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【8】結界に掛かった何か



エルファミアとアルフレッドが訓練所に向かったのと同時刻。


朝食を終え食堂を後にしたアデレイドは騎士団の制服に着替え、父と母の執務室に向かった。


コンコンと扉を叩き「アデレイドです」と言うと「入れ」と、すぐさま父の声が戻ってきた。


カチャリと扉を開けると母はすでに居らず、書類をまとめて手に持ち、トントンと整えている父と目が合った。


「丁度、急ぎの書類が片付いたとこだ。団長達を待たせると悪いからな」


と言いながら、冷めたお茶を飲み干し「行こうか」と歩き出した父の後に続き邸を出た。

向かった先は、騎士団の寄宿舎の中の一角にある騎士団長の執務室だ。


執務室の扉を開けると中には団長と副団長の他に、魔道師団の副隊長、各隊の隊長が揃って、一斉に扉の方へ向いた。


「ジェイルズ総師団長、お待ちしておりました」


団長が姿勢を正し手を胸に置き、騎士の令をすると、他の団員達もビシッと団長と同じポーズをした。


「崩してくれ。とりあえず話を進めよう。結界が強い反応を示したのは東の山の麓で間違いないな?」


言いながらジェイルズが騎士団長を見る。


「はい、魔導師団の方からそのように報告を受けました。それに関しては魔道士団副隊長から」


と、騎士団長は魔導師団副隊長に目線を移した。


「はい。感知したものによると、反応はほんの一瞬だったとの事で、どのような魔獣なのか魔物なのか全く判断ができないようです」

「なるほど。ほんの一瞬でも反応があったと言うことは、何かしらが居たのは事実だろうな」

「はい、ですが魔力感知に優れた魔導師団員が、反応があった結界付近を探知してみても何もなかったと」

「だが万が一と言うこともあるからな」


その場の全員がジェイルズの言葉に頷いた。


「偵察は小隊で迅速に当たろう。騎士団から三人、魔導師団から三人の精鋭で向かわせます」

「人選は団長に任せるが、アデレイドも連れて行け。頼むぞ、アデレイド」

「はっ、ジェイルズ総師団長、承知致しました」




***************




偵察部隊はアデレイドの他に騎士団長と、ヘンダーソン第一部隊の隊長、第二部隊の副隊長、の四人。


魔導師団からは第一部隊の隊長と副隊長と隊員。魔導師団の中でも、より魔力の感知と探索に優れた三人が行くこととなった。魔法の実力も申し分のない者達だ。


七人はそれぞれ馬に騎乗し、東の山の結界境界線の方角を目指す。


馬の脚に身体強化魔法をかければ、一時間程で結界境界線に到着するだろう。


結界の向こう側は馬では進めないので、結界の内側で一旦馬を降り、徒歩で向かうこととなる。



結界の外に出て少し歩き始めると、近くで小さな魔力が感じられた。


「スライムか」


結界の外に出た時は、スライムやゴブリンのような小型の魔獣は襲ってこない限り討伐はしない。キリがないからである。


結界境界線は大型の魔獣や魔物の感知に特化しているため、小型の魔獣は結界を越え集落に近い場所などに度々現れるが、小型の魔獣は街にあるギルドが討伐を任されている。



付近をくまなく魔力感知、探知し、警戒しながら七人は山の麓を目指し進んで行く。


途中で牛の頭を持つミノタウロスや、猪のような豚のような頭のオークに遭遇した。

中型魔獣は獰猛なものが多いので、見つけ次第討伐対象である。


中型魔獣の毛皮や牙や爪などは、防具や錬金のために必要とされるので売れるため、騎士団員達がサクッと綺麗に解体し、魔導師団員がアイテムバッグに保管していく。



かなり広範囲を探索したが、結局警戒するような大型の魔獣などは現れず、魔力感知にも反応はなかった。


「うーん、魔力が強いものは特にはいないみたいですね」


と団長が言う。


「ですね。念の為に来た道とは違う方角へ向かい、そちらから探索して戻りましょう」



付近の探知をしながら山に沿うように進み、来た時とは違う範囲を探索し、結界境界線の方へと戻ることになった。



・・・気のせいかな?何か嫌な視線と言うか、気配のようなものを感じる気がするんだが



でも小隊の中で魔力感知を得意とする魔導師団員も、何も反応はないと言っている。


アデレイドは首を傾げながら、他の騎士団達と共に結界の方へと向かっていった。




『・・・行ったかな。昨日一瞬だけ油断して結界に触れたせいだね。危ない、危ない』


生い茂る木々の影で、アデレイド達の様子を見物していた何かがスっと霧のように消えた。



***************



領地に無事に帰還した偵察部隊。

騎士団の執務室に戻りジェイルズ総師団長に報告へ行く。


「何もなかったか・・・まぁ何もないならない方が良いからな。皆ご苦労だった」


「はっ!」


七人は騎士の礼をとり、総師団長と騎士団長を残し部屋を後にした。


騎士団第一部隊隊長と魔導師団第一部隊長の二人は遅い昼食を摂ったあと街に出て、討伐した魔獣の戦利品を買取屋まで売りに行くらしい。


売って手に入れたお金で、今日の偵察部隊のメンバー達で一杯やるそうだ。


アデレイドも邸に一旦戻り、遅めの昼食を摂ることにした。



昼食を食べ終えた頃には、森で感じた変な気配のことはすっかり忘れていた。



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