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【192】仮面は完売しました



「エルファミア嬢!ファーガス殿!」

いきなり引き戸が開き、血相を変え慌てたように飛び込んできたのは領主のゴードンさん。


「あ、ゴードンさん、酒蔵から戻ったんですね」

小上がりで三人でお茶を啜りながら手を振った。

その様子を見たゴードンさんは目をまん丸にして、かなり驚いている様子で口を開いたが「え、あれ?おや?」しか出て来ないうえに、首を傾げ始めた。


「ゴードン、お前さんも茶でも飲め」

「は、はぁ~。いったいどういう事です?」


ゴードンさんは屋敷の忍者に話しを聞き、ゴードンさんもおやじの偏屈さを知ってるからか、心配して来てくれたのだ。

「ワシは、この嬢ちゃんと旦那と仲良くなったんじゃ、茶飲み友達じゃな。ワッヒャッヒャ」


友達になった覚えはないが・・・まぁいいか。


おやじに忍者服を四着貰い、共布のほっかむり用の布を持って行けと言われ「この布で袖頭巾とマスクを作る」と言うと「嬢ちゃん、袖頭巾知っとるのかっ!?」と驚きの声を上げたおやじ。

どんな風になるのか是非知りたいと言うおやじに、布と糸を貰い、チクチクと縫い上げたマスクの表面の下の隅に、簡単に蔦の刺繍を施し、出来上がった頭巾とマスクを着けて見せた。見た目は黒のパーカーに黒マスクのような仕上がりだ。


「ほら袖頭巾だと装着も簡単。そしてマスクの黒に少し色を入れると素敵でしょ。今は昔と違って闇に潜む事も少なくなったし、必要な時だけ黒一色にする。そうやって使い分ければいいのよ」


それを見たおやじは「うむ、新しい物を取り入れるのも悪くないのぉ」と呟き、これを真似したいと言うので、今作り上げた物を見本用に渡して、快く頷いた。



後に、警備服は脱着が楽な袖頭巾に徐々に変更となり、口元も黒のマスクが主流になり、普段マスクはワンポイントでオシャレを楽しむのが警備の若者の間で流行り、ゴードンの領地から国全体に拡がった。


警備服の事と、米や醤油などの事も含め、国の発展の元となった私とディスは、米の国の陛下に城に招待されるのは、もう少し先の話しである。



魔族の国、城の多目的部屋では側近ズと私とディス、アルフ兄とヴァルテスで、黙々と仮面の製作に励んでいた。

と言っても、金属系以外の物を創るには『錬金』が必要となるので『錬金』を持っていないヴァルテスは、仮面に羽根飾りや、顔に装着する時の紐などを付けていく係だ。


毎日手の空いた者が少しずつ製作していたが、いよいよ明日の朝に販売解禁という事で、急ピッチで目標数まで全員で生産する事になった。


「僕達少し前に、馴染みの仕立て屋に衣装を頼みに行ってきたよ、側近ズはもう衣装の用意は出来たのかい?」

アルフ兄の質問に「なかなか良い案が浮かばなくてな、まだ何だ」と言う黒。


そんな事なら米の国から、羽織袴でも調達してくれば良かったかも?でも着付けを出来るのが私だけだから、自分達以外に四人も着付けするのは時間も掛るし大変だ・・・その前にディスが側近ズの体に触るなど絶対に許さないだろう。


そういえば前世のどこかの国で、詰襟のような形のシルク素材で、膝までのロング丈シャツのようなジャケットみたいなのあったよな?襟や胸元にいっぱい刺繍が施してある民族衣装だったかな?ズボンは脛の辺りがピタっとしていて裾がクシュっとして、スラッと背の高い人が着ると格好良いんだ。


「側近ズは御用達の仕立て屋ってあるの?」

「もちろんあるよ。俺達こう見えても陛下の側近だからね?そのくらい当たり前でしょ」


御用達の仕立て屋なら測定しなくても側近ズのサイズも知っているはずだから、すぐに作業に取りかかれるはずだ。


「なら、紙に衣装の図案描くから急いで持って行って。御用達の所なら間に合わせてくれるでしょ」


その言葉に反応した緑がすぐに紙とペンを用意してくれたので、その場でサラサラっと描いて渡した。


「俺行ってくるよー!」と走って出て行った緑。


「早っ、ていうか他は図案見てないけどいいの?」

「ん、いいよ。お嬢さんの図案なら変過ぎるなんて事はないだろうし、どうせ仮面着けるしな」


確かにね、でもいくら目元を隠しても、側近ズは誰が見てもひと目でバレバレでしょ。


城内では陛下が前もって『普通のスーツやタキシードは禁止!仮装で仮面着用者のみが参加可!人数制限あり!』と、御触れを出していた。

ある程度の数の仮面が出来上がるまで販売されなかった仮面が、いよいよ解禁になった。


結果、予め決めてあった販売場所には人が殺到し、あっという間に限定数は完売となり、第二弾の販売を求める声が上がったと言う。


赤「凄ェな!思った以上の反響だったな」

青「皆、楽しい事好きだからな」

黒「これは、下手したら仮装・仮面舞踏会を定期的にやろうと言いかねないですね」


ジークやユーリ達の為に考えた夜会が、少し違った方向にいった気もしないでもないが、まぁ皆が楽しめるなら有りだ。


「ヘンダーソンでも仕立て屋がノリノリで、仮面舞踏会をやる気満々だったよ」

「やっぱりそうなるよな」とニッと笑う赤。



その日の夜から、せっせとノルマン達四人分の袖頭巾とマスクの製作に取り掛かった。

何故か私の隣りに座り「ふふ」と笑っているディスに、ん?と顔を向けると、突然額に口づけをした。

頬が熱くなるのを感じながら、思わず片手で口づけされた額を押さえディスを見つめた。


「真剣に縫い物をしている姿でさえ可愛くてつい、でもまだ日はありますよね?あまり根詰めると体に悪いですからね」


そう言い私の手から縫い物を取ると、私の目を見ながら妖艶に微笑み、背中と両膝の裏に手を差し込んだ。


「さぁ私と一緒に息抜きをしましょう」


その言葉を聞き終えた時には、すでにベッドの上!?

本当に私の体を心配しての事なのか、それとも本当にただ縫い物している姿からのスイッチオンなのか?


謎だけが残る・・・










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