(07-10)深森の廃村(魔力紋)
(07-10)深森の廃村(魔力紋)
新たな魔法の会得方法を広めるためには、悪用される前の抑止、使われた時の対処・解決策を先に明示しておかないと、危なくてしかたがないと言う事で、どうしたものかと思案中の辺境村村娘でございます。
1. 音声を録ろう
魔力の紋様を静止画像にする事はできたから、次は音声かな。まずは、テープレコーダだね。初期の磁気録音機は、記録媒体が鉄線とか磁性体を塗布した紙だったらしいですけどね、ワイヤーはありませんが、紙はあります。記録用途としてはコピー用紙よりは少し質が悪いですけど、上質なわら半紙位のが。もっと丈夫な物と言うと、布地ですかね。
レコーダは、音源→電気信号→電磁石(録音ヘッド)→磁気媒体へ記録というのが大雑把な流れですけどね、空気振動を捉えるのは風印の魔石でできました。ついでに魔力の強弱情報に変換する魔導具にしてしまえば、マイクとして一体化できますね。その魔力情報をリトちゃん謹製サーマルヘッド録音魔石に渡し、魔麻油転写テープを間に挟めば記録テープに転写できそうですね、これなら今の技術でそのままできる気がします。回転動力は、思いつきませんので、誰かよろしく。とりあえず手巻きで。
再生はテープに魔導光源を当て、光の強弱(魔力紋の濃淡)を風の拡声魔導具に通せば行ける気がしませんかね。行ってみましょう、行けました。
「えっ!ミーちゃん、これワタシの声?うっそー、こんな声じゃないよ」
「いえ、エッちゃんの声そっくりというか、そのままですね。そう聞こえます」
「不思議さね、本人が聞くと別人の声になるのかい。どうなっているのさね」
お約束の反応が返ってきました。あれの仕組みと言うか、骨伝導成分については、よくわかりませんので、笑って誤魔化して置きましょう。
「あはははは、おもしろーい」
これです。
2. マジカ・シングル8
静止画像を写真として残す事はできました。さてそうすると、今度は連続して撮影し、動画にしたくなるじゃありませんか。魔力乾板の反応速度は、毎秒16コマ程でした。魔力乾板の転写・消去を考慮すると、8コマ程度。大分少ないですけれど、まあ良いです。紙テープと複写テープを重ねて録画テープを作成します。これを手回しして、リールに巻き取って行くわけです。手作りでは長時間媒体なんて無理。せいぜい1分程度の動画になるでしょうけど、気にしません。
手回しの回転用取手が相変わらずついています。シャッターは、□■□■という感じに一連の帯状になっていまして、一周分を8分割してみました。『□』の所は窓が開いていて感光します。『■』で転写と消去を行います。『T』の所はですね、同期穴ですね。これで記録テープを送り、光が入らなくなった所で転写と消去をします。
という事で、やっている事は静止画像の連続ですから、再生は単なる映写機で済みます。なんの小細工も要りません。
「おお、エルも様になってきたじゃねえの、ジョルと互角だぜ」
「そうなんだよねえ、ミーちゃんもそうだけど、エッちゃんも身につけるのが早いよね」
「子供は物覚えが良いんだよー」
「そうだ、そうだ」
「俺も、二人相手じゃ負けるようになったもんなー、衰えたかな」
「じじい」
「うっせ、まだ若けえよ。一対一なら負けねえよ」
「そうなんだよねえ、どんだけ強いのかねこの人達は」
「あっははは、恐れ入りやがれ」
朝稽古の模様を撮影してみました。8コマじゃねえ、まあほとんど映らないんですけどね、動きが早すぎて。それでもまあ、後から動いている所を見られるって言うのは今までなかったからでしょうかね、結構新鮮らしくて、ワイワイ面白がってくれています。
お姉さんの薬師修行とか、リア姉さんの日常生活とかを撮影して、近況報告とするらしいです。撮影は私、照明担当エッちゃん。疲れたー。あっそうだ、実家用に映写機作って貰わないといけませんね。あの親なら、まず間違いなくテープが擦り切れるまで繰り返す気がします。そんなもん光の修復魔法で元に戻るだろう?だめなんですよ、紋様が汚れと判断されるらしくて、無地のテープにまで戻ってしまうんです。ほんで『なんとかせんかー』とか『次はまだかー』って理不尽な文句が来るに決まっています。
3. 駆動力発生源(1)
日々動力となる機械を渇望してやまないのですが、未だに入手できていません。この世界にはどうも石油となるものが存在しないようなのです。それどころか、今まさに一生懸命作り出している時期っぽいです。だから石炭もありません。木炭はありますが、発生しうる熱量やら温度に限界があります。微粉炭にしたとしても灰が残るので、取り扱いが難しい材料でもあります。某デスカバリの実験番組で、火薬で動くエンジンと言うのを作っていました。結論は確か『できねえよ』でした。『動力源』なんとか成りませんかね、できればスパゲティ…じゃなくて、魔力で。
「{手回しは疲れるもんねー、【モーター】が欲しいよねえ。火と水でなんとかならんかねって、それは蒸気機関じゃね?}」
「ミーちゃん、何を一人でブツブツ言っているの~」
「撮影機材をね、手回しするの大変じゃん、なんとかなりませんかねって事をね」
「そうだね~。疲れちゃうよねえ」
「ねぇー」
初期動力と言えば発條。私は発情には至っていませんよ、ゼンマイの事です。実現に一番近いのはこれでしょうけど、バネ鋼ですね、ありゃしませんがな。
空気を圧縮するんですよ。フウちゃんとジュンちゃんが。それを使ってターボタービンみたいな羽根車を回す事を思いつきました。誰が耐圧シリンダーだの調圧器を作るのよ、そんな鍛冶屋さんはいませんがな。高耐圧シリンダーすなわちボンベなんか重くてどうにもならんわい。実はですね、軽量高耐圧シリンダーなら今すぐにでも作れそうな材料があります。その名は、セルロースナノファイバー。紙ですね。ナノサイズまで植物繊維を粉砕し、抄紙するようにして作ります。これなら魔法で作り出せます。頑張れば手作業でも行けます。ただシート状の物を一体化させる為の強力接着剤がありませんね、どうしましょ。
「{だーめかあー}」
4. 駆動力発生源(2)
直流電動機と言うのがありますでしょ、どうやって動くかと言うとですね、磁界を作るステータと呼ばれる円弧状の磁石と、内側にはロータと呼ばれる電磁石を使います。磁界の方は、S極とN極が固定ですけど、内側の電磁石は電気が流れる方向を変えることで、極性を変えられます。変える事で、固定極に対し引き合う力と反発する力を作って回転してくれるわけです。電気?1[A]も流れていません。
〔あれっ?何か忘れていないか、アタシ飛べるよね。なぜだっけ、ジュンちゃーん〕
〔ほいよぉー〕
〔ジュンちゃんがさあ、空を飛ばしてくれる時って言うのは、重力を低減とかしてくれているのかな〕
〔うんにゃ、飛行する対象に反引力的な力を加えているずらよー〕
〔反引力って…地球では未確認だった斥力ってやつかね、あるんだ〕
〔簡単に言えば、この星の衛星にしとるんじゃよ〕
〔危なくね?少し間違えると山にぶち当たるとか、星の外に飛ばされるとか〕
〔そこはほれ、職人芸って奴さね。絶妙なんじゃぞ。凄かろ?〕
〔何処の出身?〕
〔精霊界ニャン〕
〔そうか、引き付ける力と反発する力か。作れるんだ〕
〔んだ!へばな〕
だとするとそうですね、んーと、120°毎の3羽根にした停止中の魔石ロータへ魔力を送るとどうなるかと言うとですね、こうなる感じかな。時計回りにクルッと。
A無
引| ◇ |反
↖C引 B反↙
勢いがついて、羽根(B)が引極に近づくと
C無
引| ◇ A反|反
↖B引 ↙
次のような感じで羽根(B)への魔力供給が止まります。そのままだと引き合って、止まってしまいますからね。
C無
引|B無 ◇ |反
A反↙
予想では、次にこうなる予定。3つの内2つに駆動力が発生します。
B無
引| ◇ C反|反
↖A引 ↙
巧く行って欲しいですね。
B無
引|A無 ◇ |反
C反↙
次にこんな感じで回って下さいお願いします。
A無
引| ◇ B反|反
↖C引 ↙
各ロータ羽根が上に位置する間は、力が発生しないね、効率が悪いし、ガタつく。とは言えこれ以上は考えつかないから仕方が無い。何処かの誰かに期待しよう。ガンバレ賢き者よ、わしゃ知らん。と言う事で、魔導回転機ができました。手回しする必要がないだけでも助かるのであります。大型にして大出力にするには、全体的に部品代がかかりすぎます。高出力機構は別に考えないとだめですねこりゃ。
5. ゴーム動力
鞄に入れっぱなしで、すっかり記憶の彼方に去っていた代物にゴムがあります。こっちで言う『ゴーム』ですけど。これが利用できれば、原子力ぜんまいゴム動力エンジンの主機とか、パッキンとか、パンツのゴムができる訳ですからね、何をしているんでしょうかね、私は。確かですね、天然ゴムに硫黄を混ぜて加熱すると、伸びるゴムになるはずなんですよ。グッドイヤー(苦労人の方)さんが発見したと思いました。ただですね、その温度とか、圧力とか、出来上がるまでの時間とかがさっぱりですけどね。あと配合の割合とかね、そんなもん全く分かりません。交霊とか、降霊の精霊さんは居ないかしら。
まずは、向こうの世界のゴムと同じになるかですよね、この手の物質は。とりあえず茶さじ程度の量をすくい取りまして、周囲温度を上げますとね、柔らかくなるんですけど、ネットネト。冷却しますと、ガッチガチ。まあ、そうだろうね。予想どおりと言う事ですね。さて、混ぜ込むことができる物と言えば、硫黄とおなじみ万能草。後はソーダ灰。本命は硫黄なんですがね、地球と同じとは限りませんし、万能草は、基本だし。ソーダ灰はオマケで、それ以外は手元に無いし。
「ミーちゃん、何をしているの」
「いや、ゴームがね、どうにかして固まらないかなって」
「あぁ、カッフェさんが『使い道が無い』って言っていたね」
「そうそう。うーん、それっぽい感じがするのは、熱泉黄石かなあ」
「こういうのが出来たらいいなって想像すると、ポンッってできると便利だよね」
「「それができたら、苦労はないけどねえー。あははははは」」
「んじゃあ、次は重石を載せて、加熱。小麦揚げの油温位で!」
一日中試し続けても成果なしが何日も続きまして、そろそろ諦めかけていた頃にやっとですよ、兆候が見えてきました。指南書なしの料理どころじゃないよね、最初の人達ってどうやっていたんだろう。加熱量とか圧力とか、そりゃもう限りなく試して、漸くそれっぽくなりました。ぽいだけなので、少し引っ張るとプチッ。まだ時間が足りないのか?ということで、さらに次は半日ほど時間を追加。
「これミーや、この所何をしているさね。そろそろ夕餉さね」
「もう少し、なんとなくそれでゴームができそうな気がする」
「ゴーム?あの樹液の事かね。やっている事は単純な割に時間がかかるさね」
「ねー、促進剤でもあれば良いのだけどねー。まあ、最初はこんなもんでしょ」
「はっはっは。そう言えば接着剤の時がそうだったさね」
「あれ、今は原料を買っているんだっけ」
「そうさね、最初に革が張り付く油を取り出すまでは、半年かかったさね」
「なんであれ、最初はそんなもんって事だねー」
重石の圧力と加熱を半日続けてやっとゴムらしくなり、少し伸ばした位では切れなくなりました。さて、次は耐久力ですね。
6. ゴーーーーーム
弾性って言うのかな、伸縮性能。伸びたらそれきりと言うのは、意味がないしね。細く切った糸状のゴム紐に重りをつけて、長さを測ります。次は切れるまでの耐久力とか、元に戻らなくなるまでの耐久力とか、適当に測ってみました。うん、なんか格好良い測定名称を誰かつけて下さい。なんとなくですが、ものになりそうです。あとは、時間的な耐久力ですかね?劣化の度合いを調べないと。誰か加速試験器を作って下さいませんかね。




