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(08-09)魔導薬学院(ニ年生)

(08-09)魔導薬学院(ニ年生)


 ニ年生ですよ。入学一ヶ月で、2年となりますとね『お金でしょ』とか言っていた人達が『なんなのこいつら』とか言う感じで見てきます。あるいは、化け物を見る感じでこっちを見て来るように成りました。辺境村村娘です。


1. 薬学


 2年目と3年目は、一般教養科目が減り、試験もなくなり薬学を専門に受講するようになります。座学で薬学の歴史やら調合方法を学び、実技で実際に調合を行います。2年間で初級の魔力回復薬、体力回復薬、外傷回復薬を作れる事を目標としています。3種類じゃ少ないと思いますか?いやいや、普通であればここに到達するのは結構難しいのです。当然の事のように最初に来るのが万能草のすーり磨り。ここで躓くと、後が大変なので一番多くの時間が割かれる事になるのですが、私等はとうの昔に終わっているので、復習になります。


 では、私はというか、リア姉さんを含めた私達が、比較的短期間で初級を通り過ぎる事ができたのかと言うとですね、魔力制御と魔力量です。薬剤を作成する時に、蒸留水を使うようになったのも大きいのですが、万能水を作る時、蒸留水に魔力を込めるのですよ、そうするとですね、少しばかりではありますけど、品質が向上するのです。向上する度合いと言うのは、込める魔力量によります。おわかりに成りましたか?水の精霊と一緒に魔力を込めると、あっさり初級を超えてしまうんですよ。婆ちゃんも驚いていました。その婆ちゃんなんですけどね、魔力制御を覚えてからと言うもの、特級をこれみよがしに乱発してましてね、あんのババア!『ほ~れ、ほ~れ』と挑発してくるんですよ、どうしてくれよう。


「ミーちゃん、いつもの方法を伝えるにはどうすれば良いかな」

「ねー、時間がなかったからね、考えていないね」

「そうですわね、これを知っているのと居ないのでは、時間効率が違いますものね」


 そんな所へ、先生がやってきましてね。


「手が止まっているぞ!遊んでいるんじゃない!磨らねば上達はせ…終わっているな。この短時間でか?私でも出来ないのに、どうやったのだ」

「えっ?時間短縮しただけですよ、魔法で」

「魔法?こんな所に魔法を使うのか?どうやるんだ」

「ご覧になりますか?」

「うむ、見せてくれないか。学長がおっしゃった新方式と言う奴だろうか」

「では、行きますね。ハイッ、ソレッ!こんな感じですけど」


 あ、目を剥いて大口開けて固まっていますね。おーい。


「はあ?なんだそれは、もう一度、もう一度だ。今度はゆっくりと」

「ゆっくりは難しいので解説を付けますね」


 乾燥済み万能草を用意します。薬研に投入し、風の魔法で撹拌し、粗挽き状態にします。


「これはですね、風の魔法で撹拌しながら粗挽きにしています。粗挽きにするのはですね、中には擦れあって温度が上がってしまう薬草もあるので、粗挽き程度に抑えて置いたほうが無難だからですね」


 次に、身体強化を使い粗挽きされた万能草を薬研で磨ります。


「粗挽きが終わったら、身体強化をして、普通に磨れば良いんです」


 あれですよ、帝都の鍛冶屋さんがやっていたようにして、シュリーンと一磨りで行けます。実際は、結構往復しているんですよ、でも見た目は一磨りです。


「はい、終わりです」

「なんだとおー。あっと言う間ではないか。このまま水薬にできるのか?」

「できますよ、水薬缶を浄化しますね、磨り終わった薬草を入れます。そこに魔力を込めながら蒸留水を追加して、火魔法で加熱して、濾過すれば、はい終わり」

「全部魔法でできるのだな。今までは、一工程ずつ専用に器具を用意しないと出来なかったのだが、水薬缶へ直接作れるのか」

「そうなりますね」

「加工速度が段違いではないか、私にもできるかね」


 魔力量の程度を見ると、まるで無い。なんでよ。


「だめですね、魔法は使えますよね」

「使えるぞ、なぜだめなんだ」

「保有魔力量が圧倒的に足りていません。無いも同然です」

「ぐっ、薬師には魔力は必要ないと考えられていたからな。不足している訳か」

「そうですね、今まではそれが一般的な考えでしたからね」

「そうだろう、それが間違っていたと言う事か。新方式とはこういう事だったか」


 『うーん』と考え込んでしまった。しばし黙考の後、徐ろに顔を上げた。


「このまま授業を続けるより、新方式を取り入れた方が良いのだろうか」

「いえ、出来ません」

「なぜだ?」

「そうですね、薬草を始めとして、素材の粉砕程度って言うのは、物によって違いますでしょ」

「もちろんだ。そうか、それを知らないと魔法にはできないのか。磨り加減というのを知るためには、自分で磨らねばいかんのだな。あるいは、魔法水と同じで、全ての磨り加減に対応した呪文を作らねばならないと言う事か。それは…難儀だな。幾つになるか見当もつかんしな、現実的ではないな」

「ご明察、その通りです。ですから、地道な薬研過程はどうしても必要なんです。それで加減を覚えて初めて魔法を使えるようになります。新方式として命名するならば、同時進行とするしかないでしょうね、おそらくですけど」

「そうだな。うむ、あまりに見事だったので性急に考えすぎたようだ。よし教授会に掛けることにしよう。それでだな、君達3人ともそれができると言う事だな、実際出来ているようだしな。ふむ、2年の実技過程は終了としても良いだろう」

「それは、ありがたいですけど、良いのですかね」

「もしかするとさっき言った教授会議で説明をお願いするかもしれんがな」

「判りました」


2. 這い寄るバカ


 当然の事ながらここは調合実習室な訳ですね、別に3人だけで受講している訳でもありません。1組が全員います。内緒話をしていた訳でもありません。こういう時に変なのが現れるんです。


「ヤッタカ侯爵家長男のヨシュアと言う。ルリエラ君は、明日から我が侯爵家に仕えるが良い。平民が我が家に仕えられるのだ、光栄に思い給え。追って使いを向けるので本日中に荷を纏めておくように」


 なんかねー、ネトーッとした目で上からしたまで舐めるようにして、ニタニタ顔で言うのですよ、気持ち悪い。


「唯の平民が侯爵家に仕えることができるのだ、喜び給え」

「そうだぞ、ヨシュア様の眼にかなった事を喜び給え」


 お姉さんが、此方を見下ろしていますね、このバカ共なんとかすればいいですか。ただですね、私は実に正直者でございましてですね。


「あんたバカぁ」


 ほらね、正直でしょ。お姉さん、額を抑えていますけど、どうしました頭痛ですか。


「痴れ者が!私を誰だと思っているのだ」

「ヤッタカ侯爵家長男。御自分で仰っていたでしょうに、バカですか貴方」

「おのれ、愚弄するつもりか。無礼にもほどがあろう。貴族の名を持って切り捨ててくれるわっ」

「無礼なのは、そちらなんですけど。この人はバルトニア帝国辺境伯のお嬢様なのですけど。いいんですか、平民呼ばわりしていましたけど、侯爵と同等またはそれより上ですよ、普通。違いましたっけ、本当にまあ、情弱さんですねえ」

「何?いや、私はそんな事は言ってはおらんぞ、フゾックが言ったのだ」

「はい、こちらをどうぞ」


 エッちゃん、用意が良いねー。


『ルリエラ君は、明日から我が侯爵家に仕えるが良い。平民が我が家に仕えられるのだ、光栄に思い給え』

『唯の平民が侯爵家に仕えることができるのだ、喜び給え』

 

「なにを言っているのだ、そもそもそれは私の声ではないではないか」

「いえ、確かにヨシュア様のお声です」

「フゾックの声は確かにその通りだな。フゾックが言ったに違いない」

「わ、私は何も知らんぞ。ヨシュア様が勝手におっしゃったのだ」

「あー、これですけどね、近衛に持っていくと、既に逃れられぬ証拠として採用してくださるんですよねー。貴族様って大変ですよねー、たったこれだけで没落するらしいですよ。御機嫌よう」

「クッ!ぬぬぬぬ、帰るぞ」

「「ははははいーッ」」


 ゆでダコ頭に、歯ぎしり付きで、拳を握ったまま二の句が告げなくなった長男さんは、腰巾着さん達を引き連れ帰っていきました。大方、噂話でも先に流して、もみ消そうとでもするんでしょうけど、この程度の事で、お家がどうにかなる訳ないじゃないですか。とりあえず、エッちゃんえらい。


3. 調合の座学


 座学内容ですけどね、「調合学」とも言えます。あれにこれを合わせるとか、薬研で磨った時に発熱するとだめな薬草あるいは素材の種類とか、まあそういう事を教わるわけですね。教本でいいじゃんとは言われるのですが、一般教室でもできる実演で、実際に磨りすぎると燃えるのを見ると、百聞は一見にしかずではあります。


 後は、当然の如く、素材とその特徴、採集場所とその方法等ですかね、婆ちゃんの図書室にはその手の図鑑が揃っていまして、大体学院の卒業程度に相当する分については、読み込んではあります。だって、婆ちゃんが『基本だ』って煩いからですが。


 ついでに、図鑑にはないほぼ婆ちゃんの趣味である酒造りとか、発酵とかに関する物、あるいは茸とか、毒物とかも婆ちゃん手製の本がありまして、物語本の代わりに読んでいます。『実用書しか無いのかい!』と言われれば、はいその通りです。


「…この様に鶏頭草(トリカブト)は、矢毒等に用いられており、医薬としては使用されてはいないな。毒物調合は3年の授業となる。その時に課外実習として採集から行われるので、その際にさらに詳しいことを学ぶことになる」

「はいっ!近似している植物とかの説明もその時と言う事でしょうか」

「ミール君。そうだ、毒性植物だけは学院内で栽培されている。形が似ている植物も育てられているので、そこで学ぶようになっているな」

「毒物の毒性を弱めたりする事は行われていますか」

「貴女、何をおっしゃいますの、毒物効果を弱めたり、薄めてどうしますの。意味がないではありませんか」

「マキヘア君、まあその通りなんだが、近年では毒性を減じ、他の有効な成分を薬剤として使用する研究も行われてはいるな。さらに別の毒を使って毒性を消滅させる事で、食用用途にならないかの研究も実施されている」

「毒で毒を打ち消すのですか、そのような方法もあるのですね。存じませんでした」

「最もそもそもが猛毒だろう?薬効を確かめる人間がいないので、なかなか進まないのが実情なんだがな。そういう事には魔法は無力なのだ」

「兎は?鼠とかはどうですか、沢山いますよ。使えませんか」

「兎?兎やら鼠をどうするんだね」

「えーと、体重やら体格やらで比率を求めて薬量を調整して、実験すれば良いのではないでしょうか」

「あっ!そうか、まずは人手で増やした動物で実験すれば良いのか。実に単純な事なのだが、誰も思い至らなかったな。今度の会議で提案してみよう」


 婆ちゃんが、何年も前から実施している動物実験なんですがね、最初なんだか判りませんでしたよ、毛が抜けたり、外傷があったり、変だなと思ったんですけど、動物実験何だってのが判って、流石婆ちゃんだなと思ったり。まあエッちゃんは、兎も大好きなので、『ごめんなさい』と涙しながら投与しています。優しいのですよ、良い子です。


4. 飛んで飛んで飛んで


 月に一度の進級試験です。2年から3年なので薬学からと、調合実技と言う事になりますが、実技の方は既に修了証が出ていますので、座学の方だけです。3年の調合はまだ始まっていません。毒性のある植物を扱うようになるので、まずはその危険性とかを学んでからと言う事らしいです。なので、座学の試験を受けるだけ。毒性植物の見分け方とかの問題が出て来ましたが、難なく通過。さて、次は3年です。


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