(10-X3)モラッコ共和国(進化)
(10-X3)モラッコ共和国(進化)
3通ものお手紙を送るとまさか一度に纏める訳にはいかず、定期便事に載せる事になりますので、3通が全部届くまでに結構な時間がかかります。お姉さんが卒業してゴタゴタしている辺りで漸く全部が届いたみたいですよ、気が長い事で。ではマラウィさん宜しくぅ。
1. お返事が来ました
「おーい、返事を持ってきたよ。3通あるけど」
「待ってました!船団長ありがとう御座います」
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・ 回答一.拝読中…暫くお待ち下さい。
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「ねえ、課長。これ精霊魔法の極意っぽく見えるんですけど」
「そう見えるよなぁ。これ、魔法関係の奴らに見せてやれ」
「あれ、その手紙と俺の、全部字面が全く同じですね。手書き?すごいなこれ」
「ん?そういや、筆液なのかこれ。まさかな、これも新技術だったりしないよな」
「あり得ますね。後で調査してもらいましょう」
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・ 回答二.精読中…暫くお待ち下さい。
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「ああ、コロ軸受って、コロかっ!それを枠に収めたのか!螺子棒?そんな物もあるのか、至急製造部の奴を連れて来てくれ!」
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・ 回答三.黙読中…暫くお待ち下さい。
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「ギャラス魔導管か上手いこと名を付けたもんだな。おいっ!魔道具課に知らせろ!」
「『燃焼補助の存在』ってなんでしょうね」
「分からん。分からんが、とてつもなく重要な気がするな。全員で考えるか?」
「そうですね、そうしましょう」
「主任、この復水器の絵ですけど。えっらい緻密ですよね、なんですかねこれ」
「マラウィ殿、これがなんだかご存知か」
「あっ、それ?写真て言うんだってさ。写真機ってのがあってね、風景をそのまま写し取る魔道具なんだと」
「は?そんな魔道具があるんですか」
「魔導国にも作れる奴が今はいないんで市販は未だらしいけどね」
「魔導国にはそんな輩もいるって事ですか」
「いるよ、だって船を作ったのもそいつだもん。魔導国でじゃないけどね」
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・ 同封物開封中
・
「なんだこれ、魔石に水の精霊印が入っているな。痕跡があるから魔道具だな」
「あった、こっちの手紙に書いてあるぞ、そうか漏洩対策か。えーと『魔力変換魔石』だってよ、水中に溶け込んだ魔力の元を抽出、魔力に変…換…するぅ?そんな事ができるのか」
「本品以外不許複製?『複製時は魔導国マジョリア・ド・マジカネが有する製造権を取得すること』だってよ、魔導国に借りができたかな」
「『マジョリア』ん?『リア』って、あの王女様の事かい、濡髪乾燥機は王女様が作っていたのか」
「マラウィ殿どうかしましたか」
「いやね、前に魔導国でさ『濡髪乾燥機』ってのを買ったんだけどね、どうもあそこの王女様が作っている代物らしいね」
「魔道具姫様でしたっけ?有名ですよね」
「だね」
・
・ 読み終わりました
・
「考案者は一人なんですよね、一人が考えついた事に国が総出で対応しないとならんということですよね」
「だよね。いやぁ、壮観だねえ。産業省に魔法省と国防省、法務省に財務省。ほとんど来ているね、本当に国が動いているようだ」
「何年先を行っているんですかね、とんでもないですね」
「そうだね、ここまで大げさになるとは思ってもいなかったよ。手紙で教えてあげよ」
「この手紙、国家予算何年分の対価を用意すべきでしょうか」
「必要なかろ。前聞いた時の対価はね『静かで平和な世の中を所望』だったよ」
「神ですか」
「あははははは、面白いよなー」
「で、マラウィ君。その樽は?」
「私のです。誰にも渡しません」
無事届いたようで何より。中身はね、実はブランデーだったりしますん。
2. 魔法の真髄?
皆さん両手の指を伸ばして不審者だらけ、まああれですけど。精霊さんとお話しましょ、ついでに名前も付けましょうって奴。そこの人、中指を立てて手の甲を人に向けちゃダメだぞ。
「自前で魔法を考え使う事で、精霊が寄り付くなんて誰も考えなかったぞ」
「そうだな、精霊に名前を付けると省魔力になるのか。これはすごいぞ」
「精霊と会話?どうすればこんな事を思いつくのだ」
「まるで魔法の神様だな。魔法の神、魔神様か」
やーめーてー。うむ、魔法省の方々は皆おかしな人になっているようです。耳栓いるかな?良いか、見ている分には面白いから。そうかと思えば
「お、お、おお。遠くがよく見える。肉眼で遠視が出来るのか!これは革命だ」
大げさな。
「おぉぉぉぉぉ、私も魔力を感じる事が出来たぞ。そうか、そうだったのか。病でも魔力なしでもなく、体中に極薄く広がっていたのか。なんと無為な時間を過ごしたものだ。ぜひ我が子には伝えねば」
おっ、泣き崩れている特異な人がいる。そうだよね、私も危なかったんですよ。精霊王様に会えなかったらそうなっていたんですよ、ご同輩。
3. コロコロ
「あ、この爪…でけぇな…貰っても良いか」
「うん、どうするんだ」
「魔鉄作成に使うんだよ、コロ軸受のコロな。それじゃないと保たないと思うんだよな」
「なるほど、それで同封してくれたのか、ありがたい事だ」
「それな。感謝しかないぞ、このお方は神か」
「マラウィさん、本当に対価はいらんのかな。いくらになるか分からんけれど」
「要らないでしょう。向こうが送ってくれたんだから、有り難く使えば良いと思いますよ」
「助かります」
あ、なんか変な人が来た。
「おい!お前。なんだその爪は」
「これは警士さん。魔狼でしょうけど、それの爪ですね。どうやって討伐したかはわかりませんが。鉄の生成時に使うんですよ。魔鉄になります」
「よし、警務隊の鍛冶部門に回せ!」
「だめですよ、機械動力やら軸受用の材料にするんですから、あげられません」
「うるさい、いいから警務隊に寄越せ。魔鉄は剣にこそ相応しい」
「ちょっ!止めてください、横暴ですよ」
脳筋てやーね。
「何をしている」
「あ、技術局長。この人がね、魔鉄の材料にする魔狼の爪を横取りするんですよ」
「今回この集まりは、動力船舶製造の為の集まりだからな、技術優先だ。警務隊の出る幕はないぞ」
「なんだと、貴重な魔鉄だぞ、国の守りにこそ必須ではないか」
「あー、欲に駆られて場を乱す奴はいつでもいるものだな」
「なにぃ、貴様何者だ」
「アホか!国防省長だよ、マヌケ。すまんね、こいつは首にするから許してくれたまえ」
「私は、国のためにですな。何をする…貴様ら離せ」
「うるさい、黙れ。連れて行け」
脳筋さん、ごきげんよう。
4. ギャラス魔導管
金属線ではなく、ガラス管に魔石粉を詰めたのだそうです。よくもまあ考えついたと思いますよね。あちらの説明によれば、ドライヤーの隠しロゴに使っているような雑多な集まりだったみたいで、実際やってみた所それほど効率はよくありませんでした。なので、全部水晶の粉にして組み合わせた所、お知らせしたような割合が一番適当で手に入りやすいのではないかと思いました。
「わざわざ比較実験してくれたのか、ありがたい。効率が銀線以上になったのか。水晶ならこっちでも手にも入りやすいしな。これはいい早速増産するか」
「ギャラスってのが難点だけどな。今は仕方がないか」
「ねぇ、それさゴームを使って管か被覆を作れないかい?」
「ゴームで?」
「そう、それっぽい事を聞いた気がするんだけどね、研究してみてくれないかな」
「ゴームにそんな使い方があるんですか、壊れなければその方が良いですもんね、わかりましたやってみます」
「宜しくね、後で教えて。できたらあいつに自慢してやろうぜ」
「そりゃいい、了解です」
5. ブランデー
「ウイスキー、ウイスキー。あれがまた飲めるとは思わなかったぁー」
少し違うんですよ、ブランデーですから。
「あれ?なんだこれ。香りが違うし、酒の濃さも違うな。あの娘また別のを作ったのかい」
うっさいわい。婆ちゃんが果実酒をホイホイ作るんだもんよ、ほんで蒸留したがるんだもん。今じゃ専用の蒸留器があって、ポンポン出来ちまうのさ。氷穴が足りなくなるぞ。
「まず一口。うーん、ちと若いかなー。また難しそうな酒を作ったもんだねぇ、私が婆さんになる頃には旨くなるかもしれないね。なんだけどねぇ、それまで残る…わけ無いな。まあいいか、チョコレトで飲めるとは思わなかったな。あっ、これならイルガでも行けるんじゃないか」
容器を移し替えてイルガ家へご訪問。
「おーい、イルガはいるかい」
「あら、マラウィさんいらっしゃい。いるわよ」
「なんですか」
「ちょっとこれ飲んでみ。チョコレトといっしょに」
「酒ですか?俺だめなんですけど」
「なに、一口。ちょっとだけ。飲めない訳じゃないんだから」
「それはそうですが…うん?なんですかこれ。果実風味でチョコレトと一緒だとまろやかな味わいになりますね、あれ?飲めますよ」
「だろ、あの娘から送られて来たんだけどさ、チビリとやるには丁度良いだろ」
「そうですね、これは良い。ミー君また新しいのを作ったって事ですか」
「たぶんね、手紙には何も書かれていなかったけど。飲めそうならこれやるよ」
「いいんですか、頂きますね」
なんだ、下戸じゃなかったのね。
6. 酸素
酸素について座談中。見えないからねえ、どうなりますことやら。
「『燃焼補助の存在』についてなんだが」
「『火』ですよね、『火』が燃える時に補助してくれる物って事ですかね」
「なるほど、そういう事だな。『火』なあ、深く考えた事なかったよな」
そりゃそうだねえ、何かが燃える、便利じゃんで終わるよね、普通。
「『可燃物』というのは、燃える対象ですかね」
「『着火温度』ってのは、火が着く時の温度が違うのか」
「違いますかねぇ、あっ紙と木とか、布とか火が着くまでの時間は違いますね」
「なるほどな、物によって着火時の温度が違うと言う事か。調べようがないがな」
ガンバレ
「あっ、補助っていうなら、補助がない場合はどうなるんだろ」
「そりゃ燃えないんじゃないのか」
「どうやって調べれば良いですかね」
「そうだ、燃えている物を閉じ込めたら、補助がなくなれば消えるんじゃないのか」
「おお、なるほど。陶器の壺だな。それとギャラスの蓋で良いか。割れるかな」
「やってみるしかないな、良し試すぞ」
これが世の中の標準なんです。
「蝋燭、消えましたね。蓋なしなら消えませんよね。補助の存在があるって事ですよね」
「多分な。そうだ、消えてから蓋をどかしてもう一度火を点けたらどうだ」
・
・ 実験中
・
「種火すら消えましたね。補助を使い切った後だとすれば理屈は通りますよね」
「補助の存在があるから火が点く、点き続けるって事だよな」
「魔法技術局の連中を巻き込みましょうか、奴らなら蓋の外から火が点くでしょ」
・
・ 犠牲者召喚、説明中
・ 再度実験中
・
「消えてからだと魔法でも点きませんな。その後はどうやっても点かないと…燃焼補助の何かがあるとして、それだけを意識して壺に溜まるかやってみましょうか」
危ないぞ
「よし、点…うわっ!種火が燃え上がった。なんだこれ」
ご安全に
「あ、まさか周囲が補助だけだと今みたいになる訳?火なんて使えないな」
「そういう事だよな、生き物に丁度良い具合に何かが配合されているって事か」
「まさに神の業だな。なら火を点けた後に補助で周りを囲む事ってできますかね」
「そうですな、囲むはできませんが、送風時に補助を意識してみましょうか」
「できますか、それでやってみましょう」
・
・ 点火
・
「何もなければ普通ですね」
「では行きますぞ。『風の精霊よ、かの炎に強く強く燃えあがる力を与え給え』」
すると煌々と燃え上がる蝋燭。あっと言う間に燃えてなくなった。
「うおおぉぉぉっ、こりゃすごい。火力が段違いだ」
「なるほど、これが燃焼補助って事か。あっ、火点の火魔法も同じって事を言いたいのか」
「そういう事でしょうなぁ。これは火魔法全体の大改革になりますぞ。燃焼補助の存在を意識して魔法を使えば、火力が上がるって事でしょうからな」
「それは、できたらすごい事になりそうだぞ」
祝到達。
7. ゴーム魔導管
「本当に固まったぞ、これ。うーわ伸びる伸びる面白れぇ」
「すげえな、どうやればこんなのに気づくんだ」
狡です。
「お前さんは何を考えているんだ」
「いや、管だの被覆だのはどうすれば良いかなって、中身は粉体ですもんね」
「そういやそうだな。ギャラスとは違うもんな。ぐねんぐねんだもんな」
製造部から報告が来ました。
「おい、混ぜる熱泉黄石を増やしたら、ギャラス並になったってよ」
「なんと、それなら今のままで行けそうだな」
おお、エボナイトに気づきましたか。
「すげぇ、これなら取り回しも楽だぞ、そうそう割れる事もなさそうだしな」
「柔軟さには欠けますけどね」
「ギャラスよりまし」
「確かに」




