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【54】街へご案内(1)



歓迎の宴が無事に終わった翌日

クリス殿下とマリア王女を街に案内する予定となっている。


朝食は殿下達と同じ席に着くので、仕方なくワンピースを着て食堂へと向かったが、街に出掛ける為の着替えをしに部屋へ戻ると、ワンピースからいつものガウチョパンツとブラウスに着替えた。


「お嬢様、王子殿下と王女殿下にご同行するのに本当にそちらのお洋服で宜しいのです?」

「え?殿下達はいつも通りの対応で良いって言ってたし服もいつも通りで良いでしょ。着飾る必要なしよ」

「そ、そうですかねぇ」

セシルは怪訝な表情に首傾げながら、髪を一纏めにしポニーテールにすると組紐で仕上げてくれた。


髪を結い終え、太腿にホルスターを装着し終えると、セシルに手を振り部屋を後にした。


自室を出て、マリア王女が滞在している部屋へと迎えのため訪れた。

扉をコンコンと叩くと「どうぞ」とマリア王女の声と共に、お付の侍女がすぐに扉を開け私の顔を確認するとニコっとしたが、私の服を見た途端に一瞬ギョッと目を見開いた。

侍女は少し戸惑った様子を見せたが部屋へ通してくれた。


マリア王女は髪をハーフアップにし、淡いブルーの丸襟でパフスリーブの、何も刺繍も装飾も付いていないシンプルなワンピースを身に纏っている。

シンプルながらも、その光沢のある生地と佇まいを見れば高貴なお方だと言うことは一目瞭然だ。


今日の私は、首元のネックレスが見えないようにスタンドカラーを選んだ。袖は長さが肘までのフレア袖、色は薄いグレーのブラウスと、濃紺の膝丈ガウチョパンツだ。


私の今日の服装を見たマリア王女、ほんのり頬を赤く染めながらも目が飛び出そうな程見開いている。


「エル様のそのお洋服・・・その、少し丈が短いような・・・体に合っていないのかしら」

私の脚を直視できないのか、視線を泳がすマリア王女。

「いえいえ、少し外の陽気が暑くなってきたので仕立て屋さんに短いのを作ってもらったのです」


私の言葉に驚いたマリア王女の目が本当に飛び出そうになったが、また更に忙しなく目を泳がせ何か言葉を探している様子だ。


「た、確かに、長い丈は暑いですよね・・・」

「そもそも脚を出したらはしたないと誰が言い始めたのか。たかが脚ですよ?腕はドレスでも出しますよね?腕は良くて脚が駄目な理由が分からないです」


マリア王女が私の言葉にハッとした表情となった。


「そう言われてみたらそうよね。公式の場のドレスでも肩が大きく開いていたり、腕を肩から出す方もかなり居らっしゃるわ」

「脚も肩や腕と同じと私は思っているので、脚を出す事に特に抵抗はないのです」

「なるほど。私も短い服を作ってみようかしら」


王女付きの侍女さんはギョッとした顔付きになったが、ロベルタさんに話したら、きっと喜んで飛んで来るだろう。


マリア王女は「宴のドレスも素敵でしたわ~」と服について会話をしながら、転移の部屋の前と着くと、すでに支度を終えたクリス殿下と父様と母様、兄二人と殿下達と一緒に王宮から来た騎士二人が待機していた。


父様と母様は見送りだけで、街に行くのはクリス殿下とマリア王女、私達兄妹と騎士二人だけ。


あまり大勢でも逆に目立つからね。


いつもなら街は馬で行くが、今回は殿下達がいる為転移魔法陣で行くようだ。転移魔法陣は街のギルドに繋がっている。すでにギルド長のベルナルドに話は通してあるらしい。


さぁ、行こうか。

とした時に騎士の一人がクリス殿下の前に跪き声を上げた。

「畏れながらクリストファ王子殿下。誠に護衛騎士は二人だけで宜しいのでしょうか。万が一の時に二人では・・・」


騎士の言葉に父様が答えた。


「ヘンダーソンの騎士団は、王宮騎士団にも匹敵する程の力があるのは知っているだろう?」

「えぇ、ですが・・・」


まぁ、心配する気持ちは分かるよ。

だって騎士の他は子供しかいない。普通なら誰でも王子と王女の護衛騎士が二人だなんて心配するよね。


「うちのアデレイドとアルフレッドは、こう見えて実戦経験を積んでおるので護衛として申し分ないと思うが」


父様が兄二人を見て、問題ないと言うように頷く。

うん、私も兄二人がいれば大丈夫だと思う。


父様の言葉に兄二人も口を開いた。


「本当に万が一の時にはエルがいるから大丈夫だよ。ね」

「だな。エルが居れば楽勝だな」


ニカッと笑う兄二人と対象的に、険しい表情になった騎士二人が同時に私に振り向き怪訝な顔付きになった。

傍から見れば私はただの幼女だし。


ていうか、私に振るな。


「まぁ、あれだ。ヘンダーソン兄妹が居れば大丈夫と言う事だ。さぁもう行くぞ」


クリス殿下が話を纏めてくれたが

纏め方が適当過ぎるぞ殿下!!


笑顔のクリス殿下とマリア王女、ニッと笑ったまま私に目で何かを語っている兄二人、納得いかない顔の騎士二人と共に、兄二人に対して呆れ顔の私は転移魔法陣へと入った。


父様と母様は満面の笑みで手を振っていた。



転移魔法陣でギルドの転移部屋に到着すると、ギルド長のベルナルドが膝を折り出迎えた。


「貴殿がギルド長のベルナルド殿か。本日は宜しく頼む」

「クリストファ王子殿下並びにマリアーノ王女殿下、ようこそお越しくださいました」


転移部屋を出てベルナルドの案内で一階のフロアに降りると賑やかな声が聞こえてきた。

一階は受付や軽食が出来るスペースがあり、冒険者で賑わっていたが、私達が階段から降りてきた事に気づくと一斉に視線がこちらへと集まった。


いくらシンプルな服装でも王子と王女からは高貴なオーラが出てるもん、バレバレだよ。


「おい、戦闘の女神が来たぞ」

「おぉ、あの藍色の髪の子、あれがそうか」

「あんなに可愛い顔してるのに強いんだな」


コソコソ話しているが全部聞こえてるよ!

っていうか私が注目されてたのか!?


「皆さんがお話されてる『戦闘の女神』って何です?」

「王女殿下、戦闘の女神はねエルの事だよ」


マリア王女の疑問にサラッとアルフ兄が答えると、マリア王女の目が光ったように見えた。


アルフ兄!勝手に教えるな。

そもそも戦闘の女神じゃなくて加護だし!


「何だ、お嬢さんは『戦闘の女神』を知らないのかい?ここいらじゃ知らない者はいないぞ?」


騎士二人が話し掛けてきた冒険者を制しようとしたが、クリス殿下がその騎士二人を止めた。


「えぇそうなの、先日王都から来たばかりですのでこの辺りの事には疎くて。宜しけれは是非『戦闘の女神』について詳しくお聞きしたいですわ」


マリア王女は周りに集まっていた冒険者達にニッコリと微笑みを返した。









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