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(08-04)深森の廃村(狼増量)

(08-04)深森の廃村(狼増量)


 沈みかけた船がお土産となりまして、魔導国遠征から戻ってきました所の辺境村村娘

でございます、只今。


1. やっぱり欲しいな発動機


 発動機なんぞ、ぜーんぜん考え付きもしませんが、行きに10日、帰りが道草付きの12日、往復だけで一月経っちゃったよ。行き帰りに時間がかかり過ぎですね、せめて蒸気機関車位欲しいです。それか、あれだ「ゲート」。そう、2点間距離短縮魔法『どこでも玄関』あれ欲しい。どこかに落ちていませんか、見かけませんでしたか?ありませんか、そりゃ残念。


「やっぱり家が一番だねー」

「落ち着くね~」

「またお年寄りみたいな事を言って、この子達は」

「私もそう思いますよ、ここは我が家ではありませんが。落ち着きますよね」

「リア姉さんも、ここが自分の家になっちゃった?」

「あら、そういう事になりますかしら、あちらでは慌ただしかったですからね、主に私の父のせいですが」

「でも、魔導国のお陰で事が動きそうで、ありがたい事ですよ」

「そう言って貰えると出かけた甲斐がありますね、私も精進しませんと」

「それにしても、エッちゃーん、行き来にね、時間がかかりすぎると思わない?」

「そうだけどね~、ミーちゃん何か思いついたの」

「うんにゃ、あれば欲しいな、馬力のある機械ってだけ」

「それ、見本市でも言っていたね」

「魔導国なんてさあ、日帰りっしょ、日帰り」

「あははは、そうなったら面白そうだね」

「私も通いで来られるんでしょうかね、それは楽しそうです」

「ねぇー」


 いやあ、温泉最高だわー。落ち着くわー。


2. 家のワンコ(じゃないけど)が増えました。


 行く前に身重だと思っていたら、帰った時にはご家族が増えていましたよ、5匹も。

 いやまあ、多産だね。性別も何もまだわかりませんけどね、ロウタもまあ立派になって、ちゃんとお父さんしていましたよ、偉いな。エステリーナの産後の肥立ちも、全く問題なく、その辺りは野生獣ですね。流石は安産の元祖様。生まれたての子狼と言えど、親が大きいからね、私の頭位の大きさがあるんですよ、エッちゃんなんか抱きかかえたくてうずうずしてますけど、まだ肉の塊みたいな体なので、毛皮になるまでお預けかな。まあ、直ぐでしょうけど。


「そう言えばさ、生まれてきた子狼達ってさ、こっちを餌と見るんだろうかね。親が従っていれば、習ってくれるのかね」

「そう言われたら、そうだね~。狼の生態なんて誰も知らないから、調べて行くしか無いよね~。一応写真は残してあるし、経過も書き残してあるから、何かの参考にはなるだろうけど、専門に研究している人なんていないよね、そんなゆとりないもんね」

「そうだよね、初の生態研究者になるのかな。しかも魔獣」

「そのうち、独り立ちするだろうから、そうしたらちゃんと訓練して、里子に出せないかな、誰か育ててみる気になれば良いんだけどね~」

「魔獣を?魔力が相当高い人じゃないと、逆に餌になっちゃうよね、野生に還すしか無いかな」

「あぁそうか~。街の用心棒とか、お屋敷の護衛とかを仕事に出来ないかな~」

「お仕事どうしようかね。もう少し大きくならないと解らないけどね」


 なんて悠長な事を言っていたら、あっという間に毛皮になって、父ちゃんにくっついて私達の周りをウロウロしています。エッちゃん、呆けていますけど。それで全部魔獣でした。魔獣ってのは、長いこと濃密な魔素中に居るとなるんじゃなかったのかい?図鑑にはそうなっていたぞ、適当書くなよ、違うじゃんね遺伝たぶんじゃん。そう言えば、ガンさん達の馬は半魔だったね、魔と野だと半魔で、魔と魔だと魔が生まれるのか。どうりで野山の魔兎が減らない訳だ。


「でへへへ、この子も可愛い。発表しま~す。雄2匹、雌3匹でした。名前どうしようか、付けてあげないと可愛そうだよね」


 と言う事で、焦げ茶の子(雄)がスシィ。黒い子(雄)がトリィ。一匹だけなぜか白毛の子(雌)がフロー。深緑の子(雌)はネロー。濃灰(雌)はテナと成りました。うむ、相変わらず魔獣といえど、この世の毛色はカラフルでございます。


〔相変わらず、アンタが命名すると適当だねえ〕

〔それっぽいでしょ、いいじゃん〕

〔エルちゃんが命名したのが、『テナ』でしたかしら?良かったですねえ、名付けがエルちゃんで〕

〔ジュンちゃんも、アッちゃんも酷い。ちゃんと考えたもん〕

〔〔あー、はいはい〕〕

〔最近、アッちゃんも素気なくなって来た〕

〔付き合い長いからね、アンタの本性を知ったからでしょ〕

〔なんぞ、それ〕

〔そうだ、忘れる所だった、アンタさあ、闇の子見なかった〕

〔闇の子?何色?闇色とかなしで〕

〔人から見ると黒い玉かな?〕

〔そういう子は一度も見た事ないんだけど、やっぱり居るのね闇の精霊って〕

〔いますわよ、そうですか一度も見たことがないのですか、何を考えているのかしら、あの子〕

〔精霊さんにもいろいろな子が居るんだねえ〕

〔そうね、見かけたらお話しておいて、私が探していたって〕

〔解った〕

〔〔じゃあね〕〕


 コロコロワンコ状態と言えども、基本は魔獣。街で買ってきた竹で編んだカゴを2つ繋げて球状に組み、一角魔兎の毛皮を縫い付けてボールにしてみました。ボールをポーンと蹴りゃウォンと鳴き、コロコロがコロコロを追いかけると言う光景が見られるようになりまして、エッちゃんは、一日中デヘデヘ少女です。危ないです。


「スシィちゃんが球と一緒に転がっている。きゃははははは」


 こんな感じです。親は親で、フライングディスクを加えてきて、遊べと催促してくるし、親の真似して飛びつこうとして、ピョーンのつもりがピョくらいで終わってしまい、それをエッちゃんが見てまた喜ぶという循環環境。私?撮影係だよ!


3. 覚醒


 魔獣と野獣の違いというのは、外見的には全くないのですよ、体内に魔力の塊みたいなのを持っているのが魔獣と言うだけ。と言う事は、魔力視ができる人でないと、区別が出来ないと言う事なのですけどね。魔獣というのは、成長するに伴って本能的に魔力の使い方を知るようで、ある日突然身体強化を掛け始めてくれました。体型的には、狼の小型版になって一人前の体つきになった頃ですかね。


「うぉっとい、吃驚したあ。5[㍍]をひとっ飛びで来たー。こらっ、爪出すな」


 人に向けて爪を出すと討伐対象になっちゃいますからね、ちゃんとその場で叱っておきます。


「エッちゃんさあ、ロウタ達は、結構賢いじゃん。あれっていつ覚えたんだろう」

「やっぱり、魔力の揺らぎみたいなのが見えるんじゃないかな~。こっそり悪いことを考えていると、魔力が黒く見えるとか、そういうの」

「確かめる方法なんてないよねえ」

「そうだね、思いつかないねえ」

「本人、本狼?に期待するしかないかー」


 子狼のうち、スシィとテナは母親似で、幻惑を使えるようです。フローがですね、氷結を使ってきやがりますんですよ。向かい合うと、いきなり氷塊が飛んできます。今の全力が風雪です。わぁい、将来絶対零度なんて出すんじゃねーぞ。ネローは、風ですね。私が旋風水撒きをしていると真似をして来ます。え、まだ居るじゃん?いますね、トリィが。この子はですねえ、ある日突然消えちゃった。木の陰に回った次の瞬間、後ろから飛びかかって来やがったんですよ。ちょっと待てや、瞬間移動かよと思ったら、陰から陰、あるいは影へ移動しているらしいです。なによ、その御伽の国のファンタジー魔法。物理法則ぶっちぎりじゃないか!人もできるのかな、どうやっているのか聞いたのですけど、『ヲン、ヲンワオーン』で判りませんでした。イメージ?影に潜る所をですかね?絵面的にはアニメっぽく影に沈む感じなのでしょうけどね、実際そういうイメージって湧きませんよね、だって下地面だし。なかなか思い浮かびません。


 所でですね、幻惑は体内魔法の延長としてもですね、この世界の魔法と言うのは、基本的に精霊によるものだと思っていたのですけど、魔獣が発する風雪だの、陰移動だのはどうなっているんですかね。原理的にはイメージでしょうし、獣と言えどもそれなりにイメージしているのでしょうけど、近くに寄ってきているであろう精霊が見えません。魔獣に寄り添う精霊は、人には見えないのでしょうか。うちの子達に聞いても答えは解りませんでした。人には知らせぬ理でもあるのかも知れません。


4. 狼さん家の卒業旅行


 子狼たちの旅立ちが近いみたいです。成長早いわあ。どうするのかと思っていたら、エステリーナとロウタが子狼達を連れて来ましてですね、森の奥の方を指して、それで街の方に向かって手を動かしているんですよ。どうやら森を経由して、街に行きたいらしい。遠足っぽいですね。自然界を見せておきたいようなので、協力する事にしました。お姉さんにお願いして、北の監視砦に行けるよう取り計らってもらい、私とエッちゃんが先に行って待っている所に家族で来るようにする予定。まあ、私らは魔力灯台って事ですね。


 それでは、計画行動開始。天文薄明とか朝まずめとか言われる時間帯に出発しまして、いつも通りに街門到着。今回は、辺境伯様のお屋敷に泊めさせてもらいました。次の日は、北の砦に向かう交代部隊と一緒に出立。お昼には到着しまして、お姉さんに連絡。そしてヨーイドン。どのくらいで到着するかわかりませんので、お礼に持ってきた双眼鏡を渡して、なぜか一緒に来たガンさんと待つことになりました。


「ガンさん、こっちに来ていていいの?お産は?」

「まだだろ、始まっても、俺たちはすることないぞ」

「あー、まあ、そうだけどね。外から激励するとか…ないか」

「ないな」

「おお!こりゃ良いな。お前らが持ってきてくれた双眼鏡だっけ?逆像だけどよ、遠くまでよく見える」

「だろ?多少薄暗くなっても使えるらしいぞ。試してくれってさ」

「おう、解った。良し、嬢ちゃん訓練しようぜ」

「はっ?お嬢ちゃんは大人しく狼さんを待っているのが仕事なんですが」

「なーに、当分来ねえって。良し訓練場へ行くぞ」


 私らは野菜か何かですかね、腕を掴まれ持ち上げられて、あっという間に米俵状態。うへぇこの人強え。しかも脳筋と来た。ガンさんより筋量が多そうだ。


「ガンさーん、この人、ガンさんより強そう」

「おお、見る目があるじゃねーか」

「いや、11戦6勝だな。俺の勝ち」

「うっせえ、ありゃ1分けだっつうの、ひ・き・わ・け。同率だ!」


 うむ、脳筋率は同程度なのね、強そうな訳だ。今移動している北の砦は、街道がありませんから、中央門の前は500[㍍]先が森。途中の平原部分にご飯が沢山、そう兎。その中央門は、外側が黒鉄でできた格子状の落とし戸。内側が20センチ位の厚さがある両開きの出陣時の板戸。落とし戸の仕掛けやら、門の重量を支えるためであろう塔は、奥行き20[㍍]ほどあるのですけどね、その両脇は砦街を囲む厚さ3[㍍]程の石壁ですね。中身は普通に土を押し固めているっぽい。内側から見て右側に訓練場がありまして、隊舎が内壁兼用になっていました。


「ところで、名前はなんていうの」

「俺か?ハッケンだ」

「ガンさんが『殺しても死なねー』って言っていた丈夫な人か」

「ガン公、お前嬢ちゃん達にそんな事言っているのか。しまいにゃ殺すぞ、ゴラァ」

「うっせえ、とっととくたばりやがれ」

「仲がお宜しい事で」

「「んだとう」」


 ほら、息ぴったりじゃんね。それでもって、お待ちかね(待っちゃいないけど)の訓練場到着。


「司令!何、人さらいしてるっすか」

「さらって来たんじゃねーよ。こいつらガンドウと訓練しているっつうからよ、俺も混ぜろって言う話だよ」

「いたいけな嬢ちゃんと遊びたい、変なおじさんだー」

「わははははは。ミー、言ってやれ言ってやれ」

「お前さんがミーで、そっちがエルか。よし掛かってこい」


 しゃーないなーで、エネルギー充填完了。


「それじゃ、エッちゃんは、ハッさんの右ねー。最大戦速!」

「は~い」


 せーので、バキッ。一撃。


「「勝ったー」」

「何ぃ!」

「ギャハハハ。ハッケンの負けー。うはははは、はーはっはっは。バーカバーカ、そんなに悠長に構えてっからだよ!」

「ちょっと待てこら、視えなかったぞ。どうなってんだ」

「そいつらが『最大戦速』って告げた時はな、魔力の流れを追いかけないと、俺でも眼じゃ拾えねえんだよ、面白れえだろ。あれやられたら、二人相手じゃ勝てねえよ」

「『魔力の流れ』ってなんだよ、教えろよ。お前らだけずりーぞ」

「ミー、そいつの魔力具合いは、どうだ」

「えっ?量はそれなりにあるけど、制御がたぶんできていないかな」

「そうか、はじめの頃の俺達と同じ感じか?」

「うんそうだね。普通に上級戦士。あれ、領軍の人たちに伝わっていないのか」

「おぉ、話が漏れるとまずいってんでな、伝えていないらしいぞ」

「魔導国に伝えちゃったから大丈夫じゃない?まだだめかな」

「おい、話が分からん。説明しろ」

 

 それから、辺境伯様と相談しまして、教習許可が下りましたので、皆さん集めて魔力の事を始めとして、とりあえず魔力制御を熟してもらう事となりました。


「おおー、こりゃすげえ。双眼鏡よりは大きくねえけど、遠くまで見えるようになるのか。魔力ってのはこんな事もできるのか、知らなかったぜ」

「面白れえだろ、訓練次第で耳も鼻も効くようになるからな、対戦時は有利だぜ」

「やっぱりお前らだけずりーじゃねえか」

「しょうがねえだろ、こんなのが世間に流れてみろよ、混乱するだけだろ」

「それもそうか、なるほどな。で…他にも教えてくれるんだろうな」

「ミーに聞け」

「あ、こっちに来た。まあ、いいか。ロウタ達が来るまで暇だし」


5. 領軍兵士さんとロウタ・パック


 ガンさんは、奥さんの事があるので、先に戻りました。でもって、ロウタ一家はまだ戻りません。あいつら、何処まで遠足に行っているんだろ。


「後はですね、実に地味な訓練になりますけど、感じた魔力を右腕から左腕へ、上から足先とか移動するように意識して下さい。それが出来たら、次は手のひらを少しづつ離して行きます。それでも回せるようになったら、身体強化力が格段に上がるはずです」


 さらに魔力蓄積量を増やすと、こんな事ができますよって言う事で、古くなった訓練用の剣だの盾だのを、スッパスッパ切り刻んで見ました。木剣で。


「うぉーい、木剣相手に盾が役に立たねえのか」

「俺、盾役だけどさあ、真っ先に死ぬの俺?やだよ、なんとかしてくれよ」

「じゃあ、この木でできている盾に、思いっきりそこの真剣で切り込んで下さい」

「いいのか?行くぞ、そりゃあ」


 ゴワン。


 鈍い音がして剣が弾かれて終わり。


「あれ?なんともなっていないな」

「ね、こうやって盾を魔力で覆うんですよ。死にたくなければ、生きているうちに死にものぐるいで身につけて下さい。胴体が別れた後では遅いです」

「あっ、そうか。そういう事か。おっし、やるぞー」

「がんばってねー」


 ザワザワと煩いですよ、ガンバレ、ガンバレ。


「ついでと言ってはなんですけどね、体内魔力を向上させると、病気とか怪我とかし難くなるみたいなんですよね、まだそんな気がするってだけですけどね」

「すげえな、それが本当なら、俺たちには有益だな」

「でしょ、便利でしょ。皆んなで使って楽して暮らしましょ」

「「「「「違げえねー、わっはっはっは」」」」」


 とかやっている内にやっと反応が現れた。数は揃っているので、皆無事のようだなって喜んだら、その後ろの反応数が多い。後からなんか大勢さんがやってきているようだ。


「ありゃ、エッちゃん。ロウタ達追いたてられている見たいよ。あんのお馬鹿森で何かしたのかね、恨みを買ったとかさ」

「そうだね、反応が大きいね。でも蛇じゃないね、短いもん」

「隊長さん、魔獣警報出して下さい。やたらでかいのが来る見たい」

「何!判った。総員配置に着け!警報鳴らせ」

「それでは、アタシ達はお出迎えに行ってきますね」

「おいおい、大丈夫か?」

「数的にはたぶん大丈夫。外でお迎えしないと、突破されるよ」

「解った、すまんな」

「いえいえ、どういたしまして。ロウタの後始末は、アタシ達がしないと」


6. 引き連れて来たのは森の熊さん


「なによあの熊。家に来るのより大きいじゃん。ロウタは何をしたんだろう」

「あはははは、結構傷だらけだよ、あの熊。ロウタが頑張ったんじゃない」

「仕方がない狼さんだねえ、後でとっちめたろ。おっ、こっちを見つけたようだね、子供を先に逃がすとは、やるねお父さん」

「うん、頑張っているね。それじゃ、行こう」

「その前にだね、とりあえず魔力を放出して見ましょう」

「あっそうか。それで帰ってくれれば十分か」

「そうそう。頭に血が上っているとだめかもしれないけど」

「じゃ、せーので」

「「それっ!」」


 効果はあったようで、ロウタとエステリーナが止まって、子供達は私達の後ろに。


「帰れ、帰れ、面倒臭いから、帰れえー。傷は直して上げるから帰れー」

「エステリーナは全力、スシィとテナは補佐。ネローは、前方へ声量拡大ね~」


 エッちゃん、指をいろいろ折り曲げながら手をヒラヒラさせています。なるほど、ハンドサインか。


「えっ、いつの間にそんな事ができるようになったの」

「ウォン、ワオーーーーーーン」

「おお、和音になっとる。すげえ」


 傷を直してあげたら、熊さんはなんとか子分を引き連れて、戻って行ってくれました。良かったよ、面倒事にならなくて。


「終わったあー。それで、ロウタさんや、何があったのかね?」


 あ、このやろ『ヘッヘ、ヘッヘ』と息継ぎしながら、顔を背けたね。何かしたよね、不味いこと。お水とご飯を上げながら、聞いてみたけど、もとより無理ですわね、狼語なんて分からんもん。


「まあ、何があったか知らないけど、無事戻れたんだからいいか。それじゃあ、洗浄するよ」

「そうだね、無事ならいいや。皆んな帰ろ~」

「ウォン」


7. 砦が大惨事


 砦に戻ると、とても静かでした。


「あれ?なんで」

「エステリーナ達の声が届いたのかな?そんな事ないよね、離れているもん」

「そうだよね、これだけあれば、大丈夫だよね」


 門が開きません。可怪しいです。まさか別働隊がいたのかと思い、ロウタ達を塔の上に上げ、私達は下りていた格子戸をヨジヨジ。


「うわっちゃー、なんじゃこりゃー」

「あっれえ~、やっぱりエステリーナの声が届いちゃったのかな」


 ハッさんだけ、なんとか無事だったので話を聞いてみる事にしました。ふらついていたけどね。


「お前らの狼ってのは、魔狼だったのか!あんなでかいとか聞いてねえぞ。幻惑の魔狼だろ、あいつ。吠えた途端に砦の奴らこのザマだ」

「何故ここまで届くんだろう」

「知らねえよ。勘弁してくれよ」

「それは御免なさい。届くとは思っていなかったんで」

「皆んな生きているかな、ちょっと見てくるね」

「うん、お願いね」

「たぶん大丈夫だろうけどな。しっかしすげえな、直近であれを聞いて何もなしか?俺たちはこれだけ離れていて、動けているのは俺だけだぞ」

「うーんと、慣れているからかなー」

「そんな訳あるか!体内魔力を上げるってのが、魔獣対策になるってのが良く解った。いやー、参った」

「お役に立てたようでなにより」


 中央塔を吹き抜ける初夏の風が、平原の草の香りを運んで来てくれる日の出来事でした。平原?あッ!しまった、遮るものがないじゃんね、音の通りが良いはずだわ。


「風が音を運んじゃったんだ。まっ、いいか。黙っとこ」


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