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(06-05)深森の廃村(移住編)

(06-05)深森の廃村(移住編)


 ふはははは、子供の学習能力恐るべし。私もエッちゃんも、いつの間にか帝国語を精霊介在なしで日常会話位はできるように成っていました。精霊さん偉い…あれ?言の葉の精霊…女王様じゃなかったっけ。だからか、裏技とか言っていたもんな、女王様クラスじゃないとそういうのは使えないよね多分。ありがとうございました。麦を撒こうか、それとも待つかと選びあぐねている所の辺境村村娘です。


1. 戻ってきた


 昼時に、護衛さんズが帰ってきました。二頭のお馬に乗って4人。かみさん連れて来られたのか、良かったね別れられたりしなくて。


 ただですね、様子が可怪しいのですよ、なんか慌てているというか、馬死にそう。なんだろうと見ていたら、追われているんですよ、蛇に。この前見たのより少し小さいですけど、なんとなくコブラに似ています。あっ、深森大毒蛇そのまんまだねだ。婆ちゃんの図鑑にも、神父さんのにも掲載されていました。あんなにでかいのかっていう程度には大きいですね、体高は3[㍍]位で、体長はまだ見えません。


 頭をもたげたまま追ってきています。おお、毒っぽいのを吐いた。護衛さんズ、左右に分かれて巧いこと避ける避ける。毒をかけられた木が、即座に枯れるというとんでも毒って、どんな毒だよ。


 見学するのもそろそろ終わりにしないと、お馬さんがバテそう。放っておくとここまで来そうだしね、お姉さんの顔も真っ青だよ。エッちゃんには魔力バリアを展開してもらって、私は出張。


 馬が驚かないように、森を通って近づきます。息を潜め、魔力を抑えて太枝の上からお持て成し。通り過ぎると思っていたら、丁度前に来た所で、こっちに向き直るんですよ、予定が狂うじゃん。大口開けてこちらに向かってきましたので、右下に構えていた竹製の魔力刀を左上に向けて振り抜いたら、大蛇の顎上半分を頭ごと横薙ぎでスパーン。一閃で終わり。しばらくジッタンバッタンしていましたが、動かなくなったので、戻ることにしました。


2. 婆ちゃん素材を欲しがる


「これミーよ、血を採っておくれ、毒消しになるさね。新鮮だからね、上等なのができるさね」

「はーい、じゃあジュルジュルっとな」


 とは言え、不思議なことに一斗樽(こっちの世界は、ジェリカン大なんだけど、大差ないから良し)にも満たない程度しか採れなかったんですけどね。婆ちゃんに聞いても『そんなもんさね』で終わり。これは何かあるなとは思うけど、今のところ理由は判りません。


「牙の上に毒腺があるさね、牙と一緒にそれも採っておくれ」

「はーい、それっ、ズボッとな」

「ミーちゃん、これ村の時と同じ奴ぅ」

「違うねぇ。村に来たのは、もっと大きくて、牙がアタシの倍位あったよ」

「まだ、大きいのがいるんだ、すごいねぇ」


 ゆるく会話していますけど、絶賛解体中。護衛さんズは、へたばり中。お姉さんは、奥さん達を介抱中。婆ちゃんは、後ろであれやこれやと指示しています。


「婆ちゃん、これ雌だぁ、卵があるよ」

「卵の使い道は知られてはいないさね、しかたがないから始末しておくれ」

「了解」

「婆ちゃん、この石何?」

「そりゃぁ、魔石だね。魔法道具の材料になるよ。その大きさも久しぶりに見るねぇ。お前さんが持っておけばいいさね」

「ありがとう」


 皮を剥いで、ズボボっと骨を引き抜いて、肉大量。また、不味いんだろうか。まずかったら、畑のご飯だと言う事にして、適当に輪切り。内臓は現在婆ちゃんが吟味中。


「いやぁ、こんなに新鮮な素材が採れたのは久しぶりさね。結構な量になったよ」


 そりゃもうニコニコ、上機嫌。手に持っているのは(はらわた)だし、その手は血まみれだし、どういう婆様ですかね。残りはもしかしたら、畑のご飯にならないかと乾燥してから纏めて収納。後で研究しましょう。


3. 護衛さんズと奥さんズ


「「助かったぁー」」

「ちょっとぉ、あんたぁー、あんなのが居る所だなんて言ってなかったじゃない。どういう事よ、説明しなさいよ」


 お、危機的状況ですかね、仰向けになっている護衛さんズの胸ぐらをつかんで、グイグイ揺さぶっています。がんばれ、涙目奥さんズ。奥さんを応援して、右手を振り上げ、行け行けGoGo。


「知らねぇよ、あんなの見たことが無いし。婆さんは見たことあるか?」

「あるわけないさね、ここに来て二十年となるけどね、初めてさね」

「だってよ、俺らだってあんなの初めてだぜ、生き伸びたぁー」

「で、ミーちゃん!お前さん何を期待して煽っているんだ」

「あ、判った?」

「判るよっ!到着そうそう揉めさせないでくれよ」

「はーい。よし、お馬さんをヨシヨシしに行こう」

「気をつけろよ、蹴られるなよ」

「「は~い」」


 エッちゃんと二人で馬の所へ、砂糖と水とブラシ持参です。


「あの私、ガンドウ(護衛1号)の妻で、ヒルダです」

「私は、ジョルデ(護衛2号)の妻で、ヨルダです」

「私はね、ババ様と呼ばれているさね、名前はちょっと簡便しておくれ」

「「はい、いくらかは聞いておりますので、よろしくお願いします」」

「ヒルダに、ヨルダ、よく来ましたわね。相当の田舎ですのに、大丈夫かしら」

「「お嬢様に務まるなら、大丈夫です」」


 おお、大人たちはご挨拶ですね。


「お馬さん、綺麗にしたよぉ」

「血まみれ婆ちゃん、怖いよ。流さないと」

「それもそうさね、じゃちょっと行ってくるよ」


 自分の手を見て、洗ってない事にようやく気づいたらしい。血まみれババアになっていたものね。


「「おっ、俺たちも行くか」」

「「どこへよ」」

「あぁ、風呂だよ風呂。いいぜぇ、ここの風呂は」

「家族用を2つ作ってあるからね、ちゃんとそっちに行ってね」

「そうか、ミー気が利くなぁ、ありがとよ」

「浴場では、欲情禁止」

「んだとぉー、するかアホ」

「ミーちゃん、気を回しすぎだよ。幾つだよ」

「ミーむっちゅ」

「気持ち悪いから禁止な」

「へーい」


 とりあえず、歓待挨拶終了。


4. 落ち着きましたか


「いやぁ、相変わらず良い風呂だったぁ」

「ババ様、あれがお風呂?お湯が湯船の中を流れていましたよ、なんですかあれ」

「そう言う物らしいさね。あの湯はね、この先の山から持ってきているさね」

「山からですか、初耳ですね。沸かしてはいないって事ですよね」

「そうさね、詳しい話が知りたければ、ミーに聞くさね」

「護衛2号さん、影薄いよ」

「ほっとけ」

「一気に賑やかになりましたわね」

「ミーちゃん、ご飯の担当ってどうするんだっけぇ」

「お夕飯?今日は作り置きで良いんじゃない?蛇でも焼く」

「そうですわね、今日は、仕方が御座いませんでしょ」

「あ、材料があれば作りますけど、どうしましょう」

「4人共疲れているさね、今日はいいよ。作り置きで我慢しておくれ」


 ということで、食卓へ。


「おい、ミー。これなんだ」

「なんでアタシに聞く。糧麦焼(パン)の事?」

「変なものは、お前が原因なの。糧麦焼(パン)?これが?うっそだろ」

「そうだよねぇ、僕も初めて見たよ」

「えー、まだ広まっていないのか」

「ハンジョさん、持ち帰ってひと月と経っていないものねぇ、無理じゃない」

「奥さんズ、どうしました。食べられませんか」

「いえ、違います。あのこの糧麦焼(パン)ですか、頂いても良いものかと」

「あら、皆同じでしてよ、遠慮なく頂きなさいな」

「お姉さんが作ると、消し炭だけどねぇ」

「ミーちゃん、何かおっしゃいましたかしら」

「あ、判りました。教えて頂ければ、私達が作ります」

「「お姉さんよかったねぇ」」

「くっ」

「お嬢、負けてますぜ」

「あ、そうだミーちゃん。ハンジョさんから届け物だってさ、これ」

「おぉ!魔道具の本だ!ハンジョさん、ありがとう」

「相変わらず、勉強熱心だなぁ」

「子供はお勉強が第一なんですぅ。エッちゃん一緒に覚えよ」

「うん、良かったねぇ。でもさ、ワタシ達帝国語を教わっていないよね、何故読めるんだろう。お婆ちゃんの本も読めるよね」

「えっ?あれ?そう言えば、読めているね。なぜだろう」


 二人で無言の見つめ合い。首を傾げ、右見て、左見て、天を仰ぎ、手を上げて。


「お空にいる人のおかげじゃない?わからないけど、ありがとう」

「そうか、精霊様か。ありがとう」


「「「「こいつらはぁ、もっと深く考えろよ。そんな事あるか!」」」」


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