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【31】初めての街(1)



夕刻になると兄二人が邸に戻ってきた。

「今日はエルに会えなくてエドガー騎士団長が寂しがっていたぞ」


そう言えば、ギネス師団長には会ったけどエドガー騎士団長には会っていないな。


「明日はエドガー騎士団長の方に行きます。魔鉱石で創りたい物もあるし」

「魔鉱石が目的で、騎士団長はついでって事だな」

アデレ兄が笑った。


「ねぇ明日は少し街に行かない?」


街?!アルフ兄、いま街って言った?!


「おぅ、いいな街。僕も買いたい物あるし」

「エルに初めての街を案内してあげるね。街の屋台で色々買って食べ歩きもできるよ」


う、嬉しいー!食べ歩き最高!


「そう言えば今日ギネス師団長が素材がなくなったって言ってたけど、どうしても革が欲しいのだけど、街で革は買える?」

「うん、素材屋があるよ。そんなに高くなく手に入ると思うけど・・・あ、初討伐は来週に行く事に決まったから素材はその時に採れるけど」


「いや、素材を採りに行くための素材です」


キリッとした顔で答えた。

「なるほど?良く分からないけど明日街で見てみよう」


明日は街か~。

何だかテンション上がって遠足に行く前日の気分だ。

今夜、興奮して眠れなかったらどうしよう・・・


などと考える暇もなく爆睡だった。



翌朝いつも通り早起きして、浮かれ気分でアデレ兄と鍛錬した。浮かれ気分で朝食を食べ、浮かれ気分で訓練所に向かった。


まぁ、気分は浮かれていても顔はいつでも無表情だが。


エドガー騎士団長の執務室に行くと

「昨日は会えなくてつまらなかったぞ」

「そうなんですね。所で魔鉱石ってまだありますか?」

エドガー騎士団長の言葉をさらっと流して、本題を振った。

「お、何だ。冷てえーな」ガハハハハとひと笑いし、魔鉱石ならまだ結構あるぞと言い奥から出して来てくれた。


「魔鉱石は幾つか貰っても良いですか?」

「別に構わんが、何か創るのか?」

「はい、投擲用のナイフを数本と長めの片刃の物が一振欲しくて」

「お、長めの片刃って小太刀の長くなったような物か?」

「そんな感じです」

小太刀は好きだけど、普通に刀も好きだ。

ただ前世では刀は愛用している物はなく、家にある物を適当に使っていた。

長いのもあれば便利だし、一振は持っていたい。


「創ったら見せてくれよな」

エドガー騎士団長は、ゴロゴロと両手にいっぱい魔鉱石を手渡してくれた。


お礼を言い、空間収納庫にしまった。

そして今日は街に出掛けるから、とエドガー騎士団長にまた明日ー!と言い執務室を後にした。

寄宿舎の外に出ると、ギネス師団長の所へ行ったアルフ兄もすでに戻っており、手には二頭の馬の手網を持ち待機している。


「さぁ、行こうか」


前世でも今世でも人生初の乗馬だ。

行きはアデレ兄、帰りはアルフ兄が乗せてくれると言い、馬の脚を身体強化して走り出した。


「エル、危ないからしっかり捕まってろよ」

「うん」と言いアデレ兄の体にしっかり両腕を回ししがみついた。


馬で走り出してから一時間もしないで街に辿りついた。

街はそこそこの人出で、活気がある街並みに胸が高鳴るのを感じた。


馬は街のギルドで預かってくれるそうだ。

ギルドは三階建てで結構な大きさの建物だ。

アデレ兄がギルド長に挨拶してくると言い、建物に入っていく。私とアルフ兄は馬を連れて建物の脇にある馬繋場に向かった。

馬を繋ぎ終えると「アルフ殿」と声がし、振り向くと、背の高い細マッチョの好青年がアデレ兄と共にいた。


「あ、ベルナルドギルド長お久しぶりです。馬をお願いしますね」

「おう、もしかしてそちらは噂の妹君ですか」

「初めまして、エルファミアと申します」


いま、噂のって言った?噂って何?


「やはり。お会い出来て光栄です。戦闘の女神様の加護を持つエルファミア様」


戦闘の女神!何故もう噂になってるの?!


・・・絶対に犯人は母様だ。


「ま、まぁ、そういうのは無しで。とにかく馬をよろしくね」

笑いながらアルフ兄はベルナルドギルド長に言い、すぐにその場を離れた。


「噂の出処は母様ですね」

「間違いないな」

「さすが母様、やる事が早いね」


アルフ兄、感心している場合か!

とりあえず私が街に来たのは今回が初めてだから、まだ今会ったギルド長以外に顔は知られていないはずだ。


そうよ、今日はいっぱい楽しまなきゃ


街の中心部は大きな広場のようになっている。

そこを中心にマス目状に街は広がっているようだ。

マス目状の街って似たような通りが多いから覚えるの大変なのよね。何か目印になるようなお店で記憶していくしかない。


覚えるまでは迷子にならないようにしないと。


そしてその広場ような場所には、日々屋台が並び美味しそうな匂いが漂っていると言う。


兄二人に挟まれ手を繋ぎ、三人で並んで歩き出した。


「何か気になったらすぐ言ってね」


まずは喉を潤すために果実水を購入。

兄二人は柑橘系、私はベリーっぽい物にした。

一口飲んでみたらベリーで間違いないようだった。


やっぱり食物系は前世とほとんど変わらないのかなぁ?


果実水を飲みキョロキョロしながら進むと、どこからか肉を焼く香ばしい匂いがする。匂いを辿って行くと、香ばしい匂いの元は肉の串焼きだった。


見た目は鶏っぽい、焼き鳥みたいな見た目だ。

アルフ兄に「これ食べたい」と買ってもらい、一口頬張りモシャモシャと咀嚼する。


味付けは塩コショウのみのようだ。

でも焼き加減が絶妙でなかなか美味しい。



焼き鳥は、塩派とタレ派で好みが分かれるが


私は焼き鳥はタレが好きなんだよねぇー

この世界、どこかに醤油ないかな・・・


そして塩っぱい物食べたら甘い物欲しくなった。

少し先でパウンドケーキをカット売りしているお店を発見し、またアルフ兄に強請って買って貰いモシャモシャと食べ歩いた。


「本当によく食べるよな」

アデレ兄が言うと、アルフ兄はククッと笑いを堪えながら私の顔を見て、口の端に付いていたであろうパウンドケーキのカスを親指で擦って取ってくれた。



・・・少し顔が熱くなった。

そんなことされたらキュンとするじゃない!



・・・って12歳の少年に絆されるな私!

しかも相手は兄だよーー!








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