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(03-01)転世転生転性

★ 注意事項 ★


 所謂前口上的なものは『Read.me』を御覧ください。

 どうでも良い事しか書いてありませんが、前口上のつもりではあります。

 一応『前口上的』でありますから、本編に少し関係はします。

 『こいつどうやって此処に来た』

 みたいな部分を書いてみました。


 まぁ、興味とお時間がありましたら、どうぞ。

(03ー01) 辺境開拓村村娘に転性したらしいです


 皆さん初めまして、辺境ムラムラ娘ではありませんからね、注意して下さい。発情している訳ではありません。未だよくわかっておりませんが、辺境の村で生まれた村娘のはずです。


 なぜ暫定的かって言うのは、これからのお話となります。それで、どのくらい辺境かって言うとですね、家の裏には小高い丘がありまして、そこは草原(くさはら)なんですけど、その先に結構深い森が続いているようなのです。森です、大森林。えぇ居るらしいんですよ、野獣さんが。さらに奥へ行くと魔獣も居るらしいですよ、当然未だ見たことはありませんが。その先は、お隣の国だそうです。そんな所で、少し前に目覚めた所からです。


1. 知ら天


 重く閉じたまぶたが徐々に軽くなっていく気がした。軽くなると同時に少しずつ明るくもなってきた。そうして目を開けて入ってきたのは、天井。どうやら仰向けで横になっているらしい。当然の事であるかのように、その第一声は。


「知らない天…がない」


 目覚めた時のあの第一声を言えなかった。


 残念な事にそこには天井板がなく、有ったのは斜めに傾いた屋根の裏側。垂木(たるき)に板を取り付けた物がそのまま天井とされているらしく、荒削りで丸太みたいな梁がそのまま構造材となっていた。板ないのかな、高価なのかな、天井付けようよ。知らない天井…言ってみたかったよ。


「何処よ、ここ。どうなっているのだろうかね」


 まず間違いなく自宅では無いことだけは解った。病院でもないらしいのは、清潔感がまるでないという笑えない状況だからだったし、山の監視小屋みたいな所かもと思ったのだが、違うようだ。なんとなくだけど、どこか別の世界であろう事が解ってしまった。今時こんな天井のない屋根なんてないよねぇ、掘っ立て小屋でも有るまいに。物置ですら百人載せても大丈夫の時代なんだしさ、省エネとかで断熱材天こ盛りってのが流行だし。


 さらに周りを見渡せば、蛍光灯も電球もない。壁を見れば、窓はあった。但しガラスは入っていない。網戸かと言えばそうではなく、つっかえ棒で板戸を押さえておく方式。いつの時代だこらっ!って言いたくなる窓。今どき掘っ立て小屋であってもサッシですよ、サッシ。いやだって、窓枠を手作業で作るより、その方が安いし。と言うことはですよ、よく物語にあるような異世界って事ですよね。転移でもしたのだろうかと手を伸ばしてみたら、ちっちゃい。ぐはっ、転生かっ!でも赤ちゃんではないようだしとしげしげと手を見ていたら、家族らしい人々が近寄ってきた。それにしても体が重い、腕を上げるだけで鉄アレイでも持っているかのようだ。


2. 転生したら死んでいた


「な、生きているだろ」

「嘘なんか言っていないぞっ」

「おかしいわねぇ、たしかに息をしなくなっていたと思ったんだけどねぇ」

「チッ!なんだ生き還ったということか?面倒な」


 なんか不穏な調子の言葉が聞こえてきたのですが、そう感じているだけで内容はわからないのですけどね。理由は、何を言っているのかさっぱりだからです。起き上がろうにも体に力が入らない。腕にもろくに力が入らなくなって、本当に脱力状態なのですよ。あれっ?このまま死んでしまうんじゃなかろうか。大丈夫か俺。


 やいのやいの言い合っていた家族らしき者たちは、しばらくするとそのまま出ていった。出掛けに母親らしい年嵩の女が少し厚めの毛布様の布で体をくるんでくれて、おかげで体温が上がり始め、生きられるかもしれないと言う希望が湧いてきた。いや、それはそれとして、なんかすんげぇハードモード感しかないんですけど、大丈夫か俺。


3. 記憶はマージされる


 そんな感じで暫くの間手足を少しずつ動かして、体温の上昇に努めながら(お腹が空いたなぁー、力が入らないのに食べられるかな。できれば最初は汁物から)と関係ない事をつらつらと思い浮かべていると、突然吐き気と頭痛に襲われました。


 それと共に、今までの記憶とわき上がるように浮かんできた前世の記憶が一つになり始めました。前世も含めて、鼓動と血流に合わせるように響く頭が割れるような頭痛は、いまだかつて経験が無いくらいの酷さでしたよ。うめき声とも叫び声とも自分でもわからぬ声を上げ耐えていると、そのうち頭痛が少しずつ和らんで行くような気がしました。さっぱりと訳がわからないながら、記憶が一つに整理されたように感じたのであります。なんとなくですが、どうも記憶のマージが行われ、漸くしてそれが終わったようでした。すると、突然目の前が真っ暗になってしまいましてね、どのくらい暗転していたのかは定かではないのですが、気がつくといつの間にやら母親らしき女が肩を揺すっておりました。


「ミール、ミール、しっかりしなさい!」


 ぐらんぐらん揺すられて、首が…首がぁー、もげるかと思った。


「あい」


 訳が解らないままとりあえず応えておいた方が良さそうな雰囲気であったので、そう応えておきました。あれか?基本ソフトの更新処理後の再起動みたいなもんかな?うん、そんな感じであったようだ。やれやれ。


 気がつくと、日本語ではなくこっちの幼児語で考えるようになっていましたよ。あらま、日本語が第二言語に降格してしまったようです。訳がわからないまま、最初の難局を乗り越えられたらしいです。ついでにバイリンガルおめ→自分。


4. おじさんはおしまい


 それにしてもあれだね、病気(何のとは聞いてはいけない。そもそも、それすらわからない)になったのが気温がそこそこ高めの季節で良かったよ。冬場だったら死んでいたぞあれ、そういう環境だもん。それで、不穏な事を言っていた気がするのは家族か?家族だよねぇ、病の子を放置すると言う家族。まさかあれが世界標準じゃ無いだろうな。だとしたら、碌でもない世界って事ですよね、そうだったらどうしましょうか。


 あぁそうそう、お伝えするのを忘れていたような気がするのだけど、お股にね、子ゾウさんがいなかったんですよ。付いていないんですよ。どうしましょ。先行きにはめがっさ不安しかないんですよね、先の事は想像したくないけどね。まぁとりあえずおとなしく社会勉強しておきますか、先送りは得意なんだぜ日本人。ハッハッはぁ〜ぁ。


 名前は、記憶のマージと母親の呼びかけの結果「ミール」らしい事は判明しました。どこぞの宇宙船か、将来燃え尽きるのかね。所でこの子っていうか俺、何歳なんだろうね…そうだよ、未だにそこなんだよねぇ、わからん。記憶が曖昧過ぎてわからないんだよねぇー。


 後で判った事なんだけど、ミールというのは『お終い』とかの意味があるらしい。という事はだよ『留子』とか『末子』みたいなもんか?多産型社会の典型的かつ希望的なよくあるお名前って事だよね、多分。一言いいですか?お外にしなさい!


5. アタシはお何歳(いくつ)


 (注)本人の会話は、副音声でお送りしています。

    いやね、口腔が狭いから音程は高く、滑舌は筆舌に尽くし難く、

    理解に苦しむかと思いまして、副音声化しておきました。


 こちらの世界で目覚めてから早幾年。というほど日数は経過していないのだけれど、季節的に結構寒さを感じては来た今日この頃。やはり『今何歳(いくつ)』か気になるので、母ちゃんに聞いてみる事にした。


「母ちゃん、アタシはいつ頃生まれたの」

「なんだい急に、え~と確か一昨年の終わり頃かな、どうしてさ」


 あ…『終わり頃』その一言で不安が一気に吹き上がる。


「歳ってどうやって数えるの」

「変な子だねぇ、生まれた年に一歳で、年が明ければ一つ増えるに決まっているじゃないか。だからもう直ぐあんたは四歳だよ」


 ひっでぇ数えかただ。年末生まれだと生まれ年が一歳。直ぐに年が明けるわけだから、そこで加算されてあっという間に、私は二歳児になっていたと言う事である。決定してしまいました。数えの三歳になった時には、未だ満一歳ちょいだったわけだ。満二歳になったばかりの来年には、四歳の扱いになるらしい。むちゃも良いところだ。


 今日まで『三歳だから』『三歳なのに』と言われて来ていて、


「もう三歳なんだよ、どうにも成長が遅いねぇ、この子は」


 だの、


「ろくに喋れんしな、やっぱどこかおかしいんじゃないか、捨てっちまうか」


 なんぞと言われて来たので、私がおかしいのかと思ったよ。それこそ成長不良なのかと心配したよ。食べ物のせいなのか、その気は多少有るけれど、上の子は二人とも年明け生まれらしい。今もそうだけど、住んでいる家があるこの村の冬場は結構冷える。というか寒い。よくぞまともに生まれけりだ。年明け生まれと、年末生まれを数え歳で比較するなよ、幼児時期の一年違いは、相当の差があって当たり前ではないか。忘れているんじゃなかろうな、いや確実に忘れていると断言できるぞ。


 それなのに『三歳なのに』と言って、満一歳児に向かって言っていたのであれば、アホだろう。アホに違いない。数えで他の子と比較するのが可怪しいってだけなのだけれど、まぁそれが慣習になっているのだとしたら、当然なんとも思わないよなぁ。


 思い起こすに、数え三歳の夏(もしくは秋口)に熱発して、死線を彷徨った訳だ。満一歳と半。よく生きていたな俺。偉いぞ俺。あっ…違うな、もしかすると元の本人は、死んだんじゃなかろうか。目が開いた時に、どちらが言ったのかは判らないし、あの時は判らなかったけど、兄が言っていたではないか『ミーが生きていたぞ』って。だとしたら死んだ所に俺が入り込んだか、あるいは入り込んだ事で余計に体に負担がかかり、既に弱っていた本人の方が死に至ったのではないだろうか、もしそうなら大変もうしわけなく思うのだが、本当の所はそれこそ神様しか分からないだろう。あるいは、死線を一度彷徨うと前世を思い出すとか、いや知らんけどね。とりあえず今私は生きているのだから、この体有り難く譲り受ける事にしよう。

 

 さて、道理で病み上がりの今になって、少しばかり喋り始めた時に


「やっと喋れるようになった、良かったぁ。本当に捨てようかと思ったよねぇ」

「熱だして賢くなったんだろう。知恵熱って言うらしいぞ」


 言いたい放題言っていたのがようやく解った。それで今は絶賛冬ごもりの最中。


「カーチャ、これ何、何するもの」


 を大連発して、なんとかこの数ヶ月で生活言葉位は理解した。


 文字は未だである。そもそも文字、もしくはそれを書き記した印刷物が我が家に無いのである。文字がないから『文字』という単語が何なのかを知らない。我が家にないのか、この世界にないのかはわからない。とにかく身近な所には存在しない。聞こうにも、残念ながらそれなりの単語を知らないので、聞くに聞けない状況である。また、カレンダーすら見ない。さらに新聞どころか絵本やら図鑑のような物もない。識字率が低いせいなのかもしれないのだが、さて困った。どうしてくれべぇと考える事数日。なんだ簡単じゃないかと思いつく。


「アタシの名前は、どう書くの」


 これだけで良かったのである。


「『□□□(文字コードにありません)』って書くのよ」


 と教えてくれた。


「カーチャのは」


「『□□□□□□(文字コードにありません)』なのよ、これ以外の文字は書けないけどね、でも皆んなそうだから大丈夫」

 

 と教えてくれたのである。とりあえず文字そのものの存在は確認できた。


 『それ以外の文字って』となおも食い下がると、やはりどうやらこの辺りの人間は、識字率が低いらしく、父親もご近所さんも大して変わりが無いらしい。両親とも家族の名前を書けるのが精一杯のようである。誰か教えてくれる人はいないのかを尋ねてみると、希望する者には礼拝堂(有るのか)で教えてくれるそうだ。誰も教えを請わないのだろうか、たぶん書けなくてもさしたる不便もなく生活が出来るのだろう。とは言え、それはそれ。もう少しまともに歩けるようになったら行ってみる事にしよう。何しろ齢三歳では、家から出るにも難儀する位で、どうにもならない。なんとも歯がゆいものである。


6. とりあえず言ってはみたんだよ


 そりゃぁね、異世界なんだからさ、試してみましたとも。所謂『ステータス』とか、『コンソール』だのをね。でもよくよく考えたら、それってどこの言葉だよって事だよね。仮にだよ、そういう魔法っぽいものがあったとしてさ、やっぱこっちの言葉じゃないと働いてくれないんじゃなかろうか。現在状態を表示させるとして、この世界の該当語なんて知らんぞそんなもん。幼女たる自分の頭の中には、とりあえずなかった。むぅ、これもまた保留か。ここはやっぱり文字だね、とっとと文字を読めるようになって単語を覚えないとどうにもならんぜたぶん。それで、その文字とやらはどこにあるんでしょうかね。


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