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【178】違法賭博場



違法賭博場に入るには、常連の紹介でないと入れないらしいが、そこはヴァルテス父の宰相の力を借り潜入する事が可能となった。



「これはこれは、かの有名な『戦闘の女神様』ではございませんか、するとこちらがヘンダーソン辺境伯様でございますね、お初にお目にかかります」

「うむ、私達がこちらに来たことは内密に頼むぞ」

「もちろんでございますとも。うちは秘密厳守でございますから、御安心してごゆるりとお寛ぎくださいませ」


何が『秘密厳守』だ。ヴァルテスがどんだけ情報持ってきたと思ってるのさ、情報ダダ漏れじゃないかいっ!


「こちらは建物全体に魔法封じが施されてますゆえ、魔法は禁止となっておりますのでお気を付けください」


無理に魔法を使おうとすると、体に電流のような衝撃が来る仕掛けらしいよ。


「お父様、私も色々やってみたいですぅ」

「うむ、好きなだけ楽しみなさい」

「ありがとう!お父様ぁ~」


可愛らしい娘という体で笑顔を振りまいた。


だが『お父様』が耳元に顔を近付け囁いた。

「お嬢さんの笑顔がすげぇ怖いよ、ぐふっ」


は?私の渾身の演技を馬鹿にするなよ赤!

そう、私の隣りにいるのは、見た目は本当の父様と変わらない程の年齢で、黒の幻術で紺色の髪に琥珀色の瞳に見えるが、顔は完全にただの少し老けた赤である。


この役を側近ズ達で取り合いになり、私が提案したくじ引きで勝ち取ったのが赤だった。

そして「あまりエルファミアにくっつかないでくださいね」とディスに念を押されたのは言うまでもない。


会場には、すでに上手く紛れ込んだ緑と青と黒の姿も確認できた。後は肝心のブレドニア伯爵がどこにいるかだ。


室内は結構な広さのうえ、かなりの人で賑わいを見せている。違法施設なのになかなかの盛況ぶりだ。


暇な貴族どもが、ちゃんと仕事しろっ


いくつもある、変わった形のテーブルの中央には、黒スーツを着たディーラーが席に着いた客にカードを配っている。どのテーブルでもゲームは「ブラックジャック」だ。


いくつかのテーブルを見て回ると、数日前にヴァルテスを通して、陛下の水晶玉で確認した見た顔。


ブレドニア伯爵、見っけ~と思わずニンマリ。


そしてブレドニア伯爵のいるテーブルに近づき、調子よく勝っている様子のブレドニア伯爵に声を掛けた。


「随分と勝っているみたいですね、運が良いのですね、凄いですわぁ~」と声をかけると、こちらに振り向きハッとした表情となったブレドニア伯爵。


「もしや『戦闘の女神様』のエルファミア・ヘンダーソン令嬢ではございませぬか?お会い出来て光栄ですなぁ」

「確かブレドニア伯爵でしたかしら」とスカートの裾を摘み膝を軽く折り、首を傾げてニッコリ微笑んだ。


「おお、私の名を知っていただけているとは、至極満悦でございます。そちらはヘンダーソン辺境伯様でいらっしゃいますね。辺境伯様とこのような場所でお会い出来るとは」


私と一緒=父様、と言う図式が勝手に出来上がっているとは、楽で良いな。まぁこういう場所では、未成年は親と一緒と言うのが常識だ。


「私もたまには羽目を外したいと思いましてな、来てみたは良いが初めての者にはやはり難しいですなぁ」

「左様でございますか。でしたら私のお隣へどうぞ、宜しければ私がお教え致しましょう」


ブレドニア伯爵は「どけっ!」と言われた隣りにいた男は、渋々といった感じで退いて、空いた席に私達を並びに座らせた。


ブレドニア伯爵の言うことに従うという事は、伯爵より下の子爵だろう。


ブレドニア伯爵は、ゲームに参加しながらも、私達にブラックジャックの説明をしている。


いやいや、知ってるし。

前世でも、違法カジノで散々やった私とヴァルテスだ。

なので全員にルールを教える為に、ここ数日ヴァルテスと二人で、側近ズにディスとアルフ兄も交えて、全員でブラックジャック大会を開催していた。


「難しいけど面白そうですわ、お父様!一緒にやって見ましょうよ~」

「そうだな、やりながらの方が覚えるのも早いかもしれんな」そう言い、ディーラーに次の回から参加するから、カードを配るよう伝えた。


さぁ、ここからが腕の見せ所だ。


『せっかくだし、少しだけで良いから、本気の勝負をさせて欲しい』と二人で皆にお願いし『えー!狡い!』と言われながらも、少しだけ遊ばせて貰える事になっている。


という事で、赤と二人で本気の参加。

そして自力で賭け金を増やしていった。


「ヘンダーソン辺境伯と戦闘の女神様はお強いですなぁ!」と声を上げガハガハと笑うブレドニア伯爵も、勝ち負けを繰り返しているだけなので、まだ賭け金は減っていない様子だ。


・・・そろそろか。


「すみません、私はまだお酒を飲めないので、お水を貰っても良いですか?」と、従業員に声を掛けた。


それが開始の合図だ。


ゲームを繰り返していくと、隣りのブレドニア伯爵は段々と渋い表情となっていく。

「あまり良い札が来なくなったな~」


そりゃそうだろう。

黒が少し離れた場所から、あんたのカードに幻術掛けてるからね。どんなに良いカードが来ても、あんたの目には良いカードには見えない、そのまま良いカードも捨て続けるしかないのだ。


ゲームを続けるうちに、表情が険しくなっていくブレドニア伯爵を横目に、勝ち進むホクホク顔の私と赤。

そのうち、私達が格上だということも忘れたかのように、私達が勝つと舌打ちまでする始末。


負け続けても、帰らないように「ブレドニア伯爵、まだまだこれからですわよ。また流れが来るはずですわ」と来るはずもない流れが来るなどとニッコリと微笑んで言うと「そ、そうですな!」とその気になった馬鹿な伯爵に、内心ほくそ笑んだ。











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