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(08-02)魔導国再訪(商談中)

(08-02)魔導国再訪(商談中)


 魔法の会得方法を広める前に、悪用の抑止、犯罪防止等のため魔力の見える化を進めてもらい、公に共通認識を持ってもらおうと、リア姉さんの里帰り兼ご相談のため、魔導国を再訪した辺境村村娘です。


1. あれ?迎賓館じゃないの


「あれっ、なんか遠回り。あっそうか、見本市じゃないもんね、王宮での謁見になるのかな。失敗した感ありあり」

「ミーちゃん、気づくのが遅いです。宿から先触れは出しておりますので、諦めて下さいね」

「ぬかったー、しからばごめん」


 ハシッ!エッちゃんに袖を掴まれました。


「ミーちゃん、お芝居していないで諦めましょう」

「クッ!殺せ…はーい」

「貴女って子は、着ている服装でわかるでしょうに」

「そう言えば、そうだね。やたらと高級なお召し物で、気後れしちゃうね。お馴染み背負鞄が似合わないったらないね」

「ワタシもねー、こんな綺麗な正装着を着られるなんて思ってもみなかった」

「エッちゃんは、まんざらでもなさそうだね。美人さんに育ってアタシは嬉しいよ」

「だって、ワタシは付き添いだもん。オマケだよ、オマケ。お気楽なのよー」

「私もそうですわよ、今回の主役は、ミーちゃんとリアさんですからね」

「嘘っ!お話は?リア姉さんじゃないの」

「私は、橋渡し役ですね。添え物です」

「ぐっ、味方がいない。どうするべ」

「ハッハッハ。相変わらず、楽しい道行ですな」


2. ご心配なく


 謁見の広間に通されるかと思っていたらですね、お城に到着するや、既に王様始め重鎮4名様が待ち構えているそうで、そのまま奥にある汎用応接室にご案内。要するに、体面なぞ繕って部下達の前で偉そうにしていられるか!と言う事だそうです。どこぞの辺境伯様みたいですね。まあ、こちらとしては気兼ねがなくなるだけでも助かりますけど。


「いや、良く来てくれた。リアもご苦労であった。ささ、気兼ねなく座ってくれ」

「お父様、そんなに急かさなくても」

「何を言うか、手紙なんぞでは測りようもない事柄を書いてよこしたのはリアであろうに、あれを見せられたら、いても立ってもいられなくなるのは当然だろう。できればこちらから行きたかったのだぞ、無理だがな」

「そうですぞ、リア様。毎日国王をなだめ、執務について頂くのがどれほど大変だった事か、これで終わるなら全て許せます」

「うむ、あれは面白…これで宰相の苦労が報われると言うものですな」

「あの、国王様。私もおりますが」

「おっと、忘れておった。こっちはな、産業省魔導具開発局局長のススメルと言う。我が国で開発、生産するものがあるというのでな、列席しておる。よろしくな」

「ススメルと申します『よし、終わりだ』はあ?」

「お父様ってば、ミーちゃん御免なさいね、お恥ずかしいです」


 いや勢いがすごいのです。早く見せろの催促視線が突き刺さってきますぜ。こちらとしては、笑うのをこらえるのが大変なんですが。


「えーと、どうしましょう。一応全部お出ししてからですかね、最後にお願いとご相談と言う事で宜しいですか」

「うむ、それで構わん。まず、こいつ…マジスカ国王の気を鎮めてくれ」

「はい、わかりました」


 と言う事で、展覧会その3です。大人数で会食する時のような長テーブルに解説書と共に機械を置いていきます。しばらく適当に動かしてもらって、質問等はその後と言う事になりました。みんな目がキンキラキンで子供のようです。一人だけ真面目にお仕事モードになっている人がいますけど、ご苦労様です。


「おおう、これはまた、複雑怪奇な紋様だな。これが魔力紋なのか」

「どれ私のも写してみましょうかな」

「宰相、宰相の魔力紋は水紋のようで綺麗なものだな」


 かと思えば、隣では録音機に手をだした、魔道士団長と騎士団長様達が


「お・お・お、これが私の声なのか、違うだろ、違うよな」

「いやいや、そのままだぞ。お前の声以外の何物でもない」

「そうなのか、いやこれは驚いた。前に作って貰った遮音界以上だな」

「自分の声と言うのを聞くのは…なんか気恥ずかしいものがあるな」

「ほれ、写すぞ。こっちを向け」

「なんだよ、お前だけ。ずるいぞ」


 はしゃぐはしゃぐ。リア姉さん、両手で顔を覆い隠して、今にも逃げ出しそう。


「国を治める重鎮と呼ばれているんですよ、これでも。身内だけだとは言え、恥ずかしい事この上なしですわね」

「我が家でも同じでしたからね、お察しいたしますわよ」

「ハンジョ様、殿方と言うのはこういうものなのでしょうか」

「私も同じですからな、こういうものですぞ。皆様は魔導具に関しては、先進でいらっしゃいますからな、特にその傾向がお強いのではないですかな」


 一通り見終わったらしい、局長様がこちらに近づいて来ました。


「あの、ミール様で宜しいでしょうか」

「いえ、局長様。ミーちゃんとか、君でお願いします」

「では、ミール君。これらの機器ですが、我が国での作成を希望していると聞きましたが、それはどういう事ですか」

「こちらの国であれば、魔導細工の職人さんが沢山いますでしょ、魔導具に限定すると、帝国では数を満たせないそうなんですよ。とくに小さな録音魔石とか、魔導駆動機の回転子とかがですね、量産どころか製造できる程の職人がいないらしいです。その量産なのですが、一つニつではないですからね、現場に立ち会う人達とか捜査関係者とか、できれば持っていて欲しい機械として作ったものですから」

「なるほど、部品だけならまだしも、製品全体となると工房そのものが少ないと言う事ですね。趣味嗜好の一品とかではなく、職業として必要となる機械ならではですか」

「そうです。特に魔力乾板が全ての肝になっていますから、あれを作れないとどうにも成りません」

「そうですね、あの水板に精霊印だけを刻むと言うのは、新しい方法でありますから、まずそれを習得する必要があるわけですね。その人員が確保できないと言う事で宜しいですか」

「そうです。採取を実現できれば他の方法でも構わないのですけど、リア姉様でさえ半年程かかっていますから、帝国の細工職人さん達ではどのくらいかかるか見当も付きません。もうひとつ、本来の役割についても検証していただきたいのですけれども、国家間で認められている魔法技術の検証部門をお持ちなのは貴国だけなのです」

「なるほど、ただ少し困った事にですね、我が国にはあの水板を作る技術が御座いません。それをなんとかできませんとどうにもならないのですが、いかが致しましょう」

「水板というよりは、透明度ですかね?製造法は指南書として書きましたけど、原料がなければどうにもなりませんよね。国境門がある街で買ってきたんですけど、この石なんだかわかりますか」

 

 毎度おなじみでこんなこともあろうかと言う事で、露天商で買ってきた石を見せてみました。露天掘りで採れるらしいです。良い国だな。

 

「これは、まさかこの指南書にある水板精錬石ではないですよね」

「そのまさかなんですけど、国境門の近くにある山で取れるらしいですよ」

「なんと、それは存じませんでした。いや調査不足で申し訳ありません。材料まで手立てして頂けるとは、大変助かりました」


 とか話をしている間にようやく気が収まったらしい。


「よし、皆お遊びは終わりだ。切がないからな。仕事をしようではないか」

「国王、映写機とリア殿の映像帯(フィルム)を抱え込みながらでは説得力に欠けますぞ」

「これは後で私が買い取るのだ、誰にも渡さん」

「お父様、恥ずかしい事をなさらないで下さいませ」

「はっはっは。お前、娘に嫌われているぞ。ざまぁ」


 どこの誰でも男親と言うのはそういうものらしいです。


「さて、魔力紋の発見、魔力紋採取法の考案と開発。状況保存用の写真機、光源を補助する魔力閃光燈(ストロボ)及び魔法、保存用の転写機構。録音機、録画機及びその再生機構…」


 なんか、列挙されるとこの時代にそぐわない感が一杯ですね、所謂「やり過ぎちゃいました」ってやつですかねこれは。まあ「皆んな魔法を使って楽して暮らそう」ができれば良いので、思いついたらアラホレサッサですが。


「列挙されると、なんかすごいね」

「それを作ったのは、ミーちゃんですけどね」

「あ、でも、リア姉さんの銀線がなければ出来ない物ばかりだからね。リア姉さんもちゃんと利益を得ないとだめだよ」

「そうですな、ミーちゃんが以前に言っていた『知的財産権』でしたか、ああいう制度があれば良いのですが、今はどうしても個別契約になってしまいますな」

「『知的財産権』というのは何の事ですかな」


 宰相さんが聞いてきたので、ハンジョさんが説明してくれました。流石商人、分かりやすい。


「宰相、なかなか面白い考え方だな。一考に入れておいても良くはないか、というかリアの為には必要だな」


 この国王様は、娘第一主義者か。


「そうですな、少なくとも近隣国との間では締結した方が良さそうではありますな。仕組みは産業省、魔導省辺りに検討させておきましょう」

「うむ、そうしてくれるか」

「さて、そうしますと此方での契約窓口としての商会はいかが致しましょう」

「そうだな現在の御用商人の中でなら…おらんな。リアが不利益を被り(かぶり)そうな商会はごめん被り(こうむり)たい。ハンジョ君はどうだね」


 おっさん…。


「ハンジョさん、あの人は?茶麦の人。だめかな、まだ商会的に小さいかな」

「ソバーニ殿ですな、彼の所ならリアさんへの利益配分もしっかり考慮してくれると思いますぞ」

「ソバーニ?誰かね」

「見本市会場がある港街で、茶麦の取引がある商会でございますが」

「おお、あの製塩を始めた『セイユー』商会か」

「製塩?ありゃ、もう始めたんだ。すごいですね」

「そうだ、まさか海からあんな方法で塩が採れるとは思っても見なかったがな、あそこの領主が代行して国益事業として始めたのだ。商会の彼は叙爵して男爵扱いとさせて貰った。『セイユー』と言うのは、叙任時の姓だな。そう言えば、あれも君だと聞いたぞ。要らんかね?爵位」

「えっ、要りませんけど」

「はっはっは、君は面白いな」


3. ソバーニ・セイユー男爵


 ソバーニさんが、セイユー男爵として呼び出され、今回の契約の運びと成りました。


「あぁ、何事かと思えば、ミーちゃんか。君絡みなのかな」

「ソバーニ・セイユー男爵様、お久しぶりでございます。この度は叙爵おめでとうございます」

「うん、やめてね。男爵なんて不相応な階位なんで、そもそも君の発案なんだからね、呼び方なんてね『茶麦屋さん』でもいい位なんだから」

「そうも行きませんでしょ」

「行くの。とやかく煩い事を言う人が居ない所ならなおさら…これは、マジョリア王女様。失礼しました。セイユー男爵、罷り越しました」

「畏まらなくても良いですよ。私もリアさんの方が良いですから」

「それで連絡を頂きましたが、何分にも『至急登城せよ』でございまして、如何様な件でございましょう」

「それについては、こちらへ。父を始め、ハンジョ様もお待ちです」

「国王様!何か粗相でもございましたか」

「いえ、商談ですわ。新しい魔導具に関する商談をお願いしようかと思いまして」

「そうですか、いや安心しました。何か不味いことでもあったかと気が気ではございませんでしたから」

「それは申し訳ありません。もう少し丁寧にお手紙をお出しすれば良いのですが、何分あの父達ですので、お許しくださいませ」

「滅相も御座いません。そうそう、ミーちゃん。私の商会がね、王都に店を出せる事になったんだよ。君のおかげなんだがね、何か入用なものはないかね」

「それは、これからハンジョさんとお話し下さいな」

「そうか、解った。取り計らえということだね、承知した」

「良いのかな」

「良いのだよ」


4. 展示会その4


「「………………」」


 商会の会頭であるソバーニさんと、王都店長予定のウドンダさんの今です、それは見事にフリーズ中。応接室に広げられた機器を見てもらいました。一通り見終わった後のソバーニさん。ギギギっと、油の切れた機械人形みたいな動きで此方に振り返りました。


「ミ…ミーちゃん、これ全部我が商会に回してくれるのかい?」

 

 ソバーニさん声が裏返っていますよ。大丈夫ですか。

 

「回しちゃ不味いですかね。多すぎるとか?」

「いやいやいや、それなりに工房も抱えているからね、熟してみせるとも」

「それなら良かった。でもまあ今すぐに作り始めるという事ではないはずなので、これからの事を国王様を交えて話あって頂けますか」

「承知した。国王様、お待たせいたして申し訳ありません」

「いや、良い。それでどうだやれそうかね」

「全力を持って応対させて頂きます。これほどの商いをお回し頂き感謝申し上げます」

「うむ、君なら家のリアにかかる利益配分もできるのではないかと進言されてね、宜しく頼むよ」

「畏まりました」

「では、後は君たちに任せる。私はまだ執務があるのでね、また顔を出そう」

「はっ、御意に」


 ウドンダさんは…固まったままだね。


「ウドンさん、ウドンさん。大丈夫ですか?」

「ウドンダでございます」

「あ、失礼。アタシの知っている食べ物の名前に似ていたものですから」

「ミール様、このウドンダ、命を掛けましてでも実現に向け全力を尽くさせて頂きますぞ」

「様いらない、様なしで宜しく。そこまででなくてもいいですからね、王都で売れると思いますか」

「もちろんです。これで売れなければ、他の何物も商売にはなりますまい。まさに画期的でございます」

「そうですか、それは良かったです。あ、ハンジョさん、ソバーニさん、派生する機器に関しても約定を決めておいて下さいね」

「は…派生する機器ですか、ハンジョ殿ご存知で?」

「まあ、ある程度は聞いておりますな。商会会員札、拡張鞄等の個人識別ですな、とにかく個人の特定をすべき所には全て当てはまりますぞ」

「あっなるほど。所有者登録した者だけが取り扱う事ができるようになると言う事ですね、それは素晴らしい。驚きのあまりに考えが追いついていませんが」

「なに、私も同じでしたからな」


 それからは、特別通門証を頂き、ほぼ日参。するのは、セイユー商会とハンジョさんと私とリア姉さんだけ。他ニ名はカメラをぶら下げて観光中。あいつらー、私も観光がしたかったです。


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