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ハンマー

気が付くと、僕はビルの一室で横たわっていた。窓から差し込む夕陽が部屋を黄金色に染めていた。

 僕ははっと起き上がり、自分の両腕を確かめた。特におかしな所はない。

(普通だけど……?)

 蘇ってまず最初になぜそんなことが気になったのか僕は不思議だった。

(前世でズタボロに身体を引き裂かれたとか……?)

 しかし、ほとんどの記憶が欠落してしまっているので、考えても無駄だった。

 テロメアに触れる。僅かに隙間が出来ているものの、まだ外れることは無さそうだった。

 僕はしばらくぼんやりと部屋を見渡した。

 不意に部屋の片隅に、ハンマーが一つ落ちていることに気がついた。僕は立ち上がってそのハンマーを拾い上げた。ずっしりと重く、威力はありそうなものの、取り回しが悪そうだった。

 しかし不思議とそれを手放すことが出来なかった僕は、それを腰のベルトに挟んだ。

 他に武器はないか探したが、この部屋にある武器らしい武器はハンマーの他にはナイフだけだった。

(――暇だな。寝心地の良いマットレスでも探すか)

 僕は背伸びをすると、部屋を出た。


 足の向くままに、ビル街を探索しているとバリゲードで封鎖された通りに辿りついた。バリゲードの中にマットレスがひとつ見つかった。

(ラッキー。思ったよりも早く見つけられた)

 僕はバリゲードに近づいた。

 その時、背後で物音がした。

 慌てて振り返ると、三名の兵士に取り囲まれていた。

「ごめん、テリトリーに侵入する気は無かったんだ。――引き返すよ」

 僕は相手を刺激しないように努めて朗らかな口調でそう言いながら、両手を上げ、彼らに近づいた。

 彼らは身構える。

「お前、やっぱり、フアテラネを殺した奴と同じトループ……」

 一人の兵士は目を見開いて僕の顔を見つめた。そして仲間に視線を送る。彼らは互いに頷き合うと、素早く銃を取り出し、その銃口を一斉に僕に向けた。

「やめてよ!僕、さっき蘇ったばかりなんだ。フアテラネのことはもちろん何も知らない」

「フアテラネに何をしたか、説明しろ!」

 兵士の一人が大声で叫んだ。

「だから、知らないって。なんにも覚えてないんだ」

 僕の言葉に兵士たちは苦虫を噛み潰したように互いの顔を見交わした。

「――紋章(タトゥー)をよく見せろ」

 ひとりが僕に命令した。僕は肩をすくめると、首筋を彼らに向けた。

「なぜ、竜じゃない?お前たちは、シオのトループに吸収されたと聞いたが……?」

「知らないよ。――死んだばっかりなんだから、見逃してもらってもいい?もう二度とここに近づかないから」

 僕はさらに彼らに近づいた。彼らは驚き、後退りするような素振りを見せたがぐっとその場に踏みとどまった。銃口の先が震えている。

「お前、本当に蘇ったばかりなんだろうな……?本当に何も知らないのか……?」

「本当だよ。テロメア、確かめる?ぶかぶかなんだ」

 僕はそう言って、左手を差し出した。

「もともとを知らないから、見ても意味ないだろ」

 兵士たちは口々にそう言いながらも、僕の左手に視線を向けた。

 ――その瞬間、僕の身体が勝手に動いた。

 腰のハンマーを逆手で素早く引き抜くと、目の前の兵士の左手を横殴りした。鋭い金属音が響き、銃が吹き飛んだ。吹き飛んだのは銃だけではない。兵士のテロメアが弾け飛ぶのを目の端で捉えた。兵士は糸が切れたように脱力し、そのまま後ろに倒れた。

 慌てた他の兵士たちが、引き金を引く。しかし二発とも明後日の方向に発射された。僕は逆手からハンマーを持ち替え、右側にいた兵士の手を薙ぎ払った。再び、金属音が響き、銃とテロメアが吹き飛んだ。その兵士は奇妙に身体を捻り、なんの抵抗もせず地面に倒れた。

 最後の兵士は逃げ出そうと身を翻した。しかしあまりに慌てていたのか、道路の段差に蹴つまずき、そのまま地面に倒れた。僕はその瞬間を見逃さず、兵士に向かって、ハンマーを振り下ろした。ハンマーはぐしゃっという音を立てて、兵士の左手をぺちゃんこにした。テロメアが外れ、ころころと道路を転がった。



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