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(11-01)深森の廃村(万能草)

(11-01)深森の廃村(万能草)


 あれ、年明けた?明けちゃった?数え方式だと歳取っちゃった?いやん、ババア。なんてね、まだ11だよ。満だと9になったばかりだよ。それでね、聞いて下さいよ乳がね、乳が増えないんですよ、何故ですか。ちょっと位増えてくれても良いじゃないですか。いや、4個になれとかじゃないですよ、寸法の方ですけどね、増える様子が見えてこないんです。まだ早いですかね、もう少し様子を見ろですか、希望はありますかね。モーリタから買ってきたナツメヤシの苗木は、植えるのは春ですよね、冬真っ盛りじゃなぁ、まずそうだし。辺境村村娘です。新年明けましておめでとう御座います。


1. 湖水の魔力


 本年最初の実験でございます。モーリタで採水して来ました、名もなき湖(仮称:長鼻湖)の魔力水を蒸留してみます。蒸留しても含有魔力が変わらなければ、そのまま万能草水にする予定。それでは、開始。


「そう言えばさ、あの鑑定眼鏡。新しいのも薬剤だけだよね。薬剤に関係した材料はどうなんだろう、使って見たことないよね」

「うっかりしていたさね。ちょっと見てみるさね」

「『うっかり』って、既に認知しょ『ふんっ!』…ったぁー」

「う~ん、ダメそうさね。前のと仕組みは同じさね」

「そりゃ、残念」

「もう、ミーちゃん、すぐ遊ぶ。そうなる事が判っているのに」

「お約束ってもんですー」

「あはははは。前からこうなんですか」

「そうだよ~。はい、そろそろお仕事だよ~」


 いや、蒸留は温度が上がるまで暇なんだわ。中身は普通ただの水じゃないでしょ、普通にアルコール炎でないといかんのです、魔法だと影響が出る場合があって、それをいちいち調べていられないってだけなんですけどね、水の温度を上げるのには時間がかかるのよね。昔は蝋燭だったんだから、今はまだマシですけど。


「あれ、減っちゃうね。水と魔力が分離しているね、これは」

「ふむ、そうか。これミーよ、普通の水に魔力を込めたらどうなるさね」

「ああ、一時的に長鼻湖の湖水位にはなったよ。でもすぐ無くなるの」


 そういえば、アッセさんはこの先どうするのかね。歩く屍じゃまずかろうしね。


「そうだ、アッセさん、製薬は覚えないの。早くしないと死ん『ふんっ!』」

「きゃははははは」

「え、ちゃんと進んでいますよ。今は初級の上位かな」

「あ、そうなの」

「さて、長鼻湖の水がなぜここまで魔力を取り込めるのか、なぜだ」

「これミーよ、こっちの残りが普通のとは違うさね」

「あ、残留物が結構あるね、湧水よりも多いよね。けど何かは判らないか、残念」

「そうさね」


 魔力視でみても、魔力の残滓が確認出来るだけでした。予想としては、微生物みたいな物なんだけど、仮にそうだとして、湖水の魔力値が高いのは、微生物が含んだ魔力と水の魔力が一体化して見えているって事かな。微生物を意識して魔力を分離すれば…だめだ、こりゃ判らん。あれっ?微生物ならそもそも鞄に入るってどういうこったね、精霊の理みたいな物をすり抜けているって事かなぁ、ますます判らんですね。


 湖水の蒸留結果は、残念でした。ひとまず濾した湖水は用意してみました。ほら、婆ちゃんは、長い事井戸水で上級を作ってきた、冗談みたいな人ですから、何かできるかなって事で。


2. 万能草の等級


 薬草類はそのまま薬剤にもなるからなのか、鑑定対象なんですよ。草のままだと大抵下級なので、意味はないですけど。


「うっそー、なにこれ。中級薬草なんだ。魔力も多いね」

「そうさね、なんと中級万能草さね。こんなのは初めてさね」

「生きているうちに見られてよかったねぇー(回避)っと」

「チッ!外したさね」

「真面目な実験中とは思えませんね」

「「ちゃんとした実験だよ(さね)」」


 すげえですよ、薬草ってのは粉以前だと下級と表示されます。万能水にして魔力を込めると、それに比例して等級が上がるんですけど、頑張っても液体では中級です。素の草が中級と表示されるのは、とんでもないです。形とかは変わりませんので判りませんけど、こりゃ別物ですね。薬研で磨っても中級のままでした。擦り終わって水薬にしながら魔力を込めると、なかなか飽和しません。とうとう上級になってしまいました。今まで見たことがありません、万能水が上級になった事はないはずです。煮詰めれば、さらに級位は上がるんで、婆ちゃんなんか特級にできますけどね。


「なんと、上級万能草水さね。これは驚いたさね」


3. 安眠草もか


 万能草が上級になったでしょ、安眠草はどうかと調べますとね、葉だと中級。薬研で擦ってみても中級。そのまま水薬を作りますと、今度は魔力を込めないのに上級。魔導国の安眠草で、魔力注入量に適量範囲がある事が判りましたので、これも同じだと困りますでしょ、だから魔力注入はしていません。でも上級。


「なんと、これも上級安眠草水さね。何度驚かされるか解らないさね」


 試しに一部に魔力を加えてみましたら、こちらは不思議な事に上級のまま。見えない所で変化はあったのかも知れませんが、精霊さんにも判りませんでした。


4. 白喇叭(らっぱ)


 白喇叭草は、根を薬研で磨ると、麻痺毒となる汁が出ます。取り扱い注意なので、露出した腕から先に魔力を纏っての作業となります。ゴム手袋みたいなのをゴームで作成して、魔力鎧(まりょくがい)を作れるか試して貰ったら、今では婆ちゃんも、薄膜を纏える様になりました。ほんでもって、これまた上級。調合したらどうなるかね、楽しみです。


4. 調薬してみよう


 万能草はいつもの[1]。安眠草は[2][4][6]の順で、白喇叭の根が[7][5][3]。普通は[1][4][5]の割合で良いのだそうだけど、いきなり上級ばかりなので、どうなるか解らないと言う事で、少し変えてみました。安眠草へは、魔力を上中下と3段階変化を付けてみて、白喇叭草は飽和魔力を加えてみました。それで、どうなったかと言うとですね。


 万能草[1]、安眠草は[6]の中量、白喇叭草[3]の割合でした。既成と違うのは、たぶんですけど、初期品質の違いではないかと思われます。


 さて、婆ちゃんの結果は。


 蒸留水 超特級 (瀕死レベル。超速石化)

 湖水  超超特級(即死レベル。瞬時石化)


 ちょっと、待てや。鑑定眼鏡の等級明示帯が全部点灯してしまいました。なんじゃこりゃぁー。


 ちなみにですね、『石化』と言っていますけど、石になるわけではありません。どちらかと言えば、モーリタの『硬直玉』の方が正確です。当てられると、体が硬直して石のようになり動けなくなると言う事です。毒ですから、当てられた所からだんだんと広がり、効能が高いものほど最後には体中が硬直して、死に至ると言う代物。怖い毒であることには代わりありませんが。モーリタの長鼻のように弾丸状になって打ち込まれる場合は、対処として『玉を抜く』です。蛇のように噛まれた場合は、その他の蛇毒と同様の対処となります。


「何この危険物」

「あっはっはっは。超超特級さね。こりゃ、まいったさね」


 動物実験の結果は、瞬時石化で即死しました。普通は4半日位掛けて石化するんですよ。それが即死。兎さん一瞬で置物になってしまいました。今のところ防げないので、ある意味優しいですけどね。


 次は不肖私が、安眠草へ愛を込めて魔力をお届けしてみました。飽和濃度でございます。万能草[1]、安眠草は[4]の飽和、白喇叭草[5]の通常配合。


 蒸留水 超超特級(即死レベル。瞬時石化)

 湖水  超超特級(消滅レベル。瞬時粉化)測定不可。


 わっはっはっは。笑うしか無いです。


「この安眠草は飽和しても大丈夫なんだ」

「こりゃまた、一瞬で粉になっちまったさね」

「「…超劇薬」」


 とは言えですね、『粉化』?何だそれ。石化というか、硬直ならまだ判りますよね、粉化…何それ。瞬時に細胞のタンパク質とかが分解されたって事?うっそーん。これは、今の学術レベルだと解明不可になりそうです。私?もちろん解りません。だって、元は只の麻痺毒ですよ、それで分解ってなにそれでしょうよ。細胞とかタンパク質の結合が麻痺しました、なんて変な事言わないよね。


 そうしましたらですね。


「あっ!この鑑定眼鏡成長している」

「えっ!本当さね。帯が増えているさね。こりゃたまげたさね」

「わっ、本当だ。私のも増えている・・・・へぇ、闇の子のお仕事みたいだよ」

「面白いですね、これ。僕のも成長していますよ」

「あぁ、そうなんだ。家の子は寝ているからわからんね。増えているからいいか」


 再度測定


 湖水  極超特級(消滅レベル。瞬時粉化)


 初中上特の4段階に加え、超、超々、極超の全7段階に増えました。成長するとは知らんかった。


 それで、エッちゃん、アッセさん共に


 蒸留水 特級 (壊死レベル。順次石化)

 湖水  超特級(瀕死レベル。超速石化)


 あははは。なんじゃ、この草と湖水は。

 禁止だ!禁止!製造禁止。

 秘匿、マル秘、社外秘。


5. 増やしてみよう


 湖水ですが試しましたよ、もちろんです。ガンバレ兎。日を置いても大丈夫でしたので、水杯(コップ)4半分ほど。クラっときましたが、生きています。婆ちゃんは、少し酔った感じがしたそうですけど、魔力が一時的に高まった以外は、一応何事もなく生きています。エッちゃんとアッセさんは、暫く動けませんでした。体格とか魔力総量によるみたいですが、人には危険物ですねこれ。飲めば酔って魔力が増加するんです。酔拳みたい。


「あぁ、やっと動けるようになった。魔力酔って事ですか、すごいですね」

「その間ね、体内魔力が半分増加していたね」

「でも、動けないんじゃ意味ないですよね」

「毎日飲めば、長鼻のようになるかもしれない」

「常軌を逸した人になる気はありません」

「まぁ、普通に禁止だわね」

「そうだね~。デロ~ッて、グデ~ッってなったもん」


 湖水を増やすことは出来るんでしょうか。ろ過した湧水と蒸留水に、半々で混ぜて何日か置いてみました。やべぇです。ほんの少しですが、湧水の魔力が増えていました。増加は止まりましたので、際限なくとは行かないようです。蒸留水は変わりませんでした。ミネラル類とかの成分が関係するんでしょうかね、ご飯ですかね。


「魔力が増えているよね」

「増えていますね」

「本当だね~」

「こりゃまた、たまげたさね。酒みたいに見えない何かがいる可能性があるさね」


 栽培の方ですが、第一回移植分は枯れました。たぶん魔力が足りていません。そりゃ、あの湖の脇に生えていた訳ですからね、森の土でも補えませんでした。


 次に、人造湖水で水やりをして、根が腐らない程度に続けてみましたら、なんとか根付きました。それなりに育っております。それなりって言うのは、少し保持魔力が少ないんですよ、純粋な湖水じゃありませんからね、仕方がないと思います。


 ならばと、湧水をろ過しながら引き込み、底には滲み出すように布で栓をした排水口を開け、長鼻湖を模して池を作ってみまして、そこに湖水を投入。溢れ出るでもなし、留まりすぎて腐る事もなしという環境でどうなるか試験開始。他に人がいませんから良いですけど、『深森の廃村』が『危険な廃村』になりかけています。


 要るよね、顕微鏡。手製の顕微鏡程度でわかるかな。さて、構造…どうだっけ。


6. 生き残れ魔兎


 そう言えば婆ちゃんは、昔毒蛇から解毒薬を作れるとは言っていましたが、作った所は見ていませんね、何故だろう。もしかして、石化毒も同じやり方で解毒できるんじゃないのかね。


「婆ちゃん、蛇毒を毒消しするのは教えて貰ったっけ?本にもなかったような」

「あぁ、あれはね、ちと特殊な機械が必要だ…あ゛ー!」


 びっくりしたァー。


「何、どうしたの」

「お前さんの砂糖製造魔法があるさね!あれと同じさね」

「砂糖?あぁ、遠心分離?」

「そうさね、昔作るのが難しくて、帝国技術院ですら2台目ができなかったさね。だからすっかり駄目だと思い込んでしまって、忘れていたさね」

「今じゃ、足踏み式とは言え、そこいら中に出回っているけど」

「そうじゃないさね、作り方は、蛇の血液に骨粉を混ぜて、加熱しながら回転分離機で分けるのさね。残った液体が蛇毒消しとなるさね」

「そんな方法があるんだ。加熱具合が難しいとかかな」

「そのとおりさね、低い温度でも沸かしすぎもだめさね。適温が必要で、それを長時間続けないと駄目なのさね」

「なるほど、『石化毒』も似たようなものっぽいからできないかなって思ったんだけどね、どうかね」

「そう言われると、症状の進行が似ているさね。そうか、毒消しができるかも知れないさね」


 ひとまずパタパタ原動機と減速歯車で、長時間に対応させた遠心分離機を作りまして、その全体を二重ガラスドームで覆って、今回は未使用ですが、間の空気を抜ける様にしておきます。下から焜炉の魔石で加熱します。定温にするのは、リトちゃんが楽勝でできます。え?血清にしては蛇の骨粉を混合するとか方法が違うですか、大丈夫ですここ世界が違います。そもそもアタシは、そんな方法すら知りませんので、婆ちゃん優先に決まっています。


「なんと、回転分離機ができちまったさね」

「定温加熱型にしてみたけど、これでいいの」

「これさね、上澄み液を作るさね」

「はいよ」


 どうするかと言うと、死なないように少しずつ石化毒を注入して、ガンバレ魔兎します。採血して沈殿したら、上澄みの液体を採取して、回転分離機に掛けて暫くすると血清みたいなのが取れました。さてもう一働きするか、魔兎が。


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