(08-03)魔導国再訪(観光中)
(08-03)魔導国再訪(観光中)
人が冷や汗たらたらで、他国の王宮でお仕事している最中に、お気楽観光していた二人でございます。ぢーぐーじょーの辺境村村娘です。
1. 街ぶらりん
「エッちゃん、目線はこっちね。いいわよー、ハイッ!」
「次は、お姉さんね。やっぱりご令嬢だー、街映えするねえ」
「なんですか、街映えって。そういうエッちゃんだって、都の美少女ですわよ」
今の所、フィルムにはなっていませんから、毎回転写と魔力消去する必要があるのが難点ですが、その代わりに転写紙を巻取り紙状に内臓していて、ほどほどに小型化した、超最新型です。大きさ的には、ハッセルとかのね、6✕6版の一眼レフ位です。性能?聞くな。足元にも及ばんわい。
「あら、このお菓子は帝都にもありませんわね、写して置けば誰かさんが作ってくれるかしらね」
「そうか、そういう目的にも使えるんだねー、お姉さん良い考え」
「そうでしょ、そうしましょ」
食べ終わって、席を立とうとした所で、表通りからまるでテンプレのような悲鳴。
「あら、何かしら」
「行ってみよ」
「そうね、ただ事ではなさそうですわね」
表通りの人だかりを見つけたので、近寄って事情を聞いてみると。
「いや、誰かが馬車に跳ね飛ばされたらしいんだよ。お貴族様の馬車だとなあ…いや、全部の貴族様がそうとは言っていな…」
「咎めたりしませんわよ、それでお亡くなりになったのかしら?」
「いや、そりゃわからん…ませんです」
二人ともお上品なお召し物なので、まあ確実に貴族に見られますわな。
「ありがとう、エッちゃん様子を見に行きますわよ」
「わかった」
既に馬車は走り去った後のようで、残っているのは人だかりだけ。現場では、母親らしき女性が子供を抱きかかえているのが視えた。
「シール、シール、しっかりして」
「お…母…さん、ご…め…ん…ね………」
「ちょっと失礼、揺らしてはいけませんわよ、そのまま抱えていて下さいな」
「あの、どちら様で」
「それは後で、エッちゃん、周りの男性をどかして、この子の服をハギますわ」
「了解。という事で、見てはいけませんからね」
「お…おう。下がれ下がれ。てか、なんだこの視えない壁みたいなの」
「壁です」
「あの、何をなさるの?」
「えっ?傷口に服が張り付いていて、処置ができませんし、動かせませんでしょ。このまま処置できるようならしてしまいます。急がないと命に関わりそうですから」
婆ちゃん直伝の診察(こんな事もできるんですよ、あの人は。やっぱり錬金術だよね)をすると、内臓が損傷している感じなので、そりゃもう一刻を争う状態。
「骨折数カ所と、お腹の中身が大分傷ついていますわね、急ぎます。エッちゃん、外傷上級、内服特級。お願い」
「はい、どうぞ」
婆ちゃんが持たせてくれた水薬を傷口に振りかけると、上辺の怪我は見事なまでに綺麗サッパリとなくなり、お姉さんとエッちゃんが、骨折の介達をしている間に母親が特級内服薬を飲ませると、娘さんの意識が戻ってきた。
「あれ?お母さん。私生きてるのかしら」
「シール、シール。ありがとうございます。ありがとうございます」
「良かった、治せましたね」
「ほぼ生き返った感じだねー。間に合って良かったね」
「ありがとうございます。あのお代は如何ほどでしょう。持ち合わせがないのですが、家にお越しくだされば、なんとか工面いたしますが」
「いえ、構いませんわ。勝手にした事ですし。そうだ一緒に写真を撮って下さいな」
「写真?ですか、とると言うのは、あの…」
「3人で並んで、そうですそうです。エッちゃん、お願いね」
「お姉さん、皆んな血だらけだね。取らないと」
「あら。少し待ってね、洗浄。じゃあお願いね」
「はーい。はいッ!あと一枚ね、はいッ!撮れました。此方を記念にどうぞ」
「今度はエッちゃんね、並んで下さいな。はいッ!」
「あの、せめてお名前をお願いします」
「私ですか。帝国から参りました、ルリエラと申します。撮影していたのは、エステルと言いますの。周りの人にはあまり公言しないようにお願いしますね、騒がれるのは困りますので。人だかりの皆さんも同じくでございますわよ」
「「「「「………………」」」」」
無言のお返事。首をぶんぶん振りまくり。れっきとしたお嬢様だからね、そうは視えないけど、お嬢様なんですよ、その人。
「私も、上級・特級を作れるようになりませんとね」
「ミーちゃんが言ってたよ、お婆ちゃんが特級を作れるんだから、それを元にすれば超特級まで行けるって。『特級は到達点じゃない』んだって」
「ちょ…超特級ですか。まだ中級ですのに?」
「師事して2年でそこまで到達した人が何を言っているのかな。普通は初級ですら覚束ないって言う話だよ」
「そうなんですけど、超特級…行けますかしらね、行けたら良いですわね」
「お姉さんなら行ける行ける『行けるかなじゃなくて、行くんだよ』とかも言っていたかな『そうしないと教え甲斐も教わり甲斐もないじゃん』だって」
「ふふふ、あの子は面白いですね。頑張りましょう。エッちゃんもですわよ」
「そうだね」
2. まだぶらりん
「あら、このお店は私とは縁が薄いですわね」
「お姉さん、その言い方面白い」
「ご令嬢様は、料理なんてしないだろうに。料理人を連れて来ておくれよ」
「ワタシは大丈夫ですよー、お魚がちょっと炭になりますけど」
「私だって、串物ならできるようになりましたわよ」
「できない競争をしているみたいで、悲しくなるのでやめましょう」
「そうですわね」
ですよねえ、魚でも肉でも炭焼き職人だもんねえ。
「店長さん、この粉は何の粉ですか。見たことが無いんですけど」
「店長だなんて、やだよ。店長は旦那だよ。これはね、丸芋さ。丸芋を擦って乾燥させた粉だね」
「これで小麦揚げみたいなお料理はできますか」
「家じゃ作った事がないね、汁物にとろみをつける時に使うんだよ」
「えっ、白くなっちゃうんじゃないの」
「それがさ、芋の粉を使うと透明になるから、色合いが変わらないのさ」
「へえ、面白そう。できるだけ沢山下さい」
「大丈夫かい?持てるのかい?届けようか」
「王宮になりますけど、いいですか。第3汎用応接室という所なんですけど」
「王宮…畏まりました。お…お代は」
「そこにいるワタシくらいの女の子に言って下さい」
「解りました、直ちにお届けしておきます」
「はい、お願いします」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おぉ、いつもの粉屋か。よし通れ」
「第3汎用応接室とはどこでしょうか。そこの娘さんにお代を請求するらしいんで」
「うん?まためずら…ああ商談中の所か。わかった案内させよう」
粉屋の店主さん、ご苦労様です。
「南商用門衛兵入ります」
「何事じゃ?」
「宰相様!?こちらにおられる娘さんにお届けものです」
「アタシ?なんでしょう」
「へえ、芋の粉3袋。1銀半なんですけど」
「あ…じゃあ2銀で。残りは、配送費とでもして下さい。ご苦労様でした」
ソバーニさんとハンジョさんが寄って来ましたよ。
「ミーちゃん、この粉は?少しツヤがありますな」
「私も見たことがありません。初見ですね。どこの粉屋だろう」
「また使いもしない人たちが何を買っているんでしょうね、芋の粉って言っていましたけどね。えっ初見?こっちの特産とかじゃないんですか」
「違いますね、芋?丸芋の事かな。毒があるとかで、敬遠されているんですがね」
「毒?ああなるほど、そういう扱いなんですね。お姉さん達は何をやっているんだろう。全力で混ざりてえ」
「はっはっは、ミーちゃん、食材だとしたら料理の想像が付きますかな」
「小麦揚げの芋粉版とか、肉焼きの時にまぶすとかかな。後考えられるのは、捏ねて伸ばして紐状にしたものを茹でるとかですかね、茶麦とか小麦もできるんですけど、たぶん芋の粉主体にするとツルツルッとした食感に変わると思います。そんな見た目でしょ」
「なるほど、会合も終わりましたし、作れますかな」
「宰相様、調理する場所はありますか?」
「この奥に狭いのですがな、ありますぞ」
「じゃあ、お借りしますね」
「えっ、ミーちゃんは料理もできるのかい」
「身体強化しないと、水入りの鍋すら持てませんけどねぇ、行ってきますね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいま、戻りました」
「あー、人がお仕事している時に、ずるーい」
「宜しいじゃありませんか、私達は居ても何もできませんわよ」
「そうだよー。ミーちゃん、ワタシ達ね人助けしたんだよ。すごいでしょ」
「なーんか面白そうな事をしているねえ、そうだ、あの粉何?」
「あれね、丸芋からできていてね、汁物に入れても濁らずにトロッってするんだって。ミーちゃんが面白がりそうだから買いました」
「あぁうん。ソバーニさんは初見だって言っていたけどね」
「あれ?粉は」
「使ってしまいました。皆さん召し上がりますか?」
「「「「頂きます」」」」
少し遅くなりましたが、お昼です。
「あら、これはまた変わった食感ですわね」
「ねえ、透き通っていて綺麗だね」
「ふむ、この喉を軽く通り過ぎていくような感じが、夏場には良いですぞ」
「これが丸芋の粉からですか、作り方はわか…りますよねえ」
「必要なら、粉の配合とかは後で書きましょうか」
「お願いできますか」
「君は面白い娘さんじゃなあ、料理から魔導具までなんでもありではないか」
「ミーちゃんといると毎日楽しいですよ。新しい知識が増えたりとかも致しますし」
ワイワイしながら、お昼で会合終わり。やっと終わったよ。帰るぞー。
3. 港町十三番地
港町迎賓館でございます。いえね、どこかの船が来ていないかなって、来ていたら見学させてくれないかなと思いましてですね、寄ってみました。
「あっ、カッフェの人だ。こんにちは」
「おや、バナナの嬢ちゃんじゃないか」
「交易ですか」
「そうだけどね、それがねえ、今回は残念な事に途中で海魔にやられてねえ、船が1隻ぼろぼろにされちまって、人はなんとかなったんだけどね、積荷が1隻分吹き飛んじまったんだよ」
「それは、ご愁傷さまです」
「まあ、織り込み済みだから良いんだけどさ、船をどうしようかって話さ」
「あるんですか、船。よく沈みませんでしたね」
「なんとかね、持って来られたんだけど、修理もできないし、沈めるしかないね」
とりあえず、そのボロ船と言うのを見せて貰った。あっちゃー、主柱がだめじゃんね。右舷側も半分吹き飛んでいて、何にやられたんだか。
「うわー、何これ。十脚とかですか」
「いいや、巨大な蛇みたいな奴だったね、見たこともない魔獣だったよ。だからさ、対抗方法が分からずに一方的にやられちまったのさ」
「海蛇?魔獣図鑑にも載っていなかった気がするな。エッちゃん、なかったよね」
「うん、見たこと無いね。海の大蛇かあ、そんなのも居るんだね」
「いやあ、まいったね。バナナちゃん、あれいらない?」
「は?うーんと、中には入れますかね、危なくなったらすぐに逃げますから大丈夫」
「あぁいいよ。いつ沈むかわからないからね、気をつけておくれよ」
「はーい、行ってきます」
そーっと、静かに小舟から乗り移りましてですね、いや気持ちとしてそうしないと本当にバラけそうでしてね、下は水が入り込んでいて、辛うじて浮いているって感じ。
「ありゃー、本当にボロボロだあ」
「こいうのは修復出来ないのかな?」
「うん、エッちゃん船の構造って知ってる?」
「船の構造?そんなの知らないよ」
「それ。家とか本は、皆同じだからなんとかなるでしょ?でも船なんかは、構造を隅々まで知らないと、光と木の精霊が居てもだめなんだよね」
「あっそういう事ですのね。だからですか、ミーちゃんが獣とか、機械とかいろいろ構造を知りたがるのは」
「うん、そう。ってお姉さん危ないじゃん」
「え、なんとかなりますわよ」
「大胆なお嬢様ですこと。ほっほー、右半分は持っていかれているけど、左は残っているね、どうせ対称だろうから、左の詳細を知ることができれば、なんとかなるかな」
船の事は解らないんですけどね、今どきのは水密構造ではないはずですから、水が入り始めると普通は一気に沈んでしまうはずです、浮いているのが不思議だったのですけど、どうやら甲板に設けた留置室とか船尾楼が無事で、その気密性によって浮いているらしかったです。それで竜骨とか言う背骨みたいなのと、そこから伸びる肋骨みたいな部材とかで、帆を張るマストも3本あるように見えるし、の結構大きい船だと言う事はわかりました。
4. 沈む直前の船を貰った
「あれ、貰っていいんですか」
「良いよ。でもどうやって持って帰るつもりだい」
「えっ、こうやって」
いつもの鞄へぽい。
「なんつう大容量なんだい、そんなの見たことがないよ。おくれ」
「内緒ですよ。いやですよ、これしかないんだから」
「まあ、そうだよね。言っても信じちゃくれないよ。始末するのにもお金がかかるからね、助かった」
「え、そうなんだ」
「ミーちゃん、船がなくなった事をごまかさなくていいのかな」
「必要だね、報告書も出さないと行けないし、どうするかね」
「要るんだ。えーと、じゃあ仕方がない廃村の家を燃やすか。犠牲になって貰おう」
と言う事で、エッちゃんが練習に治した家を逆さに並べて浮かばせ、炎でゴワー。
「あー、燃えちゃったー。船が沈むー」
「お前さん、お芝居が適当すぎるよ。アハハハハ」
港湾管理局さんが血相変えてすっ飛んできました。
「どうした、火の手が上がっているぞ、何があった」
「船が燃えてしまいました」
「は?ここに係留してあったのは、水没船だろ。水没船が燃える訳が…いるな。片付けられるならそれでいいか。他の船に燃え移らないようにしてくれれば、良しとするか。廃船報告書を出してくれ」
「了解しました」
港湾管理局さんは、手をひらひら振りながら戻って行きました。
「納得してくれたかね」
「見て見ぬふりってのもありますけど」
「まあ、どうでもいいか。一件落着」
「うーわ、適当」
「あんたがそれを言うか。アハハハハ」




