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(05-09)海辺の廃村(1日目)

(05-09)海辺の廃村(1日目)


 朝日が昇ると同時にまた歩き出し、道脇の雑木に成っている果物っぽいなにかを食べながら、昼頃に小高い丘をすぎると、見えてきました待望の


「「こ・れ・がっ!海だぁ~着いたぁ~」」


 地図には村から一週間と描いてあったんですけどね、およそだけどひと月程かかって地図にある海辺の村に到着しました。辺境村村娘ですこんにちは。でもそこにあったのは、ずいぶん前に廃れてしまったらしい海の村。魚を獲っていたであろう舟も船も見当たらない。当然人なんて見る影もなし。


1. 魔カジキ


「「お~い、誰かいませんかぁ~」」


 誰も居ない。人っ子一人いない。しかたがないので、とりあえず次にすることって言えば水際に駆け寄って、水をすくってみる。


「あれっ?此処って、海じゃないっぽい」

「え~っ、海だと思っていたのにぃ~、違うの」

「いや、なんとなくだけどね、水がしょっぱくないの」

「そ~お~、ただのお水よりは塩味がするけど」

「神父様が言っていたでしょ『飲めない位に塩の味がするよ』って」

「あぁ、そういえば言っていたね」

「でしょ、でもここのお水は少しなら飲めるでしょ」

「そうか、そういう事か。じゃぁ、ここ何?」

「なんだろうね」

「そうかぁ、ミーちゃんにも判らないかぁ」

「アタシは、鑑定人じゃないってば」


 海、初めて見る海と言うことで、早速水をすくって飲んでみた結果は、そういう事でした。たぶん汽水域のような所なんだと思うけど、それにしては広すぎる気がする。どうなっているのか分からないけど、前も左右も全部向こう岸が見えないんだもん。そしたら、そりゃもう海って事でしょ。一部が海に続く巨大汽水湖なのかな、そんな所があるのかな。わからん。


 それにつけても、よくぞたどり着いたと言いましょうか、服は草だの雑木だのにこすられて、そりゃもうボロボロ。履物は言うに及ばず。見るからにロリコンさんいらっしゃい状態でエロエロしい。これどうすんべ。後で言われたんだけど、ジュダさんが使っていた修復魔法。繕い程度ならあれで服も修復できるらしいです。しかも(ミッ)ちゃんが標準装備している魔法で。(ミッ)ちゃん器用だな。


「まずは、泊まれる所を探す?」

「そうだね、雨が降ってきても大丈夫な所…あるかなぁ」

「どうだろね、なんとなく村長さんの家がありそうな気もするけど」

「そうだね、とりあえず一番大きな家を探そうかぁ」

「無事に残っていると良いんだけどね」

「よし、それじゃ~探検だぁ、の前にお腹すいたのでご飯ください」

「アタシは飯屋かっ」

「ご飯屋さんじゃないよ!でも一家に一人いると嬉しいので、嫁になれぇ~」

「今度は嫁か!」


 どうでも良いことをグダグダと話しながら、ご飯ねぇ、本当にどうしようかと周りを見渡して見ると、左遠方岩場発見。


「エっちゃん、あっちに岩場がある。ご飯がいるかもよ」

「あっ、本当だ。行ってみよ」


 岩場に到着。海(のような何か)を見ていると、魚が飛行していた。


「あっ!あれ見てあれ」

「何?あれ…魚。エッ!魚って空を泳ぐの?」

「いやいやいや、そんなわけないじゃん。鰭を使って飛んでいるように見えるだけでしょ、たぶん」

「だよねぇ、神父様の図鑑にもそんな事書いてなかったしねぇ」


 すっげぇ、異世界だなぁーとアホけて見ていたら、そのうちの一匹が方向を変えて、ホップ・ステップ・ジャーンプして来やがりましたよ。


「「ぎゃぁーーーーーーー」」


 思わず岩陰に隠れると、巧いこと頭の上を通り過ぎてくれたようで、何より。


「吃驚したぁ、あぁっチビッたー。エッちゃんは大丈夫だった」

「ダ…ダ…ダイジョウブデスヨ。ナントモナイデスヨ」

「真っ青顔で棒読みされても説得力ないよ。無事なら良かった」


 さらに後ろで、ガッキーンとすごい音がしていたので、振り返って見ると、なんと岩に突き刺さった魚が。


「「なんじゃこりゃぁ~っ」」

「こんなのが刺さったら、人なんか一突きで逝けちゃうねぇ~」

「おぉ、エッちゃんが復活した」


 いやそれがね、大きいんですよ。そいつ。私らの背丈くらいだから、1メートルはあるんじゃないですかね、それが空を跳ねるように飛んで来たんですよ。


「なにこれ、カジキ?マグロ?」

「魚の名前?魔黒?黒い魔魚だから、魔黒?それっぽい」

「あ、あー。うん」


 思わず地球の魚の名前を言ってしまいましたけど、色とか、形とかカジキっぽいのが岩に刺さって、必死に抜こうとビチビチしてます。やりぃー。なんでそんな事になっているのかと言えば、そのまんまで、カジキみたいなのを想像してくれれば宜しかろうと思います。あの剣先みたいなのが岩にぐっさり刺さっているのですよ。


 そうそう、カジキマグロってずっと思っていたけど、そんな生き物は『いない』らしいですね、カジキはカジキで別種だそうです。なんと本家マグロさんは、スズキ目・サバ科で、カジキはスズキ目メカジキ科と、スズキ目マカジキ科があって、と言う事は一番偉いのがスズキさんだとは知りませんでした。やるな、スズキさん。まぁカジキなんて『こちらがカジキでございます』とか言われて食べた事ないしね、写真でしか知らんがな。


「そう言えば、海洋生物って図鑑になかったね、名前付けられていないのかな」

「海に出られる手段が無いとか?海獣がいて、危険だらけとか」

「ありそうだねえ」


 岩に突き刺さる異世界カジキ、すげぇ。本能的に身体強化を備えているのでしょうかね、そうであればこれは魔カジキですよね、ローカル的には剣先飛魚とか名前がついているんでしょうけど、いいです魔カジキで。


「焼く?煮る?とりあえず、生?」

「んーと、その前に岩からはずすにはどうしよ」

「少し弱まるのを待って、頭バッサリじゃだめ?それで、焼く?煮る?」

「食べる事しか頭にないんかい」

「だってぇ、お腹すいた」

「んー、まぁ煮るには入れ物がないし、生はなぁー。さてどうやって焼くかね」

「あれは?葉っぱに包んで土に埋めるの」

「葉っぱぁぁぁはぁぁぁ、あっあそこにあるね」


 ぐるりと周りを見渡すと、来る途中にあった林に雨傘になりそうな大きな葉(名前は知らないけど)を見つけた。指さしながら聞いてみる。


「砂に埋めてみる?時間かかっても良い」

「良いよぉ~、お肉ではすっごく柔らかくなったでしょ、お魚でも同じかなぁ」

「たぶんね、同じ感じに焼けると思うよ。さて薪、薪っと」


 食塩と卵白があれば塩竈になるけど、ねぇよそんなもん。

薪?それは簡単。その辺にあるかろうじて建っている家の柱をパキッとすれば、ズゴゴゴゴっと、崩れます。ほら薪ができますやん。魚を適当に捌いて、潮で洗って、葉で包んで、砂に埋めておいて、その上で薪を焚きます。所謂貧乏焼きでございます。


 適当な棒をグサッと砂に挿して、影の場所に印をつけておいてから(時計です)、焼く事一時間。焚き火の下に詰めておいた魚を取り出します。


「お~、さすが嫁!骨まで食べられるぅ」

「誰が嫁よ」


 まだ続いていたのか、その設定。


2. お次は住、そして衣


 さて、次は家の探索です。家探(いえさが)しです。そうは言っても所詮『村』。今どきの村なんてのは、数軒あれば村になる位なので、そんなに多くありません。少し小高い所に、丈夫だったような家があり、それを目当てに坂を登ってみました。潮風にあたっていたせいか、それなりに傷んではいるけれど、元が丈夫だったんでしょう、まだ住めそうな見た目を持つ家が建っていました。とは言え廃墟好きでもなければ、夜に来たくはないかなって感じ。


「見た目は、住めそうだね~」

「中をみなければわからないけど、片付ければなんとかなりそうかな」

「外で寝るよりましでしょ、たぶん。入ってみよ~」

「それもそうだね」


 すっかり崩れた門扉を通って中にはいると、家には入り口らしき両開きの扉があり、ひとまず埃を払うと、大人の目線位置にその昔見慣れた半透明の板が嵌っていた。


「水板っ!」「【ガラス】だ!」

「【ガラス】って何?これ水板だよ。村の礼拝堂にあったのより薄くて、平べったいけど、すっごぉ~い向こうが透けて見えるこの水板。いいねこれ。こんなのが家にあったら、中が明るくて住みやすそう」

「あ…そうだっけ?うん、水板(【ガラス】)ね」

「時々ミーちゃん言葉が出るよねぇ~、変なの」

「ミーちゃん言葉って何(いけない、いけない。驚いたりすると思わず【日本語】になってしまうな、気をつけないと。がんばれ第一言語)」

「お子ちゃま専用創作言葉」

「あっはっは、なるほど。まぁその通りだし(危なかったぁ)。それでは、おじゃましまーす」

「こんにちは~」


 家探(いえさが)しに続いて、今度は中に入って家探(やさが)しです。

入ると直ぐに広めの玄関ホールになっていました、洋館みたいな作りですね。外観は木造・モルタル何ですけどね。右側に八畳程度の多分応接間。応接室にしては狭いけど、村にある家にしては広いのではなかろうか、以前居た村長の家には、そもそもこんな専用部屋みたいな所はなかったし、それなりに裕福だったのではないだろうか。


 家具・調度類は一切無し。埃は沢山。窓を見ると、なんとまぁガラス…いやいや水板窓。内側の四角い水板窓を上に上げてから、外側の鎧戸を開ける形になっている。


「うーわ、全部水板窓だ。すっごいね、おっかね持ち。あ、足下気をつけてね」

「本当だねぇ~、全部水板窓だぁ。持って行きたいねぇ~」


 部屋の窓には、全部に水板が嵌っていた。半分は割れていたけど、お客を迎えるにはそれなりの調度が必要になるらしい。あるいは必要になるような人物が訪れていたのかもしれない。床に散らばった水板を、埃ごと旋風魔法で吹き集め、こすり合わせて粉々にしてからお外へポイ。ちょっとギリギリギャチャギャチャと耳障りな騒音が続いてやかましかったですけど、お掃除終了。えっ?『あんた風の精霊呼んでいないでしょ』ですか?嫌だなぁ、ジュンちゃんがいるじゃないですか、空間の一部を一気に広げたら真空になっただけですよ。どこかの大損掃除機みたいでしょ。


「お休み処ができたよ」

「早っ」


 次に左にあった部屋のドアを開けると、そこは食堂のような広さだった。シャンデリア用の取付金具こそなかったものの、数十人程度なら会食できそうな広さがあった。こちらも水板窓。すげぇ。なぜに食堂?って言うと、その奥に待機所のような部屋があり、さらにその奥が、おそらく厨房であったであろう部屋っぽかったからである。まさか寝室に竈を置くことは無かろう。洗い場もあったしね。とにかく海辺の寒村であったにしては結構豪華な作りになっているのであります。感想は一言『すげぇ』だけ。


「やりぃ、竈がある。煙突もしっかり残っているし、なんとかなりそう」

「あ~、お鍋が落ちてる」

「持って行きたいねぇ」

「できたらね」

「無理だねぇー、残念」


 さて、お二階でございます。こっちはいくつか小部屋が続いていました。

という事は、客間とか職務室とかですかね。応接間の上が一番広くて、装飾は少ないものの、がっしりとした作りの執務机がドーンと鎮座していました。持ち出せなかったんだろうね、大きすぎて。それ以外には一切の家具は無し。幸運なことに手持ちの地図より遥かに詳しい地図が飾ってありました。丁寧に外して頂戴する事にしました。地図って結構な財産なんじゃないですかね、まぁいいかあるだけ感謝。


「地図だ」

「今持っているのより詳しいね、載っていない村とか、隣の国境までも書かれているし有能ー」

「まだあるのかな村」

「どうだろ、ここと近いから同じに廃村になったかもしれないよ。あ!この中州の村でしょ?行こうとしている所」

「そう、商人さんの話だと、何十年か前にものすごい流行り病が起きて、纏めて廃村になってしまって、それ以来誰も寄り付かなくなって、とうとう帝国だったのに管理放棄地にされたらしい村ね」

「説明乙。なんでそこまで行くの」

「だって、ここまだ王国だよ。今も誰かくるよたぶん。だから、少し遠い所で『ほとぼり』だっけ?を冷まそうかと」

「あ、なるほど。ワタシも売られちゃったからなぁ~(涙目)」

「泣くな、泣くな。こっちは死にかけたし。相子よ相子。まぁそう言うわけで、たぶん誰も来ないであろう所が良くないかなーって」

「あぁ、そうかも、賛成」

「それじゃこっちは仕事用みたいだから、次は隣の家だね」


 隣と言っても、廊下の突き当り、一番奥のドアを開けると短い連絡廊下があって、こちらが住居になっている感じだった。


「小さな衣装部屋があるから、なんとなく寝室っぽいけど、何も無しか。ベッド位は残っているかと思ったけど、本当に何もないね、残念」

「こっちは水板窓じゃないね、流石に全部とはいかないよねぇ」

「そうだねぇ、良し!次の部屋」

「は~い」


 次の部屋は、ドアの一部に彩色があって、まんま女子仕様。期待していますぞ。


「あ、なんか花柄のかわいい箪笥がある」

「本当だ、引き出しには何があるかなぁ~、埃以外を希望しま~す」

「勇者か」

「あった!何故か知らないけど、小さいから子供服?しかも元がしっかりしているからか、無事。ていうかなぜ箪笥に、普通は衣装部屋とかじゃないかしら。まぁ、今のよりずっとましっていうか、今のがボロボロすぎなんだけど」

「うぅわっ、ひらひらだらけの服だ。一日でだめになりそう。おっ、こっちは下着だよ、ちょっと黄ばみが…ま、いいか。全て今よりまし。本気でまし」

「ひらひらは取っちゃえばいいよ、大きさは…着られる。できれば男性用を希望」

「男の子の部屋とかあるかな、あると良いね。次よ次」


 さらに次の部屋は『この扉を開くもの、世を救う勇者とならん』札付き。中二か!


「年齢的には期待はできる。できるけど、できるけど、何これ」

「見ーっけ、男の子用の服だ。袖はちょっと長いけど、丈は…丈も長いな。年上さんかぁ。少しまくれば着られる着られる。良かったぁ残っていてくれて。ありがとう神様に感謝しよう。本当に今着ているのはどうしようかと思っていたから、素直に嬉しい。使わせてもらおう。以前にお住まいの方へ、ありがたく頂戴しますね」

「エッちゃん、報告しまーす。履物も有りましたっ!中に布を詰めれば行けます」

「よくもまぁ、残っていたもんだねぇ。ほっと一息だね、お茶でも飲みたいところだね。これ以上今の服を着ていたら、本気で裸になっちゃう所だったよね。助かった」

「ねーぇ」


 袖から、襟から解れるわ、破けるわで穴だらけ。靴はそもそも靴底なんてペラペラの代物だったから、穴が開いていたし。心の底から大感謝。圧倒的大感謝。


「と言う事でお夕飯を希望です」 

「へいお待ち!温めますか」

「早っ、お昼のか。あっ!お願いします」

「少々お待ち下さい」

「どの位」

「竈を調べて、掃除して、運が良ければ火を入れるのに半刻(一時間)、直火だと焦げるから中火口で焼くとして、さらに四半時(30分)

「了解。あ、さっきの女子部屋にいるね」

「解った」


 その後は、納屋にあった盥状の桶に湯を張り、すんごい久しぶりにお風呂に入って、エッちゃんが手を入れてくれた奇麗な服に着替え、魔力の鍛錬をして、ほぼ気絶状態になっておやすみしたのは言うまでもない。


 お湯はどうしたか?エッちゃん魔力で出した水を、直火口で沸かしましたに決まっています。アンタ、魔法でできるでしょって思いますでしょ、でももう少しエッちゃんの魔力が向上して、あとちょっと魔法を上手に熟せるようになるまでは、しばらく大量消費技は控えているのです。なんでも魔法化して私がやってしまうと、エッちゃんが依存症になってしまいます。人の事は言え無かろうって?その通りです。


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