(08-11)魔導薬学院(卒業生)
(08-11)魔導薬学院(卒業生)
卒業出来ました。帰ろうとした所で分厚い雪化粧。例年より早くかつ多めだそうです。帰さんつもりかー!って自然には逆らえない辺境村村娘です。お寒うございます。
1. 外には誰もいねえ
本日快晴。道に雪。人影全く無し。ご近所さんに聞いてみました。
「いつもの3倍位かな。しかも時期がね、今年は早いよね」
「こんなに積もったのは初めて」
「解けるのは随分先になるんじゃないかなぁ」
だそうです。大変参考になりました。帰れねーじゃん。いえね、道行の手段はあるのですがね、途中の宿場は降雪対応なんてしませんから、閉まっているんですよ。泊まられると返って迷惑だったりするのです。困ったもんだ。それでもお城では仕事をしておりまして(当たり前)、ご苦労様な事に伝令さんがやって来ました。曰く。
「『本日、午後。近衛第一訓練場にてお手合わせをお願いしたい』との事です。如何致しましょう」
いや、まあ暇だし。運動しないと鈍るし、エッちゃんを見ると頷いているし、お姉さん達はそっぽ向いているし。達と言うのは4人。いつもの二人に加え、何故かサーワ姉さんとジージョさんがいます。単にお薬の話をしに来たら、帰れなくなっただけですけど。だって、馬車動けんもん。シールちゃんは、エクトプラズムが出まくっています。
「エッちゃん、良い?」
「いいよー、エステリーナ達だよね、呼ばれているのって」
「いえ、お二人にもお越しいただきたいそうです」
「判りました、伺います。雪中ご苦労さまでした」
「はっ!失礼します」
伝令さんは、滑っては転び、起き上がってはまた滑りながら帰っていきました。そういうことか、晴れているのになんで雪まみれなのかと思ったんだよ。ここの長靴って底に溝ないのかな?
「リア姉さん、靴の裏底見せて」
「裏ですか?」
「うん、溝掘っていないのかな?さっきの人滑って転んで大変そうだったし」
「靴裏に溝を掘るんですか?」
「そう、こんな感じでね。まあ研究も何もしていないので、適当だけど」
靴を脱いで裏を見せてみました。
「なるほど。これだと滑りにくくなるのでしょうか?」
「何もないよりは、効果はあるかな。この凸凹が雪とか泥を弾き飛ばすように働いてくれるんだけど」
「私は、雪の中を出歩いたりは致しませんので、必要ありませんけれど、そうですね兵士の皆さんは必要そうですわね」
「………それもそうだね、お嬢様が雪の日に外へ出るわけないか」
「そうだミーちゃん、保温外套は何着あるかしら。皆さんもご一緒しませんか?」
リア姉さん、突然手を打って、何か閃いたのかな。
「一応全員分あるけど、馬車動かないですよ」
「リアさん、私達は招かれていませんよ」
「大丈夫ですわ、私がいれば入れますから。と言う事で、ミーちゃんなんとかして下さいな」
「ひっどぉーい」
「あはははは。これから作るの?」
「ううん、あるけどさあ。良いの?いきなり行って大丈夫なのかな」
「はい、大丈夫ですわ」
第一王女様は、結構強引ですね。何をするつもりなのか、暇すると人間何を考えつくのか判りません。仕方がないので、荷車の車輪を橇に替えたものを、ロウタ達が牽けるかどうかを確かめましたら、楽勝でした。お嬢様ズなので、幌を取り付けてでっち上げ。
「車輪の代わりに板を履かせるという所が、面白いですね」
「ミーちゃん、いつの間に作ったの。向こうでかしら」
「そうだよ、ガンさん達の子供を街まで連れて行く事になるかもしれないでしょ。だから橇を作ったんだけどね」
「お師匠様のお薬があれば、必要ない気もしますけどね」
「うん、作ってから気がついた」
少し早めにお昼を食べて、お出かけです。シールちゃんは、誘ったんだけどね、全力でお留守番を希望しました。お城巡りは結構面白いのにね、侍女長さんは、煩……しっかりとお仕事をされていますけど。
「「こんにちは」」
「おう、よく来て…はぁ?マジョリア様。ご機嫌麗しゅうございます。本日は如何用でございましょう」
「突然申し訳ありません。皆さんのお靴が少し気になりまして、伺いました」
「靴?長靴でございますか」
「はい。伝令の兵士さんがですね、雪道で滑って転んで大変そうでしたので、何かお役に立てないかなと」
「外ではそうですな。ここもお気をつけになりませんと、少々滑りますぞ」
「ありがとうございます。それで皆さんの靴底をみせていただけませんか」
「畏まりました。おい、新しいのを用意してくれ」
持ってきてくれたのは、未使用品。まあ、履き古したのを渡せるわけが無いわな。
「ミーちゃん、この長靴ですけど、溝を付けられますかしら」
「あっ乾燥路用の浅溝しか切っていないのか。靴底がちょっと薄いかな、指の関節2つ分位の厚みがないと難しいよ」
「なるほど、仮に継ぎ足す事はできそうですよね、革の接着剤ならございますから、試してみましょう」
「はーい」
革をね、◎だの□に切りまして、とりあえずいくつか靴底に貼り付けてみました。軍靴ですから、少々重くなっても大丈夫でしょう。あの車輪に使った婆ちゃん接着剤です。
「適当にくっつけてみたけど、どうだろうね」
「まずは、お試しですから。履いてみてもらいましょう。お願いしますね」
「はっ!」
「では、ちょっと動き回ってみますか。一緒に走り込みをして下さい」
「判りました」
準備運動がてらに訓練場を適当に走り込んでみました所、いい加減に貼り付けただけなんですけどね、一度も滑る事なく、一周出来ました。
「なんと!これは良いですね、踏み込みも楽にできますし、滑る事もありません」
「接着だけだから、直ぐにとれてしまいそうですけどね、気をつけていて下さい」
「解りました。でもこれはいいですよ。いままでは縄を巻き付けたりしていたのですが、こういうやり方もあるんですね、この方がしっかりしています。皆にも履かせてみて良いですか」
「はい、お願いします」
近衛の皆さんからの評価も上々でして、我も我もと集まってきまして、応急雪靴を製造するはめになりました。いつの間にか、お姉さんズはどこかに行っていまして、何をしていたかと言えば、接着剤を作っていたのだとか、お姫様自由すぎる気がします。
「私、初めて接着剤というものを調合致しました。良い経験をさせて頂きましたわ」
「それは良かったです。まさか無くなるとは思いませんでした。ルリエラ様もよくご存知でいらして、助かりました。上級接着剤ができるとは思いませんでしたわ」
「上級ができたのはおそらく偶然と思われますけど、私も上級ができるとは思っても見ませんでした。素材が良かったのでしょうか」
「何れにせよ、仮とは言えこれで皆さんの長靴が出来そうです。ご協力感謝します」
改良型の長靴を履いて、皆で走り込みやら、打ち込みやら、ロウタ達と遊んだりとかしていたら、国王様お出まし。
「国王、如何がなさいました」
「いや、リアが来ていると聞いたのでな、何かあったのか」
「お父様。兵士の皆さんが雪で不自由していらしたようなので、お助けできないかと来てみたのですわ」
「どういう事だ?」
「はっ、こちらを御覧ください。仮と言う事なのですが、マジョリア様とミール殿に長靴を改良して頂きました」
「リアよ、儂のにも出来るのか?出来るなら試してみたいが」
「はい、此方をどうぞ。お履きになってみて下さいませ」
「ふむ、どれどれ。ほっ!それっ!」
国王様、踏み込んだり、左右に飛び上がったり、だんだん面白くなったようで、速度が上がり始めました。
「はぁ、はぁ、ハァ。年かな?いや、これは良いな。まるで滑らんではないか。ミール君、爵位はいらんかね」
「はいっ!要りません」
「はっはっは。ふむ服飾部に研究させても良いか?これを溝にできそうなのでな」
「しっかりと縫い込まないと外れてしまうかもしれませんので、怪我をする前に早急にお願いしたいですね」
「そうか、わかった。宰相に伝えておこう。それとあれはなんだろうか、馬車ではなさそうだが」
「雪が深いので、雪車に替えただけですよ」
「雪車?乗ってみても良いかな?」
「はい、どうぞ。馬を一頭お借りできますか」
「わかった、近衛団長頼めるか」
「はっ!実は私も気になっていたのであります。直ぐに」
近衛団長が馭者を努めて訓練場を走り回っています。まさに新しい玩具を与えられた子供みたいな感じで、交代で馭者をして遊び廻っていましてね、いままでなかったんですかね、一応制動機はありますので、危険性は低いのですけどね、大丈夫かな。
「これもまた面白いな。車輪を板に替えたのか。この一捻りした工夫というのが素晴らしいぞ。良くぞ気がついたものだ。団長はどうか」
「はい、これなら雪中の移動も楽ですし、馬もそれほど嫌がってはおりません。むしろ楽しげでありますからな、作り方を教えて欲しい所です」
「帰りをなんとかして頂ければ、差し上げますけど」
「そうか、ありがたい。帰りは任せてくれ、私が馭者を努めよう」
「面白がっていませんか」
「分かるか?うん、あれは面白いな。雪中移動が面白くなりそうだ」
「雪中移動訓練が増えますよ」
「あっはっはっは、然り!そうだな必要だな。ますます面白いではないか」
始終面白がっていた近衛団長さんに送って貰って帰宅。次の日には、サーワ姉さんとこの馬車も改造して欲しいと言われたので、車輪をはずして、付け替えができるようにしてみました。お代はいらないんですけどね、ソバーニさんに懇願されまして、金貨10枚が届きました。まあ、商売にしていくには無料じゃまずいのか。はっはっは。
2. 精霊さんは、魔力で動く
アド君と話した植生方位の魔導具ですけど、その前に魔力で動かせるならと、ちょっと寄り道。光ちゃんにお願いして、光る文字板を作ってもらいました。それで縦横に魔銅線を通して、行と列でそれぞれ半分づつ魔力を流すと、指定された文字板だけが魔力量を満たして光るという代物。魔石を文字板にして、直接魔力を印加すればもっと単純にできるのですが、文字ごとに魔石なので、魔力消費がやたらと多かったのと、商品化した時にめっさ高額になりそうだったので諦めて第2案。
「ミーちゃん、それ何?」
「ふっふっふ。光る文字板」
「そのまんまだよ」
〔光ちゃん、これに魔力を通せるかな〕
〔縦横其々に半分魔力を通せば宜しいのよね〕
〔そう、試してみて〕
〔こうですね、あら?もしかして、こう使うのかしらね〕
〔正解。大変かな?〕
〔それはないですね、大した事ではありませんわ。ただ、少々魔力を必要としますわよ、人間の方に〕
〔それは、まあ。仕方がないかな。左右でお話するよりは少なくなるでしょ〕
〔そうですわね。これは…面白いです〕
〔ありがとうね〕
〔どういたしまして〕
〔あんた、また面白い物を作ったわねえ、これでお話できる精霊が増えるわね〕
〔ジュンちゃんも使う?〕
〔あんたには要らないでしょうが〕
「よし、行けそうだね。エッちゃん、精霊さんにね、縦横で文字を選んで、半分づつ魔力を流すようにお願いしてみて」
「解った…………ああっ、そういう事か。すごい、皆んなとお話できるんだね。これは楽しいねー」
「夜更かししないようにねー」
「うっ!」
お姉さんズ(4人)とハンジョさんもやって来ましたので、試してもらいました。シールちゃんは、もう少し魔力制御を頑張ってね。
「なるほど。自分の精霊とお話出来るというのが素晴らしいです。これは面白いですね」
エッちゃんとリア姉さんは、早速自分用のを作ってます。魔石だけの方ね。そりゃそうだね、第一案の方が単純だし、魔力はあるし。
「これは、愉快ですな。精霊と直接話ができるというのは前代未聞ですぞ」
「どこぞの教会がうるさくなりそうですけどね」
「ハッハッハ。そうですな、その前に広めてしまえば良いのでは無いですかな。一気に広めてしまえば、あちらもどうにもできますまい」
「すごい力技になりそうだねー」
「仕方がないでしょう。誰もが精霊から直接彼らの話を聞けるとなれば、今まで行ってきた真教の教えのうち、嘘であった分が全部詳らかになってしまうわけですからな。潰しにかかってくるのは目に見えております。対抗するには数しかありません」
「そうなんだよねー、こっそりひっそり一気に拡散。難しいな」




