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(05-07)毒蜥蜴

(05-07)毒蜥蜴


 辺境村村娘ですおはようございます。只今、一番近い街に向かって歩いています。森であれがあったでしょ、G事件。こっちまで来る事はないと思うのですが、安全第一ですから、飛ぶのはやめておきました。街道とは言え、人通りなんぞ全くないので、どうでも良いのですが、急ぐわけでもありませんので、トテトテと。


 今の格好はと言えば、男物のシャツとズボン。靴は、前に使っていたのを残してくれてありました。上着は、長袖で何かの薄い革?で出来ているようです。誰のだろ。毛織物?あればいいのにね、ウールとかさ、暖かそうですよね。背嚢の蓋には、草原大兎の毛皮製外套が帯で留められています。お出かけ一式セットみたい。なぜか、樹皮下駄がぶら下がっています。予備の履物という事ですかね。


 後ろから見ると、背嚢が歩いているようにしか見えないに違い有りません。後ろ姿を想像すると、へんな笑いが漏れてしまいますね、背嚢が右へ左へ動いているんですよ、自分で見ても笑っちゃうと思います。


 神父さんから貰った簡易地図(本当に簡単な地図)によると、これから行く先には、使われなくなってしまった旧道に続く道と、街へ行く道との分岐点があるらしいです。


    辺境村方面               北

      |                西+東

      |休憩所(二日)          南

隣国方面 ←+────→ 隣町方面(七日)

      |湧水岩

      |

      |湿地帯(三日、魔獣注意)

      |

    - 旧道 ー

      |

    海辺村方面(七日)


 街から下る場合も、村から上る場合も、道行く人達は、その分岐点にある休憩所みたいな所で野宿するらしいです。なぜ休憩所になっているかと言うと、そこにある大岩からは、水が滝のように湧き出ているのだそうです。少し楽しみですね、誰かいますかね。旧道の先には、海辺の村があったらしいです。なんでも、流行病で廃村になったとか言っていました。


1. 分岐点の休憩所


 あれっ?おかしいですね、地図には二日って書かれているのですけど、その日の夕方前に着いてしまいました。少し先に本当に大きな岩がぽつんと草原の中に生えています。そうですね、大体三階建ての建物位で、それは本当に生えているとしか表現出来ません。遠くから見ると、岩しか見えませから。目印には丁度良いでしょうけど、なぜに草原のど真ん中。


 到着したら、見慣れた少女がいました、エッちゃんです。近くには見知らぬおっさんがいました。エッちゃんのお父さんではありませんね、誰でしょう。


 エッちゃんも気がついたようで、隣の人とお話をしてから、こちらに走って近づいてきました。


「ビーぢゃ~ん」

「あ、エッちゃん、元気してたぁー」


 まだ呑気なもんです。エッちゃんは、なんとなく悲壮感みたいな感じを醸し出していますけど。


「ビーぢゃ~ん」


 それしか言ってくれませんね、なんだろう。


「こんな所でどうしたの?何処へ行くの」


「ビーぢゃ~ん」


 おいおい、なんとなくおかしな感じがしてきましたね、何かあったのかな。


 そのエッちゃんを見ると、なんか首に輪を着けています。喉の所には、丸くて小さい黒色の宝石みたいなのがついていて、バンド部分は革かな?花のような模様が、ぐるりと一周、可愛げに刻まれていました。何だっけ?チョーカーとか言う装飾物


 そんな所へ先程のおっさんが近づいてきます。


「やぁ、こんばんは、君は誰だね?この子と知り合いみたいだけど」

「アタシは、エッちゃん家の隣に住んでいたミールです」

「住んでいた?どういう事かね」

「あぁ、いろいろあってですねぇ、街に行く所なんですよ」

「子供が?一人で?いろいろ?なんだねそれは、よければ話を聞くよ」


 失敗しましたかね、そうですよね、子供が一人でこんな所にいるわけが無いですね。しかも、大荷物背負っていますしね、そう言われれば、そうです。


「あ、ちょっと待って下さい、どこかに荷物を下ろします」

「ン?なら私の所に来ると良い」

「そうですか、わかりました」


 その間、エッちゃんは、ずーっと、エグエグ泣いていました。えーと、ティッシュ、ティッシュ、ハンカチ、無いですね。しかたがないので、パンツで…やめておこう。


「それで、何かあったのかい?」

「うーん、その前にどなたですか」

「おぅ、こりゃ済まなかったね、私はバイヤと言ってね、人材斡旋業を営んでいる。言ってみれば商人だな」


 人材斡旋業?怪しい。怪しくなって来た。エッちゃんは、まだ泣いています。


「そうですか、それでエッちゃんが泣き止まないんですけど、何かありました」

「あっあぁ、いやね、家の人から頼まれて、彼女を大店への奉公のために送っているところなのさ。ほっ、ほら、家から離れた所で、知り合いにあったから、急に寂しくなってしまったのだろうね。そっそうだ、彼女が付けている、飾り物。君にも似合うと思うんだけど、どうだね付けてみるかい」

「奉公?お仕事に行くってことですか」

「うん、そうだよ。仕事、住み込みだけどね。彼女の友達のようだから、これを君にもあげよう。どうだね」


 怪しい。


〔お~い、あの子が付けている輪っか。闇のが作った、隷呪の輪だぞぉ~〕


 ジュンちゃんが来ました。ありゃ、ただ事じゃなくなってきた。


〔隷呪?なんか怪しいね、奴隷とか隷属とかそう言うの?〕

〔正解。主人にね、危害を加えられなくする、闇の魔法がかかっているわね。ついでに言うと、あの程度の魔力なら、あんたには全然効かないし、あの子にも効かないはずなんだけどなぁ、どうしたんだろう〕

〔ほっほぅ、そう言う事なのね。それじゃ貰っておくか〕


「わーい、ありがとうございます。いいんですか、頂いちゃって」

「もちろんだよ、どれ付けてあげよう」


 ガチャッ!チョーカーのようでいて、まるっきり首輪じゃん。世の中には、こんな物騒なものがあるんだねぇ、ジュンちゃんが効かないと言ってくれたので、平気で付けていますけど、本当だ、なんか変な魔力を感じる。でも確かにこれじゃあ効果がないわ。魔力値が全然違う。しょぼい。


「ふはははっ、俺はついているぜ、上玉が只で手に入ったようなもんだ」

「上玉?アタシですか?上玉ってなんですか」

「あぁん、知らねぇのかよ。じゃぁ教えてやるよ、俺はな女衒なんだよ。こいつを買って、街の娼館に売りつけるのが商売よ。上玉ってのは結構いい女になりそうなやつのことだ、わかったか馬鹿ガキ」

「いい女になる?ありがとう。商館?大店だから何かのお店ですか」


 両手を頬に当てて「キャハッ!」という感じで、首を傾げ可愛く言ってみました。


「馬鹿かお前は、娼館だよ、娼館。男を相手に商売する奴だ。つっても知らねぇか」

「あぁ、男の人に、あーんな事や、こーんな事をしてあげる、お仕事ですね」

「なんだよ、知ってるのかよ、こまっしゃくれていやがんなぁ」

「でも、この首輪はなんか変な感じがしますよ、なんですか?これ」


 もう、安心しきっていませんか、この人。口調が突然変わりましたよ。


「あぁ、それはな、付けた奴に逆らえなくする魔道具ってんだ。主に危害を加えようとすると、全身に激痛が走るって代物よ」

「だ…騙したんですかっ」

「はっ!いまさら気づくとはな、上玉の上に馬鹿ときた。儲けもんだなこりゃ」

 

 馬鹿って言われたァー。


〔きゃはは、ばかだって、ば~かば~か。言ったのはおっさんで、私ではないぞ〕

〔こいつはぁー〕


「そんな物あるわけが無いです、嘘ですね。神父さんからも聞いたことがないです」

「はっ!なら、その槍を持って、俺様を突いてみろってんだよ。できねぇよ」


 すっくと立ち上がり、自信満々に大の字になりました。お腹を突っつけと言う事でしょうか、良いですか?突っついちゃいますよ。


「ほれ、さっさとやってみろ」

「判りました。そこまで言うなら、エイッ」

「それみろ、激痛が…なんで俺の腹からするんだ。何だこれ。腹に槍が生えていやがるじゃねぇか…どういう事だ」

「そりゃ、槍で刺してみろって言うから、刺したに決まっているじゃないですか」

「はっ?…そ…ん…な…」


 お腹から槍を引き抜こうとしたようですが、身体強化付きで刺したんだから、そうそう簡単に抜けませんて、おっさんは、そのままドサリと前に倒れました。あ、背中から槍が生えたようになっちゃった。


 さて、エッちゃんはと見ると、泣きつかれて寝ちゃっていました。良かった。


 私はと言えば、おっさんが倒れて動かなくなったら、途端に気持ちが悪くなりまして、そう言えば人を殺めるのは、初めてだなぁなどと思いながら、胃液さんこんにちは。

やばかった、夕飯を食べていたら、ドゲゲゲッと来る所だった。


2. おっさん


 ゔぁぁー、気持ち悪かったぁー。心的外傷にならないだろうな、迷惑な人だ。とりあえず、おっさんをなんとかしておこうということで、草むらに隠しました。まだ持ち物検査とかしていませんし、何があるか分かったもんじゃ無いですから。


 その時、入り口側からこちらへ来る馬車が。うっわーまだ血が、片付けてないー。

あわてて、浄化をしようとしましたが、遅かった。見つかった。


 あれっ?ひょっとして商人さん?


「おい、こりゃぁどうした事だ、何があった。血だらけじゃねぇか」

「商人さん、こんばんは」

「おぅ、君は砂金の嬢ちゃんじゃねぇか、何があった」

「えっとですねぇ、内緒にしておいてくれるなら…ですかね。そちらの助手?さんも

良いですか?」

「そうか、わかった。ただ事じゃ無いって事らしいな。お前もいいな」

「わかりました。うっわー、ひでぇ一体どうなっていやがるんだ」


 首をぶんぶん音がするくらい縦振りしていますね、もげちゃいますよ。


「どこから話ますかねぇ、そこで寝ているエッちゃんの事にしましょうか。起きなければ実際の所は分かりませんど」

「まぁ、良いだろう。それで、この惨状はなんだ」


 私とエッちゃんに嵌っている首輪というか、魔道具についてまず説明しました。それとおっさんが、女衒であり、エッちゃん家を騙して連れてきたらしいこと。それと、おっさんから槍が生えいている理由。


「ひでぇな、う~ん、ちょっと確認してくる」

「なんですかね」

「あぁ、たぶんだけど、女衒なんてのは、大抵どっかの組織に属しているもんだ。それを調べに行ったんだろう」


 おっさんを調べに行っていた商人さんが戻ってきて、言いました。


「やべぇ、首に蜥蜴の入れ墨があった。『毒蜥蜴』って言う札付き共の総元締めみたいな所に所属しているようだ。あそこは、暗殺者組合も掌握しているって言う噂があるんだよなぁ、変な奴らとかかわっちまったな」

「暗殺者組合、それって人殺しって事ですかね」

「そういう仕事を請け負う組織って事だな」

「あのおっさん帰らないと、お仲間が復讐に来たりしますか」

「あぁ、しつこいぞぉ、あぁ言う奴らは」

「目標、壊滅!」

「無理無理、何を言っているんだ、お前さんは」


 まぁ、そうですね。次に私が、なぜに大荷物を背負ってこんな所にいるかと言うお話をしました。


「そっちは、そっちで、こりゃまた災難だったなぁ」

「と言う事なんで、村に行っても何も話さないで下さいね。どうしても事情が知りたければ、礼拝堂の神父さんにお願いします」

「分かった。それであいつはどうするんだ」

「ちょっと埋葬して来ますね。その前に『洗浄』と『浄化』」


 エル君に穴を開けて貰っている間に、(ミッ)ちゃんに聞いてみます。


(ミッ)ちゃん、この輪っかなんとかなる?〕

〔これ?こんなのは簡単ですけれど、ちょっとお待ち下さいな、珍しいですわね、古の闇呪文が使われていますわね、首の方にも呪文を写す、少し強力なものですわよ〕

〔闇の呪文?〕

〔そうですよ、でも今では使われなくなりましたわねぇ、これ〕

〔そうかぁ、それでどうすれば良いの〕

〔首輪の石から、魔力を抜いて下さいな。解呪のイメージは、そうですね『隷呪』の文字がバラバラに爆散する感じですかしら〕

〔わかった。エイッ〕

〔それで、お出来になってしまうのね〕

〔変な子でしょ?面白いでしょ〕

〔ジュンちゃんはー、変な子はないんじゃない?〕

〔変な子以外何があるのよ、光の精霊も思っているわよ〕

〔おぉぅ、なんか輪っかの魔力がなくなった、何も感じなくなった〕

〔それで宜しくてよ、終わりましたわ。それでは、ごきげんよう〕

〔ありがとう。エッちゃんにもしてあげないと〕

〔あんた、だんだん万能になっていくわよねぇ、どこまで行くのかしらね〕

〔さぁ?ジュンちゃんも、教えてくれてありがとうね〕

〔まぁ、いいわ。じゃぁねぇ~〕


「どうした?」

「これね隷呪の首輪って言うんだって、そうおっさんが言っていたから解呪した」

「はっ?解呪って事は魔法なのか?君が使えるって事か?」

「そうだよ、さっきも使ったじゃん。エッちゃんのも外すから、見てみる」

「お、おぉ」

「エイッ」

「なんだそれ、それが魔法か?魔法なのか?それが」

「そうです。アタシの魔法です。という事で内密です」


 指を唇に当てる例の仕草をしてみました。ウィンク付きだぞ。


「そんなもん、人に言えるかっ!こりゃ、すげぇもん見ちまった」


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