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(11-02)モラッコ共和国(通商)

(11-02)モラッコ共和国(通商)


 えーと、モラッコ共和国で物資の入荷不足が深刻化しているそうです。主にゴームとカッフェ。産地は、南のモーリタ連合国。特殊な材料と好事物ですから、生活には直接響かないでしょうけど、交易物資が激減したらしいです。なぜですかね、あれほど好調だったのにね、あら不思議。モラッコ側からの交易船が減った結果、借りていた船倉が減少したため、魔導国では仕方がなく船を借り受け、荷積みして運んでくるしかなくなっているそうです。大変ですね。ただ、船倉の借賃は値が下がったため、魔導国の商人さんは、ニッコリしています。こんにちは辺境村村娘です、皆大変ですね。


1. モラッコ共和国内陸通商団カッフェ購入


 モラッコ共和国産業省交易局内陸通商団モーリタ方面隊(あの国は長い名前が好きなのかね)がいつものように収穫物の購入にやって来ました。


「何!売れないだと。いや、そこにあるではないか、収穫しているではないか。売れないとはどういう事だ」

「これらの収穫物は、既に売れ先が決まっておりまして、まもなく取引先の方が到着するはずです」

「今、まさに収穫している最中だと言うのに、売却先が既に決まっていると言う事か。そんな馬鹿な。収穫量を検討してから値決めをする習わしであったろう」

「そうです、半年前に決まっております。収穫後に取引するのが、昔からのやり方ではありますが、それに沿う必要があるわけではありませんので、先客を優先しただけでございますれば、お引き取り下さい」


 済みません、それ家のです。半年ほど前に5年先の分まで予約しちゃいました。


「は…半年?収穫量が解らない時期に契約?そんな馬鹿な。どこの商会だ」

「はい、魔導国のカッフェ商の方ですけど」

「ふっ、そんな情報を漏らして良いのかね。信用問題になりますぞ」

「いえ、先様からは別に構わないと言われていますから、大丈夫です」

「いや、しかしだな。手ぶらで帰る訳にはいかんのだ」

「それでしたら、国内販売分を少し回しましょうか、お値段は相談となりますが」

「その量では、我が国内分ですら回らないではないか。値段が3倍?暴利だろう」

「こちらとしては、国内を抑えねばなりませんので、当然ではありませんか」

「うーむ、これでは買入る事なぞできんな。仕方がない、次にするか」

「あ、次でしたら、5年後になります。5年契約ですので」

「なにぃ。そんな馬鹿な。そんな商売があってたまるか」

「いえ、ございます。現に進行しております。お引き取り下さい」


 ご苦労さまでした。


2. モラッコ共和国内陸通商団ゴーム購入


「何!売れないだと。いや、そこにあるではないか、収穫しているではないか。売れないとはどういう事だ」

「これらの収穫物は、行き先が半年前に決まっております。お引き取り下さい」


 同じ人が、同じ事を言っていますね。済みません、それも家のです。半年ほど前に5年先の分まで予約しちゃいました。


「これも半年?収穫量が解らない時期に契約?そんな馬鹿な。どこの商会だ」

「はい、魔導国のゴーム商の方ですけど」

「また、魔導国か。いや、しかしだな。手ぶらで帰る訳にはいかんのだ」

「それでしたら、国内販売分を少し回しましょうか、お値段は相談となりますが」

「うーむ、それでは買入る事なぞできんな。仕方がない、次にするか」

「あ、次でしたら、5年後になります。5年契約ですので」

「なにぃ。そんな馬鹿な。これも5年後だと、そんな商売があってたまるか」

「いえ、ございます。現に進行しております。お引き取り下さい」


 お疲れさまでした。


3. モラッコ共和国内陸通商団帰還(手ぶら)


「買い取りご苦…空荷ではないか、どうしのだ。事故か」

「いえ、それが奇妙な事にどこの農場も、品物はそこにあるのに既に売り切れておりまして、取引に応じられないの一点張りでございまして、まったく手に入れる事ができませんでした」

「どういうことだね」

「それがですね、半年前には既に全量予約が入っていたそうで、取引すらできない有り様でした。さらに、次の話しをしようとすると、5年先になると言われまして、どうにもなりませんでした」


 直ちに連絡会議招集。


「モーリタ方面隊の現状について話し合いたい」

「どうにもわかりませんな、収穫の半年前に対外分を全量予約なぞ、正気の沙汰ではありませんぞ」

「そうですな、収穫量を予想したとしても、半年前では不作・豊作の識別すらできません。どうなっているのでしょう」

「それが、5年先ですからな。訳がわかりません」


 はーい、どうにもなっていません。最近の収穫量を元に平均を出して、買い取り料金を決めてあるだけです。前回料金が比較的に高値だったらしいので、それで納得してくれました。第一回の取引については『オメー等アホだろ、嫌がらせみたいな抱き合わせ商売するんじゃねーよ』の意味が込められていますので、どうでも良いです。ただ、次の5年間はどうなるか判りません。できればその間にゴーム産業に活性化して貰いたいです。魔道具じゃない『男の魔道具1号・突貫一番』とか。タイヤ産業とか。カッフェもいろいろ飲み方が広がって嗜好品として飲まれるようになると嬉しいです。ただいま、せっせと領都の茶店に通い、あれこれ入れ知恵しております。アッセさんが。すると御兄弟が経営する帝都のお店に、自動的に知られる事になっております。


「魔導国の商会が入り込んでいるらしいのですが、外国籍の商隊なので止めようもなく、調べようがありません」

「商いの方法はどうなっているのだ、誰か調べがついた者はいないか」

「商い方法なのかどうか判りませんが『先物契約』という言葉を聞きましたな」

「『先物契約』か。今回の件と言葉からの推測なら、先物とは収穫前に収穫物の取引契約をしておくと言うことになるか」

「いや、豊作ならばまだしも、不作に陥った場合は、損害が発生しますでしょうに、それはどうするんですかね」

「何か方法があるのかも知れんが、わからんな。秘密裏に調査を進め、様子を見るしかないのではないか」

「ならば、モーリタ方面隊の表に出ていない者を行かせましょうか」

「そうだな、地理にも明るいだろうしな」

「仕方がありませんね」


4. モラッコ共和国通商船団


「なぁ、今回の我々の貨物。少なくないかね」

「それがですね、先団長。今回カッフェとゴームが、積まれていないんですよ」

「収穫量が少ないとか、あったのかね。でも船は埋まっていたよね」

「はい、賃貸契約分には魔導国の荷が積まれていますよ。中身はどうやらいつも我々が運んでいた量に匹敵する位のが」

「どういう事だろうね」

「賃貸倉庫分は、数量と重量だけですので、判りませんが、どうもカッフェの匂いがするらしいんですよね。私等には理由が判りませんけど」

「カッフェの匂い?袋は積んでいなかったよね」

「樽ですね。樽に僅かに匂いがあったそうです」

「ふーん。まぁ、私等は依頼分を交易すれば終わりだけどね」

「そうですね」

「おかしな事があるもんだね、イルガは何か知らないかね」


 イルガさんの所と言う事は船長室ですね。


「先団長も俺も、前回はハメハメカ経由でカッカウとバナナの荷積みをして、魔導国に行ったじゃないですか」

「あぁそうだったよね」

「でね、その間に来るはずだった、いつものカッフェとゴームが来ていないって言うか、買えなかったらしいんですよね。だから今回は積まれていないんですよ」

「買えなかった?」

「理由は知りませんけどね」

「あれ、でも魔導国の積荷からは、カッフェの匂いがするって言っていたけどな」

「なんですかね」

「上の方で何かあったかね」

「俺等には解りませんけどね」

「それもそうだよね」


5. 見本市のショウウィンドウ


 見本市会場では、市が開催されていなくても、新商品を形だけでも見せることができるショーウィンドウが設けられています。最近ここに一気に増えたのが、魔道具類。魔紋記録用の魔力乾板と魔力閃光燈(ストロボ)、録音再生機。それと『女の日の為に』あれの魔道具部がパンツ付きで展示されています。パンツの縫製はピクシさんの所に弟子入りしないと今のところは駄目らしいので、製品はまだ来ていないみたいです。そういえば、いつの間にかエッちゃんは、お墨付きを貰っていたっけ。レンズ類がない?残念、それはまだみたいです。要は、図にできる計算式を確立しないと駄目じゃん、あれ。小数点とかマイナスとかを確立するまでお預けでしょう、どうするんだろ。後は、ゴム靴を始めとするゴム製品。液化魔素製造装置は、巨大過ぎするので展示はできません。


「こりゃまた、一気に増えたもんだねぇ、あそこにあった機械類が並んでいるじゃないか。見たこともないのもあるね。はぁ?ゴーム靴。なんだいそれ」

「あら、マラウィさんでしたかしら。こんにちは」

「{あ、姫さんだ}。お久しぶりでございます。ご機嫌麗しゅうございます」

「マラウィさん、私はここでは『リア姉さん』です。畏まられては困ります」

「とは申されましても」

「『リア姉さん』です」

「あ、はい。ではリアさん」

「はい。どうですか、ミーちゃんの作った機械類が漸くここまで来ました。少し時間がかかりましたけど、なんとか販売できるまでにこぎつけましたよ」

「やっぱり壮観ですよね、あの子の機械。あ、これを共和国で製造販売する事はできますか」

「そうですよねぇ、私もまだ解明できていないものもありますけどね。製造権ですか、それはソバーニと相談して頂けますか」

「あっはっは、リアさんが解明できないって、そこまでですか」

「そうですよ、まだあるんです。空圧浮揚板(ホバーボード)とか通話機とか。あとは…あぁ、商業的にはあまり公言してはいけませんよね」

「ソバーニ殿?」

「はい、まもなく私の夫となる者です」

「それは、おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 会合日時を決めて、一旦お別れ。マラウィさんは、こっちにいる間の全権を任されているんだって。お仕事ガンバレ先団長。


「さて、それまでは買えるものを買っておくか、あの子を呼ぶにしろ品物がないとね、爺さん達には理解しがたいよねぇ。邪な事を考えないでくれると良いんだけどね、船なんか『我が国発案である、技術窃盗も甚だしい、返せ』とか言ってタダで手に入れようとしかねないし」


 ねぇー。たぶんしてくるよね、面倒だね。技術を盗んだとか言い出したら、技術の継承は、そもそも先達のを盗んでいるんじゃないかとか、船の事を言いだしたら、ドンガラ全部お返しするかな。後は、ゼルガニアの小早とかを引き合いに出して、発案と言うほどでもないでしょとか、なんとかならんかなー。


「先団長、何を考え込んでいるんですか」

「いやね、あの子の船。我が国(うち)に呼んだら、じいさんどもが難癖つけるんじゃないかと思ってさ」

「あぁ、ありえますよね。産業省の爺さん共は手に入れようとするでしょうね」

「どうなると思う」

「その前に、家族で逃げますね」

「それは解決策じゃないぞ」

「それ以外にありますか」

「あ…あー」

「思いつかないでしょ」


 力なく項垂れるマラウィさん。失礼な、そんな事はせんよ、ほんのちょっとしか。


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