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(04-01)第一精霊発見

(04-01) 第一精霊発見


 辺境開拓村村娘ですこんにちは、年が明けました。お年玉?なんですかねそれ。あいかわらず寒いです。ということで、私は4歳らしいです。実際は、つい先日満2歳になったばかりです。なんとかなりませんかね?なりませんかそうですか。


1. 魔力の感知


 どこかにあると言う桃源郷みたいな魔力を感じ取ろうと練習中。どうせ未だに冬ごもりなんだから丁度良いです。たぶんあるであろう所の『卵巣』とか『子宮』辺りに見当をつけながら、同時にもしかしたらとリンパ管の合流場所であるリンパ節を意識して(どこにあるのかは知りませんが、身体中に沢山あるらしいです)、ああでもない、こうでもない、ここでもないを繰り返す毎日です。さらに近いうちに礼拝堂へ日参すべく、体力向上脚力増進のために家の周りをグ~ルグル(単にトテトテ歩いているだけです)。家の者に不審がられながら、毎朝ラジオ体操です。もちろんラジオなんて有りはしませんよ、誰か買って!飽きたら捨てて、拾いに行くから。


 最初は何も感じなかったのですがね、繰り返すうちに不思議なことがわかって来ました。体温が体の芯から上昇したように感じるのですよ、例えプラシーボ的な気の所為であったとしても、今は絶賛冬期中ですからね、体温が上がった気がするのは嬉しいです。ただ、エネルギー消費的に燃費が悪くならないか心配になりますけどね、食事事情が事情だから。そんな作業を繰り返していたある日、人魂の正体がわかりました。発見とか解明したとかではなく、あちらから近づいて来てくれました。


〔こんにちは〕


 人気はないし、誰だろうと声がした方に振り向くと、そこにいたのは人魂。


「ぎゃぁー」


 綿飴のような白い人魂が近づいて来たと思ったら、いきなり頭の中に響きました。いや驚いたのなんの、たまたま一人でいたから良かったものの、何もない中空を凝視しながら、いきなり『ぎゃぁ』じゃ圧倒的不審者の鏡。ちょっと出ちゃったのは秘密です。何がって言うのは、乙女に聞いてはなりません。絶対ですよ。


〔ごめんなさい、驚かせちゃったみたいね〕


 ご挨拶に続いて頭の中に直接聞こえてくるような会話。おぉ、これってお話なんかに良くある念話って奴ですかね、結構面白いです。でも、脳内に直接というわけではないですね、耳元で囁いている感じです。あ、でもそうすると念話じゃなくて空気振動かな。どちらでも良いか、聞こえているのは同じですからね。


「【あれっ?人魂?こっちの人魂って喋るの】」

〔【人魂】?何かしらそれ。私は精霊。白の精霊と言われているわ。え~と、それよりまだ早かったかな、ちょっと失礼〕


 額にペトっと綿飴が張り付いてきました。何をしているのか分からなかったんですけどね、しばらくして眼の前に戻ってきました。


〔【へぇ、面白い言語ね】〕

「【うぉっ、いきなり日本語。今の短時間で覚えたの】」

〔【ふっふっふ、すごいでしょ。崇めてくれてもよろしくてよ、オーホッホ】〕


   (注)これより先、精霊との念話もどきは日本語での会話となります


 手の甲で口元を隠す令嬢風味の高笑いをする人魂。実際にはピンポン玉な綿飴が上下に震えているだけなんだけど。


「何を調べたんだろうねこの人魂は、どこから引っ張ってきたんだか。人魂っていうのは亡くなった人の魂の事だけど、あなたは違うの」

〔だから精霊だってば、人の魂じゃないわよ。あぁ、それから言葉にしなくても大丈夫よ。頭のなかで思い浮かべるだけで通じるから〕


 そうです、精霊なのだそうです。人魂では有りませんでした。ん?そこらじゅうでフヨフヨしているのが全部精霊?だとすると、ものすごい人口…精霊口になるんだけど。そりゃもう立ち上る道の土埃みたいにフヨっているんですよ。怒られそうなので、口には出しませんけど。


〔んーと、こんな感じ?〕

〔あら、理解が早いわね。やっぱり普通の子じゃなさそうね〕

〔ありがとう。それでなぜに急に現れたのか聞いてもいい〕

〔うん、あのね少し前から気になっていたんだけどね、今日になって急に魔力が強まったの。それでどうしたのかなって、来てみました〕

〔魔力が強まった…アタシの事?自分じゃわからないよ〕

〔貴方の魔力が急激に上がったのよ、魔力の自覚無いの?おかしいなぁ、結構な魔力の素が貴方の周りに集まっているんだけど、もしかすると集まっているだけで、取り込んではいないのかなぁ、だから自覚できないのかもしれない〕


 魔法の事なんて何もかも初めてなので、また新しい言葉が出てきました。魔力の素。いの一番にお鍋へ入れると美味しくなるんですかね。


〔魔力の素があるとなにか良い事があるの、取り込むってできるのかな〕

〔人の事はわからないけど、魔力の素って言うのは、魔力の活力源ね。体内に取り込んだ魔力を発現できる形に想像すると、魔力の波動が生まれます。その波動が私達に伝わって、私達がお手伝いすることで、人は魔法を行使できるようになります。以上〕

〔おぉぉぉ、なんかわからないけどなんとなく理解した。基本は魔力の素、魔素とでも言うのかな、普通はそれが魔力となって体内に存在している事を知る必要があるわけね、そうしないといくら魔法を想像しても、貴方達に伝わらないと言う事だね〕

〔魔素か、その言い方良いかも。そうそうその通り。それじゃ沢山周りに集まって来ているから取り込む練習をしてみてね、なぜ集まっているのか、集まっているだけなのかは分からないけどね、それでも私が魔力を感じ取れたって事よね、そういう現象って初めてだから、調べてわかったらまた来るね〕

〔はい、お願いします〕


 と言われたけど、周りにあるから取り込めって言われてもわからんよね、見えるものでも無いしね、深呼吸でもしてみるかな。ス~ハス~ハ。


 その前は『魔力が高まった』と言っていたなぁ、魔素を体内に取り込めていないし、魔力の在り処も判っていないのに『魔力が高まった』。それは、一体どういう事だろう。日課となった瞑想もどきをしながらつらつらと考えて見たけれど、そうそう簡単に解るものでもないよねぇたぶん。


2. 魔力の波動(1)


 少しずつ暖かくなって来ているような気がする今日このごろ、未だに魔力と言うのを感じ取れません。面白そうな事が目の前に転がっているというのに、どこにあるんでしょうかね私の魔力。


〔これは面白い子だ〕

〔こんにちは〕


 精霊の言葉ですけど、適当に日本語翻訳していますので、気にしないで下さい。あぁ、ついでと言ってはなんですが、本人の会話も副音声です。主音声ではありません。たかだか3つ4つで、まともに会話できるわけがありません。


「あ、【白玉(しらたま)ちゃん】だ〔こんにちは〕」

〔【白玉ちゃん】て何よ、そのまんまでしょ。もっとましな呼び方がないの〕

〔考えておく。アタシに名前を期待してはいけないのよ。それでそちらの美男子さんはどちらさま〕


 うん、この世の者とは思えぬすんげぇ顔立ちが整ったいい男が、白玉ちゃんと一緒に私の前に立っている。


「そうだね、初めまして娘さん、白の精霊王と言われているよ」

「わっ、驚いた。こんにちは、ミールです。精霊王様になると普通に喋れるんだ」

「私はね、人からは見えないけどって、やはり君は見えているのかい?」

「はい見えます。すっごい美男子です」

「あっはっは、それはどうもありがとう。さて、白の精霊から話を聞いてね、面白そうだったから、直接会いに来たって理由さ」

「そうですか、アタシは魔力を見つけられなくて困っているんですけど、王様は判りますか」

「あぁ、判るとも。簡単に言うとね、君の魔力は、体中にまんべんなくとても薄く広がっているんだ。体が魔力で満たされている。だから、魔力が特別に濃い所と言うのが無い。無いから区別できないという所かな」

「えっ?体が魔力でいっぱいって事ですか」

「そう言う事だね。そうだ良いことを一つ教えてあげよう。体の魔力を凝縮って判るかな、空気のように薄いものを、水のようになるまで纏めて、一処に集める事ができれば、他の人と同じように魔力を区別できるようになるんじゃないかな」

「集めて纏めればいいの?やってみる」


 薄く広がった魔力を人形(ひとがた)の紙に見立てて、その紙を折りたたむ。縦に半分、横に半分、小さく小さく。最後に両手を合わせ、挟み込むようにしてギュっと。水にはならなかったけど、まぁ良いか。それを適当におへその辺りに纏めてみた。


「あっ、あぁー!お腹に魔力っぽいのができたぁー。ありがとう」

「おや、もうできたのかい。これはまた驚いた。驚かされてばかりだね」

「そうですか、でも有難うございました」

「いいよ、良いよ。今日は面白い子に逢えてよかった。また会おう」

「はい、ありがとうございました」

〔じゃぁまた来るからね、かわいい名前を考えておく事!【白玉ちゃん】以外で〕


 ズビシッと指差してきたように感じた。だって見た目は白玉だし。


〔分かった、期待はしないように〕

「あっはっはっは、いいじゃないか、スィラタマちゃぁん。かわいいぞ」

〔精霊王様、【白玉】で決まってしまうではありませんか、おやめください〕

「分かった、分かった。ぷっ…はっはっは」


 わはははとぷんすこが帰って行った。ふたりとも和やかでなにより、優しげで面白い王様ではあった。そうかこっちの発音にすると『スィラタマちゃぁん』になるのか。それよりなにより、漸く魔力の所在を感知する事ができました。濃さの程度はまだわからないですけど、逆に体内に広げる事もできると言う事ですよね。まぁ何に使えるのかは、まだわかりませんが。全く進んでいなかった魔力についての知識がまた一つ。しかも大きい。さすが王様、さすおう。


3. 魔力の波動(2)


 魔力感知ができて、手のひらだの、足の裏だの適当に移動させる事ができるようになった頃、試しに魔力感知ができている状態で『水』と言ってみた。うん、何も起きないね。今度は水が出ている所を想像…したらなぜか理科室を思い浮かべてしまったよ。あの蒸留水を作る器具とセットで。せっかくなので、そのままビーカーに溜まっている様子を想像しながら『水』と念じたら、掬うように広げた両手のひらに溜まったよ、すげえ。


〔こんにちは〕


 おっと、またびっくり。今度は薄い水色の綿飴精霊が頭の上でフヨフヨして居た。


〔こんにちは、この前は白い精霊さんだった。この前の精霊さんとは違うね〕

〔あぁ、白いのが来ましたのね。私はね水の精霊。水の魔力波を感じたから、お手伝いして差し上げました〕

〔それは、ありがとう。ところで、このお水はどんなお水なのでしょう〕

〔どんなというのは、なんの事かしら〕

〔えーと、想像していたのは、蒸留水と呼ばれる混じり物のないとっても綺麗なお水だったんだけど〕

〔あぁ、それでしたらその通りのお水ができているはずですわよ〕

〔えっ、そうなの?湧き水を想像すると湧き水になるって事ですかね、もしそうならば、ものすごい事のような気がするんだけど〕

〔そうですわね、想像することができるのでしたら、そうなりますわね〕

〔うーわ、精霊さんてばすごいのね〕

〔お褒めに預かり光栄ですわ。それではまたお会いしましょう〕

〔はい、また今度〕


 水色だと水の精霊?そうすると、なにか属性色とか適正色ってのがあって、それぞれに王様が居るって事でいいのかな、また新しい疑問ができてしまった。


4. 魔力の波動(3)


 とりあえずはお水であろうということで、井戸水を出せるようになってみたり、直に飲んでもお腹を壊さない程度の水を出せるようになるべく練習中。水出しに疲れたので「さて、次はどうしたものやら、どうすればいいのやら」と泥団子をこねる所を空目しながら最後の押し固めるところで「うりゃっ!」団子ができたよ、なんでだよ。


〔もうかりまっか〕


 また違う精霊が来た。なんだよもうかりまっかって。今度は薄茶色の綿飴だよ。


〔ぼちぼちでんなぁ〕

〔できよったか?なんや土を丸く固めていたみたいやったから手伝(てつどう)てみたけど、あれで良かったんか〕

〔うん、ありがとう〕

〔なんや面白い波動が見えとったでな。せやから来てみたんやけど〕

〔波動が見えた?見えるものなんだ。また別の問題が起きちゃったみたい〕

〔見えるで、精霊やさかいな。それで、丸く固めるのが面白そうだから手伝ってん〕

〔そうなんだ、それはありがとう。ところで貴方はなんの精霊さん?〕

〔ワイか?ワイは土の精霊やな。土のことなら任せとき〕

〔そうなのね、何かあったらよろしくね〕

〔おぉ、んじゃまたな〕

〔はい、ありがとう〕


 あれ?水にしろ、土にしろ想像してたら向こうから来てくれたよね。という事はだね、ひょっとして最初に自分自身で魔法というものを想像しないとだめって事ですかね。いやまだわからないですけどね、魔力の感知と想像力が切っ掛けとなるっぽいな。あれ?それなら白ちゃんは?白ちゃんは、勝手に向こうから来てくれたんだけど、白ちゃんてば何屋さんなんだろう。ただの好奇心の塊なのかな。そんな訳ないか、王様が居るくらいだしな。なんの精霊なんですかね、まぁいいかそのうち分かるでしょう多分。


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