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(07-04)深森の廃村(街行壱)

(07-04)深森の廃村(街行壱)


 婆ちゃんの手ほどき休みの日には、二泊三日で街に来ている管理放棄無番地の辺境村村娘です。管理放棄地住まいでしょ、人との関わりなんざありませんがな、碌でもないことに巻き込まれたりね、有りません。こういうのをスローライフって言うのでしょうか。


1. 冒険者組合


 今日は狼を持ってきました。狼の肉は、まずいので好まれていません。代わりに毛皮が高値で取引されますので、夏である今は喜ばれます。何故かというと、仕入れが安いからに決まっています。売るときは、秋口ですから、高く出来るんですよ。


「おっ、今日は狼2頭か、今日のも相変わらず綺麗だな。よし3銀だな」

「「はーい」」

「そうだ、組合長が話があるってよ」


 連れられて組合長さんの所へ行くと、初日の窓口担当者でした。


「「こんにちは」」

「やあ、初日以来だな。私は組合長のギルマと言う」

「その偉い人が何か用ですか」

「いやな、君たちが色々持ち込んでいるだろ?でな、階級を上げないと都合が悪くなって来ていてな」

「そうですか、それは悪い事をしましたね」

「いや良いんだけどな、周りが煩くてなあ。見習級だとな、買取価格の値付けが少し甘いんだ、それで釣り合いが取れないだのだな、言われるわけだ」

「なるほど、でも年齢が足りませんよ」

「そうなんだけどな、特例とさせてもらうがいいかな」

「問題なければ、構いません。あってもどうにかしますけど」

「「ねぇー」」

「はっはっは。わかった。ならば一つ上げさせて貰うな、(準級)になるから札を出してくれ」

「「はい」」


 業種:冒険者(準級)


 になりました。


2. 冒険者の階級について


 (1)見習

 7才になれば登録できるのがこれ。試験もなんにもない。とりあえず窓口で登録さえすれば認識票としての冒険者組合証を持つ事ができる。ただ、「見習い」な訳であるから、普通は、街の外へ出るような依頼は受けることができないし、依頼では出してもらえない。庭の草取りとか、街角の掃除とかそういう仕事だけ。それでも日銭は稼げるらしいので食いっぱぐれる事は無いと言うことだ。この段階で仕事の態度やら、評価やらを身につけておくのが一般コースらしい。


 (2)準級

 通常は、10歳以上15歳(成人)未満の者がなるのがこれ。今回は特例。このクラスになると、日帰りであれば単独でも街の外へ出ることができるようになる。ただ冒険者同伴パーティなどの場合はこの限りではないと言うことだ。ということは、野営の心得なんかも身につける必要があると言うことでもある。危険度が低ければ夜営の見張りは下っ端に来るのが普通だからだ。特に武術の心得が無くてもなれるものだけれど、あるに越したことはない程度でも良いそうだ。


 (3)下級

 所謂数多ある物語で言う所のC~Dクラス冒険者がこれらしい。一番人数が多い階級がこれでもある。剣技もしくは魔術を少しばかり心得ていて、自身をある程度守る事ができ、外敵に対処する事ができれば下級と言うことのようだ。それでもって、テンプレートのごとく酔っては(酔っていなくても)下の者…要は準級やら、新人やらだね…にちょっかい掛けてくるのもこの辺りのバカが多いそうだ。迷惑な事である。


 (4)中級

 所謂Bクラスのようで、読み書きができなくても武力があればなんとかなる下級とは違って、「読み書きを自前でできる事はもちろん、算術もそれなりにこなせないとなれません」だそうである。まぁ当たり前か。


 (5)上級

 これは、Aクラスに当たるみたい。上位貴族からの指名依頼、その護衛なども仕事の範疇に入る程の腕前と、特に貴族に対する礼儀、常識等を持っている必要があるそうだ。うん、面倒そうだもんね、お貴族様ってば。ちなみに現在は在籍する者がいない。今まで居た人達はと聞いてみたら、それまでの組合長が引退してしまい、該当者全員が組合長になってしまったらしい。人手不足かよ。上級だからって、組合長に適任かと言われればそうでもないと思うのだけれど、人手不足だね。


 (6)特級

 この辺りは、Sクラスかな?とりあえずは、それなりの技術と能力を持ち、右にでる者がいない程に押しも押されもせず、王侯貴族からの指名依頼やら、その護衛(普通は近衛が行うのであるが)すら依頼される程であるそうだ。こちらも現在は在籍する者がいない。


3. 車輪を作る


 今のところ、車軸に足りないのは、緩衝機。ショックアブソーバとスプリングですかね、普通に考えれば、両方とも鋼だし、スプリングはバネ鋼だし、当分無理そう。タイヤは、車輪屋さんにないかなと言う事で、今日はそちら。


「済みませーん。どなたかいらっしゃいますかー」

「はーい。あらいらっしゃい。何の御用かしら」

「荷車の車輪についてお尋ねしたい事があるのですが。あとこれ紹介状」

「はい、確かに。ちょっとまってくださいね」


 いえね、車輪には鉄が巻かれているっていうか、嵌っているんですけどね、分厚い。すなわち、重い。馬車なら兎も角として、荷車には似合わないじゃありませんか。なので、親方さんにご相談。


「うーん、木の車輪に巻きつける、軽くて丈夫な素材なあ、この辺りじゃ大蛇の皮くらいのもんだぞそんなもん」

「木の車輪に貼り付けられますか」

「あればな、但しだなあんなもんそうそう…なんだそりゃ」

「いえ、丁度その大蛇の皮がこちらに」

「よし、ちょっと待ってろ」


 一刻、二時間程待って出来上がった車輪は、しっかりと蛇の皮が貼り付いていまして、びくともしません。接着なのかきいたら、昔特級薬師が作り出したんだそうですよ、婆ちゃんは薬師じゃなくて、錬金術師なんじゃなかろうか。支払いは、材料持ち込みなので、鉄輪と交換で終わり。


「大蛇の皮、まだあるか?メーター20銀でどうだ。商工組合の買取だともう少し上なんだがな」

「そんなにするのこれ、一巻き10[㍍]程度で良ければ」

「おお、当然だ。それでいい、じゃこれな」

「はい確かに」


 行き先のなかった蛇の皮が減りました。そうか、タイヤ代わりに使えるのか、良いこと聞いた。ガラゴロだった車輪が、蛇タイヤのおかげで音が静かになりました。


 なんと、蛇のおかげで2金ですよ。ありがとう大蛇さん。狩りに行きたくなりますね、最もあんなのが、大挙してニョロニョロしていたら、嫌になりますが。


4. ウィンドウ・ショッピング


 別に窓を買いに来たわけではありません。ただですね、困った事に小娘二人でしょ、お金を見せると「どこで盗んだ」。お店に入ろうとしただけで、客とはみなされず「帰れ帰れ」なんですよ。宿屋の女将さんが特別だったみたいですよ。


 しかたがないので、ウィンドウのない露店街です。今日は、農場の人は見かけませんね、こちらは、農閑期の手仕事みたいな飾り物とか、彫刻品やら、街に店のない鍛冶屋さんとかが露店を開いています。あとは、食べ物屋さんというところでしょうか。


 そう言えば、二人共装飾品というのを持っていません。実用的冒険者風の格好ですので、飾り気も何も有りません。もっとも、イヤリングだの、ブレスレットだのは、正直危険ですし、指輪の類は、木刀とは言え構えるのに邪魔になりますし、チャラチャラ、シャラシャラ音がでるのは、森を行くのには少々向きません。化粧品類は、すっぴん勝負の方がはるかに高得点だし。うーんと、ネックレス位かな、上着の中に入れちゃえばなんとかなりそう。


「エッちゃん、買うものってある?」

「ワタシは無いねえ、ミーちゃんは?」

「ないねえ」


 ほら、買うものが無いんですよ。シャンプー・リンス・コンディショナーなんかが、例の子爵領在住さんから来ているかと思いきや、ハンジョ商会の支店にすら入っていませんからね、露店では期待出来ません。ふらふらと適当に歩いていると、下着屋さんと言う、場違いな露店が有りました。


「あの、露店で下着って売れますか?」

「いらっしゃい。常連さんにしか売れないね。やっぱり試着できないとだめかなあ」


 店員さんは、店長さんでもありまして、街のはずれで家庭内手工業を営んでいるのだそうです。それで、頭に浮かんだ下着を作っては、お店がないので露店で出しているようなんですが、そりゃまあ売れるかって言うと、微妙?たぶん無理。


「10歳位の婦人用ってありますか」

「婦人というより、お子様でしょうに。あるけど、貴族から流れてきた布を使ったものなので、少々値が張るのよね」

「お金は大丈夫ですけどね」

「そうなの、それじゃあこれなんだけどね、どう?」


 見せてくれたのは、少し丈の短い3分くらいの、やっぱりドロワ。ズロースですよ、ズロース。半ズボン状のトランクスみたいなものですからね、穿きづらい。これしかないって言えばそうなんですけど。今も穿いているのは、ズロースですけども。


「伸び縮みする紐ってありませんかね」

「伸び縮み?あれば私が欲しいね。見たことがないんだよね」

「やっぱりないかー」

「そうだよね、欲しいよね。あれば下着も穿きやすくなると思うんだよね」


 ドロワと言うのは、股の部分が△なんですよね、女性向きではないと思う訳ですよ。▽にならないと、体に合わないじゃないですか、お尻の部分とか立体裁断的なのは縫製できるのかとかいうことを聞いてみると。


「あ…あー考えもしなかった。そりゃそうだよね、体が違うもんね。あ、でも縫い合わせが大変で、糸も使うしなあー、注文してくれれば作ってみるけど、どう?」

「前半金で10銀でどうですか。足りますかね」

「そんなに?良いのかい。こっちは助かるけどさ」

「穿きやすいのができれば、それに越したことはないですから」

「はい、はい、はい」

「エッちゃん、どうしたの」

「ワタシはね、裾の部分がレースになったのが良い。あとツヤツヤした布地」

「あ、大人っぽいかもしれない。そんな感じだと、10銀で足ります?」

「大丈夫、大丈夫。新規の値段は、一度作ってからじゃないと予想もできないしね」

「なるほど、じゃあこれ渡しておきますね」

「これは、何」


 凸凹に削った板を渡しました。所謂勘合符。注文日と内容、試作なので上限の金額を書き込んで見ました。


「注文しましたって言う証?形が合わされば取引先と言う事になるでしょ」

「なるほど、こりゃ面白いね。使ってもいいかい」

「どうぞ、どうぞ。今度は来月になるけど、いいですか」

「判った、期待して」


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