表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/217

【90】兄へ報告



ちょうど呼びに行こうと思っていた所に、マリアと兄二人が部屋に訪れた。


兄二人とディスは初対面だ。

「ルキア、こっちがアデレ兄でこっちがアルフ兄だよ。で、兄様、これがルキア」


『これ』とは酷いっ!と態とらしく悲しむような素振りで、私に抱き着き絡みついてたディスを目の当たりにした兄二人は、苦笑いだ。

「直前にマリアに聞いていたが、聞いた通りのようだな」

「ブフッ、甘々のようで。エルお似合いですよ」


アルフ兄のひと言に思わず半目になり、ディスに纏わりつかれながらも死んだ魚のような表情になった。



テーブルに着くと、マリアと兄二人は、初めて見る米と生姜焼きの味に目を輝かせた。

「肉のしっかりとした味付けが、この白い米に合うんだな。いくらでも食べれそうだ」

「エルの作る料理を食べていたら確実に太りそうだわ、どうしましょう」


マリア、無理して食べに来なくてもいいんだよ?


「ところで、ブライアント公爵家のヴァルテス君が何故一緒にここで食事をしているのかな?」


あまり発言して墓穴を掘らないようにと、静かに食事をしていたヴァルテスの肩がアルフ兄の言葉にピクっと動いた。


そういやそうだなと、アデレ兄とマリアもヴァルテスに視線を向けた。


「あ~そうそう、ヴァルテスとは今日の授業の手合わせで仲良くなってね。ほら、クリスから紹介もされてたし、ね」


アルフ兄は疑わしげな眼差しで私をじっと見ながらも、その場は「ふ~ん」で済ませてくれた。


食事が終わり皆が部屋へと戻ろうとした時、兄達にこっそりと残るように声をかけ、兄達と話しをするからとディスも部屋から追い出した。



「ヴァルテス・ブライアントのことかい?」

さすが鋭いアルフ兄だ。

アデレ兄は状況が分かっておらずキョトンとした表情だ。


アルフ兄とアデレ兄にヴァルテスも前世持ちで、元の私の付き人兼護衛兼友達だったと大まかに話した。


「なるほどね、エルを庇い同じ時に亡くなり、同じような時にこの世界に生まれ変わって来ていたと言うことか」

「私は兄様達が居てくれたから、大変な思いもせず過ごして来れたけど、ヴァルテスは一人で大変だったと思う」

「そうだな。だがエルが信頼していた人が一緒に生まれ変わって来ていたなら、エルは心強いよな」


ヴァルテスは、本当の私を知るただ一人の同志だ。


「そうなんだけどね、ヴァルテスはクリスと親しくしているから・・・」

「クリスの事はエルが気にしなくても良いんじゃない?エルはその気がない事を示していたのに、諦めなかった奴が悪いんだから」

「だよな、僕らもエルは諦めろって散々言ったんだがな」

「エルには、もう婚約者も出来たしねぇ」

ニヤっと笑うアルフ兄をジト目で見た。


「あんなに美形で、常にエルを優先して考えているような人に勝てる訳がないよな」

人じゃないけどな、と笑うアデレ兄。


「まぁヴァルテスの事は了承したよ。ヴァルテスはエルの付き人云々の前に、公爵家の人間だし相当腕が立つみたいだから、こちらの味方に付いてくれるなら大歓迎だよ」


アルフ兄の言い方に引っかかりを感じた。

この先何か、私絡みで一悶着ある可能性があると取れるような含みのある物言いだった。


『戦闘の女神の加護』は手放しで喜ぶ人もいれば、中にはそうでない者もいると言う。

国王や次期国王の第一王子などは、自国から出た初の加護に大歓迎ムードのようだが、疑わしげに思っている臣下も少なからずいると言うのが現実だ。


そりゃそうでしょうよ。過去に例がない上に、実際はアルフ兄の嘘なんだからさ。


「万が一の時の為に信用できる味方は多い方がいいんだよ」


いや、本当に万が一の時はディスが暴れる気がしてならないんだけど?私の気のせい?



話しが終わり、部屋から兄二人がいなくなると途端に真後ろから声が聞こえてきた。


「貴方の兄は流石ですねぇ。しっかりと周りの状況を把握しているようです」


そう言うディスも何か知っているということか。

「何か知っているんでしょ?」

「おや、知りたいですか?」

ディスは後ろから私に腕を回し抱き着くと、髪に顔を近づけ鼻をスンスンしている。


おい、スンスンするなっ!


もし本当に命に関わるような一大事の時には、ディスが私を攫うだろう。だがそれで良い訳ない、それは違う。

自分の事ならしっかりと知っておきたい。

知っているのといないのとでは、いざという時の対処も変わってくるだろう。


「私に、周りの人に守られているだけの人間でいろと?」


後ろから伝わる動きで、ディスが髪から顔を上げたのが分かったが、またすぐに髪に顔を埋めたが笑っているようだ。

一頻り笑った後、耳元で呟いた。


「はぁ~貴方のそういう所が愛おしいのですよ」


耳元で恥ずかしいセリフ言うなっ

いい加減に髪から離れろ。


「もう今すぐ攫っても良いですかね?」

「駄目です」


即答すると、またディスは後ろで笑いだした。

完全にからかわれているようだ。


結局、この先何が起こりそうなのかは、今はまだ疑わしいだけの段階で確信が持ててから話します、と言うディス。


「絶対だよ」と念を押すと微笑んだディスに、話してくれなかったらもうプリンあげないからと脅したら、真顔になり必ず話すと約束してくれた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ