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【9】お昼ご飯は何だろ


昼食を摂るために邸に戻る道すがら、私の手を引きながらアルフ兄は言う。


「昼食後に訓練所に戻ったら、まずやらなきゃいけないことが二つある」


と指を二本立てピースサインのように見せてくる。


「二つですか?」コテンと首を傾げた。


アルフは首を傾けたエルを見て目を輝かせ

「エル、その仕草可愛い~」


想定外のアルフ兄の返答に、いつも以上の無表情となり言葉が自然と口を出た。


「はぁ?!」


素の言葉が出た瞬間、咄嗟に口を押さえながら、すぐさま兄の顔を見た。


ヤバい、完全に素が出た!

今までのエルファミアなら『はぁ?!』なんて言わないっ


アルフ兄は一瞬大きく目を見開き、驚愕の表情を見せたが、すぐさま目を細め口の端だけ上げてニヤ~っと黒い微笑みに変わった。


「なるほどね~。エルは面白いな~」


アルフ兄の言葉は、かなり意味ありげに聞こえるのは気のせいだろうか。


私は内心ドキドキが止まらないのに、アルフ兄は何やらとても楽しげに私の手を引き、歩きながら話を戻した。


「やらなきゃいけないこと一つ目は、エルの魔力測定ね」

「・・・魔力測定」

「そう、魔法を行使するには自分の魔力がどの位あるのか知っておかないとだよ」

「なるほどです」

「二つ目はエルが使える属性を調べる」

「属性ですか?」

「魔法は人によって使える属性が違うからね」

「そういうものなんですね」

私の手を繋いでいない方の手の甲で、口元を隠しながらククッと声を漏らしたアルフ兄。

「・・・そういうものなのです」

と、言いプハッと吹き出した。


私の受け答えがツボったようだ。



邸の大きな玄関のロビーに到達した。


「アルフレッド様、エルファミア様、お帰りなさいませ」


執事のブレリックがお辞儀をし出迎えた。

アルフ兄は、うんと頷きながら言う。


「昼食はすぐ出るかな?」

「準備は整っておりますゆえ、食堂にてすぐに御用意出来るかと存じます」

「そうか、じゃぁすぐに僕とエルの二人分を頼むよ」

「承知致しました」


執事のブレリックはお辞儀をし、すぐさま食堂に向かった。


兄は私に向き直り「さぁ、行こう」と手を取り引き歩き出す。


やった!ご飯だ。お昼は肉食べれるかな


すっかり頭の中がご飯モードに切り替わり、アルフ兄の先程の黒い微笑は頭からすっぽり抜けたのだった。



兄と二人で食堂の席に着くと、すぐさま給仕が私達の目の前に食事を並べ始めた。


目の前に並べられた食堂をジッーと見る。


サンドイッチとじゃが芋の素揚げ。あとサラダのような物とフルーツか・・・肉はないの?


肉が見当たらなくてもお腹は正直だ。

目の前に置かれた食事を見たと同時にグゥ~と鳴るとは。


横でアルフ兄がククッと笑いながら「さ、食べよう」とサンドイッチに手を伸ばた。


アルフ兄に頷きつつ、アルフ兄がサンドイッチを手で掴んだのを確認してから私もサンドイッチを同じく一つ手に取った。

サンドイッチはさすがに素手でOKなのね。


そして手に取ったサンドイッチの具材をチラっと確認をした。


あ!これ。たっぷり野菜と一緒に挟まれてるのはローストビーフ擬き?!


肉っぽい物を発見した瞬間、目が輝いた。


『いただきます』


心の中でいただきますを言い、サンドイッチに一口噛じりつく。


モシャモシャモシャモシャ・・・


悪くない。けど一味足りない気がする


モシャモシャモシャモシャ・・・


あー、マヨネーズ!マヨネーズが欲しい


サンドイッチを一切れ食べ、果実水の入ったグラスに手を伸ばす。果実水は柑橘系の風味で口の中に爽快感が広がる。


果実水美味しい。


喉を潤し、じゃが芋の素揚げをフォークで取った。


ポテトとか、手掴みで良くない?


と思いながらも仕方なくフォークで口に運んだ。

分かりきっていたことだか、ポテトは塩味。


ケチャップはこの世界にはないだろうけど、せめてハーブソルトとかさ、何かもう一捻り欲しいとこだよ


ポテトを咀嚼し飲み込んだ後、もう一つ手に取ったサンドイッチは野菜と一緒に薄焼きの玉子焼きが挟まっている。


これには絶対マヨネーズでしょー!


前世ではけしてマヨラーではなかったが、マヨネーズが恋しくて堪らない。マヨネーズに思いを馳せながら黙々と食べ進めた。


玉子焼きサンドの後、もう一度ポテトを食べ、最後の締めにとジャムっぽい物が挟まっているサンドイッチを取り口に運んだ。


マーマレードみたいな味がした。


いいねー。甘い中にも酸味と苦味が多少り、口の中に広がる柑橘の爽やかさ。一緒に生クリームを挟んだら更に美味しいかも


締めの甘いサンドイッチを食べ終え、一口大にカットされたフルーツに手を伸ばす。


見た目はリンゴ、オレンジだ。食材は日本とほとんど変わらないのかな?


リンゴっぽい物もオレンジっぽい物も、どちらも味は馴染みのある味だった。


日本と変わらない食材が揃っているなら、マヨネーズ作れるかも!今度厨房にお邪魔してみよう


マヨネーズのことを考えていたら、無意識のうちに少し口角が上がっていたようだ。


口角が上がったその瞬間を、エルを観察しながら食事をしていたアルフレッドは見逃さなかったのだ。


「エル?顔がニヤついてるけど、何か楽しいことでもあった?」


私にニヤついていると言いながら、自分も完全にニヤついているアルフ兄。


アルフ兄に指摘されグッと息を飲み込んだ。

まだ12歳なのに、そのニヤついている顔は少し妖艶さを含んでいる。


12歳で色気出してんじゃないよ!


この世界怖いわーと半目になりかけたが、すぐさま気を持ち直し返答した。


「い、いえ、果物が美味しいなと思っただけです」

「へぇ~」


私の返答に対して、片眉を上げニヤニヤし、全く私の返答を信用してないような顔つきで相槌が返ってきた。


アルフ兄はなかなか切れ者っぽい

侮れないな


ひとまず心の中で『ごちそうさまです』と言い、グラスに残っていた果実水を飲み干し、お腹が満腹になりフゥ~と息を洩らす。


その様子を見ていたアルフ兄「しかし良く食べたね!やっと普通の食事で満足できたようで良かった、良かった」とククッと笑っていた。


揶揄うようなアルフ兄の態度に、思わず舌打ちをしそうになったのを奥歯を噛み締めて堪えたが、変わりにフンっと鼻息が漏れた。


私の鼻息に、さらにアルフ兄が笑ったのは言うまでもない。



昼食を終え一息入れてから訓練所に向かった。




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