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(07-09)深森の廃村(修行中)

(07-09)深森の廃村(修行中)


 私が、こちらに参りましてから早半年と成りました。魔導王国現王家第一王女マジョリアでございます。


1. できました


 ミーちゃんから『とりあえず魔力制御を上達させて魔力量を増やし、精霊とお話できるようになると後が楽』と言われまして、魔力循環により体内魔力を増やして見ました。そのうち意識して目へ魔力を集めると遠視ができるようになり、さらに目に見える対象を景色から魔力に変えるよう気持ちを切り替えると、それだけで今度は魔力の流れが見えるようになったのには、正直驚きました。いままで培ってきた詠唱魔法ではこんな事はできません。聴覚を始め他の感覚さえも自在に制御できるようになったではありませんか、いままでの修行は何だったのでしょう。良い方向へですが、全部ひっくり返されてしまいました。「魔導王国」などと名乗っているのが恥ずかしく成りそうです。


 さらに驚いた事に、日頃魔銀線(ミーちゃんが言う所の「魔導線」)を作っていた呪文の詠唱をする事なく、手にした銀線に魔力が込められているのに気がついたんです。ミーちゃんによると「魔銀線にしたいという強い思いと精霊さんのおかげ」なのだそうな。そう言えば、先日ミーちゃんに言われて精霊に名前をつけた事を思い出しました。


 そしてとうとう今日、魔石に精霊印だけを刻み入れる事ができました。詠唱方式では魔石に精霊印だけ刻むということはできないのです。そもそもそんな呪文ありませんでしたから。発動保留中の魔法を魔石に書き込む呪文はあるのですが、その時自動的に精霊印が書き込まれるだけだったのです。魔法を書き込まない魔石と言うのが今までありませんでしたから、極めて新鮮です。


「ミーちゃん、できましたよー。見て下さい、土精霊の印です」


 思わずババーンと扉を開けて、廊下を駆け、階段を駆け降りて下の食堂にいたミーちゃんに抱きついてしまいました。現とは言え王女のする事ではありませんでしたけどね、そんな些細な事もうどうでも良い位に嬉しかったのですから、仕方がありません。そう、仕方が無いのです。


「えっ、もう?早くないですかね。おめでとうございます」

「はい、ありがとうございます」

「よし、ミー。宴だ!祝杯だ!」

「単に飲みたいだけじゃんね」

「ん?何か言ったか」

「何も。宴かあ、婆ちゃん豆醤油はできたかな」

「あれかい。変な匂いはしないから腐ってはいないとは思うけどねえ、色は真っ黒さね。あれで良いのかい」

「うん、あれで大丈夫じゃないかな。宴のついでにお披露目もしよう」


 ということで、蕎麦を手に入れてからずっと作ってきました豆醤油をお披露目です。単に醤油と呼ばないのは、魚醤油というのが魔導国の漁村に伝わっていて、ただの醤油だと分からなかったからです。魚醤油ってのは、そのまま【魚醤】の事ですけどね。大まかな作り方は教わってきましたので、中身の小魚を丸茶豆(大豆)に変えただけ。婆ちゃん好きなんだよねえ、腐敗とか発酵ってのが。あっそうだ、微生物って言えば顕微鏡ってのもあったなあ、でも今じゃないか…そのうち忘れなければ。


「ありゃ?まだかな。『早すぎたんだ!』ってやつかな。濾せばなんとかなるか」

「早い?まだ若いって事さね」

「うん、なんかねえ味が薄いって言うか、深みみたいなのを感じない」

「ふむ、酒と同じかね?後1年って所か。どうするさね」

「まあ、大丈夫でしょ。使っちゃえ」

「そうじゃな、まだ3樽あるさね。そっちを醸せば良いさね」

「そうだね」


 という事で、無理やりろ過して、火を通して調味料に昇格。我ながらひどい。


「あら、これは魚醤油ですか。でも塩加減と、香りが違いますね」

「いえ、魚のかわりに丸茶豆を使って作ってみました。出来上がりにはちょっと早かったみたいですけどね」

「豆?豆からでもできるんですね。火を通した時の香りの立ち方は、豆醤油の方が良いような気がします。茶麦煮(蕎麦)にはこちらの方が良さそうですね」

「そうですね、完成したらいろいろ作ってみる事にしますね」

「それは楽しみです。国のお料理も増えそうで嬉しいです」

「あ…それなら料理の手引書が必要になりますかね。書いておく事にしよ」

「それは嬉しいですね、是非お願いします」


 その後は、酒好きによる酒好きのための宴会に突入。


「えー、リア姉さんの魔石刻印記念会を開催しまーす。では乾杯」

「短っ!」

「いいじゃん」

「おい、これ小麦揚げか?今までのと味が違うな。すげえ、こりゃあ旨い」

「でっしょう、豆醤油に浸けておいたからね、下味が違うんだよ」

「おう、麦酒(【ビール】)が進むな。こりゃ止まらねえ」

「ガンさん、飲みすぎてもしらんぞー」

「まかせろ」

「何をだよ」

「ミーちゃん、これ卵が生ですわよ、大丈夫かしら」

「それはね、魔猪肉の豆醤油煮を食べる時に絡めてね。卵はマヨネ酢の時に説明したでしょ、今回のは光の精霊さんが浄化してくれているから、さらに大丈夫」

「浄化卵と言うのが出回れば、長らく忌避されて来た生卵料理ができるかもしれませんね。皆様は数十年先の未来を生きている気がしてきました」

「含むリア姉さんだからねえ、忘れないでね」

「私もですか、光栄ですね」

「もちろんですよ。できれば適当な間隔で成果を国に持ち帰って、広めてくれると嬉しいです」

「宜しいのでしょうか」

「宜しいも何も、流石のハンジョさんでも広められない事がありますでしょ」

「えっ、ミーちゃん、そんなのがあるの」

「あるんだよねえ、それが」

「魔石刻印術の事ですか。気がついていたんですね」

「魔導具の教本にはありませんでしたからね、秘匿技術かなと思っていたんだけど、最先端であろうリア姉さんも使っていなかったから、こりゃ危ないやつだと思いました」

「そうです。そうなんです。ここには、そういうのが沢山あるんです」


 その言葉で一斉に、皆んなの顔が私に向かう。


「皆んなでこっちを見ないようにね」

「「「「「あははは」」」」」


 思いつく人が精霊たちと適当に事を進めるとできちゃうもんで、済みませんね。止める気は皆無ですけどね。精霊さんは、さすがに世の理を担っているだけの事はある訳です。誰でも良いので、科学、化学、物理を発展させて下さいなっと。


2. まだ広げるわけには行きません


「そう言えばさ、ミーちゃんの教本を魔導国に置いてきちゃったでしょ、でもまだ魔法の会得方法発表されていないね」


 パリッ!


「うーんと、たぶんだけどね、あれってば誰でも取得できるようになるじゃん。それこそ子供でも、人の善悪も関係なくね」


 ポリッ!


「あぁ善悪と言えばそうですね、悪が取得すれば悪に使われると言う事ですかしら」

「普通はそうなるよね、たぶん」

「あ、そうかそうだよね~。子供が覚えちゃうとまずいよね。悪人ならなおさらか」

「アタシらも子供だけどねー」

「あはははは」


 ポリッ!


「このお菓子の歯ごたえは、面白いですね。これは小麦ですけど、茶麦でもできたら良いのですけど」

「ふっふっふ、こちらをどうぞ。ご賞味あれ」

「えっ、できるんですか?それでは頂いてみますね」

「あら、これは。私はこちらの方が好みですわね、茶麦の香りが立っていて、味わった事はございませんけれど、少し渋みのあるお茶があると良いかもしれませんわね」

「渋みのあるお茶、なるほど。残念ながら魔導国にもございませんけれど、南の大陸辺りで作っていませんかしらね」 


 (まあ、せんべいと言えばお茶ですよね、焙じ茶とかね。ないけど)


 ケーキの類だけですとね、口の中が砂糖とクリームだらけになりそうでねえ、たまの春日和には、日に当たりながら煎餅でも如何かと、作ってみました。焼くのではなくて、油を使うので揚げ煎餅になるのかな。まあどうでもいいか。


「悪事に使われた場合ってさ、魔法だと証拠が残らないじゃん」

「あぁそうだねえ~。誰がどんな魔法でとか残らないと、悪人だらけになるか」

「そうなんだよねえ、自制が効かない人が多いからね。破ったもん勝ちになるね」

「確かにそうですわね。人の道なんて簡単に外れますものね」

「だからね、そういう行為を残せるとか、後から痕跡を手繰れるとか、その手の手段ができないことには、おいそれと広める訳にはいかないんだよね、あの王様達だって判っているから出さないんじゃない」

「なるほど、そうですね」


3. 魔力紋の発見


 街へ行くたびに魔兎だの、魔狼だのを狩っていくので、小さいながらも魔石が沢山ありまして、魔兎なんかの手合は小さいので、ほぼ使い道がないのですけど、そこはそれ。魔力を込めるという力技で纏めてしまえば、それなりの大きさになるのでございます。


「そうだ、リア姉さん。この魔石をね、平たくするつもりで魔力を込めてみて」

「石を平たくですか?あぁ『つもり』なんですね、わかりました…えっ、本当に平たくなりましたよ。魔力を止めても戻りませんね。あらっ、変形してしまいました。どういう事でしょう」

「少し多めに魔力を注がないと変形しないんだけどね、柔らかくなったでしょ」

「そうです、そうです。砂糖飴のように、こうグニャリっと。生物魔石だからでしょうか、また新しい知識が増えました」

「そうだよねー、ミーちゃんと居ると、いろいろ秘密な事が増えるよねー。面白いから良いけど」

「アタシは、吃驚箱じゃないぞー」

「似たようなものですわよ、毎日新鮮で良いですけど」

「ふふふ、あはははは。本当にそうですね、吃驚箱…吃驚箱…あはははは」


 王女様ってば、どこがツボに入ったかな。


「それでね、魔導国にお願いなんですけど、この紋様は一人々違うんですけど、解りますかね。紋様が何により発現するものなのか、個々に違うのはなぜなのかとかを解析して、『紋様が違う』と言う事を国同士で共有するよう働きかけて欲しいんですけど、どうですか」

「それはお手紙を出せばすぐにでもできると思いますけど、一体何ができるのかしら」「えーとね、魔力による個人の特定ができるとですね、拡張鞄を専用にできたり、各人の移動を把握できたり、各組合会員証を特定個人の証明に使ったり、残滓を取得できればさっき話した犯罪の証拠にできるでしょ」

「なるほど、利用する前に紋様が個人で違うということを、まず検証して周知する必要があるのですね」

「そうです。しかもそれなりに権威とかないと戯言として取り合ってもらえませんからね、お願いできますか」

「解りました。どのへんまで開示して良いものかお手伝いして下さいな」

「はーい」


4. 魔力紋を残そう


 ひとまず生物が発する魔力には特徴があり、魔石にその魔力を込めると波紋ができるのだと言う事は、ここに住まう人の間で共有する事ができた。ついでにそれを魔導王国にも伝え、しっかりと然るべき所で検証してもらえるよう要請もしておいた。さて、それではその魔力紋をどうやって残せば良かろうかと言う事になるわけであるが、どないしょ。


 そもそも精霊達が「魔力の波動」と言う位だから光とか電磁波(まあ光も電磁波の一つなんだけど)のようなものだと思われる。可視光線の領域内であれば、写真のようになんとか(・・・・)銀の粒子を感光させれば撮れるのだろうけど、魔力は視えないからねえ、可視範囲外にあるのではなかろうか。そもそも物の理から外れている可能性が高い。魔力は魔力を使わないと視えないと言う事だと思われるのですよ。という事はですね、魔力に反応して形とか色とかが変化する物質がなければ、どうにもならないのではないかと思われます。おーい、婆ちゃエモーン。


「見たことはないさね」

「そっすか」


 魔力、魔力、魔力の波動。どうやって見える化するんでしょうねと四六時中考え、思考の海で溺れそうになってようやく思い付きました。灯台下暗しですよ、魔導国に行く途中で購入した着色魔石です。空の魔石が魔力を吸収してくれれば、その吸収度合によって強弱が取れるのではなかろうかと言う予想。そこに魔力波を引き寄せるにはどうするかと言うと。


〔エル君、【ガラス】に精霊印を入れられるかな。魔石じゃないけど〕

〔【ガラス】だって鉱物やさかいな、そんなん簡単やで、ホイな〕

〔おお、綺麗に入った。ありがとう〕


 (1)生物魔石を粉々のさらさらに粉砕します

 (2)土の精霊印が入った【ガラス】に接着剤を均一に塗布します

 (3)(2)に(1)の粉末を貼り付けます。魔力乾板の出来上がり


 ここでちょっと問題が…魔石の魔力は放置すると少しずつ抜けて行ってしまいます、粉になっていますから、内包魔力は極微量な訳で、そりゃもう一日と保たずに空になる。と言う事はどこかに転写しないといけない訳で、さて困ったの2つ目。


「婆ちゃん、普段は固まっていて、光や熱を加えると溶ける油みたいなものは」

「なんだい、なぞかけさね。光か熱で溶ける…あっ、魔麻油がそうさね」

「魔麻油?魔麻?種か何かを絞るの?」

「そうさね。ほれ、これさね」


 何はともあれ、ちゃららーん。ミールは魔麻油を手に入れた。試しに魔麻油を湯煎しましてですね、竈の煤をさらに粉砕して極微粉末とした粉を混ぜ込みます。ハンカチ大の布を染めるように浸すと、熱転写布の出来上がり。将来的には、インクジェットとか、レーザープリンターのトナーのようにしたいです。その上に魔力乾板を重ねて、上から(ミッ)ちゃんが熱線をピカーッ。無事一番下に敷いた紙に転写されました。カーボン複写みたいな感じ。


 光なんだから、白黒が反転したネガで写るのかと思いきや、黒は黒すなわちポジで複写されたのはなぜだろうと考えるに、転写時に吸収する熱量でインクにした魔麻油が溶融するせいらしい。ラッキー。ちなみに「魔麻」ってのは、魔草類で種を飛ばしてくるんだそうだ。傷口から種やら葉汁が入ると、酩酊したようになり、幻覚作用とか出るみたい。まんま攻撃性があるたちの悪い大麻だね。


「できたー。リア姉さん見てみて」

「この紋様はなんですか」

「これはね、アタシが水球を撃った時にできる気中魔力の揺らぎを吸い取ったもの」

「空気中の魔力の揺らぎですか。私のもできますかしら」

「はい、どうぞ」


 リア姉さんにも撃ってもらい、異なる紋様となる事を確認した。同じ水球魔法でも紋様が異なるのは、個人の紋様を含んでいるせいだと思うのだけどね、まあその辺りは、検証人に確認して貰えば良いわけですよ。


 あれ?ストロボのように魔力光を当てたら、感光しないかね?と言う事で早速実験してみることに。ピンホールカメラを作り、(ミッ)ちゃんがピカッ。


「おお、行けた行けた」

「あら、なんですかこれ。ミーちゃんの姿絵?違いますわね、もっと精緻ですわ」

「これ?えーと、『写ルンです真の姿が』で、写真?」

「写真…釣書に使えますかしらね」

「釣書?あーお見合い写真か。お年頃ぉー」

「私はどうでも良いのですが、お母様が煩いのです。ちょっと作ってみて下さいな」


 その後は、皆んなの分を作成して見ました。フォトショ修正術とか開発せねばいかんだろうか。

 

「不良品ですわ。ほらっ!ここ、目尻に小皺なぞございませんの、宜しいですわね」


 とかね。


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