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(08-05)深森の廃村(狼就職)

(08-05)深森の廃村(狼就職)


 ロウタ達の子供は、あっという間に5匹から5頭に成長して、現在砦で修行中。とは言え単に兎狩りをしているだけなんですけど。増えすぎて砦内に入り込んで来るらしくて、少し減らしましょうと成りまして、組合経由で依頼を受けることになった辺境村村娘です。


1. 砦の狼、館の狼


 その兎なんですけどね、砦の外壁の下に、巣穴を開けるんですよ。人間にとって都合が悪いのですね。しかも平原をピョンピョン跳ね回るんです。穴あけの前足と、飛び跳ねの後ろ足が両方丈夫と言う欲張り仕様でね、砦の兵士にはそこそこ訓練になるようですが、数が多くなりすぎたために音を上げて、家にお鉢が回ってきたと言うわけなのです。


 まあご飯になるし、狩りの経験値も稼げるしで、良いのですが。スシィとテナの咆哮で追い出し、フローが使う氷と、ネローの風弾やら風刃とかで討伐する事になりました。


 その後は、辺境伯様の取り計らいで、スシィとテナは砦内は自由行動、時々森って事にしてもらいまして、フローとネローは、館と街の警備担当で、時々商隊護衛。此方もほぼ自由行動。まあ皆賢いからですけど。4頭とも街の遊撃手になっています。


 トリィ?こっちにいます。闇の魔法を使う個体なんぞ、人の目に触れさせたら、犯罪だらけになってしまいますがね、そりゃ困る。暫くしたら、番を求めて森に帰って行きました。うむ、自然界の巡りを忠実に熟していますね、結構な事です。えっ私ですか?何か言いましたかね、聞こえませんね。私は勝手に生きているだけなんだから、どうでも良いのですけど、エッちゃんを付き合わせる訳にはいきませんからね、行く末どうしましょ。エッちゃんの彼氏はいませんかー、9歳じゃまだ早いですか?


2. 増える秋播き麦。初夏の候


 少しずつですが、秋麦が増えています。予定としては、全畑面の1/3が秋播き物で埋まれば良いかと考えているんですけど、収穫量的にはまだまだ先に持越しですね。収穫が終わった頃に、なぜかガンさん達が戻ってきました。早すぎないですかね?赤さんは、大丈夫なのかなと思ったんですけど、こっちの世界の平常運転らしいです。生まれて一ヶ月で大移動っすか、すげえですね。今時のお子さんは大変だ。


「赤ちゃん、大丈夫だった?病気してない?」

「生きているぞ、大丈夫だろ」

「生きているのはいいけど、やっぱり生後一ヶ月で移動ってのはすごいわ」

「僕の子も何事もないよ」

「【ハロー、ニーハオ、こんにちは、ボンジュール、グーテンターク、アロハ、ジャンボ、アシタマタニャ、ナマステー】反応がない。まだ早いか」

「なんだい、それ」

「ン?おまじない」


3. 用意していなかったよ


 いや、もう少し来るのが遅くなるだろうと思っていたので、赤ちゃんのあやし道具を用意していなかったよ。あるでしょ、ガラガラ鳴るのとか、クルクル回るのとか、なんて名前でしたっけね。とりあえず、単純図形の絵本を至急で作って見ました。効果があるかどうかは分からないけどね。


「絵本?ってなんだい」

「字を覚えるための簡単な物語を、絵と文章で綴った本かな。最もアタシは、昔話みたいなのは知らないのだけどね『皇子が魔獣を倒して帝国を作りました』とか『一人で森へ行ったクズーマは、魔獣に見つかって食べられてしまいました』とかかな、無いの?」

「なるほど、そういうのは良いですね。あればうちの子に読ませてあげたいですね」

「無いのかあ。それじゃ、皆んなどうやって字を覚えたりするの?」

「俺は、学院へ行かせて貰ったから、そこで覚えたなあ、8歳か」

「私もだよ。あんたは10歳になるまで字なんて読めなかったよね、棒ばっかり振っていてさ」

「脳筋父ちゃんは、子供の頃から脳筋だったー」

「うるせえよ。んで、生まれたてはどうするんだ。字なんて読めねえだろ」


 図形の本を見せながら、説明してみました。


「□の隣頁はね、縦に半分づつ開けば『□■◇◆』が現れるようになっているの。同じ形のを合わせるとかするわけだ。『△▲▽▼』のもそう。目で追えれば、視えているって事でしょ、健康診断が出来ます。同じ形を選んで貰っているうちに、自然と識別能力とか、想像力を身につける事ができるかもしれない」

「魔法の基礎練習を、一歳からできるって事?」 

「そうなるかなー。それほどまでには役に立たないとは思うけど」

「いや、いや。そうか、直接魔法を覚えるのじゃなければ危険じゃないよね」

「そう、遠回しに魔法を練習できないかなって思ったの。想像力は大事だよ」


 図形がカードになっている方はですね


「こっちは、図形がばらばらになっているでしょ、裏にして混ぜてから並べて、同じ形のを選んでもらうのね、記憶力の向上になります」

「あー、それも素晴らしいです」

「その次は色を着けます。同じ形の同じ色を合わせるの。色の識別能力も養えます」

「ミーちゃん、すごいです。魔導国でも広めたいですね」


 舐めても、噛んでも良いように板です。投げ飛ばしても良いように、角は丸いです。ついでにオマケだ、木を切り刻め。


「これは、色を着けていないけど、円柱、角柱、錐型とか作ってね、家を真似したり、お城を作ってみたりして、主に創作力を養います」


 単語を覚えるようになった時のために、諺・慣用句札。『溢れた水は』『飲めません』とかいう対になった2枚の読み札と、場札。


「これはね、少し言葉を覚えてきたら、こうやって慣用句とか、諺とかを覚えるための札ね。場札を並べて、読み上げられたら対の札を取り合います」

「すげえな、王国にはこんなのがあったのか。そうすればお前ができるのか」

「ないよ、あったら神とか呼ばれているぞ、アタシは」

「ミーちゃん、これはすごいよ。ワタシもこう言うのでお勉強したかったな」

「ねー、エッちゃんもそう思う?何もなかったよね、あの辺境」

「そうだよねー、何もなかったね。神父さんがいてくれて良かったね」

「そうだね、神父さんがいてエッちゃんから文字と数字を教わっていなかったら、バカフラグの嫁になっていたわよ。一生辺境村だったわ。それ以前に納税できなくて、一家全員で農奴落ちだったね」

「ワタシは、娼館に売られる所だったし、ミーちゃんに助けられなければ、今頃病気で死んでたね。ミーちゃんは、蛇の餌だっけ?」

「そうだよ、あのバカ親。昔の事は、考えるの止そうね。泣けてくるわ」

「お前ら、結構壮絶な」

「すごいだろー」

「自慢してどうするんだよ」

「でも、ミーちゃん。これは早くハンジョ様に出して頂きたいですね。魔導国に持っていきたいです。皆んなで遊びながら、魔法も勉強もできるという所が素敵ですね」

「男爵様手が空いているかな。男爵様がだめでも、木工細工工房があればいいのか」


4. ハンジョさん来る


 いつもは、秋の収穫後辺りに来るハンジョさんが、やって来ました。


「ミーちゃん、こんにちは。お邪魔しますよ」

「こんにちは。ようやく、ビックリ飛び込みがなくなりましたね」

「いや、いや。そうそう驚かされてばかりでは寿命が縮みますぞ」

「そんな事はないでしょうけど、まあ落ち着いてお風呂に入れるのは良いですよね」

「そうですな、それで早速ですが、失礼しますぞ」

「はい、ごゆっくり」


 さて、何でしょう。心当たりが無いんですけど。近況の報告でも入れてくれるんでしょうかね。それなら、簡易通話器で良いはずですよね、なんだろう。


「実はですね、私ようやく商会仕事から離れることができまして、全て倅に引き継がせる事が出来ました。伸ばすも、潰すも倅次第となります。そこでですね、辺境伯領に居を持つことに致しまして、そのご挨拶でございます。ただですね、ミーちゃん達との繋は、今まで通りと言う事でお願いしたいのですが、どうでしょう」

「アタシは、別に異論はありませんけど、ご苦労様でした」

「ありがとうございます。今度家内と来ても宜しいですかな。温泉に浸かるのが私だけでは心苦しいものですから、ゆっくりさせてやりたいなと」

「それは良いですね。苦楽を共にしてきた訳ですから、ねぎらいも必要だと思います」

「そうですか、では転居次第連れてまいりましょう」


 そういう事でしたか、まあ薄々は気づかれているとは言え、ここは管理放棄の隠れ里だからね、広まらなければ構わないです。婆ちゃん的にも、私達的にも。


「そうだ、丁度良かった。ガンさん達の子供用にね、遊び道具を作って見たんですけど、商人の眼からだとどうなのか、見てもらえますか」

「えーと、ちょっと深呼吸を…」

「何故に?」

「解りますわ、ミーちゃんですものね」

「なにそれ」


 という事で、図形合わせの本を見てもらいました。


「これが乳児用と言う事ですかな。乳児の頃から魔法の基礎を覚えられると言う事でしょうか」

「そんなに大層なことではないですけどね、手助けになれば良いかなって。効果の程だってまだ判りませんし」

「画期的ではありませんかっ!魔法を教えることなく、安全に魔法の基礎を習得できれば、どれほど後の世に好影響を及ぼすか、計り知れませんぞ」

「いやいや、どの程度役に立つかはまだ判りませんってば」

「乳幼児の頃からという考えが素晴らしいのですよ、一度出せば、いろいろ研究する者も出てくるでしょうが、いままで考えもしませんでしたからな、画期的である訳です」

「そう言って貰えると嬉しいですけどね、ガンさん達の子供は実験台ですけど」

「別に、賢くなるんだろ。だったら良いじゃねーか。気にしねーぞ」

「僕たちも賛成するよ。これは良いものだ」


 いままで誰も考えなかったというのはですね、その理由が実は結構悲惨な物でしてね、ほら、私が熱発したじゃないですか、あれですよ。領都位になると良くはなりますが、衛生観念とか食事事情とか、まだまだ劣悪ですからね、医療なんて目も当てられない。子供なんて割りと簡単に死んじゃうんです。発熱どころか、傷ひとつで死んでしまう事もある位です。オマケにこの世は魔獣付き。齢二桁を迎えられる子供は、それこそ誕生数の半分以下。母体の肥立ちも含めて文字通りの命がけと言う世界だからです。


 7・5・3てあるじゃないですか、節目節目に生きている事を祝うやつね、正にあれが今の世界。だから乳幼児の為になんて思いもつかないのです。ただ、今後は少しずつですけど、食糧事情辺りから改善されて行くのではなかろうかと期待をしているのですよ、なので先行して商品を出しておけば、新商品の牽制になるかなあーって下衆い事も考えて見ました。


5. 来るの?学園編


 辺境伯様からお知らせが来ました。以前お尋ねした、お姉さんの薬師資格ですけど、高等薬学院に行くことになりそうです。帝国じゃなくて、魔導国の。私とエッちゃんは、お姉さんが就学中の護衛依頼だそうです。ついでに編入できたら学んで良いとの事でした。リア姉さんも、実家へ帰るだけですけどね、一緒です。一応、入学の学年(1-3)を決めるための試験があるようです。行っていきなり卒業と言うのもねえ、あちらも困るでしょうし、1年からでしょうね。そんで毎月飛び級試験を受けて、半年程度でご卒業。そんな感じ?かな。あるいは、飛び抜けて難しい試験とか用意されていてずっとあっちと言うのも、極僅かなる可能性として存在するかも知れません。まあ、なるようにしか成りませんわね。


「済まないさね、私が免状を出して上げられればいいのだけどね、できないからね」

「いえ、お師匠様より上の方は居ませんから、学院の資格なんてただの飾りですわ」

「偉い人には、わからんのです」

「ミーちゃん、なにそれ」

「戯言」


6. 来たぞ!学園編


 そういや、こっちの入学時期は秋だったね、それより前に試験と言う事は、早々に出立せにゃいかんと言う事ですわね。と言う事で、取り急ぎお姉さんは、家に戻り着るものやらを取り揃え、学業に必要となりそうなものを揃え。慌ただしく出発。ロウタ達は護衛です。ハンジョさんは、ソバーニさんと商売の取り決めをするため同行。ミーちゃんの行く所に居なければ、勿体ないと言う変な理由で、どうも私達と一緒に魔導国に滞在するつもりらしいです。


「ほんじゃあとは宜しくねー」

「おう、任せとけ。気をつけてなー、試験落ちるなよー」


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