(08-06)魔導薬学院(編入編)
(08-06)魔導薬学院(編入編)
お姉さんの薬学習得と認定書と言う実績作りのため、魔導国国立薬学院へやってまいりました。私達は、護衛兼メイド兼試験に通ったら授業参加と言う事で、オマケで付着して来ました。そもそも年齢が足りないやん。一応年齢制限は下限も上限もないらしいのですが、見た目まんまお子様がねえ、高等学院ですものねえ、まずかろうよの辺境村村娘ですこんにちは。
1. 到着
とりあえずは、宿ですね。知り合いとかが居ればお泊りさせて貰う所ですけどね、そのお知り合いって、リア姉さんのお父さん。要は国王様だからね、王宮へお泊りなんてね、勘弁して。流石のハンジョさんも、同意見。ただ王都まではそれほど来ては居ないそうなんで、適当な表通りの宿を取りました。
「構えも立派で、貴族対応しているみたいだし、従業員の教育もすごい行き届いていますわね、流石王都のお宿ですわ」
「ねー、私達子供にもちゃんと応対してくれるし、すごいね」
「そうですな、ここは良い宿ですぞ。これで試験日までは過ごせそうですな。私はちょっと失礼して、商業組合やら、セイユー商会やらに行ってまいります」
「「「行ってらっしゃい」」」
宿ですからね、荷を解くわけにも行きませんから、着替えて一階に降ります。なんとですね、喫茶できるんですよ、此処。部屋にもね、侍女さん辺りが保温程度なら出来るようにでしょうかね、3畳間位の部屋に焜炉の魔導具が設置されていました。すげえです。
「編入試験は明後日ですわね、それまでどうします。引きこもりますの?」
「明日は、天候次第だけど、大丈夫そうだから、フラフラしてみます」
「じゃあ、ワタシも。2度目だね」
「あ、そうか。王都巡り初はアタシだけじゃん。案内よろしくー」
ロウタ達は近衛騎士のお出迎で、リア姉さんと一緒に既に王宮へ行っています。試験中はひとまず近衛の厩舎に住まわせて貰えるらしいです。リア姉さんの護衛でもあります。
2. 街をふらふら
「試験に受かったら暫くこっちだから、お土産は無いよね。あっても最後だよねえ」
「そうですわね、早すぎますわ」
「あ、ここだよ。粉屋さん」
「いらっしゃい、おやお嬢様方」
とりあえず、片栗粉を袋で買っておきました。何を作るかは判りませんけど。そのお隣は、青果店。
「これは野菜?だよね。豆か」
「そうだよ。『大ザヤ豆』って言ってね、塩で茹でると緑が綺麗に出るぞ。って言ってもお嬢様には関係ないか」
「見えます?お嬢様に。お姉さんは本物ですけど、アタシは唯の村娘ですけどね」
「そうなのかい?いやいや、立派なお嬢様に見えるぞ、着ている服は」
「あはははは、ミーちゃん服だけお嬢様だ。パシャッ!」
「なんじゃそりゃ」
此方は、一笊なんぼの量り売り。重さは判りません。度量衡位ってさあ、万国共通にしてもらいたいものですね。無理か、地球でもバラバラだったものな。とりあえず消えてねヤーポン。宿に戻って、ひとまずやること「豆を冷やします」時間がかかるんだこれ。
3. 編入試験
帝国にも、この国にも、学校があります。とは言え義務とかではありませんので、国立とは言え、今のところお金持ち限定ですけどね。大体は10-12歳くらいが初等学院で、13ー15が高等学院と言う事になっているみたいですけど、年齢制限は特にありません。また、毎月末に飛び級試験が用意されていて、年度分の履修内容を網羅した試験に合格すると、進級できる仕組みになっているらしいです。今回みたいな場合は、便利です。
「本当に君たちも編入試験を受けるのかね」
ほっほう、王宮からの指示はここまで来ては居なさそうですね。
「そうです。一応護衛の依頼内容に入っておりますので、お手数をおかけします」
「そうか、一応か。なるほど依頼案件と言う事であれば、形だけでも受けねばならんのだな。護衛の冒険者といえど、大変なのだな。そもそも子供の君たちが護衛と言うのもよくわからないのだが、まあ良かろう」
「お気遣いありがとうございます」
「よし、それでは制限時間があるので気をつけるように。次に鐘が鳴ったら始めてくれたまえ。2度めの鐘で終了となる。良いな」
「「「はいっ」」」
カラン、カラン、カラン。ハンドベルの音が鳴り響く。試験開始である。とりあえず一通り眺めてみる事にした。
「ほうほう、算術…ちょっと待て、分数が増えただけ?小数点は無いのか。高等学院じゃ無いの?微積とか無いの?あっても困るけどさ。次は歴史かな…ふむふむ、予想通りだね。初代建国と今上の歴史だけ。化学…はないのか。薬学…初級薬学の知識だね。国語は帝国語と同じだから、まあこんなもんだろうね」
と言う事で、全問一通り埋めて見ました。
カラン、カラン、カラン。
「終了だ、次は魔力試験となる。魔法薬を作成するための能力判定だな。おっ、来たようだ。彼女について行ってくれ」
「あの?先生。この子達は?」
「うむ、編入生徒さんの護衛だそうだ、受験が任務依頼に入っているとかで、気にしないでやってくれたまえ」
「あ、はい判りました。ではこちらへ」
「はい、お願いします」
ついていくと、大きな水晶玉が…ではなくて、魔力を注ぐと防壁になる魔導具的な壁でで囲まれた訓練場のような所に出ました。あれ?リア姉さんが居る。まあここでお話する訳にはいかないから、見ないふり。なんか笑いをこらえているような気がするんですけど、気の所為ですよね。
「それでは、この先にある的に向かって、適当と思われる魔法を放って下さい。周囲は魔力防壁で囲まれていますので、はずれても大丈夫です。監督官の皆さんは、防壁に魔力を注いで下さい。えっ、マジョリア様もですか?よろしくお願い致します」
まあ、全員分でも足りませんが。
「では、ルリエラ様から」
「はいっ。エイッ!」
ズバシャー。お姉さん得意の水撒き。水弾だと全部壊してしまうので、水撒き。それでも的となった人形が吹き飛んでしまった。
「{お姉さん、強すぎじゃない?}」
「{あんなに弱いとは思わなかったのですわ。それよりミーちゃん達はお気をつけなさいな}」
あ、リア姉さん笑っている。手で覆ってもわかるくらい。肩が揺れていますよ。
「はい、け…結構です。次、ミールさん」
「はいっ」
『水の精霊よ、清らかで微細な強き水の流れをもちて、かの的を穿ち給え』
こら、アッちゃん笑うな。ジュンちゃんなんか転げ回ってゲラゲラ笑っていやがんの。良かったね普通の人には聞こえなくて。リア姉さん壁を叩きながら笑っている。皆んな酷くないですかね。
シュピッ!
水刃ですからね、背後の壁までは届きません。壊さなくて良かったわぁ。
「えっ?今、何をしましたか。嘘っ!なんですか、この穴は。針の穴ほどの小ささですけれど、貫通しておりますね。次は、エステルさんです」
「はいっ。ほどほどに、ソレッ!」
おー、巧い!人形の頭だけ吹き飛んだ。
「エステルさんも、け…結構です。次は、魔法薬の調合試験となりますので、こちらへどうぞ」
「はい、お願いします」
万能水薬の調合でした。おぉ、鑑定虫眼鏡があるんだね。この辺りだと全員中級。魔力回復薬位になると、お姉さんが中の上で一歩抜きん出ています。あれね、魔力飽和水を作るのにコツが居るんだよねえ。お姉さん極めて上手。エッちゃん上手。「あんたは肝心な所が大雑把」と言われています。
「はい、け…結構でした。結果は3日後となりますので、こちらにいらして下さい」
「「「はい、判りました。ありがとうございました」」」
終わりました。ハンジョさんは、なんか家を借りる為に商業組合にお出かけしています。
「いやあ、終わったね」
「ちょっとミーちゃん、お待ちなさいな。まさかとは思いますけど、態と落ちるような事はしていませんわよね」
「え、していませんよ。全霊、全力をもって頑張りました」
「全力で手抜きをだね。ギリギリを狙ったと見た。そうでしょ」
「何を言っているのかな、エッちゃんは」
「だって、魔法試験の時に、見つかっちゃったって顔してたもん。あれ、見つかる予定じゃなかったでしょ」
「うん。全力で針の穴より小さくしたんだけどな。眼が良かったよね、あの人」
「もう、貴女って人は。落ちたらどうしますの」
「学院では、護衛として扉の前でボケーっとしている予定」
昨日の続きで、豆を炊いてみました。裏ごしは…魔法で。いかんな、手元に道具がないとはいえ直ぐに魔法に頼るのはいかんぞ、私。なんてね、頼りっぱなしなのも私。潰すのも濾すのもジュンちゃん宜しく。圧力って便利。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 採点始 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あの、学院長。ルリエラ様が総合で990点。エステル君が930点。ミール君が800点で、全員合格なのですが、いかが致しましょう。護衛のお子さん達ですら、一般生徒以上でございました」
「うむ、『合格したなら受講資格を与えよ』との国王様からのお達しでな、そのように計らってくれたまえ」
「はい、了解致しました。ところでですね、ミール君を除いて、魔法行使の際に呪文の詠唱がなかったのですが、ありえるのでしょうか」
「そう言えばまだ届いてはおらんな。魔導具と薬学は後回しと言う事かな。あ…いやそうではないな、転換が難しいのか。マジョリア様がおっしゃっておったからな」
「転換?と言いますと」
「うむ、魔法学院では既に始まっているのだが、精霊魔法の新たな行使方法としてだな、詠唱をなくし保有魔力量を増やす手段が見出されたそうなのだ、魔導具も薬学も同様でな、近いうちに通達があるはずだ」
「薬学もですか、薬学に高魔力が必要と言う事でしょうか。ありえません」
「そうか?そんな事を言っていると、乗り遅れるどころか、職をなくすぞ」
「まさかっ」
「本当じゃぞ、嘘を言ってどうする。魔導省に問い合わせて見ると良い」
「畏まりました」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 採点終 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、ハンジョさんが言うには、なんと学院の近くに家を借りたのだそうで、皆んなで移動。後からリア姉さんも来るそうで、なんと自由な王女様だな、良いのかな。現地に着くとソバーニさんが待っていた。
「おやこれは、男爵様。お待たせしてしまいましたかな」
「あ、セイユー男爵様、おはようございます」
「だからミーちゃん、それやめて。今日はねウドンダも話があるってんで連れてきたんだ。彼の家族も一緒だよ」
「それじゃ『茶麦男爵』は変だな。やっぱりセイユー男爵ですよ。えっ、ご家族?」
「初めまして、ウドンダの家内でメレンゲと言います。こっちは娘のシールです」
「こんにちは、シールです」
「はい、初めまして。ミールです」
「あー、この前の人達だ」
エッちゃん達が知っていそうですね、それでは
「えーと、ご一緒に中へどうぞ。ってアタシの家じゃなかったわ」
「なに、似たようなものですぞ。どうぞお入り下さい」
「「「では失礼して」」」
お茶の用意を…おや居ませんね。そうだそうだった、自分でやらないといけないんだった。ヒルダさん達居ないもん。台所と言うか、厨房だね。手入れされていて、すぐに使えるようになっていました。昨日の今日で?この時代にしては、結構すごい事ですよね。
「お茶をどうぞ、お菓子は口に合いますかね、水菓子ですけど」
「ミーちゃん、これは…丸芋粉かい?」
「お、ソバーニさん鋭い。正解」
まあ、要するに『わらび餅』ですね、中に餡を入れてみました。
「また、面白いお菓子を作りましたのね、水板のように透き通っていますわよ」
「この前の芋粉麺みたいに綺麗だね」
「中身は、あぁ大ザヤ豆ですか!」
「これが豆からできているのですか、緑色の豆とは帝国にはありませんな。しかも甘さが絶妙です」
「我が国の材料で、未だ見たこともない菓子を作るとは、流石ミーちゃんですね」
「褒めても、何も…あ、今日はあれか。ハンジョさんの方?」
「そうですな、後ほどあれの商談をしようかと」
「で、エッちゃん達が知っていると言う事は、ウドンダさんと何かあったの?」
「はい、先日はシールが危ない所をお救い頂いたそうで、誠にありがとうございました。それで、お代を如何したものかと思いまして、ご相談に上がりました」
「いらないんじゃないかな。お姉さん要るの?」
「要りませんわよ。あれはお師匠様からの頂きものですから、お師匠様がいらないと言えば要りません」
「いえ、それはいけません。それでは私達の気が済みません」
「えーと、下世話の事を言いますね、たぶん婆ちゃんの特級薬でしょ。あれ値段ないんですよね、ハンジョさん値段つけられるの?あれ」
「ついておりませんな。つけるとしたら、最低白貨何枚かになります」
「という事でですね、忘れて下さい。ついでに存在を広めないで下さい。希望小売価格がないと言う事は、只同然と言う事で」
「宜しいのでしょうか。命をお助け頂いたのですが」
「宜しいですわよ、お師匠様の水薬ですから、無いものとして下さいませ」
「ということで、お話終了。いいですね、口外せぬように。ウドンダさんには、後で商談に加わって頂いて、お話の商品をできる限り広めて下さい」
有無を言わせませんぜ、だって面倒な事になるもん間違いなく。死んでさえ居なければ生き還るなんて言う冗談みたいな薬があるんなんて、知られたら大変だわ。
「ミーちゃん、お替り良い?」
「あるよー、自分で取って来てね。暫く誰もいないんだよね」
「そうか、ヒルダさん達居ないんだよね。慣れるのは良くないね」
「はいっ!あの、私ここでメイドとして働きます。お給料いりません。ご恩を少しでも返させて下さい。お願いします。父さんも母さんもいいでしょ」
「ミールは、ハンジョさんに一任します。ハンジョさんの家だしね」
「エステルも、ハンジョさんに一任します」
「では私も、ハンジョさんに一任します」
「え、そうですな。ご両親はどうしますか、私の方はお手伝いして頂ければ越したことはございませんし、お給金もお出しますぞ」
「「よろしくお願いします」」
「こんにちはー、ご厄介になります」
「「「「マジョリア王女様」」」」
「あら、セイユー男爵ですね。そちらの方々は初めまして、マジョリアです」
「リア姉さん、早かったねえ」
「王宮は窮屈で嫌いなのです。とりわけ侍女長が煩いんですよ、困ったものです」
「いやいや、現王家第一王女様だし」
「ミーちゃん、私はリア姉さんです」
「あぁ、はい」
あ、ウドンダ家からエクトプラズムが出ているような気がする。シールちゃん、帰っておいでー。まず間違いなく、お父さんまで来るぞ、多分。




