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(05-10)海辺の廃村(2日目)

(05-10)海辺の廃村(2日目)


 おはようございます。久しぶりに家の中で寝られたように思います。魔獣やら夜なべの野獣やらに遭遇した事はないけれど、あれっ?そう言えば、なんで会ったことがないのだろう。まぁいいや、そのうち考えよう。やっぱり家の中と言うのは事さらに安心できるような気がします。少しの屋根があるだけでも違うのだと言う事を知りました。隙間だらけだったけどなっ!一ヶ月分の疲れが全部吹き飛びました。辺境村村娘ですおはようございます。


1. 狩りに行きましょう


 それでは朝ごはんを捕りに行きましょう。昨日みたいに魔カジキにぐっさりされないように、頭を低く岩から出ないように、慎重に慎重に、漁場へ到着。期待はしていなかったけど、居たよ居ましたよ。引き潮に乗り遅れた、潮溜まりの魚。それも結構な代物で。


「あぁ~、逃げるなぁ~、ちょっとぉ~、おっとぉ~、エイっ!」

「手づかみするか?良く採れるね」

「ふっふっふ、身体強化を覚えたからねぇ~、任せて。それで、焼く?生?」

「あっ『煮る』ができるよ。鉄鍋があったじゃん」

「おぉ~、そう言えばそうだったね。よし今日は煮魚づくしで宜しくぅ」

「料理するのはアタシかね」

「だってぇ、ワタシがお料理すると魚のおこげができるよ?炭水魚食べたい?」

「遠慮します」

「でしょ、竈の火加減は難しい。難しすぎる。ミーちゃん偉い!」

「でも調味料がないね、塩味に煮るだけだね」

「貝!貝を入れよう。海の草はどうかな?だめかな」

「海の草、一度干せばなんとかなるかな?」

「それっ、行ってみよ」


 適当に海の草で出汁昆布っぽいものを即席で作ってみました。とりあえずはそのままでスープに入れて、残りを日に干しておきましょう。出汁昆布になーれ。なると良いな。なってくださいお願いします。


 『茸』を入れろ?あいつらはだめです。玄人な人しか触ってはいけない代物です。触るだけで死ぬ事もあるとんでもない生き物です。しかも奴らに対するこちらの知識は、全くのゼロです。私は言うに及ばず、エっちゃんも知識という対抗兵器は持ち合わせて居ないらしいです。という事で手出し無用なのです。


 ご飯を食べながら思いました。ご飯は獲らねばいけないのです。買って来るのではなくて、狩って来るのです。狩ってから調理して食べるわけですから、食べ終わって片付ける頃には、なんと次のご飯です。何もできないではないですか。昔々の人って言うか今まさにそれなのですが、大変だったのだなと思いませんか。実際、今すっげぇ大変です。


 朝狩りします。昼狩りします。夕になるとまた狩るのです。狩ってばかりです。纏め狩りしろよと思うでしょ、痛むんですよ。冷凍冷蔵庫どころか、冷暗所なんてのも有りませんからね。足が早いものは、特に痛みます。腐敗に至るまでの時間が短いと言う事ですけど、まだ死にたく有りません。塩につけろ、日に当てろと言いますか?知っています?その前に塩を作らないといけないんですよね。あの、塩味がしない汽水から。


2. 塩は採れるか、作れるか


 眼の前の海(暫定)ですが、たぶん塩分濃度は半分も有りません。ほとんど淡水です。さて、そこから通常のやり方で塩が採れるのか、やってみました。


 おーい、アッちゃんやーい。


 桶に汲み上げた海水から水を抜きます。全部抜いてしまうと、苦汁が含まれてしまうので、直前で一回止めて、昨日取り外した、服のひらひらで濾してから、絞り切ります。もう一度、お願いアッちゃんします。案の定、全然採れません。何度も繰り返して漸く塩が手に入りました。なんかエッちゃんが感心していました。エッちゃん曰く『塩って山で採れるのかと思っていた』だそうです。と言う事は、村に居たときの食塩は岩塩だったのでしょうかね、エッちゃんも知らないそうです。あぁ、こんなの天日でやっていたら、いつまで経ってもできませんよね、海から塩を採るなんて誰も考えないですよね、さらに薪と人手でやったら赤字だわ。


 ひとまず目分量ですけど、5[㎏]位の塩を作ってみました。そのままだと、水分を吸収する乾燥剤モドキになってしまうらしいのですが、分かりませんので、経過は要観察。ほーら、一日終わっちまったよ。アッちゃんお疲れー。でもですね、塩漬けや干物を作るなら、多分足りません。という事で、再び朝からせっせと塩作り。一日で、10[㎏](推定)ですかね、其れ以上は作れません。理由はですね、アッちゃんが飽きるのです。そら、ルーチンワークだもんなぁ、飽きるわな。ごめんよぉー。


3. 精霊さんとお話


 塩を作った翌日からは、穫れるだけ獲って、干物にしてみました。毎日魚です。たまに、兎です。其れ以外は居ません。兎の塩漬けと、燻製も作りました。魚の日干しと、塩漬けも作りましたので、生活に余裕が出来ました。保存食は大事ですね、狩りをする必要が毎日でなくなるだけでも違います。例の空飛ぶ魔カジキですが、割りとオバカッチョで、岩場にいるとピョンピョン跳ねてきては陸に乗り上げて、ビチビチしてくれます。アホですね。ありがたく切り身にして、煮て、干して、乾燥魔法。それっぽい出汁粉に成ってくれました。魚が違うせいなのでしょうかね、魔法で手抜きをしているからでしょうかね、味がねぇ、普通に出汁という味からは少し遠く感じます。まぁしかたが無いですよね。もしかして、あの黴させるというのはすごく重要な過程なんでしょうかね、程度も方法も分かりませんのでどうにもなりませんけど。


 よし、時間が作れるようになったので、次に行ってみよう。ここで落ち着いていられる内に、いろいろできるようになって置きたいです。うーん、エッちゃんには、魔法は『魔力量と制御』だ『明確に、現象を想像することだ』と教えたのですがね『精霊さんにお礼を言えたらいいのにね』と聞かれまして、何かできないかと考えている所であります。


〔そうねぇ、精霊は見る事ができないと、お話は無理かしらね〕


 水仕事をしている(お洗濯)ので、側にはアッちゃんがいます。


〔そうなのね、視る事ねぇ、視られる人いないよね〕

〔そうですわね、貴女以外に私達が視える人はいませんわね〕

〔そうかぁ、どうしたもんかな。あっ!そうだ精霊って、人の魔力をご飯にするんだっけ?〕

〔良くご存知ですわね、白が言ったのかしら。魔力波だけでも感じ取れますのよ〕

〔うん、ジュンちゃんがね、教えてくれたの。だったら方法があるかな〕

〔あら、何か面白そうですわね、期待していますわね〕

〔うん、していて〕


 エッちゃんの側にいる水の精霊が、名を付けて貰いたそうにしているんだよねぇ、私も何かして上げたいんだけどね、なかなかいい方法を思いつかずにいたんですよ。


「エッちゃん、指先にだけ魔力を集められる?」

「うん~と、こうかな。出来たよ」

「それじゃ次に、その魔力を精霊に上げる所を想像してみて」

「わかった…あ、食べた?のかな、なくなったんだけど」

「あぁ、できそうだね」


 ジュンちゃんとか、アッちゃん辺りなら出来ていたんだけど、視ることができない毛玉状態の精霊でもできるのかなと思って、ちょっと試してもらいました。


「それでね、精霊に質問してみて欲しいんだけど、良い?」

「えっ、ワタシは視えないよ」

「大丈夫、お話する所を想像するだけだから」

「あ、質問文章を黙読する感じで良いの?」

「そうそう、あのやり方ね」

「なるほど、じゃぁ『精霊さんは、何の精霊ですか』」

「…」

「返事がない、屍のようだ」

「そりゃ無理だよう。返事の受け取りようがないもの」


 そうなのだ、返事に会話を必要とする質問は、答えが分からない。


「あのね、そういう場合はね『精霊さんは○○の精霊ですか』って聞くの。そうすれば、『はい』と『いいえ』になるでしょ、『はい』だったら右。『いいえ』だったら左の魔力を取って貰えば、わかるでしょ」

「なるほど、そういう事か。ちょっと聞いてみる」


 それから暫くは、質問の仕方に戸惑っていたようだけど、エッちゃんが良い笑顔になった。


「やったぁー、お話できた。あぁ、でも名前はどうしよう」

「同じだよ、名前を黙読して、気に入ったら『右』ってして貰えばいいだけ」

「あっ、そうかそうか、なるほど」


 あ、水の精霊が人型になった。エッちゃんの付けた名前が気に入ったらしい。


「ミーちゃん、ありがとう。お話しじゃないけど、会話できたよ」

「それは良かった。名前も?」

「『女の子ですか』って聞いたら、『わからない』って言うから、春の湧水をもたらす子で、『春水』にした」


〔貴女よりは、よっぼど良い子ですわね〕

〔え゛ー、アタシだってちゃんと考えているもん〕

〔〔あ~、はいはい〕〕

〔なんか最近雑になっていませんかね、あんた達〕


4. 精霊の魔法


 この世界の魔法は、相手を見ながらとは言え「水弾」とだけ言ってもそれが飛んでいくものでは決して無い。すなわち、フルオートマチックでは無いのである。どうも精霊の理とやらでそうなっているようで、どうにもならない。


 最初に母ちゃんが魔法を使ったときのように、いろいろ指示をしないと現出しないのである。もちろん、呪文の詠唱は、音読でも黙読でも、なしでもどうでも良い。魔力波として、精霊に伝われば良いのだ。


「我精霊に願う、我が指先に小さき火をもたらしたまえ」


 あれの事ね。ただ、当然ながらこの詠唱では『火』は灯っても、それが宙を飛んで、薪の焚付に燃え移るわけではなく、指先の所に、マッチの炎程度の火が灯るだけ。熱を感じないのが、せめてもの安全策らしい。


 水は、井戸水なり湧水なりで、見たことがある。大きさを指定すれば水滴にも水球にもなる。でも、飛ばないし直ぐに潰れる。火は、木や蝋燭が燃える所を見たことがある。だから、その事を想像できれば魔法にして出す事はできる。でも、それだけでは飛ぶ事はない。飛翔はと言うと、物を投げれば宙を飛ぶ。矢を射れば遠方に飛んでいく。なぜかは分からなくても、見たことがあるなら、水や火に対して似た動作を再現できるらしい。その程度には、自動化はされているみたいだ。逆に炎が弾となって飛んでいくというのは、魔法の世界だなあと感じてみたり。

 

 周囲温度が低下し、水が持つ熱が奪われ、水の分子運動が止まると凍る。さすがに分子運動は、見ることが出来ない。だから氷塊を作り出す事は難しい。できるとすれば、気温が下がるなか、水が凍って行く様を観察した場合だろう。おそらく、それなら見たわけだから、かかる時間はどうであれ、氷を作る事ができると思われる。


 以前に精霊に聞いた時には、


〔難儀だねぇ、もっと簡単にならない?〕

〔なっりませ~ん〕


 で終わりだったよ。


5. 使える精霊魔法を増やそう(1)


 出会った順に精霊達を思い出してみますとね、


「白・水・光・土・火だっけ?あとは、土の子(蛇みたいだな)が植物の精霊って言っていたかな、言ノ葉の精霊さんは王様らしかったし、あとどんな子がいるんだろう」


 白のジュンちゃんは、あっちから勝手に来てくれたんだけど、他の子は、魔法を想像してからだから、たぶん基本的には、想像により出力された魔力波が、合致する子が来てくれているのだろう。確かジュンちゃんが言っていたような気がする。


 後はそうだ、『風』か『気体』とかの子はいるよね。それから、土と植物が別なんだから、『木』もいるかもしれないね。さて、どうやって魔法を構築すれば良いのかな。


 風は普通に風だよね、突風、旋風とか、竜巻とか?竜巻は見たことがないなぁ、それと扇風機とか循環扇みたいな、送るだけのとかかな。台風を作れるかな。


〔ちょっと、そこの貴女〕

〔こんにちは、なんですか〕

〔貴女今、風魔法を使っておりますでしょ〕

〔えッ?ちょっと魔法化するにはどうするかって考えていただけだよ、あなたは、風の精霊さん?もいるんだ〕

〔おりますわよ。私の仕事を白にさせないでいただけるかしら〕

〔まぁ、私にもできるとは思っていなかったけどね、あぁ~っ、もしかして拗ねてるのかしらぁ?〕

〔ジュンちゃん、こんにちは〕


 こらこらジュンちゃん、煽るんじゃないよ。


〔す…拗ねてなんかいませんわよ。気体操作は、私に願えば良いじゃない。そうすれば頼まれてあげても良いですわよ〕

〔気体操作?風を吹かせる気圧操作じゃなくて、気体全般?〕

〔そう、こいつはねぇ、気体とか空の生き物とかかな〕

〔おお、それはすごいじゃん。うん、判った。これからは風を作る事を考えればいいんだね。確かにね、真空空間の掃除機は加減が難しいしね〕

〔そうですわ、最初からそうすれば良かったのよ。そうね、名前を付けさせて上げても良いわよ〕

〔きゃはは、やっぱ拗ねてる。ツンさん?〕

〔そうかぁ、名前かぁ〚よっしゃ、バッチコ~イ〛って、何を待っているのかな、ジュンちゃんは〕


 そうだねぇ、地球の神話だと【シルフ】かなぁ。風の精霊って言えばこれだよね。


〔アタシが知っている風精霊の名前からだとね『シル子』!〕

〔よっしゃぁ、これよこれ。これこそミール〕 

〔……〕

〔変かな。じゃぁ、丁寧に『オシル子』〕

〔……馬っ鹿じゃございませんの〕


 突風が襲ってきた、すっかり伸びた髪の毛が斜め上にブワッと煽られる。体も持っていかれそうな程の強風。強化していなかったら危なかった。ジュンちゃんは、風の子の隣で足をばたつかせてお腹をかかえて笑っている。


〔えー、ダメ?そうかぁ、気に入らないかぁ〕

〔…嫌いとは言ってないじゃない、可愛くないでしょ!頭おかしいんじゃないの〕

〔ヒーッ、ヒッヒッヒッ、ヒィー。ゲホッ〕

〔そうかぁ、じゃぁ【フウちゃん】〕

〔『フウ』、『フウ』ですわね、判りましたは、そうしましょう〕

〔チッ!気付いたか。だんだん余計におかしくなるってパターン〕

〔じゃぁ宜しくね、フウちゃん〕

〔そうね、お付き合いしても宜しくてよ〕

〔久々にヒットしたねぇ、じゃぁねぇ~。皆にも教えてあげよっ〕


 ジュンちゃん、よく来るなぁ、暇なのかな。と言う事で、風魔法の構築方法を考えていたら、風の子が増えました。


6. 使える精霊魔法を増やそう(2)


 そう言えば、エッちゃんは、どうするんだろうかと聞いてみた。


「エッちゃんは、魔法どうする?精霊のお友達を増やす?水の精霊を極める?」

「極めるって、何を」

「水はさぁ、寒いと凍るでしょ、熱いと蒸気になるでしょ、それなりに魔法が変わるんだよね」

「あぁ、そういう事か。氷は、暑い日は良いかもしれないね。あ~、でもどうやって凍るか知らないなぁ」

「友達を増やすって言うのは、『火』とか『風』とかの精霊を呼び込むって事ね」

「う~ん、水の精霊って、お水を出してくれるだけじゃないの?」

「違うよ、水みたいな物全部だよ。兎とか、魚の血抜きは、水の精霊にお願いしているし、『火』の精霊がいると、精霊二人で協力すれば、お湯を作れるよ」

「うわっ、知らない事が多い事に気が付いた。ちゃんとお勉強しないと、魔法を増やせないのかぁ、う~ん、どうしよ。少し考えてもいい?」

「もちろん、ゆっくり考えて。今はご飯も慌てずに済むようになったから、今の内にどうかなと思っただけだから」

「それもそうだねぇ、良い機会って事だね」

「そうそう、そういう事」


7. 使える精霊魔法を増やそう(3)


「ミーちゃん、兎の(はらわた)を始末するから、穴を開けて」

「わかった」


 エル君が、頑張ってΦ50[㌢]くらいの穴を開けてくれます。深さはないので、あっと言う間もなく、すぐに開いてしまうのですが、見ていると目には見えない手持ちシャベルでちょこまか掘っているようにも見えます。数秒とかからないので、超高速ですが。


「これ面白いね。見ていると、かわいい感じがする」

「そうだよね、一瞬だけどね」

「え~と、こんな感じで穴を開ければいいのかな。エイッ!」


 なにやら、平らな地面を凝視しながら、エッちゃんが念ずると、ややあって土が舞い上がり、隣に排土の山。すぐに膝くらいまで入る程の穴が開きました。


「やった、出来た。土?土だよね。土の精霊さんはいますか」


 エッちゃんも、順調に魔法属性を増やしているようでなにより。


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