【189】仮装衣装
ヘンダーソンに着いて、まず訓練所のジークとディーンの元へ顔を出すと、すぐに走り寄ってきたジークとディーンと何故かギネス師団長。
「エルファミア嬢、ファーガス殿、来るなら来るって前もって言って下さいよ~。出迎え致しましたのにっ」
いや出迎えとかいらないよ、一応自分家だし
「用があるのはジークとディーンだから、ギネス師団長は仕事に戻っても大丈夫ですよ?」
「何を仰いますかっ!私も一緒にその用をお聞きします」
え、何故??
ギネスの言葉に疑問しか残らないが、とりあえずジークとディーンに魔族の国でジーク達四人の歓迎の宴、仮面舞踏会が開かれる事を話した。
「全員仮面を着けて夜会って事ですか?!」
「まぁ簡単に言えばそういう事です」
「何ですか!その面白そうな夜会は!ファーガス殿、私は参加出来ませんかね?駄目ですかね?」
ちょっ、ほら、ギネス師団長のせいでまた話しが変な報告に向かいそうだよ?!しかもディスがギネス師団長の圧に押されてるよ?!
「わ、分かりました。ではジークとディーンの世話をしてくれている上役という名目でご招待いたしますよ」
ギネス師団長はニンマリと微笑むと、派手に腕を振り上げガッツポーズをした。
ディスに背伸びして少し顔を近づけると、すぐに屈んでくれたディスの耳元に口を近づけ、小声で「何かごめん」と言うと、そっと私の頭を撫でたディスも苦笑いだ。
「俺達はヘンダーソンの騎士服で行きたい」と言うジークとディーンの二人。
なるほど、騎士服もいいよね。ここの騎士服なら黒いマスクが似合いそうだ。
「二人が騎士服ならギネス師団長も騎士服ね」
「え!何故ですか?!私も変わった衣装を着たいですよ?」
「だってジークとディーンの上司だけが仮装ってのも可笑しいでしょ?」
「な、なら、せめてアルフ殿やヴァルテス殿と同じ衣装で・・・駄目ですか?」
ちょっ、いい大人が上目遣いでモジモジすんな
「も、もう、わ、分かりました~!」
ギネス師団長は飛び上がる勢いで、また腕を振り上げガッツポーズをした。
「僕達今からロベルタさんの店に行くから、師団長の衣装も頼んでおくね。ジークとディーンの騎士服はギネス師団長お願いね」
「了解しました。お任せください!」
ヘンダーソンの騎士服は、いつも頼んでいる仕立て屋さんがあるのだ。私が初めて貰った騎士服もそこでお願いした物らしい。
「ギネス師団長って本当おもしれぇよな」
ヴァルテス、それは褒めてるの?貶しているの?
あぁ見えて魔導師界隈では凄い人らしいからね、一応。
まぁ何とかと天才は紙一重って事だ。
ロベルタさんの店に入ると、店の中は従業員が右往左往していて、相変わらず忙しそうだ。
「あら、まぁエルファミア様!ちょうど今日あたり遣いを出そうと思っていたのですよ」
少し前に頼んでいた、海用のキャミソールと短パンが完成したと言い、服を出してきた。
「エルファミア様は、本当にこのような格好でお出掛けになられるのですか?」
「え!違う違う、これは海で遊ぶ用と部屋着だから。流石にこれで街は歩かないよ」
「そ、そうでございますわよね」
そう言った後、え!海で遊ぶ?!と驚愕していた。
「ロベルタさん、相変わらず忙しそうですねぇ。流石に今から注文しても、20日程では出来上がらないですよね」
態とらしく少しため息を吐きながら顔を下に向けると、ロベルタさんはすぐに私の肩を両手でグッと掴んだ。
「エルファミア様?私が出来なかった事などありますでしょうか?エルファミア様の依頼でしたら、何時でも最優先で取り掛かりますわよ」
「でも一枚や二枚ではないので流石にね・・・」
「お任せくださいっ!私、必ず完成させてみせます」
「流石ロベルタさん!ロベルタさんなら引き受けてくれると思ってました」
今回のは売り上げに貢献出来るか怪しい物なので、あえてドレスではないとは言わずに、まず承諾を得たかった。
無事にロベルタさんから承諾を得た所で、紙に描いた全員分の服のデザインを見せた。
「な、何です、これは?!」
「一月後に夜会が開かれるんだけど、そこにはドレスではなく少し変わった格好で出なくてはならないの」
「変わった格好・・・」
「皆が変わった格好をしなくてはならないから、一枚や二枚ではなくて七人分は必要なのよ」
暫く全てのデザイン画を手に持ち、黙ってじっくり見ていたが、漸くして口を開いた。
「面白いっ!そんな楽しそうな夜会、私達もやってみたいですわ。ヘンダーソンで始めたら流行るかもしれませんね」
「あ、それなら、母様も楽しい事は大好きだし、その話しをしたら飛び付く可能性高いと思うんだよね」アルフ兄の助言にパァッと顔を華やかにさせ親指を立てたロベルタさん。
「そうしましたら、また服が完成したらこちらでお披露目ですわね」とニヤッ~とした。
ま、まぁ急ぎで作って貰うしお披露目くらいしますよ。
それにもしヘンダーソンでやるなら、他にも色々な形の服を描きますよ。チャイナドレスとか魔女服もいいかも。
そんな話しをすると、楽しみですわ!と目をキラキラさせながらも、早速取り掛からせて頂きます。とロベルタさんは快く引き受けてくれた。
よし、これで私達の衣装はOKで一安心だ。
あとは米の国に行って、忍者服をゲットしないとね。
ディスの国に戻る前に、ヘンダーソンの邸に寄ってマリアに海用のキャミソールと短パンを届けた。
「キャッ!何この服!更に露出度が上がったわね」
「海じゃなくても部屋にいる時なんかは結構ラクよ、これ」
そしてマリアに近づいて、そっと耳打ち
「部屋でそれ着てたら、アデレ兄も喜ぶかもね?」
「エ、エルー!?な、何言ってるのよ!」
真っ赤になって叫んだマリアだった。
陽が暮れる前にディス邸に戻ると、出迎えてくれたノルマンが、いつもならまずディスに挨拶をするのに開口一番「エルファミア様、大変です!」といきなり声を上げた。
そのノルマンの開口一番にピンと来たのか、ヴァルテスがすぐに反応した。
「あー、俺分かったかも。ノルマンそれってダグラスの食堂の唐揚げの件じゃね?」
「ヴァルテス殿!まさにそれでございます」
「もしかして人伝に唐揚げの噂が拡がった?」
「アルフ殿まで!どうしてお分かりになったのですか?」
「そりゃあね?唐揚げだし」
「だよね?唐揚げ美味しいからね~」
アルフ兄とヴァルテスは、ノルマンに対して当たり前とでも言いたげな表情をしている。
早速、唐揚げ効果が出たようで良かった。




