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(10-13)モーリタ連合国(確認)

(10-13)モーリタ連合国(確認)


 『ここ長鼻の墓場だ』とは言っても確証があるわけでなし、移設工事をするにはお金が掛かりますから、行政さんとしてはですね、住民を納得させられる事実と言うか、確証を欲しい訳でして、当然の事ながら実際見てきたこっちにきますわね、おはようございます辺境村村娘です。


1. 案内せよ(1)


「ミールとやらはおるか」

「はい、なんでしょう」

「モーリタ街長を任命されている『カズョーシ』である。其方の主張する『長鼻の墓場』とやらが事実か否かを知りたい。生息地があると聞いたが、そこへ案内せよ」


 聞いた感じは、なんとなく嫌。まあ、表情には出しませんが。多分。『其方の主張』ってね、別に主張している訳ではないのですけど、良いですけどね。15人程の調査隊が来ています。昨日の室長さんもいますね、大変だねぇ。


「はい、良いですよ。こちらです」


 自分達で行けよとは思いますけど、道を知らなければどうにもなりませんわね。それにしても、砂漠地帯を往く調査団の格好ではありませんね、私じゃあるまいし、大丈夫なんでしょうか。私ですか?今は、町娘みたいな普通のワンピースですよ。靴は親分狼の皮を底にした登山靴風のですけど、合わんよね。


「おい!どこへ行くのだ」

「案内せよと言う事なので、道案内ですけど。この先南東方向へ緩い曲がりになっていまして、生息地までおよそ300[km]です」


 300[km]程度どうって事はありませんよ、長い間に踏み固められた道は、通り易いですし、一日100[km]3日で走破できますから。駆け足進めーっ。


「では行きましょう。ついてきて下さい」

「ちょ、まっ、おいっ」


 5[km]ほど行った所で待っても誰も来ません。『案内せよ』って言ったのに、案内しようがないじゃないですか、何をしているんでしょうね、日が暮れますよ。最初の水場まで40[km]ほど、さっさと行って待つことにしましょう。お昼は長鼻焼きの挟みパン。コーヒーを淹れてゆっくり待っていても誰も来ないので、案内標識を立てて、先に行くことにしました。次の水場は50[km]先。いつもの野営の家を出して、お夕飯は長鼻ハンバーグ。


 次の日は、出立の用意が終わると漸く一人が馬に乗ってやって来ました。いつまで待たせる気だよ、失礼な奴らだ。


「おはようございます。次の水場は20[km]先、近いですよ。こちらです」

「いや、まっ」


 二日目の最初は近いため、昼の大分前には到着してしまいます。次の水場へ向けた標識を立てて、軽食で済ませたら早々に出発。二日目の泊まり水場は80[km]と少し遠いのです。到着しましたが、またしても誰も来ません。一日待機しても来ないので、仕方がないので、案内標識を立てて次です。


 一日遅れとなってしまいましたが、3日目最初の水場です。ここまで約50[km]。さて、次はオアシスです。これが長いんですよ、100[km]。まあ長鼻の群からすれば最初の水場ですから、たぶん長くてもまだ大丈夫なんでしょう。


 到着しました。皆さん、ここが生息地となります。せっかく説明しようとしているのに誰もいません。本当に失礼な人達だな。案内せよというから、案内してきたのに、誰もいません。仕方がありませんね、湖の水を採集して、あの丸い実をいくつか頂いて戻る事にしましょう。ただですね、土の魔力量は違いまして、安眠草の魔力耐性が非常に高い気がします。進化したのか、新種なのかはわかりませんが、期待できますよ。帰りには、水際の一番高い木にパンツを翻らせ、砂漠を突っ切り、砂を巻き上げ一直線。


「ただいま」


2. 案内せよ(2)


 あの失礼なおっさんがやって来ました。


「長鼻の生息地へ案内せよと言ったではないか」

「ですから、道案内はしました。案内を無視したのはそちらではありませんか、2度目はありませんお帰り下さい。婆ちゃん、見てこれ。湖の魔力量、すごいよこれ」

「貴様、無視するでないわ」

「あれ、まだいらしたんですか、既に道案内はしました。お引き取り下さい」


 何を言っているんでしょうね、この人は。せっかく道案内したと言うのに、自分たちはふんぞり返って街にいただけらしいですよ、まったく酷い人達ですね。


「なにさね、これは。これが水の魔力とでも言うさね」

「でしょ、すっごい高濃度だよね。そこに安眠草が咲いているって事だよね。それで、あの長鼻は、この水を飲んでいるって事だよね」

「そういう事さね、それならあの長鼻の強さも納得するさね」

「ミーちゃん、その水飲めるの」

「たぶん飲めるよ、ただ人が飲むとね、魔力酔する」

「うわっ、それくらい強いんだ」

「うん、そんな場所があるって言うのがすごいよね。これを蒸留してさ、魔力水にしたらどうなるかね」

「なるほど、商人さん達も帰り支度はできているみたいですから、戻りませんか」

「あっ、そうなの。待たせちゃったのかな。よし、戻ろう」

「待たんかー」


 おっさんが、肩を掴んで来ました。まったく何様だと思っているんですかね。


「意味もなく、無遠慮に人の体を掴むな、ボケがぁ」


 掴んでいた腕を引き剥がし、そのままこちらに引き寄せて、左襟口をつかんで腰を入れ、相手の体が浮いた所を右足で蹴り上げて、よっこいしょ。一本!


 ボキッ


「ぐわっ」

「あ、受け身を取らないからですよ、危ないですよ。では皆さん乗船して下さい」


3. 案内せよ(3)


「待ち給え、我々は連合議会のものである。先程の行いは不問とする故、我々を長鼻の生息地に連れて行き(・・・・・)給え」

「『先程の行い』と言うのは、どちらに対して仰って居られるのでしょう、先に無遠慮な行いをしてきたのはあちらでしょうに。それを不問とする訳ですか、意味がわかりません。同胞を優遇し、暴行行為を黙認する訳ですか」

「いちいち細かい小娘だな、いいから我々を長鼻の生息地に連れて行き(・・・・・)たまえ」

「仕方がないですね、お連れしますよ。お乗り下さい」

「そうだ、最初から素直に連れて行け(・・・・・)ば良いのだ、全く」


 遠回りになりますが、これ以上煩いのはごめんですので、しかたがありません。途中では、あれしろこれしろ酒を出せだの、やりたい放題。録画してありますけど、人としての行いとは思えませんでしたよ。


「はい、到着しました」

「おぉ、これが湖か。では検証しましょうぞ」

「そうですな、長鼻に来られても困りますでな」

「お連れした証明書にお名前をお願いしますね」


 乗船数8名。下船者8名。全員の到着を確認し、証明印も頂戴しました。


「では、確かにお連れ致しました(・・・・)。先を急ぎますので御機嫌よう」

「何、ちょ、まっ」


 下で何か喚いていますけどね、連れて行けと言ったのはあちらですしね、ちゃんとお連れはしましたから、お帰りはご自由に。


4. 調査隊


 最初からだせよとは思いますが、あちらさん仕方なく自前で調査団を出したようです。メンバーは、衛兵隊長『シバキーノ』さん以下4名。少ないね、研究者とかいないみたいですよ。あ、文系さんは長期の調査じゃ保たないか。道はあるとは言え大変そう。


「隊長、漸く水場ですよ、飲めますかね」

「わからん、街の調査隊は、『ミール』と言ったか案内の少女に付いてさえ行けず、急ぎ馬で後追いしたものは、次(2つ目)の水場に到着した途端に、少女に先を行かれそのまま倒れ込み、丸一日気を失っていたそうだ。そやつが言うには、水は飲めるらしいのだが、飲んだ途端に酒に酔った風になり、しばらく動けなかったらしい。よくぞ生きて帰れたものだ。馬は駄目になってしまったようだがな」

「酒が泉で湧いているって事ですか」

「まさか、そんな事はなかろう。魔法に詳しい者に聞いてみたが、水に魔力が含まれているんじゃないかと言っておったな。『魔力酔』と言うそうだ。モーリタの水にもわずかだが含まれているらしいぞ」

「ここの水は大丈夫そうですね。あ…でも街の水よりは、何と言うか軽く一杯引っかけた感じになりますね」

「そうか、地下を流れてくる間に魔力が抜けるのかも知れんな。よし、ここの水を補給しておくか、次は分からんからな」

「了解しました」


 馬だって、ご飯は食べるし水も必要です。どうするのかと思ったら、拡張鞄があるじゃないですか、あるなら魔法がなくても砂漠を突っ切れよ。なぜできないのかね。


「よし、止まれ。例の水場だ。誰かちょっと試してみてくれ。まだ、大丈夫のはずなんだが」

「自分が行きます」

「頼むぞ」

「あれっ?大丈夫そうですよ、確かに前の水場よりは、飲んだときの酩酊感はありますが、大した事はありません。乗馬疲れとか関係しませんかね」

「そうか、奴は少女に追いつくために、ほぼ夜通し走らせていたらしいからな、そういう事か」

「あの…その少女ってのはどういう子なんでしょう。一体一日にどれくらい移動できるんですかね。人ですか」


 『人』ですよ、失礼な。


「人だろう。人ではあろうが、あの『ハゲ牙』を倒せる魔狼を従えていたんだぞ、それなりに魔法と魔力に長けているのではないか」

「ああ、身体強化か。少女がでありますか、世の中分かりませんな」

「うむ、広いものだな」


 出発してから、4日目。やっと到着したようですね、3番目の水場。日進2~30[km]ですかね、短いですね。たぶん全行程300[km]と言うのは聞いているはずですから、往復600[km]。一ヶ月かかるわけですよね、ご苦労様ですね。


「隊長、自分倒れたら置き去りにして下さい、行きまーす」

「おいっ!馬鹿な事をするなっ」

「うっひょぉー、隊長ぉー、大丈夫です。直に飲まなければ酩酊感もありません」

「何っ!そうか、それなら水浴びしていくか。今日はここまでだな」


 あ、そうなの。良かったですね、皮膚からの浸透は無さそうですね。


「あ…少し、酔った感がありませんか」

「あるな、飲まなくても余り長時間浸かっているのは良く無さそうだな」

「そうですね、爽快感に負けてしまいましたからね」

「はっはっは。次は気をつけようではないか」


 なるほど。さらに4日かかって4番目。頑張れ後2つだ、150[km]だ。それからさらに5日。


「来たぞ、ついに来たぞ。湖だぞ。これはすごいな、あれを見ろハゲ牙の集団だ、初めて見るな。すごいものだな」

「壮観ですね、あれが群れで街に来たら、それだけで土塊ですよね」

「そうだよな、やはりあの子が言っていたように、街に来るのは、死を待つはぐれのようだな」

「それであの強さですからな、次は止められませんよね」

「そうだな、早急になんとかしてもらわんとな」

「この情報を持ち帰るのが、使命って事ですかね」

「むろんだ、これは持ち帰らねばならん。帰らねば街がなくなる」

「あ…予想はしていましたが、連合議会の連中ですよね、あれ」


 居ましたか。どうなっているんですかね。


「ほぼ骨だな。ただ食われた跡は無さそうだ。ハゲ牙は草食と言う事か」

「他に生き物がいなければ、そうなりますね。我々は無為にハゲ牙を恐れ、殺してきた事になりますかね」

「そうなるな。これも持ち帰らねばなるまい。そうだ、ここの水は魔力量が桁違いらしいからな、気をつけろ」

「「「はっ!」」」


 ハゲ牙に見つからないようにと、慎重に辺りを捜索。水と植物の採取を行い、連合議会の者たちを弔い持ち物を回収、さて帰るかとなった所です。


「よし、粗方調査は終了した。最後に先達の証として国旗を掲揚するぞ」

「はっ、こちらに…あれ?」

「どうした」

「隊長、上ですよ上」

「上?なんだ、あれは」


 水際に立つ不思議果実の木。仰ぎ見るその先端に翻るのは。


「婦女子の下履きのような気がしますが」

「あ…ぶぁっはっはっは。あの子のか」

「確かに、少女の方が早かった訳ですよね」

「そうだな。先達旗を知っていると言うだけでも大したものだ。さて、連合がどう判断するかだが、一応我が国(うち)のも掲げておくか」

「「「「あはははははは」」」」


 ふっふっふ、最初に到達したのは、私だ!


5. 報告


 ようやく帰還しまして、ご報告。


「ハゲ牙は、一群約200頭、それが10群。あれがこちらに来たらひとたまりもありません。それとどうやら草食のようであります。主食とする果実のようなものは、こちらに持ち帰りました」

「うむ、ご苦労であった」

「それと連合議会の方々の遺品はこちらに。ご遺体は弔いましたが、傷一つありませんでした」

「そうか、報告書は後で纏めてくれ」

「はっ、失礼します」

「はぁ、一ヶ月か。それをあやつは一週間で行き来した事になるのか。くっそー、漸く腕が治ったぞ、いまいましい」


 いえ正確には行きに4日(うち待機1日)、帰りが2日ですよ。


 あ、あのおっさん何か良からぬ事を考えついた風に見えますね、無駄な考えにならなければ良いのですけどね。


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