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(10-X5)モラッコ共和国(帰還)

(10-X5)モラッコ共和国(帰還)


 マラウィさんの具申と、事務局長の発案で、管理放棄地の近隣へ調査に出ていたところの『国防省情報局諜報部深部調査隊』が戻ってきました。この国ってば長い名前が好きなんでしょうか、長くて覚えられません。覚える気もないですけどね、辺境村村娘です、皆様お疲れ様でした。


1. 調査隊帰還


 海が荒れる前の年内最終便で調査隊が帰還。ゼルガニア方面本隊は、年明けの帰還予定だそうな。なぜか城が崩れる事件が発生したらしく、『調査継続』の報告をするため先発隊が帰還しました。あの国で一体何が起きたんでしょうね。


「当初の話し通りでありまして、我々が到着した時には、既に教会本部たる大聖堂はなく、周辺街区も消えておりました。大聖堂跡地における調査は、報告書の通りです。真教国は以上です」

「うむ、ご苦労であった。そうか、やはり大教皇以下、ほぼ全ての枢機卿までが亡くなっていたわけだな。マラウィ君の報告とも一致するな。彼女は、街区が消えたのは一瞬と言っていたがな、すさまじいな。魔導国の方は何か特筆すべき事はあったかね」


 真教国調査隊が下がり、魔導国調査隊と入れ替わり。


「はっ、魔導国はその真教国からの難民を押し止めるのが精一杯だったようですが、なんとか回復し平静を取り戻しておりました。調査中、近衛師団が何やら選抜競技会のようなものを開催いしたしまして、内10名がバルトニア方面へ移動した事が確認されております。その後は8名が戻り、暫くして第一王子と護衛と思われる2名が戻りました。ただ、この3名は見たこともない2輪の乗り物に乗っておりまして、凱旋行進と言う訳でもなく、馬の襲歩程の速度で移動していた為、あっという間に王城区画へ入ってしまい、詳細は調べられませんでした」

「襲歩速度で移動する『2輪の乗り物』か、詳細は判らんわけだな」

「局長、それについてはお話が…」


 あ、ナナシさんだ。てか、襲歩速度?街中を?何をしているんですかね。秘匿の為だとしても危ないですよねぇ。


「なんだ、クラッタ君。バルトニアで何かあったのか。わかった代わってくれ」


 クラッタって言うのか。


「はっ、自分はバルトニアの東部辺境伯領とその隣である、対象が住まう管理放棄地を調査しておりました」

「ふむ、これか。何っ!発見された?あれが見つけられてしまったのか。君の腕は知っているが、あれが発見されたのか」

 ・

 ・「奴が、あれを使っていて発見された?」

 ・「おい、おい。本当かよ。あれを見つけるってどういう事だ」

 ・「ヒソヒソ」

 ・「だよな、あいつに限って使用を誤るなんて事はなかろうし」

 ・「ザワザワ」

 ・

「まぁ、その通りです。それで、彼女等の住まう所に案内されまして、色々と話しを聞いて来まして、詳細は報告書にありますが、別の『凄まじさ』を感じました。それでですね、土産と称して渡されたのがこちらです」

「これは設計図となっているが、中身はどうなっている」

「いえ、技術部親展となっておりますので、流石に」

「そうか、交易と技術の者を呼んでくれ。クラッタ君以外は休んでくれ、ご苦労だった。ゼルガニアの件は了解した。本体の報告を待つこととしよう」

「え、私は?」

「君の話しが一番面白…重要そうだからな、全員で聞こうではないか」

「今、面白そうと言いかけたような」

「気の所為だ」


 暫くして、テクノス技術局長となぜかマラウィさんが呼び出されまして、国防省(館は同じ)へ。


「調査局長、なぜ私ですか」

「君とクラッタ君は、対象の居住場所に泊まったと聞いたぞ」

「「まぁ、そうですけど」」

「そうだ、テクノス殿。これを開いてくれないか。一応『技術部親展』だからな」

「解った。別に構わんとは思うが、律儀だな」

「相手が誰であれ、礼儀と言うのは必要だぞ」

「うん?これはなんだ。マラウィ君、これ判るかね、まるで捩れ棍棒だな」

「あ、これですよ。単気筒機関の連接棒。また大盤振る舞いする子だねぇ」

「君が話していた、あれか。最重要部品ではないか」

「そうですね」


 さほどでも無いですよ、あれがないと連結できませんけどね。


「さて、『2輪の乗り物』で中断してしまっていたな。クラッタ君、何だね」

「えとですね、『魔導蒸気機関Ⅱ型搭載2輪車』の事だと思います。あれは面白かったですよ、2輪だけで移動できるんですよ」

「ちょっと待て『魔導蒸気機関Ⅱ型』?Ⅱ型なのか、大きさは、出力は」

「大きさですか、予備機とか言うのだと、大体これくらいでしたかね」


 示したのは4[㍑]バケツ2つ位ですかね、うん、パタパタの動力部は全部でその位ですね、パタパタは。


「乗っていたと言う事だったから、乗り物だよな」

「そうですね、乗り方を教えてもらって、なんとか走れましたけど。いや実に面白い乗り物でして、最高速でも駈歩(かけあし)位でしたけどね、それが愛嬌のある音を立てて走るんですよ、馬の様に揺れもしないし、丸一日駈歩(かけあし)で走れるらしいです」

「1日中駈歩(かけあし)なのか。それは私も見てみたいものだな」

「聞いた所では、同じ形式のまま、大きさは違いますけど、2輪から船まで対応できるようになったんだそうです。Ⅰ型では船だけだったらしいですけどね」

「進展がすさまじいな。確かにⅠ型では小型にし辛いか」


 だって、王子様が移動するには必要だったんだもん。


「その船は見てきたかね」

「格納庫でしたっけ、入れてもらいましてね、一通り見させて貰えました」

「面白かっただろ」

「動かす事は、できませんでしたけどね。蒸気機関ですか、そこの執務机の4卓分くらいなのが連結されていて、壮観でしたよ。外装が一枚鉄板てのが凄いなと」

「ふむ、機関の大きさは予想通りと言う事で良さそうだな」


 さっきから一人だけお仕事している人がいるような気がしますが。


「あれね、外装が一枚鉄板であるはずないよね。でも一枚に見えるんだよね、不思議な船体だったよね」

「そうですね、『不思議』まさにそれですね。訳が分からないですもんね」

「あっはっはっは。そうだよねぇ」

「そうそう『カッフェさん』て呼ばれていたんですけど、なんですか」

「ああ、最初に出会ったのが見本市で、カッフェ売りしていたんだよ、私」

「なるほど。それでですね、カッフェに『生乳脂(クリーム)』を入れる飲み方があるんですよ。甘さが程よくなってですね、なかなかいけましたよ」

「『生乳脂(クリーム)』を入れるのかい、そうか、甘からず薄まらずと言う事か、面白い飲み方を考えるもんだねぇ。あっ、あれは見たかい、遠隔通話機」

「ああ、教えては貰えました。作動する所は駄目でしたけど。聞けば、距離に関係なく通話できるらしいですよ、あれ。あれがあれば便利ですよね」

「だよねぇ、流石に仕組みは教えて貰えなかったけどね」

「『割と簡単に作れる』とは言っていましたけどね、たぶんあの子の『簡単』は、我々には計れませんよね」

「そうそう、とんでも無いよね」

「『遠隔通話機』ぃー。なんだねそれは」

「文字通りですよ、離れた所と通話出来るんです」

「何ぃー。そんなものまであるのか」

「あ、船に搭載されていると言う事かね?大型なのか、それは」

「いや、手持ちのものがありましたよ。小型だから『割と簡単に作れる』なんでしょうけどね、簡易型なのでまだ欠点があって、広めることも売り物にもできないと言っていました。報告書にもありますけど、それを応用した『魔導放送』なるものが東部と南部の辺境伯領で行われておりまして、結構いい値がしましたけど、買ってきました。あ、経費で落ちますかね、これですけど」


 聞こえますね、やっぱり距離に関係無さそうですね。とんでもないな、魔素さん。


「『今日の辺境伯家』なんだそれは」

 ・

 ・ 受信中

 ・

「屋敷内で起きたことを面白おかしく流していると言う事ですか。なるほど、娯楽の一環って事ですかね」

 ・

 ・ 『駄メイドのリズ。本日の出来事』

 ・

「ぶはははは、これは面白い。人の失敗は聞くだけなら面白いものですな」

 ・

 ・ 『それでは宣伝のお時間で~す』

 ・

 『マチノ鍛治店、本日コロ軸受特売中。貴方の馬車に付けると馬が喜ぶ、コロ軸受。4個買ったら1個はオマケ。オマケの1個だけでは売れませーん。チャンチャン』


「あれを特売?なんだとぉーっ!誰か、誰か行って買ってきてくれ」

「局長、技術局長。落ち着いて。海の向こうの魔導国のさらに向こうですよ」

「そ、そうだな。いや、すまん」

「そうか、あちらでは既に小売をしていると言う事か」

「あ、だから教えてくれたのか。秘匿技術を流すわけはないよな」

「いや、あの子の事ですからねぇ、よほどの物じゃ無い限りは、秘匿はしないんじゃないですかね」

「そうですね『秘匿なんてせずに許可制で公開し合えば、もっと文明が進むかもしれないのになあ』とかですね『言ってくれれば知っている限りのお話はする』とか『船の技術交換をしてくれるなら、相応に』とか言っていましたしね、見学とは言えほぼ全部を見せてくれましたし」

「私等なんか、泊まりで『自由にしてくれ』だったよ。技術の事はほとんど分からなかったけどね、あの格納庫さ、天井が全部ギャラス管に入った光球の魔道具だったんだけど、どうだった」

「全部でしたよね、あの照明。夜だったのにまるで昼間と同じで、入った時になんやら操作したと思ったら、真っ暗だったのにいきなり目の前に船でしたからね、ありゃ驚きましたわ」


 まぁ、狡の産物が多いですからね、秘匿?したら罰が当たるよね、神様の。…うん、罰が当たるんじゃないかな、多分。


「そうそう。それとさ、なんと言っても『水』だよね。蛇口?をひねると水が飲めるんだよね、あれもすごかった」

「生水ですからね、直接そのまま飲めるんだから、それだけでも凄まじい」

「だよね、それを使った酒だよ酒。さらに酒から作った酒。とんでもないよ」

「あれは、良い。口当たりが良くて『仕事中に飲み過ぎ』とか止められましたし」

「ぶはははは、やっぱりか。そうなんだよ、良すぎるんだよ。止まらないんだよ」

「後は天火と焜炉ですかね。船の中にもありましたね、お湯どころか肉は焼けるわ、火は出ないわ、あっという間に調理ができる、とんでも道具」

「それと、用足器かね。事後を水で流すって、なんだいあれ」

「あれは欲しいですよね。あの帝国で丸の1金だそうですよ。あぁそうそう、家庭用と言えばですね、掃除機と洗濯機ってのがありましたよ」

「うちらの時にはまだなかったね、なんだいそれ」

「いや、そのままですよ。部屋の掃除が出来る魔道具と、洗い物をしてくれる魔道具ですよ」

「聞いているとだな、そこは異世界じゃないのか。君たちは異世界に行っていたって事はないか」

「「はっはっは。そうですね、まさに異世界。言い得て妙ですね」」

「『秘匿なんてせず』か、私等のやっている事は、その子からどう見えるんだろうな。お子様のお遊びみたいなものなのだろうか」

「そんな事はないでしょうけど『秘匿』の考え方が違いますよね、それは確かではないですか」

「なるほどなぁ」

 

 ・ 『それでは宣伝のお時間で~す』

 ・

 『あ~、もうもう。鬱陶しいわねぇ』

 『あら、貴女まだ使っていないの』

 『まだって?何かあるの』

 『そんな貴女にこれ『女の日の為に』』


 あ、『女の魔道具1号』じゃなくなったのね。あれっ?これジゼさんと、シャールさんじゃん。ちょっとノイズが…あぁ、録音か。


 『なにそれ』

 『鬱陶しさよさようなら、これを付けているだけで開放されるのよ』

 『うそ、夜も』

 『夜も、多い日だってご安心あれ。『女の日の為に』サラッと感が続くのよ』

 『どこのお店で売ってるの』

 『露天通り入口の”蛍堂”よ』

 『『ほ~た~る~ど~お~♪』』


 うはは、素人感丸出し。まぁ、そんなもんか。お芝居CMとか良く考えましたね。


「何ぃー!そんな物があるのかい、ちょっと行ってくる」

「マラウィ君、落ち着け。海の向こうの魔導国のさらに向こうだぞ」

「そ、そうですね。いや、取り乱しました。うん?お姫様も彼処に居たんだから、魔導国でも同じものがあるのかな、作れるならばだけど。今度見てくるか」

「そうか、特別予算を組んで購入してみるか」

「良いですね、きっと驚きますよ」

「なんか凄まじそうだよな」

「あ、そうだ。『安全に受け入れてくれるなら』という条件で、手紙で知らせば来てくれるそうですよ」

「「それは早く言え」」


2. 安全に勧誘


「クラッタさん、安全て?」

「ああ、ほら彼女たちは、取得年齢に達しているとはいえ、所属がどこにもないじゃないですか」

「そうか、そうだよね。法的には身寄りのない浮浪児って事?」

「それです。本人達も自分で言っていましたから。一緒の男子なんか、戦役時に抜け出したものだから、死体扱いで『歩く屍』とか揶揄されてました」

「あぁ、あの子か。なるほど、あの子達が浮浪児扱いとなると、良からぬ事を画策する輩も出るということか」


 はーい、その通りです。もうね、すぐ囲おうとしたり、潰そうとしたりするんですよ、面倒だったらありゃしない。


「身寄りのない浮浪児…そうだ『市民権』を与えるとかすれば、ここに居着いてくれるんじゃないか」

「イッタミ局長!それを『良からぬ事』って言うんですよ。この国を潰す気ですか、そんなのを強引に発行したら確実に消えますよ」

「なぜだ、市民権だぞ。正式な国民だぞ。国家の保証があるんだぞ」

「たかが一千万人程度の、『国家の保証』でしょ。なぜ管理放棄地に居住していると思っているんですか、必要ないからですよ。その気なら、とうの昔に辺境伯を通じて帝国のを取っていますって。魔導国だって、貴族位とかで勧誘しているでしょうし、変な気は起こさないでくださいね。あの子達を呼ぶなら、政府議会にもくれぐれも宜しく伝えて下さいね」


 人権とか生命の保証すらない国家保証なんて必要ないです。魔導国の現王様なんか、挨拶代わりですからね、困った方だ。


「そうですね、私もそう思います。策を講じて囲おうなどしたら、潰されますよこの程度の国。要は今の所何処にも属さず、属す気もないと言うだけだと思われます。その気になれば、国を起こせますよあの3人」


 それが一番平和そうだしね、建国する気は全然ないですけど。


「戦力はどうだね、戦力がなければどうにもならないだろう」

「近隣の国が動員できるのは、精々3~5万。聞けば、王国、帝国、真教国から派兵された各々千人規模の軍団を撃退したそうじゃないですか、精鋭千も徴兵5万も変わりません。合戦場に展開したその日のうちに、壊滅させられます」

「空からあの鎮静薬を撒かれたり、魔法を撃たれたら、その場で壊滅するね」


 はいっ、はいっ!ゼルガニアの侵略先発隊も入れて下さい。まぁ、あの世に行かれたのは6人だけですけど。海で沈めた分は…さぁ?解りません。


「それと、局長。狼の事忘れていませんよね」

「調査局長。魔爪の魔狼と幻惑の魔狼、あそこで飼われているんですけど」

「は?狼って魔狼の事だったのか。魔獣を懐柔していると言う事か」

「「その通りです」」

「「どうやって呼べば良いのだ」」

「「ご安全に」」


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