ、そうなんですか」」

「おーいっ!雨が凍ったのが雪ですよ。それの塊が氷。だから水」

「そうだったんですね。存じませんでした」

「私も、知りませんでした」

「なんですとー」


 まさかと思いましたけど、そういうのは初等学院でやるんじゃないのかね、と思ったら無いんですってよ。エッちゃんには村でそれとなく教えましたし、お姉さんは廃村で見ていますし、皆んな知っているものだとばかり。学院て何を教えているのかしら。


「そうですよね、いままで何を教わっていたんでしょう」

「ですよねー、学院て行く必要あったんでしょうか」

「いやいや、作法とか読み書きとかは必要でしょ」

「それはそうですけど、生活の知恵とか知識とかも必要ではありませんか」

「お貴族様は、さほど要らないんじゃないですかね」

「私は付き人ですから、どちらかと言えば生活の知恵の方がいいです」

「そういう学び舎は?」

「「無いですね」」

「あっらぁー」

「そう言えば、そうですな。暮らしていく中で覚えて行くものだとばかり思っておりましたぞ。親方なり師匠なりが弟子に教えて行くものだとばかり。そういう慣習でしたからな、なんとも思いませんでした」

「非効率」

「「「「「「「本当にそうですね」」」」」」」


5. ひゃっほーい


 やってみたかったんですよ、アルペンルートのあれ。あっちのは見たことがないんですけどね、凄いらしいですね、見上げる雪の壁。見てみたかったよ。という事で、こっちで視ることにします。


「そーれっ!除雪ぅー!」

「ミーちゃん、楽しそうだねえ」

「うん、こういうの大好き」


 旋風で巻き上げ、ラッセル人間のお通りでございます。ちょっと少ないですけど、まあそこは平地だし。それでも積もった雪は馬車の少し上くらい。それを道脇に積み上げていきますので、約2倍。まあそこそこには成りました。


「おお、これはまた、雪で出来た切り通しのようですな。壮観ですぞ」

「まあ、凄いです。こんなに降り積もっていたんですね」


 国境前の最後の宿場辺りから、国境門まで一気に通してみました。それにしても雪が多くないですかね、雪解けが心配になる位ですよ。


「雪が舞い上がっていたから、何だと思ったぞ。君達か」

「こんにちは。除雪馬車通りまーす」

「うむ、気をつけていくように」

「ありがとうございます。それではまた」


 検問しないでやんの、まあ王女様がいるしね、王女様がいるのは内緒だし。ついでだから、そのまま帝国側の検問所まで開通式。おお、検問所の担当者が慌てとる。誰も来るとは思っていなかったね、仕事はさぼっちゃいけないよ。


「まさか、人が通るとは思っていなかったぞ、暫く待たれよ」

「はーい」

「待たせた。所で、後ろに続いている者たちは、何だ?仲間かね」


 言われて後ろをみると、あー寄生してやんの。当然か、宿場に泊まりっぱなしじゃね、お金が尽きるってもんですね。切り通しができれば動きたくもなるか。


「えーと、寄生?関係者ではありませんね」

「なるほど、解った。よし通れ」

「ご苦労様でーす」


 この先の宿場はやっているんですかね、他人事ですけど。ちょっと位は心配して上げますね、一泊1金で。


6. 帝国も雪だらけの異常気象なり


 帝国に入っても雪は変わらず。ほぼ全体が雪で埋まっているらしいです。知ーら無い。解けると大変な事になる気がする。特に汚水道。ハンジョさんが、帝都にいる奥さんを迎えに行くと言うので、そのまま一度帝都に行くことにしました。ロウタ達は先に領都へお知らせ便として返しました。


「こんにちは、ミールです」

「初めまして、ハンジョの妻で、ライザです」

「若い頃冒険とかしていました?」

「いえ、してはいませんでしたわね」

「そうですか、モテていたっぽいもんで」

「あらあら、お上手ですね。よろしくお願いしますね」

「では、出しますぞ」

「まあ、この馬車は雪でも平気で動きますのね」

「雪でしか使えませんけどね」

「なるほど。車輪が埋まっているように見える板なんですね」

「そうです。目立たないように」


7. 深森の廃村に到着


 辺境伯様とこれからを相談するために一度領都によることにしました。ハンジョさんは、奥さんと新居へ。どうやらそのまま廃村へ連れて行くみたいです。まずは、精霊会話盤を試してもらいました。


「なるほど、これで精霊と話が出来るわけだな。前代未聞だな。精霊と話ができるなどということは、誰もしなかったし、気が付かなかった。これを見たら、精霊真教の連中発狂するな。ハンジョ殿が愉快と言っていた意味がわかろうと言うものだ。よし、資金は家とハンジョ殿が出すことになっている、準備してくれたまえ」

「はい、わかりました」


 あっさり決定。次の日にハンジョさん家に迎えに行って、廃村へ…あ…通れるかなと思ったら、杞憂でした。雪さんありがとう。一面の雪原。快調この上なし。馬とロウタが交代すれば、休みも要らずにかっ飛ばし。日が傾く前には1の村に到着してしまいまして、そこからお嬢様ホバーで往復したら、夜の帳がおりた所で全員到着。最速記録を作れました。橇?ロウタが最後に馬を載せて来てくれました。


「やったー、エッちゃん。最速記録だ!」

「「イヤッホイ!」」

「あの、これはなんですか?車輪も何もないし、浮いて動いていましたよ」

空圧浮揚板(ホバーボード)って名前を付けましたけど、空気で浮きます。まだ内緒です」

「空気でですか、空気だけでそんな事もできるんですね」

「ね、不思議ですわよね。未だに原理がわからないんですけどね」

「あれっ?そうだっけ」

「いえ、私が後回しにしているだけですわ」

「大した仕組みでもないんですけどね」

「その『大した』がものすごいんですけどね」


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