(08-10)魔導薬学院(三年生)
(08-10)魔導薬学院(三年生)
三年生ですよ。三年は課外実習とかがあるので、さっさと通り過ぎる事が出来ません。調合手順は一段と細かくなりますが、初級の範疇です。気を抜かなければ、大丈夫ではありますが、驕らず慎重に行きましょうの辺境村村娘です。
1. 課外実習
課外実習というと、なんとなく遠足的な授業を思い浮かべますが、実習室から出て、薬草園に入るだけでも課外実習ではあります。一応毒性のある植物などを扱っているので、それなりには囲いが出来ており、しっかり守衛さんまで常駐しています。なぜに毒草園なんかがあるのかと言うと、3年には毒物調合などもあるし、先に毒性のある植物を覚えておかないと、外での実習時に危険だからと言う理由です。
「ここが植物棟となっている、主に毒性のある植物が育てられているのが特徴だ。外に課外実習に行った際に、不用意に触れぬよう、あるいは採集しないようにするためでもあるな、既に授業でやってはいるが、中には死には至らぬまでも、触れただけでもかぶれたり、酩酊状態に陥るものもあるので、燥いだり、悪戯などは以ての外だ。各自細心の注意を払うように」
こういう時ってのは、返事は良いのですよ、返事は。高等学院だし、一応貴族出がほとんどですから。でも中にはアホな坊っちゃん、嬢ちゃんがいますからね、植物そのものよりも、人間に気をつけなければならないってのは、困りものですよね。まあ、あれですよ『あら、うっかり』とか言って、態々こっちに向かってくる訳だ。怒るぞこら。
「キャッ!足がもつれて…」
ほらね、こういう輩がいるんですよ。なーにが「足がもつれて」だっての、わざわざ力を込めて、体当たりをしてくるもつれ方があるわけ無いでしょうに。お姉さんをこっちに引き寄せ、突撃してくるお嬢様から引き離します。そうするとですね、
「ギャァーーーーー」
かぶれるお花畑へ、まっしぐら。こらこら、かぶれるからって転げ回っていたら、余計重症化するでしょうに、舞い上がった花やら、葉やらが体に纏わりついて、酷いことになっていますけど、二次被害が出るので、とりあえずは自分で出てこないと助ける事も出来ません。
「いやぁー、助けて…助け…………」
漸く気を失ったので、まだ無事だった足を引っ張り、ズルズルと。あーあ、顔に花びらがべったりとくっついて、酷い事になっていますが、自業自得てやつですね。この手の人達ってのは、何が気に入らないんだろう。こっちは大人しくしているってのにね、困った人達ではあります。
「私は、君達が彼女を毒の花園へ投げ込むのを見たぞ!間違いない、はっきりとだ。彼女を妬んでの事だろう、気分が優れずよろけてしまった彼女を助けようともせず、非道なことに毒花の中へ突き落としたのだ」
はぁー、両手を広げ盛んにアピールしていますけど、空回りしますよ、それ。
「はい、どうぞ」
エッちゃん、しれーっと撮影していましたし、私は録音していましたし。録画したものを皆に見えるようにその場で再生。
「フーリヨ君。これを見る限り、私にはどうしても彼女らがシモーモ君を突き飛ばしたようには見えないのだが」
「よろしければ此方をどうぞ」
お姉さんが、その場で魔力紋を採集したらしい。
「おそらくですが、風系統の魔法がシモーモ様でしたかしら、その方に向けて発せられていますわね、どなたでしょうかしらね」
「うむ、新式の捜査情報収集かね?聞いてはいたが、凄いものだな。皆済まないが、魔力紋様の収集に協力してもらいたい。今日の講義は残念だが、中断だな」
「私は、証言しようとしただけだ。既に卒業しているのだから、無関係のはずだ。失礼させてもらう」
『私は、君達が彼女を毒花園へ投げ込むのを見たぞ!間違いない、はっきりとだ』
「此方が、先程の音声です。課外実習とは関係なさそうですが、その関係ない方が、植物園になぜいたのかとか、お話して頂きたいですね。宜しくお願いします」
「何を言っているのだ、それは私の声では無いではないか、作り物では無いのかね」
「いや、確かに貴方の声ですな。間違いありません。同行して頂きますぞ」
「私は、ヒンダー伯爵家の者だぞ。貴様達教授陣に私をどうこうできる権利なぞありはしなかろう」
「爵位はどうであれ、学院内における教師陣の立場は保証されており、官憲代行の権限もございますので、問題は御座いません」
「家の者を呼び給え、さもなくば一切の協力も拒否する」
「仰せのままに。直ぐにお呼び致しましょう」
結局どうなったかと言えば、フーリヨ・ヒンダー伯爵家長男様がですね、婚約者であるシモーモ・ゴジャース伯爵家令嬢を使って隣国の留学生に怪我を負わせ、それを理由に学院を掌握しようとしたらしいです。くだらんですね、そんな程度で学院が揺らぐとでも思ったんでしょうか。えっ!それなりに問題になる?たかが留学生ですよ、だめですか、そうなのですね、面倒くせえ世界ですね、貴族社会ってば。
2. 林間実習
課外実習の一貫として、少し森の奥へ入った所にある薬草の採集地へやってきました。なんと、馬車を連ねて二泊三日の泊りがけですよ。坊っちゃん、嬢ちゃんには大変だろうと思ったのですが、侍女付き。それで、その侍女が『できる』んだ、身のこなしがそれっぽい。さらに、当然の事のように、学年全体の為に護衛が付いています。私達はロウタ達を連れてきていますので、護衛よりは遥かに安全という状況にあります。最も、かつての大狼とか、蛇だの、熊さんだのが出たらその限りではありませんけど。大体地球の象ほどに大きい熊って言うのはどういう事よ、もう獣じゃないじゃん、化け物じゃんね。
「ここが予定地だ。既に護衛者によって周辺の探索は終わっている。採集地には魔獣などは居ないことが確認されているが、200[㍍]以上は離れないようにしてくれ。探知の魔導具が使えなくなる。本日の活動は後2時間程で終了となる。それ以降は明朝まで各自自由行動。食事も各班自由。安全には十分配慮する事。以上だ」
私達は一番最後でしたので、入り口から見渡していますとね、どうやら平民(それなりに富豪さん)の人達が東西へ進んで無印の馬車を止めたり、テントと言うよりタープ状の天幕だけの代物を枝に引っ掛けて誂えていまして、それから比較的質素な感じの紋章馬車が北側へ壁になるように止まり、段々と紋章が華やかになっていく馬車がその内側へと言う感じで止まっていきます。まるで街の縮図を見ているようです。私達ですか?学院が用意してくれた乗り合いで来ましたからね、そのまま南側の入り口から外れた所へ、厚手の帆布でできたテントを設営します。ついでにこっそりと竈を置いて、準備完了。乗り合い馬車は、そのまま引き返して行きました。
「お姉さん、どうする」
「後2時間でしょ、周囲はどうかしら、何か居ますの?」
「ロウタ達がいるからねー、何も居ないね」
「それでしたら、お夕食の準備を始めるまで、少し周りを見てきましょうか」
「そうだね、エステリーナに留守番してもらおう。エステリーナよろしくねー」
「ヲゥ!」
東の冒険者さん達と挨拶を交わして森へと入ります。図鑑と照らし合わせながら、アド君とお話。
〔麻痺薬にするなら『眠り草』とか『安眠草』とかかな〕
〔そうじゃな、『安眠草』なら東へ真っ直ぐ100[㍍]。北へ20[㍍]じゃな〕
〔はーい。名前がついてさえいれば、便利この上なしなんだけどねえ、鑑定しても『草』じゃなあ(誰でもいいから早いとこ国家認定してくれないものですかね)〕
〔それなら、お前さん達とあの婆さんだけでも使えるように名前を付けてだな、それらを見つける植生方位の魔導具ををお前さんが作れば良かろうに〕
〔えっ!そんな事が出来るの?精霊はこっちの物を動かせられるの?〕
〔魔力を加えれば動くものならな、動かしてやれるぞ。魔導具と同じじゃろ?〕
〔そうなの?知らなかった。そう言われればそうだね。ありがとう考えて見るね〕
〔おぉ、待っとるぞ〕
「どれどれ『安眠草』ってこれか、生えているのは初めて見るね」
「そうですわね、いつもは乾燥したものしか見ていませんし、家の周りにはありませんものね」
「そうだよねえ、こっちの森にしか生えないってのは何かあるのかねえ」
「草だもんねー、どこにでも生えそうなのにね、不思議だね」
「だよね」
とりあえず、指示通りの範囲から外れないように注意して、森を一回りして地図を作成しました。西の冒険者さん達に挨拶したら、戻ってご飯です。途中で誰も居ない静かな馬車を見かけましたので、注意勧告をしておきました。
「あれ?これは…せんせーい」
「えーと、ミール君だったか。何かあったかね」
「いえね、あそこに止まっている『双葉棘草』印の馬車なんですけどね、人影がありませんし、そろそろ時間じゃないですかね」
「何っ?なるほど、誰もおらんな。解った注意しておこう。ありがとう」
「どういたしまして」
3. 迷子
森という所は、大抵は同じ木が生えている事が多いんです。種類が同じであれば、成長の仕方も同じようになる訳で、すなわち景色が変わらない。右を見ると木、左も木。自分が何処から来たのかわからなくなるわけですよ。180°真反対に向き直ったつもりであっても少しずれれば、もう方角が変わってしまいますからね、方位磁石でもあれば別なのだけれど、そんなものはありません。慣れた者であれば、苔の生え方やら、木の間隔やらで見分けるのだろうけど、素人には無理と言うものです。結果、採集に熱中した挙げ句、気づいた時にはめでたく迷子と成り果てます。
「可怪しいですね、既に立木に印が付いています、ここは一度通りましたね。この先印の付いた木が他に見当たりません、いかが致しましょう」
「印?付けていてくれたのですね、でもどうしたら良いかしら」
「一度印を辿って戻って見ましょう」
侍女さんが付けた印を頼りに戻り始める二人。
「ここよ、結局ここよ。この木は、先程の所ですわね。さて、どうしましょうか」
「目印が見当たらないので判りませんが、探知範囲から外れてしまった可能性がございます。動かないのが一番ではないかと思われます」
「そうね、仕方がないわね、そう致しましょう。すれ違いも困りますものね」
「はい」
夕食を取っていると、先程の先生がやってきました。
「済まないが、協力してもらいたい。良いかね」
「何でしょう。先程の馬車の方とかですかね」
「そうだ、未だ戻ってこないし、探知範囲にも引っかからないんだ。どうしたものかと思ってね、相談したいのだが」
「そうですね、アタシとロウタで捜索して来ましょうか?なんとなくですが、不穏な魔力が近づいている気がするんですけど」
「何?それは本当かね、どうしたら良いだろうか」
「えーとですね、避難は間に合いそうにないので、お姉さんとエッちゃんは、冒険者さん達と此処を守っていて欲しいんだけど、良いかな」
「解った。そうだね、中以下のを通す感じ?」
「そういう事。小さいのを冒険者さん達にお願いしてね」
「一番手前にいるのは、なんだろうね、結構大きそうだから見てくるね」
「了解、気をつけてね」
探査範囲を広げると、小さい反応があって、たぶんお嬢様達のだろうけど、そこに魔力の塊が移動中。やっべえです。ロウタに先行してもらいました。
「ウォン、ウォン、アゥォーーーーン」
「ヒィーーーー、あら…この狼は首輪が付いていますね、お嬢様助かりそうです」
「そう言われれば、これは留学生さん達の狼ですわね」
少し遅れて私も到着。先程の魔力の塊が接近中。
「こんばんは、まだ動かないで下さいね、ロウタのお腹に囲まれて居て下さい」
「ありがとうございます。お手数をお掛け致しますわ」
「いえいえ、それよりちょっと騒がしくなりますので、驚かないでくださいね」
魔力の塊さん到着。うっひゃー、正体は象みたいな熊。魔力付き。魔熊だったよ。
「キャーーーーッ……」
「お嬢様、お嬢様。どうしましょう、気を失ってしまいました」
「(あ、それは好都合)そのまま居て下さいね。そーれっと」
理由は判りませんけど、あっちも気が立っているようなので、魔力の鎧を最大に広げて、落ち着かせてみましょう。それと相当な傷も負っているようなので、同時に治療しておきます。
「大丈夫だよー、怪我は直してあげるねー、落ち着こうねー。できれば帰ってね」
殺気を向けなければ、魔獣はそこそこ賢いので、落ち着きさえすれば、自分の状況を判断するようになるんです。ただの獣とはそういう所が少し違いますね。こちらとしては無駄に争わずに済むので、ありがたいですけど。睨み合うこと約数分。大熊は森へ戻ってくれました。なんか中規模のウルフ・パックっぽいのと争っていたみたいなんですけど、パックさん達は、キャンプ地方面へ移動。まああの程度なら、エッちゃん一人で十分です。
「終わりましたよー。大事ないですか」
「助かりました。私、アッザーミ伯爵令嬢サーワ様のお付きを致しておりますジージョと申します。ミール様ですよね」
「はい、お困りかと思いまして、来てみました」
「お助け頂いたのは良いのですが、お嬢様をいかが致しましょう」
「あ、それでしたら、ホイッ!」
「…あら、私どうしたのかしら、そうだ大きな熊が…ジージョ大丈夫ですか」
「お嬢様、お怪我もなく、良かったです。助かりましたよ」
「森の中ではロウタに乗せる事ができませんので、歩けそうですかね?」
「ミール様ですよね、お助け頂いたようで、ありがとうございました。はい、歩けるようですわ、大丈夫です」
「では、戻りましょう」
リヤカーとか、ロウタに直に乗るとか、木の枝にじゃまされて出来ないんですよね。仕方ないので、歩いて貰うしかないんですけど、どういうお嬢様なんでしょうか、歩き始めたら、結構しっかりと森の中を歩けるようで、指定範囲を超えてしまったのも分かるような気もします。
「お二人とも森の中を歩き慣れているような気がするんですけど」
「えぇ私とジージョは、領地の森を散策しては、薬草の採集などをしておりますので、歩く事は慣れているのですけれど、魔獣とかはおりませんので、うっかりしていました。ごめんなさい」
「なるほど、この辺りでも外の森には結構いるようなので、注意して下さいね」
「「はい、そういたします」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 群狼戦開始 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「中程度の群狼が接近中です。押し返すつもりですけど、小型のが通っちゃたら、お願いしますね。後ろには流さないで下さい」
「その狼はあてになるのかね、咆哮は使えないのかい?」
「幻惑咆哮を使うと、皆さん気を失いますわよ。脅す事は出来ますので、ここまでは来ないと思いますけど、念のため戦闘の用意はしておいて下さいませ。宜しいかしら」
「「「「オッ、オゥッ!」」」」
「来まーす。そうれっ!引き返せぇーーーー!」
お馴染みの魔力壁ですね。エステリーナの遠吠えと相乗で、脅しを掛けるエッちゃん。思惑と違って、先頭にいた3頭が跳ね返されて死亡。南無。
「すっ…すげえ、なんだありゃ。あんなもん初めて見たぞ」
「あまり広めないで下さいましね」
「「「「了解した」」」」
「帰って行ったよー。ちょっと3頭ばかり死んじゃった。お姉さんどうしよ」
「あら、それでしたら、冒険者の皆さん、あれ解体できますかしら」
「『暁の鉄爪』を率いているロイドだ。任せてくれ。素材はどうする?」
「防衛戦のお代になりますかしらね」
「なるぞ、そうしてくれると助かるんだが」
「ではお願いしますわ。護衛費用とは違いますものね、先生方もそれで宜しいですかしら」
「それで良いなら、こちらとしても助かる」
「では、お願い致しますね。生徒さん方も、今見たことをあまり広めないで下さると助かりますの、お願いしますね」
千切れんばかりに頭を上下に振りまくりの生徒一同。30頭程も居る中規模群狼って、結構どころかすんげえ怖いですもんね、そもそも一頭一頭がでかいし津波だよ狼津波。
「エッちゃん、エステリーナにこの辺りを廻って、匂い付けをして貰えるかしら」
「そうか、それはいい考えだね、お願いねー」
「ウォン」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 群狼戦あっけなく終了 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「たっだいま。どうだった?大丈夫だったかな」
「群狼の事?それなら皆んな引き返してくれたよ。ちょっと死んだ個体もいたけど」
「うんうん、それは想定内。人に死傷がなければ、万事解決」
「ミール君、いや助かった。報告せねばならんので、経緯を聞きたいのだが、良いかね」
「はい、サーワお嬢様も良いですか?」
「大丈夫です。お詫びもしなければいけませんからね、参りましょう」
4. あそこの棘草は新種っぽい
思い返すに、昨日の花畑に咲いていたのは、棘草って奴ではなかろうか。図鑑で見たのとは、少し変わっていたような気がするんだけど、気のせいかな。
「あのですね、サーワ様。昨日の場所で見た棘草っぽい花の事なんですけど…」
「あら、貴女も気になっていらしたのね、あ…そうだ、私の事はサーワで宜しくてよ、私もミーちゃんで宜しいかしら?ルリエラ様のようにお呼びしたいなって思っているのですけれど、駄目かしらね」
「サーワ様、それでは外聞が宜しくございませんわ。私は、この子達から『お姉さん』呼びされておりますから、『サーワ姉さん』くらいでいかがかしら」
「そうですわね、私の方がお姉さんでしたわね、宜しければお願いしたいです」
「じゃあ、サーワ姉さん」
「はい」
なんかねえ、嬉しそうにニコニコしているんですけど、そんなにか。確かに『サーワ様オホホ』の世界だと『姉さん』呼ばわりはされないとは思いますけど。ま、良いか。
「それでですね、昨日の花のことに戻りますけどね、図鑑で見た花の形状と少し違っていたような気がするんですよ、覚えていますか」
「はい、しっかりと覚えておりますよ、今までに見たことがない花でしたね、でも恐らくは、棘草の仲間だと思います。基本的な形は同じでしたから」
「棘草の効能って何かありますか?健胃位しか知らないんですけど」
「そうですね、私がおりますアッザーミ伯爵領では、棘草の栽培とそれを使ったお薬がございまして『解毒、止血』剤の材料となっておりますね」
「止血?それかな、あの熊が出てきたのは」
「怪我の治療をしに来ていたと言う事かしら、魔獣が?魔獣にそういう知恵があると言う事ですか」
「そうですね、魔獣って結構賢いですよ」
「なるほど、それは興味深いですね。それで相談なんですが、昨日の場所へ行って採集したいのですけれど、どうすれば良いでしょう。許可されていませんでしょ?」
「それなら、新種の可能性ありと言う事で、教師に同行して貰って、特別許可と言う事で行けるんじゃないですかね」
丁度、その時に昨日の先生が来ましてね、経緯を説明してみました。
「ふむ、新種の可能性が高いのか。よし、私も同行させて貰っても良いか?何かあったら足手まといにしかならんが」
「足手まといと言う事でしたら、私も十ニ分な資格がございます。ミーちゃん、お願いできるかしら」
「じゃあ、皆んなで行きましょう。大丈夫エステリーナが匂い付けをしてくれているので、深部の魔獣は来ませんよ。ロウタはお留守番ね」
「ヲン!ワァオン」
「だーめ、抗議してもムーダ。今日は、エステリーナ。貴方は、お留守番。そうしないと、エステリーナが拗ねちゃうの。あの子を宥められる?」
「クーン」
器用な事に前足で、頭を抑えて項垂れてしまいました。
「じゃ、宜しくね」
「ワァーオ」
と言う事で、やって来ました花畑。サーワ姉さんは早速調べ初めまして、アルツト先生はというとですね、お子様還りの真っ最中。
「うぉー、これは凄い」
と言ったまま、花をひっくり返したり、根をかじったり。まさに研究者。いきなり口に入れるなよ。死ぬぞ。
「ミール君。ここは凄いぞ、治癒薬の宝庫だぞ!しかも綿毛になっている物もあるではないか!いや本当に素晴らしい」
「あ、そうですか。それはなにより」
はしゃぐように根やら種やらを採集しまくる人がいると、返って冷静になれるものなのですね。食事も忘れて、あれやこれやとキャーキャー採集しまくっている人達(含むお姉さん)を見ていると、来た甲斐があるってもんです。
「ジージョさん、食事はどうしますか」
「あ…忘れていました。ご用意したしますね」
なんだかんだで、キャンプ地に戻ったのは、夜。森での夜間移動は危険なんだぞなんてのは、どこ吹く風の皆さんでした。そう言えば、エッちゃんも私も10歳未満なんですけど、労働基準法は無いのでしょうか。テントに戻った途端に二人共電池が切れました。
5. 祝!卒業
毒物の採取から調合まで、一応こなせましたので、卒業証書授与となりました。さあ帰るぞ、帰れるぞってなった所で、雪が降って来ました。年越しになりそう。そういえば、サーワ姉さんも通ったそうです。薬師伯爵と言う事で、家庭教師がついて、それなりのお勉強をしていたそうで、貴族っぽい。あっ貴族か、令嬢だったわ。




