(08-08)魔導薬学院(一年生)
(08-08)魔導薬学院(一年生)
合格しました。なんと合格点は、800点なのだそうで、ギリギリでしたよ。危なかったー、辺境村村娘です。なんか隣では『嘘おっしゃいな、ミーちゃんが言う所の「計画通り」ではありませんか』『ミーちゃん、予定通りだね』とか誰も労ってくれません。冷たいです。
1. 支給品
いやね、すごいですよ。流石高等薬学院と言う事でしょうか。制服がありましてね、支給されるんですよ。こちらで用意する必要がありません。ただ、上に羽織る所謂白衣でして、下と言うか上下着は用意せねばいけません。ただですね、受講者は基本お姉さんなのだし、私達はそもそも丈に合う服がありませんでした。
「あの、アタシ達はどうすれば」
「大きさが合う制服が御座いませんので、ご自分達で用意して下さい」
「あ、はい」
結局自分で用意するしか無いみたいです。残念。都合は良いもので、購買部と言う所がありまして、ここで替えの制服を販売しています。覗いてみた所、一番小さい制服でも袖丈は、手指の先まで隠れるどころか、手のひらの分が余ってプラプラしています。丈に至っては、足先どころか、引きずるくらい。
「ミーちゃん、それ可愛いですわ。お子様が無理やり大人用の服を来ている感じが出ていますわよ」
だって。いやまあその通りなんですけどねえ、歩くのにも支障が出るのはよろしくないですから、お直ししてくれるようお願いしたらですね
「お直しの範疇を超えています。新しく作られたほうが宜しいかと」
断られました。それなら、夏季用の半袖はありませんかと尋ねたらですね
「ありません。基本薬学は危険な調合もありますので、肌を出すのは禁止されております」
だそうです。支給されると言うので、用意していなかったのですが、予想はしておくべきだったでしょうかね、仕方がないので一番小さいのを購入して、家にお持ち帰り案件とすることにしました。
2. 入学式
編入扱いの試験を受けたとは言え、新学期には間に合いましたので、そのまま入学式には参加出来ました。入学式と言えば、長い長いお偉いさんのお話が定番ですが、こちらでも変わりありませんでしたよ。
長々と挨拶文を読み上げ(よく空で言えるもんだといつも感心しますけど)るようにお話した後、こちらを見やってきましてね、言うのですよ。
「…以上を持って挨拶とする。最後に、今期は隣国の方が入学する事になった、良い刺激となるであろう、皆も精々励むように」
いいよ、こっち見るなよ。それより『隣国の方』と言ったね、方々じゃなかったよね、あのスットコドッコイ、学院長から何も聞いておらんのか、絞めるぞこら。
「{留学生?成人女性はともかく、隣は子供でしょ、お子様が入学できるの?}」
「{どうせ、お金で入ったんでしょ、刺激にもなりませんわ}」
「{そうですわよね、どうせついて来られませんわよ}」
はい、はい。そうですね、聞こえておりますけれども、聞こえぬ振りをするのはお約束というものです。親切でしょ。
「{予想通りですわね、ミーちゃんも予定通りで宜しいの}」
「{うん、できる限り最短で、飛び級試験でも受けてお家に帰りますよ。この国の商売は、ソバーニさんに丸投げ}」
「{そうだよねえ、お友達を作っても、隣国じゃねえ、早々会えないだろうし}」
「{まあ、そうだよね。でも伝手となる人は探しておこうかな}」
「{あっ、そうか。それじゃ、安全なお友達を探さないとね}」
「{安全なお友達…おりますかしら}」
「「{さあ?}」」
3. 学業説明会
所謂オリエンテーション。なんとクラスというのがありまして、表向きは1~3組なのですけどね、上中下の3段階となっております。そんなの案内書に書いてあったっけ?ありませんでしたか、そうですか。でも皆んな知っているようでしたね。
「あー、ここは成績上位者の組となっている。定員には足りていなかったのだが、編入した生徒さんが3人入ったので、丁度定員となった。実に喜ばしい」
「噂では欠員があると、その分給金が減るらしいですけど、本当でしょうか」
「なぜそれを知っているのだ、あぁ君はヤーカム伯爵家の者だったか?あまり公言せぬようにな。その通りなんだがな」
「それで、無理やりお子様を入れたんですか、あからさますぎませんか」
「いや、3人共普通に編入試験を受けているぞ、編入試験は入試よりは難しくなっているからな、年齢で侮っていると足元を掬われるぞ、気をつけるように。特に君の事だ」
「ふんっ、何を言っているのか判りませんね」
そういう所でしょ、多分。一応この学院内であれば、教師の方が立場が上であることになっていましてね、この先生は公平そうですね。よくあるじゃないですか、貴族家の生徒の方が教師より上なので、威張り散らして言う事をまるで聞かないっての。その気がありそうな生徒さんですね。偶々貴族家の人間と言うだけで、法的には爵位を持っていないのですけどね。良くて長男までですよ。次男以降は予備ですから、お飾りです。中には居るそうですよ、親が保有する低位の爵位を叙爵権を使って子供に与えている人が。そういう人は、大抵はろくな人間では無いらしいです。ただそうやって与えられた爵位は、自分の領地内でしか公式には通用しない決まりなんだそうです。王国が発行した正式な物ではないと言う事ですね。いますよね、それでも無理やり行使したりする勘違いした人が。
「基本教科は必修となっている。ただし、基本だけでは最低進級点には至らない。選択を幾つか取り、合計が80を超えないと、留年となる。そうすると組分けも最後に回るので、結構恥ずかしい物らしい。私は学習ができるだけましと考えるし、試験を受ければ途中で組替えもできるんだから、別に悲観する必要はないと思うのだがな、毎年脱落するものが出る。注意するように。基本教科の教本は支給されるが、選択は別途各自購入という形となる。こちらは注意しておかないと恥ずかしいぞ、気をつけてくれ」
基本教科というのは、一般教養の事なんだそうで、要は『国語・算術・理学・歴史・武術』の事ですね。音楽・作法・舞踏・家事などは選択科目となっています。あれ?魔石に関する授業とかないね、2年以降の専門過程なのかな。薬学の学校なんだから、薬草栽培とかは必要だろうに、無いね。政治とか経済方面の一般教養は、薬学院ではなくて貴族院の方で習得するのだそうな。
「先生、薬草の栽培とかの教科は無いのですか?魔法とか魔石関連の授業もありませんけど」
「薬師を志すのに、農学が必要か?薬草は農家に任せれば良いのではないか?」
「ふん、これだから子供は。薬草は乾燥させた物を用意し、粉砕すれば良いだけだろう。なぜ育てねばならんのだ」
「えっ?例えば万能草なんかは、乾燥前の採りたてでないと効果が半減するんですけど、それって農家に頼ると実現しませんよね。この国ではそういう効能実験はしたことがないのでしょうか。専業農家を学院で採用したとして、薬草の良し悪しを見分ける眼と言うのも養わないと、いけないような気がするんですけど、要らないんですかね」
「待て待て、万能草の効果が半減などと言うのは聞いたことがないぞ。何処の説だ」
「あれ?昔帝国の特級なんとかさんが発見して、帝国では皆知っているみたいでしたけど、違いましたかね」
はい、ここでお姉さんが私の口を塞ぎますね(シーン2)。
「ミーちゃん、それは帝国のお話でしてよ、他所でお話してはいけません」
「うそっ、御免なさい。皆んなが知っているから周知だと思ってた(棒)」
「{ミーちゃん、お芝居下手ぁー}」
「{いいじゃんよ}」
「帝国の特級薬師様が?帝国が秘匿していると言うのならば、信ぴょう性も高いな」
「所詮子供だな、帝国の秘匿情報をあっさり話すとは。無能も役に立つなら良いか」
お前は何様だっつうのよ、この薄らバカ。
「今の話は他言無用とする。研究班を立ち上げねばならんな。学院長と相談するので、今日は終わりだ。各自選択を考えておくように。では解散」
と言う事で、ちょっとずつ進化させようかな計画が少し進みました。
「カーッ!お疲れさっしたー」
「ミーちゃん、誰に言ってるの」
「さあ」
4. 授業選択
「基本以外はいらないんだけどな、選択を入れないと合格線に届かないじゃんねえ、じぐじょー、よく出来ているな」
「ミーちゃん、どうするの?」
「お姉さんは?一応同じ授業じゃないと危ないし、護衛じゃなくなるし」
「作法・舞踏・家事で良いのではないですかしら。舞踏はこの先必要になる場面も出てきますわよ。家事はお手の物でしょ?手伝って下さいな」
「それで行きますか。はい、決まり」
「了解。さて、白衣だしてね調整するね」
「うん、お願い。で…海辺にいた時より巧くなっているんですけど、何故に」
「奥さんズに教わったのよ、ミーちゃんが魔導具とかを考えている間に」
「上手だねー。職業婦人になれそうだね。あれ、下着も作れない?」
「うーん、あれはちょっとまだ難しいかな。繕いならできるんだけどね」
「魔法でちゃちゃっと、うーんと絵面が見えてこないな。針が勝手に縫い込んでいく所…思いつかないね」
「そういうのも魔法でできれば楽しいですわね。針の運びを想像…できませんね」
「難しいねえ、エッちゃん偉い」
「魔法じゃないけどねー」
5. 家事
一般教養としての『家事』と言うのは、ほぼ貴族で占められている薬学院においては、身の回りの事を自分でできるように成りましょうの程度で、調理と言っても、精々お茶の湯を沸かして(竈を使う場合は、かなり難しい)、お茶を淹れる程度である。そんな程度で1年も必要か?とか思ったそこの貴方っ!砂糖より甘いですね、本物の貴族令嬢・令息が1年程度で竈での調理ができるとお思いか?無茶を言ってあげないでください。
調理の授業はお菓子。結構難しいんじゃなかろうかと思われるんだけど、お菓子。お姉さんがプリン。エッちゃんがわらび餅を作ってみる事にしました。
「ルリエラ様、帝国では皆さんそのような事がお出来になるのでしょうか」
「いえ、私はとある事情がございまして、お師匠様の所でご厄介になっておりますので、簡単なものならば作れると言うだけですわ」
「それでも素晴らしいですわ、手付きもお作り慣れていらっしゃるようで、流れるようですわ」
「お恥ずかしいですわ」
すげえ、お嬢様の会話だー。私はですね、丸芋を櫛型になるよう適当に切って、油でジュワッ。塩を一振りしてフライドポテト。あれ、これお菓子かな?
「ミールさん、お菓子なんですか?これはなんでしょう」
「丸芋です。お菓子と言うよりは、お酒の共と言ったほうが近いかもしれませんが」
「丸芋ですか?毒があると言われていますけど、大丈夫なんでしょうか」
「これが、元の丸芋ですけど、芽が出ていますよね。これをくり抜くように取り除いてしまえば大丈夫です。緑の部分は、皮を剥いてしまえば良いのです。その後、熱を加えれば毒は消えてしまいますよ」
「熱を加えると毒が消える?薬学院の研究対象になりそうですね。お菓子でも、薬学に役立つ調理法があるとは、長く教師をしていますけど、知りませんでした」
「それはなにより」
と言う事で、全員難なく通過。ふははははは。
6. 作法
お姉さんは、一応貴族令嬢なので、結構昔から躾けられていたそうで、その気になれば丁寧で、綺麗な所作でございます。私等?辺境出の平民ですが、何か。作法の授業内容としては、食事作法は当然の如く、歩き方、侍女が補助する中での立ち居振る舞い。上級者に対する言葉遣いやらと所作。まあ、普通にお作法全てですね。さらに幾重にも重なり、用途・爵位毎に異なる正式礼装を一人で着られるようになる必要もあります。私等ですか?只の庶民でしかも女(外見は)。世の中絶賛男尊中、という事でお召し物さえ着られれば良いのです。とは言え、お手本が同じ家に住んでいるわけだし、最近は王女様だって居るし、婆ちゃんもね貴族出身だよね、確実に。時々注意されるのさ。田舎じゃんね、どうでもいいんだけど、まあそういう事で、それなりにはできるのですよ、ただの擬態だけどねぇ。
「作法は、難しいよね。ミーちゃん、どうする」
「えっ?いつも通りで大丈夫じゃないかな。神父さんとか、辺境伯様の所で習った、それっぽい奴」
「なんで、貴族じゃないから?」
「そういう事。点数つけるのたぶん甘くしてくれる」
「くっ、恨めしいですわ」
「お姉さんは、令嬢なんだから、そっちはいつも通りでしょうに」
「誰かさんのせいで、ちょっと平民寄りに…」
「誰よ!そんな酷いことするのは」
「誰ですかしらね」
「イヒャイヒェス」
「あははははは」
授業としては、上位貴族によるお茶会にお呼ばれした設定でのお作法があったのですけど、某下剋上さんのを真似してみたら、結構巧く行きましてね、教師陣がすっかり騙されてくれました。すまんね。
「こう言っては失礼ですが、あなた方お二人は平民ですよね。所作は正確。歩き方も貴族による教えではないかと思われる程に素晴らしいです。先程のお茶会における話の持って行きようは、参考になる程でした。皆さん合格と致します」
「ありがとうございました」
と言う事で、通過。
7. 舞踏
「武闘ならなあー、なんとかなるけどなー」
「ミールさん、舞踏ですからね。武闘では御座いませんので、間違えて相手を倒さないようにして下さい」
「先生、巧い!」
暫く他の人の動き方を見学する事になりまして、眺めていると、ずるの仕方が見えてきました。
「エッちゃん、アタシ等女だよねえ、導かれる方だよね」
「普通はそうだね、それがどうしたの」
「いやね、踊りの手順を覚える必要はないかなって」
「えっ!なんで」
「魔力の流れを見てみて。体捌きとか足送りとか」
「魔力で…あぁ、後手の先取り?なるほど、ついていけば良いって事か」
「そうそう、導く方はさ『若葉の目覚め』だっけ?一番短い曲を知っていればなんとかなるんじゃない」
「あはははは、それなら覚えたよね」
「ねっ、ちょっと先生に呼ばれたから試してくる」
「行ってらっしゃい」
呼びかけてきた教師と踊ることになったので、早速試してみる事にしました。要は相手の魔力の流れと、目線と足先の向きを感知する事で、次にどういう動きをすれば良いのか判断すれば良いのですよ。舞踏とは、女の戦いだ!なんてね。
「素晴らしいです。初年でこの動きに付いてこられるというのは、並大抵の努力では成せません。よくお勉強しています。次はエステルさん、いらして下さい」
「はい。お願いします」
お姉さんも、エッちゃんも難なく熟してですね、こちらも合格点を頂きました。
「ミーちゃん、私達ずるくないかしら」
「気にしてはいけません。努力の成果です。努力の方向がほんの少し違うけど」
「あはははは、そうだよね。舞踏じゃなくて、武闘だものね」
8. 飛びます飛びます
月に一度ですけどね、進級試験があります。所謂飛び級する為の試験です。内容としては、基本となる教科の1年分から、ほぼ満遍なく出題されて、これ以上受講する必要がないと言うお墨付きを貰えば良いわけです。さらに試験を受けるまでに進んでいるであろう次年度分の内容が含まれる事になります。編入試験と同じですね。
「お前らが一ヶ月で受けられるなら、私が通らぬわけがない」
あの、変な人がおかしな理由で、一緒に受けたのですけど、落ちました。飛び級の試験は、通れば次年度。通らないと2度目の受験はないわ、クラスが落ちるわだそうで、1年間頑張ってくれたまえ。あれ?担任教師が何か言っていたような…ま、良いか。




