表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/217

【168】白の衣装



「君達の国では『デビュタント』と言うものがあるらしいが、エルは今年だそうだな?」


今の魔王の口ぶりで、デビュタントは人間の国でしかない行事だという事が分かった。そんなもの無くて正解だ。


「はい、公式の夜会デビューのためのデビュタントとか、そんなの私に必要ないんですけどね」と深いため息を吐いた。


「僕達も仕方なく参加したけど、公式の夜会なんて出たことないな~」


素っ頓狂な表情で言うアルフ兄だが、それって真面目なアデレ兄が一人で出てるんじゃなくて?


「俺もないない。マジでデビュタントの意味分かんねぇよな、な、アルフ兄」


いやいや、お前も面倒事を避けてるだけだろ。


「参加する際に着るドレスは白と決まってると聞いたが、もう用意はしたのか?」

「全くしてないですよ」と両手を広げて見せた。


「ブフッ、お嬢、興味なさすぎー」

「では、私が用・・・「駄目ですよ!陛下。エルファミアのドレスの用意、それは私だけの特権ですからね」

ニッコリと満面の笑みで魔王に顔を向けたディス。


え!ディス、魔王の言葉に被せに来たよ。

しかも特権って何だ?!


そもそも白のドレスなんて、既製品を適当に買えば良い事だよ。他で着る事もないだろうし、安物で十分だ。


ただ婚約者がいる者は、白一色ではなく、決まった相手がいると分かるように、相手の色を取り入れなければならない。私ならディスの瞳の紫色という事になる。


「ところでデビュタントって、いつでしたか?」

「えっと確か、来月半ばだったかな?」


「では、次の週末にドレスを見に行きましょうね」と微笑むディスを見て魔王は、楽しそうで羨ましいなと呟いていた。



学園でも、開催まであと一月半を切ったデビュタントの話題で持ち切りだ。

放課後、マリア・ケイト・ローズの三人の話題もデビュタントについてだった。


三人は嫁ぐ相手が皆貴族の嫡男だ、公式の夜会に出席する事も多々あるだろうから、彼女達にとっては、デビュタントは大切なイベントの一つなのだ。


ダンスのパートナーはもちろん婚約者だが、よく考えてみたら・・・ディスって私と同じ学年設定のうえ私のパートナーだよね?ディスも白で参加なんじゃない?


「エルは、ルキアと二人で白だからお揃いね」


今度の週末にドレスを見に行く予定だったが、ディスの衣装を全く考えてなかった。きっと本人ですら、自分も白着用だという事は頭にないはず。



寮の部屋の扉を開け、中も見ずに開口一番

「ねぇ、ディスも白だよね?」

「私も白なのですか?」

私の部屋の中、特に確認しなくてもちゃんと普通に居た。


「だって、ディスは私と同じ歳の設定でしょ?ならダンスパートナーのディスも白だよ」

「なるほど、貴方のドレスで頭がいっぱいで、自分の事などすっかり忘れていました」


やっぱりか。そして当然だが、代用出来るような白の服などないと言うので、結局二人で作る事となった。


ディスが白って、全くイメージないよな~

私服は元々黒が多かったし、最近は新しく購入したするものは、勝手に自分の中で紺やグレー縛りにしているようだ。

普段着ぐらい何色でも良いと思うが・・・



週末となり、やってきたのはヘンダーソンの街。

「ロベルタさーん」

「お待ちしておりました、エルファミア嬢!」

私のひと声で、中からすっ飛んできたロベルタさんは、何故かすでに気合いが入っている様子。


「デビュタントのドレスでございますよね!婚約者のルキア様も同じ御年齢とお伺いしましたので、お二人とも白の衣装をご所望でございますよね!」


目をギラギラさせて迫るロベルタさん。

気合い入り過ぎてマジ顔が怖いって。


ロベルタさんと一緒に、白の衣装の形を決めて、今回はデビュタントまで一月半あるから、ちゃんと寝てくださいね、とお願いしてディスとお店を出た。


ロベルタさんのお店は、いまや王都からも注文が来る程の人気店。デビュタントの衣装だって沢山の注文が来ているはずなのに、いつも私を優先してくれるとは有り難い事だ・・・まぁ儲けに繋がるからっての一番の理由だろうけどね。


その後、相変わらず長蛇の列を作っている母様のフルーツサンドの盛況ぶりを見て、ヘンダーソンの邸に戻った。



「お嬢様おかえりなさいませ、お嬢様がお戻りになったらファーガス様とご一緒に、訓練所に来て欲しいと旦那様からの伝言です」


邸に戻って早々に、セシルからの伝言。

何かあったのかな?と首を傾げると「訓練所に行ってみましょう」と言うディスに腰を引かれ、その場から消えた。


訓練所の門の前に着くと、訓練所のグラウンドに父様や騎士団長、師団長や兄達、ヴァルテスの姿も見え、何だか物々しい雰囲気だ。


「エル、ファーガス殿!来てくれたか」


声を上げた父様の方へ向かいながら、何かあったのかと聞くと、数日前に東の森で変な気配を感知したのだと言う。


「変な気配?」


それは魔獣でもなく、だからと言って人間でもない、少し異質な気配だと言う。


まさか、魔族?そんな訳ないよね?とディスの方を見ると「魔族ではないですね、そもそもせっかく人間の国に来て、態々鬱蒼とした森に何しに行くのです?」


確かに、飛べる人は何処にでも飛べる。

あえて森に行く意味が分からないな。


「いや、逆に魔族だとするならば、私達はファーガス殿の気配を知っているので、似た気配なら判断出来るだろう」


確かにその通りだ。ならば何だ?












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ