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【23】戦闘の女神って・・・



アルフ兄はエドガー騎士団長の顔を真っ直ぐ見て話始めた。


「少し昔話になりますが・・・かつて魔族と人間との間に戦乱が起こり、人間は戦える者は男女関係なく戦に駆り出された。その時にオーストヴァレイ王国に『戦闘の女神』と呼ばれる程の強さを持つ、セクメティーナ様が居られたのはご存知ですよね?」


「それは有名な逸話だな。セクメティーナ様の圧倒的で、でも華麗に戦う姿を見た者がそう呼び始めて、国中に広まった。そしてセクメティーナ様の通った跡には魔族が一匹も残らない・・・てな。学園の授業で必ず習うし、誰もが知っているに決まっとろうが」


「セクメティーナ様は魔力も高く、魔法の才能にも優れていたとか・・・素晴らしい!」

ギネス師団長が一人言のように口を挟んだ。


「僕達の妹のエルファミアが、魔力の暴走で高熱を出して寝込んでいたのは知っていますよね?」

「あぁもちろんだ。ジェイルズ総師団長から聞いていた」

エドガー騎士団長は頷いたが、片眉を上げた。


「高熱を出し寝込んでいた時に、エルの意識の中にセクメティーナ様が現れたようなのです」


カッ!と目を見開いたエドガー騎士団長が、ブンっと音がしそうな程の勢いで私の方に顔を向けた。


目が超怖いっ!

けどアルフ兄の言葉を肯定するように一度頷いた。


「エルは意識の中で、セクメティーナ様と色々話したことにより、結果として潜在的な能力の開花に繋がったようなのです」


エドガー騎士団長は見開いた目で私を見たまま固まっている。

ギネス師団長は「なるほど、エルファミア嬢はセクメティーナ様と・・・それは面白い!」と、目が輝き更にウザさが倍増したように見える。


「僕達も聞いた時は驚きました。でもエルの魔力の高さ、魔法の威力、身体能力の高さを見て納得しましたよ」

「・・・確かにそうだな。セクメティーナ様の加護のようなものか・・・」


私を見るエドガー騎士団長の目が、神聖な者を見るような眼差しに変わった。


ん?話を聞く限り、セクメティーナはただの人間だよね?

人間から人間へ加護?ある訳なくね?!


でもエドガー騎士団長がそれで信じたなら、それで良しってことか。


「父様は忙しそうなので、まだ話せてないのですが、王都から戻ったら話そうと思っています」


「そうか!よく分かった。そういう事なら俺もこれから、エルファミア嬢がセクメティーナ様のようになれるように、しっかり面倒みてやるからな」


エドガー騎士団長はニカッと笑った。


無事に話が終わった。どうやらエドガー騎士団長は私を認めてくれたようだ。


・・・と言うか、全てアルフ兄の嘘だけどね!

こんな壮大な嘘、よく思いついたな流石だわ。

戦闘の女神は大昔に実在したのだから、全て嘘ではないところに真実味が湧くってものよね。


凄いな!アルフレッド!

本当に12歳なのか?!


アデレ兄は黙っているが、内心呆れているに違いない。アルフ兄はこちらに目線を送り軽く片目を閉じウィンクをした。


美形の少年からウィンクいただきましたー!

・・・とふざけている場合ではない。


アルフ兄のおかげで、これからは少し気楽に訓練所に出入りが出来るようになるだろう。ありがたい。


ギネス師団長が突然パンっと手を打ち「さぁ!話は終わりましたね。次は魔法の確認ですよ。室内訓練所に行きましょう」


ギネス師団長は、また私の背中に手を置き軽く押して移動するように促した。

その後を兄二人と、何故かエドガー騎士団長も着いてきた。


騎士団長、マジで仕事はどうなってるの?!




ギネス師団長に連れられ室内訓練所に到着した。

室内訓練所では、魔導師団員や見習いが魔法の練習に精を出している。


「では、補助系魔法は何が使えるのか。色々試していきましょうね」とニッコリ微笑み、話を続ける。


「まず、身体強化は良しとして、魔法付与はもう確認済ですから後は何に付与出来るかを少しずつ試していきましょう。後は感知、検索、空間、錬金辺りですかね」


エドガー騎士団長は、魔法の説明が退屈なのか、訓練所の床に腰をおろした。


本当、この人何しにきた?!


エドガー騎士団長の隣りにアデレ兄も座った。


「大まかに説明すると、感知は強い魔力反応を感知したり、魔力の変動を感じ取ったりですね。検索は、感知で感じた魔力の持ち主を探り、魔力の持ち主を特定できたりしますね」


なるほど。


「空間は、例えば小さなバッグでも中を拡げて大量に物が入るように出来ます。魔導師団員も何人かは持っていますね。錬金は武器以外の作りたい物の素材と魔石を使って物を創り出します。ちなみに武器は魔鉱石でしか創れませんから」


なるほど。どれもあれば便利そうだ。


「さぁ、どれから試しましょうか」

「空間は『物』じゃないと駄目なのですか?」

「人間や生き物には無理ですけどね。実在している物なら、割と何でも出来ますよ」

「・・・空気でも?」


空気は酸素やチッ素、二酸化炭素などの気体だから、目に見えないだけで空気中に漂っている物質だ。即ち実在するってこと。


「空気とは面白い事言うな~!ガハハハハ」

エドガー騎士団長が大笑いした。

「空気はないだろう」とアデレ兄は言う。

周りの魔導師団員達も笑っていた。


「でも空気も目に見えないだけで、実在している物になるんじゃないのかな?」

アルフ兄、その通りだよ、流石です。


「空気ですか・・・やはりエルファミア嬢の発想は凄いですねぇ。ただ目に見えない物を、いかにして思い描き形にするかは難しいところですね」

「難しく考えるから難しく思えるのですよ。もっと簡単に考えて見てください。空気中に穴開けるように想像してみたらいい」

「空気に穴ですか?」


こんな感じでと言い、自分の目の前に指で丸く円を書いてみる。気のせいか指に違和感が走る。

・・・この違和感、私は知っている。


「えっと・・・その穴の中に自分専用の空間がある。と想像する。例えばチェスト位の大きさの箱とか?」


と言いながら、穴の中にふと前世で見た事のある物置のような想像をし、指で描いた円の中央辺りに手を突っ込む真似をして見せた。



・・・真似ではなかった。

ポッカリと空間に穴が開いた。


ギネス師団長は顎が外れそうなくらい口を開いた。エドガー騎士団長とアデレ兄は瞬時に立ち上がり穴を見つめている。

周りの魔導師団員達も皆、固まっている。


アルフ兄は「うん、エルは空間魔法も適正ありだね」と、とても冷静だ。


指に違和感を感じた時点で予感はしていた。


100人乗っても大丈夫!な程の物置を想像したけど・・・本当に中はそんなデカいのか!?


いきなり大事な物を入れて行方不明になったら怖いので、その辺に落ちてた石を入れてみる。そして一度『閉じろ』と念じたら閉じた。


うぉー!穴が消えた!!とアルフ兄以外の三人がいちいち煩い。


そして今度は指で円を描く真似はせず、ただ空間の物置を頭に浮かべ、手をスっと前に差し出した。


手首から先が、空間に溶け込むように見えなくなった。


手、手がっー!!・・・また三人が煩い。


目に見えない手で何かを掴み、自分の方へと手を引き出した。手にはしっかりと石が握られている。


おぉ!石だ!!・・・本当三人煩い。


成功で間違いないようだ。

よし、これは空間収納庫と名付けよう。


「エル、凄い!成功だね。僕もバッグじゃなくてそれがいいなぁ。後で教えてね」

「もちろんだよ」と少し口角を上げ頷く。

アルフ兄は私が微笑んだことにちゃんと気づき、微笑み返してくれる。


そして私は二本の小太刀を空間に入れたり出したりしてみた。問題なさそうだ。


「さすが、エルファミア嬢!バッグなどを持ち歩かなくて済むのは便利です。後で私にも教えて下さいね」


こちらの様子を遠巻きに見ていた団員達はかなりざわめいている。


これからは、空間魔法を使える人はバッグを持たずに『空間収納庫』が主流になるだろう。








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