(04-02)精霊さんに聞きました
(04-02) 精霊さんに聞きました
辺境開拓村村娘ですこんにちは。暖かくなって来ました、もうすぐ春です。
裏山(ていうか、大森林)の木々に葉が生い茂り、冬眠から醒めた獣がウロチョロする楽しい季節です。こっちへ来るなよ、来たら泣くぞ。
1. 星の生い立ち
〔やっほー〕
〔はーい。軽っ!そんなのでいいの〕
お馴染みになってしまった、白の精霊。魔法を使っていないのにやって来た。
〔いいのよ、名前考えておいてくれた?〕
〔あ…来るとは思わなかった〕
〔なんですと、じゃ今考えて〕
白の精霊王様と来たときに【白玉】以外という要望があったのをすっかり忘れていた。つうか、魔法を使わないのに来るってどうよ。
〔えーと【白子】〕
すっぱーん、額にピンポン玉がヒットした。お気に召さないようだ。
〔シラコって何?魚かっ!シロッコだと独車かどこぞのアニメになるじゃん〕
〔なぜそれを、それじゃ【白美】〕
ずっぽーん、お腹にピンポン玉がヒットした。だめですかね。
〔シラミ?シロミ?天に召されたいのかしら、真面目に考えなさいよ〕
むぅー、仕方がないので、もう少し考えよう。
(白い花からとかどうだろう、白薔薇だと「ロサ・デカイデヤ」まともに命名するとたぶんだめなやつだなこれは。白菊は突撃しそうだしなぁ。白い色、赤はルージュで、白はブラ…何だっけ?ホワイティーだとイルカだな、白い石だとねぇ、パールかな。パル子…お店じゃん)
よし!それなら、純白の!
〔【ジュンちゃん】〕
〔ダッハァァァァァァァァ----、期待した私がアホでした〕
だらーんと腕をたらし、前屈状態になりながら、長く深ーい溜息とともに呆れかえるかのような諦めが漂う白の精霊。
〔仕方がないでしょ、他所様の名前なんて付けた事がないんだから〕
〔それにしてもねぇ、ハァァァァァァァァ----〕
〔いいじゃん、【ジュンちゃん】〕
〔はいはい、わかりましたよ。それでは、ホイっと〕
宙返りしながらポワァっと綿飴の全体を包むように白く光ったと思ったら、目の前にいる精霊は、白玉じゃなくなっていた。手足を動かせる人形で、1/12位の大きさのおもちゃっぽい形に変わっていた。白のワンピース服を着て、腰ほどにある長い髪の毛は、先の方を何かで留めてあるので全体的にふっくらほんわりしている。
〔ほぉぉぉぉっ!すごい変形した〕
〔あーそこの人。どこぞの【ロボットアニメ】みたいな言い方をしないように〕
〔はーい、でもなんで〕
〔この星の理でね、名前を付けてもらうと、精霊も成長するのよ〕
なんと無所属だと綿飴で、人に命名されると小精霊になるのだそうだ。あら不思議。あれ?でも人には見えないって言っていたような。
〔見えていなくても名前は付けられるでしょ、今は誰もいないけど〕
〔そういう事か、言ってくれれば、『シロン』とか付けたのに〕
〔大して変わらないじゃん〕
〔あっはっはっは、相変わらず君たちは面白いねぇ。ところで『スィラタマちゃぁん』もそうだったのだが、さっき聞き慣れない言葉を使っていたようなんだが、どこの言葉なのだろうかね〕
絶賛抱腹絶倒中の精霊王様も一緒だった。
〔え、それなら多分【日本語】ですけど〕
〔【日本語】聞いた事がないな。おーい、言ノ葉の精霊王はいるかな〕
〔はぁい、お呼びかしら〕
うわっ、これまた超絶美人で妖艶な、パヨンポヨンでキュッなお姉ーさんが出てきた。上から玄関みたいな扉が降りてきて、そこから。どこでも玄関かい。言の葉の精霊王、女王様?そう言う精霊王様も居るんだ。鞭は持っていないね。
〔何を考えているのかしらねこの子は。あら、この子この星の出じゃないんじゃないかしら〕
〔そうなのかい、私にはわからないんだけど【日本語】って知っているかい〕
〔【日本語】っていうのは、この星じゃ聞いた事がないわね〕
〔ん、どういう事だい。この星じゃないって事は、別の星だよね〕
〔そうね、貴女はどこから来たのかしら、判る?〕
〔アタシですか、たぶん前は【地球】と言う星にいたはずですけど〕
〔へぇ、その星の記憶があるんだ、そりゃ珍しい。どういう事だろう〕
〔【地球】って、あぁ創造神様が前に仰っていたわね、地球からはみ出した魂が2つあったって。なにかねぇ、ちょっとした事故で記憶がのこってしまったらしいのよ〕
〔2つって、他にもアタシみたいなのが居るってこと、ですか〕
〔それはね、星の理があってお話できないの、ごめんなさいね。でも縁があればそのうち会えるかもしれないわよ〕
〔あ、そうですか。はい分かりました〕
〔良い子ね、じゃぁ私は戻ります〕
〔あぁ、ありがとう。呼び出して悪かったね〕
美人さんは帰っていった。玄関戸はだんだん透明になっていって、一緒に消えた。
〔そうか、地球か。君は渡世人だったのか〕
〔おぉ、そういう言葉があるんだ〕
〔ああ、この星は創造神様が地球を模して作り上げたんだ、星は元々あったらしいんだけどね、待っていてもその地球みたいに何も生まれて来ないものだから、えいやって感じで、命を作ってしまわれたそうなんだ〕
〔え、生命の進化とかそういうのすっ飛ばしてできているのこの星〕
〔うん、そのためか少し歪な面もあるかな。ちょっと強引だったかもしれないって言っていたな、彼女〕
〔彼女?女神様なんですね。40億年も待てないか、神様でも待ち草臥れるんだ〕
〔そうだよ、それにしても渡世人か、面白いな〕
〔面白いですかぁ、私は変な名前を付けられましたけどォ〕
ジト目で精霊王を眺めながら、文句を言いだした。
〔いいじゃないか、ジュンちゃん。こちらの言葉でも違和感がないからね、私は良いと思うぞ〕
〔わかりました、もうそれでいいです〕
〔うんうん、良い名前だよね〕
〔あんたが言うなぁ〕
ドゴっと、一発。ジュンちゃんがアッパーを入て、二人は帰って行った。何が面白かったのか、白の精霊王様は、ゲラゲラ笑っていたけど。
それにしても渡世人かぁ、世界を渡って来たんだから間違いではないけど、無宿者っぽい言い回しだよね、明日から長楊枝でも咥えるか?所謂ラノベなんかには冒険者と言う名前の無宿者が出て来ていたよなぁー、母ちゃんにでもそのうち聞いてみようかな、覚えていたらだけど。
2. 精霊とお勉強
暇なのかな、ジュンちゃんが遊びに来ました。丁度良いので精霊魔法について聞いてみる事にしました。
〔まずは、復習ね〕
星の素は元からあったみたいだけど、当時は闇の中。創造の女神様が地球をお手本にして、水やら土やらの精霊王を生み出してこの星を構成したそうだ。当然生命もいなかったので、女神様が命の精霊王を生み出して、命の精霊王が命の精霊を生み出してって感じで、この星に生命が誕生。それがちょっと力技で、生命の進化というのを飛ばしてしまったので、地球とは少し変わった生態系になってしまったらしい。40億年を待てなかったのだろうか、気が短い神様である。
星の中からは全ての魔法の原資である魔素が作り出され、それを吸収した生き物の中で魔力となり、生命活動の一部となっているのだそうだ。という事は、魔力が切れたら動けなくなると言う事である。死に至るわけではないようで、少し安心。
〔前に白の王様が仰ったけど、大雑把にはそんな感じね。でね、暫くすると魔力を利用する生き物が出てきたの、獣だったり人だったりね〕
〔あ、進化したわけだ〕
この世界にある魔法というのは、生き物が自分の魔力を使って魔法をイメージしないといけないのは知っている。獣はというと、体内魔力が増えすぎた結果魔獣となり、防衛本能的に、あるいは生存本能として、魔法を使えるようになるらしい。それならば、魔獣は魔獣なりにイメージしているのだと思われる。言語体系が異なるので実際はわからないけど。
〔えっ、アタシは?際限なく増えたら魔人になっちゃうかな〕
〔なりませんわよ、人は考える事ができますし、抑止もできますでしょ。なにより減らす事だってできましたでしょうに、貴女はね〕
〔あ、こんにちは。なるほど、それなら良いか〕
今まで魔人化した人間は居なかったって言うだけらしいけどね、そこまでアホみたいに増やした奴はいねぇーよと言うことだそうだ。
〔単に想像だけしても何も起こらないの、相応の魔力量を伴わないとだめ。だから魔力の感知が必要なのね、魔力を使って想像した魔法の形が魔導波となって外に放出されるのよ、その魔導波を操れる精霊が近くにいれば、その目的にかかわらず魔法として具現化するの〕
この星の生命に対しては、一定の魔力がその維持に使われるので、それ以上に魔力が増えた者だけが、想像を伴えば力を行使できると言う事らしい。それなら解る、今がそうだし。
〔生き物が直接具現化できる魔法もあるのよ、人は強化魔法とか、生活魔法とか呼んでいるみたいだけど、魔力を消費するという点では精霊魔法と同じね。精霊への対価分が無いから規模は小さいし、体内魔力を消費するから魔力切れも起こり易いけど〕
精霊に対価を支払った魔法は、対価の量により規模が異なって来るそうだ。広範囲とか大魔法を行使する場合は、魔導波の量もそれなりに必要だと言うことらしい。
〔あ、母ちゃんが呪文の詠唱をしていたけど、あれいるの?アタシは、唱えなくてもできちゃったけど〕
〔それはねぇ、たぶん想像の補完をしているんじゃないかなぁ、形とか場所とか詠唱文言の中に入っていなかった?〕
〔あったあった。そいういう事だったのね〕
〔とりあえずこんな所でいいかしらね〕
〔うん、先生ありがとう〕
〔はっはっは、崇めよされば与えられん〕
〔この子はすぐに調子に乗りますのよ、全く困った子ですこと〕
だいたい判ったような気がする。魔法は、AR(拡張現実)みたいな物だと思えば良いのか。ARが現実の風景上にCGを重ねるように、魔法と言う仮想の力を重ねると、精霊が実現してくれるって事だ。女神様ありがとう。
- 完 -
あ゛?まだだよ。まだ終わらんよ。てか、人生始まったばかりだよ。
-----------(注)-------------------
デバッグ用としてはこの位で良いのですが、少し調子に乗ってみようかと思います。