【209】婚姻の贈り物
旅行に出掛けるはずだった昨日は、あんな状態で出掛けられる訳もなく、結局三泊四日となってしまった新婚旅行。
ディスと三カ国まわったが、とても有意義な旅行となった。それは何故かって?何と『小豆』を見つけたからですよ!
そこの国は、豆の国と勝手に命名した。
「お嬢、お帰りなさい!新婚旅行どうだった?」
「ねぇこれ、何だか分かる?」
麻袋から一掴み出してヴァルテスに見せた。
「あ?あー!小豆かっ!?」
「そうだよー!小豆見つけちゃった」
「よし!餅だ!餅つこう、餅!」
「今からもち米と小豆仕込んでも、食べれるのは明日かな~。一晩は水に浸さないと」
ヴァルテスと私の会話を聞いた周りのノルマン達は、もちろん小豆など知るわけもなく、なんだなんだ?と顔を見合わせていた。
ディスはまた新たな料理が食べれるのかと、私が小豆を見つけて騒ぎ出した時からウキウキした様子だったが、帰宅するとすぐに私達の店へと飛んで行った。
旅行中に「米の物販の場所に増築してチャイナシャツでも少し並べようかな」と話すと、帰宅したらすぐに業者に手配します、と一言返事でOKしてくれ今に至る。
ジーク達は週末明けにオープンする私達の店の事で今から緊張しているみたいだ。ちなみにダグラスさんの店はエルダさんの友達が入ってくれる事になり、これで何とか四人体制となったが、エルダさんの友達が慣れるまではユーリが面倒見る事になった。
もち米と小豆を水に浸す作業をしながら、数日後の店オープンについて会議である。
「ジーク・ディーンは私と調理場、ミーナ・カーラ・ティーナ・ギースの四人は接客、米の物販はヴァルテス、接客が四人で回らないようならディーンも接客に助っ人、私が店に出ると騒ぎになる気がするから、それで良い?」
ジーク達は気合いを入れて頷いた。
「チャイナシャツの物販も完成したら俺に任せろ」と親指を立てたヴァルテス。
「そういや二人が留守の間に、城の臣下達から婚姻祝いの贈り物が届いてたぞ。量が多かったから二人の部屋じゃなくて、空いてる客間にぶち込んでおいた」
えー、何が届いたんだろ?
気になるけど見るのも怖い気がする・・・
ヴァルテスと二人で客間へと向かった。
扉を開けると綺麗に包装された箱がいくつも置いてあり、中でも一際目立つやたらデカい箱。
「この箱、やたらデカくない?何これ」
「こんなのあったかな?ていうか、これお嬢一人で開けるのか?ルキア待った方が良くね?」
客間の中の気配を探ってみたけど、特に何もなさそうだけど、念には念をだ。
「確かに。ディスが帰ってからにしようかな」
店の増築の件で外出していたディスが戻り、ディスとヴァルテスの三人で客間に来ている。
「随分と大きな箱がありますね、これは一体何でしょうか」
それは置いておき、まず他のから開けていくことになり、箱の包装を破りを次々開けていく。
「な、何だこれ。本当に贈り物?なのかな」
開けた箱から出てきた数々の品は、見たことない実や草などの植物ばかりだ。
「お嬢、これ何だろ?何かの実か?何か紙に書いてある、読むよ~」
『ご婚姻、おめでとうございます。
こちら、先日出掛けた先の国で見つけた
何かの「実」でございます。
こちらは食す事が出来ますか?
エルファミア様ならご存知かと思いまして
贈らせて頂きました。
もし食せるのならご一報頂きたく。
宜しくお願い申し上げます』
「だってさ。ぶふっ!何だこれ」
はぁ?!
「貴方は米や醤油など、この国では見たことがない食材を広めて稼いでいるので、臣下達も自分が見つけた物で一儲けしたいと思ったのでしょう。貴方にあやかろうとしたのでしょうねぇ、ククッ」
それなら城に行った時とかに、普通に聞いてくれれば良くない?態々このタイミングで送ってくる意味っ!
「こうなると、このやたらデカい箱も開けるの違った意味で怖えな~。ぐふっ」
「開けてみましょうか。何が出てきますかねぇ、色んな意味で楽しみです。クククッ」
ヴァルテスとディスが二人がかりで、デカい箱のリボンを解き、蓋を開けた瞬間にヴァルテスとディスの驚愕した顔。
箱が開け放たれた瞬間に感じた気配に、一気に箱との間合いを詰めて、飛び出したものに渾身の拳をアッパーのように下から上に振り上げた。
「がはっ!!」
飛び出した者の鳩尾に綺麗に入った拳。
「おい、こらっ!何しとんじゃ赤っ!!」
箱の中で痛みで蹲っているのは赤だ。
まぁ箱がデカすぎる時点でだいたい予想はしていたが、まさか本当にこんな馬鹿げた事をするとはね。
あなた魔王の側近ですよね??いつ開けるか分からない箱に忍びこんでいられる程暇なのかっ?!
「相変わらずお嬢さんの一発は効くなー」
「ルベウス・・・あなたいつからそこに?」
「こんなデカい箱、俺は受け取ってないから、他のヤツらが受け取ったのかと思ってたが・・・」
「・・・昨夜からずっと待機してた」
「あなた馬鹿ですか?!」
「お前やっぱアホだな!」
「えー!他の訳の分からない植物より余程マシだよねっ?!お嬢さんも俺に一発食らわせてすっきりしたよね?ね?」
「ま、まぁ、確かにすっきりはしたかも」
「ほら~!俺いい事した~!」とドヤ顔の赤に、ディスとヴァルテスからチョップがお見舞いされた。
決して、いい事した訳ではないから勘違いするな。




