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【159】ひとまず一段落



土産を持たされたと言うことは、商談は上手くいったのだなと、酒瓶を片手に嬉しそうに話す魔王。


「あちらの国の領主と生産者の方々も、ノリノリで話しを受けてくれましたよ。これアルフ兄が用意した書類です」

「書類を用意する辺り、流石アルフレッドだ、やはりしっかりしとるな~」


何か『仕事』を始めるなら、やっぱりアルフ兄の協力は必要不可欠よね。


米・醤油・鰹節・うどん粉は確実に仕入れが決定したので、後でここの料理長にも報告しないとだ。


魔王は、ヴァルテスの今日の分の魔力玉を忘れないうちに渡しておこう、と私に手渡しながら「いよいよ明日は夜会が開かれるが、特に問題はないか?」


問題か・・・城でちょくちょくゾワゾワとした嫌な感じは問題に入るのだろうか?とチラっとディスを見ると、ん?って顔をした。

まぁ、何かあってもディスが居てくれれば何とかなりそうだけどね。ただ魔族が相手だと何が起きるか読めないのが怖い所だ。


料理長に報告する為に、魔王の部屋を出て調理場へと廊下を歩いていくと、またゾワゾワ感じた嫌な気配に、思わずディスの腕をギュッと掴んだ。


「また感じるのですね」と腕を掴んでいる私の手を、優しくひと無でしてからディスの大きな掌で包みこまれた。


その途端に、一瞬感じた殺気

流石に今のはディスも気づいたのか、目を鋭くさせ辺りを見渡すが、やはり何もいない。


「今の、ですね。貴方がいつも感じていた気配は」

一つ頷くと「私の嫁に殺気を向けるとは」と言ったディスだが、嫁って言うなと顔を赤くし思わず頭にチョップした。


「ふふ、貴方には私がついてますから。もし貴方の傍を離れる時があれば、ヴァルテスを必ず側に置きましょう」


私の腰に手を回し、寄り添うように歩くディスと二人で調理場に向かった。




***************



何故、いつもいつも人間の女はアメディストゥス様と一緒なのよっ!許せない。


しかもこの数日は姿を現さなかったから、居なくなったものだとばかり思っていたのに。


人間のあの女がアメディストゥス様に触れた瞬間に

思わず殺気を向けてしまい危うくバレる所だったわ

危ない危ない。


アメディストゥス様に触れていいのは私だけよ!

私だけのアメディストゥス様なんだから


早くアメディストゥス様にかけられた幻術を解いて

正気に戻してさしあげないと。


明日は城で夜会が開かれる

アメディストゥス様に近寄る良い機会だわ

明日には、このエリザベートが必ずや

お助けいたしますわ。




**************




調理場で料理長に報告をし、仕入れた食材を出して渡すと、料理長は「今日は張りきって作るぞー」と料理人達と拳を掲げた。


何作るんだろ?


城での報告を終え、酔っ払いがいる邸に戻ろうとすると「お嬢さん!」と呼ぶ声。振り向くと赤がいた。


「アメディス、もう帰るのか?お嬢さん、今日は陛下の食事作っていかないの?」

「陛下のと言いながら、あなたが食べたいだけですよね?」

と目を細めて言うディスに、赤は私の料理は何食べても美味いからと言う。


「あ、そうだ。この後帰ったら、酔っ払い共の為にうどん打つから、昼になったら取りに来たら?」


ディスはうどんと聞き目を輝かせたが、赤や料理人達は「うどん?」と首を傾げつつも、喜んでいるディスの顔をみて、美味いに違いないと思ったのか「昼に絶対行くから」と言い、手を振り走り去って行った赤。


そして料理人達に、急遽昼はうどんになってしまったので箸休めの料理だけ用意するよう頼んだ。


邸に戻り、素早くうどんを打ち、昼に冷たいうどんを酔っ払い達に出すと

「お嬢!冷たいうどん最高っす」

「飲んだ後のうどんも美味しいけど、二日酔いの後の冷たいうどん、いいねぇ」

と、ズルズル食べ始めたヴァルテスとアルフ兄に続くように、ノルマン達も食べ始め満悦の表情を浮かべた。


「お嬢さん来たよ!出来てる?」


突然なんの前触れもなく、食堂に現れた赤に驚いて噎せたヴァルテスはすかさず赤に文句を言っていたが、赤は文句など聞こえないかのように、テーブルの上に釘付けだ。


「これが『うどん』か。何だか美味そうだ」

皆が食べてる様子を見て赤は喉を鳴らした。


「美味そう、ではなく確実に美味しいですから」


ディスの言葉に、そうなのか!とニッと笑顔になった赤に、薬味と温玉を乗せた冷たいうどんと、別皿にかき揚げと鶏天を乗せ、人数分持たせつつ食べ方の説明をした。


「陛下の分と、側近ズの人数分用意したからね。ちゃんと皆で食べるんだよ」

「はい、お任せを」と赤は胸に手をあて綺麗な礼をし、消えていった。



うどんを食べ終わった後、酔っ払い共全員を床に正座させ、こんこんと説教をしたのは当然である。








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